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3

時々、ナースステーションのあたりをうろうろして若い女の子でもいないかウォッチングするんだけど、
誰もいない。僕より若いのは二つか三つ隣の部屋の女の子だけで、あとはみんな三周り以上年上の
人ばかりだ。

窓のところに金網があって、天井まで続いている。死のうとしても、死ねないようになっている。
最も、僕はもうそこは諦めてしまったけど。

この病院、若い人に人気がないのかもしれない。前の病院には自分より若い人がちらほらいた。
内装は、誰もが考えるような普通の昔からの病院の雰囲気で、古い棚とベッドが一つ、おしゃれな感じが
少しもなく、古い。
僕はとりあえずコーヒーが飲めたらいいか、と思う。自販機の、それも病室から一番近いやつに
微糖のコーヒーがあるんだ。

 


4

看護師の男女三人と患者三人でトランプを始めたものの、
気が向こうの方へ飛んでいて集中できない。簡単なルールがわからない。

入院がこんなにいいところだったとは知らなかった。僕の燃えかすのようだった
生きる気力に、火はつかなかったが、少し煙が立ったように感じる。
何かよく知らないものに、大きな手で守られているんだ。
その力は、凄い。目に見えないくせに頭痛も幻聴も今日はおさまっている。

もうこのまま何もせずに眠っていたい気分。食事もいらない。起きたくもない。ただ、寝ていたい。
本を持ってきたが、読みたいとも思えない。
疲れたのかどうかもわからない。ただ、寝させてほしい。

 


5

僕は破瓜型なのか?「なのか?」とはよく知らない事柄について
使う言葉だと思う。でもこの場合、僕も周りの人も言わないだけで知っている。
僕ももちろん知っていたが、認めたくないから言ったのさ。
それに、僕は破瓜型だと実際どうなるのか、よく知らない。幻聴が少なくて、
例の「無為・自閉」が出てくるタイプなんだろうと思う。

それと関係があるかはわからないが、僕の『無為』症状はけっこうひどい。
気がつくとぼんやり白いベッドに座っている。その前に何をして、
何を考えてたかがまるでわからない。家にいたときはいつの間にか風呂に
入ってたり、寝たりしていた。

夕食。僕は野田というおっさんと喋っていた。といっても彼が何を言っているかは
98パーセントわからない。辛うじて単語が聞き取れることがある。
それをもとに推測して会話するんだ。本当は若い人がよかったが、ここにいるのは
7割型おっさんだ。それも極端に年の。

 


6

外から鍵はかけられない。だから、「誰か後をつけて襲ってくるんじゃないか」と
不安になる。不思議だ、大学のひとり暮らしの頃はそんな事気にしちゃいなかったのに・・・
看護師をつかまえて訴えると、「大丈夫ですよ」と言われる。
ああ、今日の薬はいったい何を飲んだのだろう。不安でたまらない。

いつの間にかぼんやりと立って、、やっていることを忘れてしまっている。
明日も自販機でコーヒーを買おう。微糖で。
そういうと、なんだか虚しいような、切ないような気分に襲われる。
僕は今、一缶のコーヒーのために生きているんだ。

 


7

夜の薬を飲んだ。コップに水をいれて、持って並んで、
袋に入ってる謎の薬を飲む。それだけ。
何か効果があるのかわからないが、明日は寝れるだろうか。

今日の午後の事。
「蒼月ジュナンさん」と呼ばれて、自分がいつの前に名前を教えたのだろうと
思った。
看護師の女性が言った。「都会的な感じの患者さんって珍しいですよね」
「都会的・・・?」
もう一人の看護師が言った。まだ20歳過ぎに見えた。「都会的というか、かわいい感じかな」
かわいい・・・?僕には理解ができなかった。
彼女らとトランプをやった。誰もが知ってる、ババ抜きと7並べ。
少しも理解ができなかった。心がここじゃない遠くへ飛んでいってしまってる
みたいだった。看護師たちがなぜ笑っているのかわからない。
あげくの果てには「大丈夫ですか」と気遣われた。

フラフラしながら眼鏡ケースを探す。僕はコンタクトは持ってこず、黒ブチ眼鏡で
来ていた。睡眠薬が効いてきたらしい。

 



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