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犬の心~私たち家を出ます

月に一度のお料理教室の日。

楽しみにしていた白ワインに合わせたお料理。

バルケットのミニキッシュ。一口サイズでちょっとしたパーティにもピッタリです。

そんな朝に、オーロラさんから電話がかかってきました。

「今日は少し早めにいらっしゃらない?お伝えしたいことがあるのよ」

「ええ、はい。何かしら?」と、ちょっと不安な気持ちで出かけて行きました。

 

「桜さんのワンちゃん元気にしてる?」

ウチにはワンちゃんが2匹います。チェリーとアンズっていいます。どちらも可愛い女の子です。二匹で楽しそうにジャレ合ったり、重なり合って眠る姿が愛くるしい。私の宝物です。 

「ええ。元気と言えば元気だし、そうじゃないと言えば何となく元気が無いんです。この頃チェリーの様子が変なんです。なんだか大人しくて、どこか具合が悪いのかしら? と思っていたところなんです」

「そう」

オーロラさんは頷いた。

「そのチェリーちゃんなんだけど、昨夜オレオのところに来て、家を出たいって言ってきたらしいの」

「えっ、チェリーがですか?」

「そうよ。桜さんのところは二人とも毎日朝早くから夜遅くまで帰って来なくって、不安で寂しくってお留守番に疲れたって。だから自分たちのことまで世話をかけたくないって」

「チェリー…」

「お父さんに関しては働きすぎで心配なんだって。ご飯も満足に食べていないって。それに、お母さんは無駄遣いが多いって。桜さんそうなの?」

そう、私たち夫婦は毎日忙しい。ほとんどまるまる一日家を空ける日々が続いていた。

そんな生活が嫌だと、犬たちがオレオに訴えに行ったらしい。最近は家で料理もしていないし、二人で食卓を囲む事も無くなっている。お互いに顔を見て話をする事も少なくなった。それにしても、無駄遣いとは・・・・。買い物までバレているとは・・・。

「おばあちゃんの家に行きたいって。どうする?」

「どうするってぇ・・・・イヤです!ダメです!絶対に行かせたくありません〜!」

涙が止まりませんでした。

私の宝物たちがそんな風に考えていたなんて信じられませんでした。

「気持ちは痛いほど分かるけど、よく考えてあげて。犬たちにとってどうしてあげる事が一番良いのか」

そうオーロラさんに言われて、その日はただただショックでした。楽しみにしていたワインだったのに、その香りも味も覚えていませんでした・・・・

数日間、朝に夕に犬たちの顔を見ながら考えた挙げ句、勇気を持って決断をしたのです。

私は、犬たちを泣く泣く実家へと預けに行きました。

 

「桜さん、あなたが生活を立て直したら、ワンちゃん達はきっと帰ってくるわよ。

ワンちゃん達は桜さんが大好きなのよ。だから今の桜さんが心配で心配で、

自分たちのことまで面倒をかけたくないって。そう言ってたわよ」

オーロラさんが、虚ろな私にそう声をかけてくれた事を思い出しました。

「まずは妻としての役目を果たして、しっかりと家庭を守る努力をするのよ」

 

それからというもの、私は夫の為に毎日欠かさず朝ごはんを作り、お弁当も用意しました。夜はなるべく二人で一緒に食事が出来るように、お互いに時間を作ったのです。

掃除も今までに無いくらい本気を出しました。

主婦って、やるべき事がこんなにたくさんあって大変なんだ…外での仕事に精一杯で、妻として夫への気遣いも足りなくなっていたわ…”

三ヶ月も経ったある日、私は夫の好きなハンバーグを作って帰宅を待っていました。すると夫は、私の好きなco le jinseiのケーキを手に帰宅したのです。顔を合わせると、二人とも思わず笑顔がこぼれました。

「いつも美味しい食事を作ってくれてありがとう」

「いつも遅くまで働いて稼いでくれてありがとう」

お互いに感謝の気持ちを伝えられるような心のゆとりも出来ていたのです。

前よりもお互いを思いやる気持ちが芽生え、家庭は安らぎの場所となっていました。ピカピカに掃除した部屋、愛情を込めた料理、二人での楽しい食卓。私は家庭を守る妻へと、そして夫はただの同居人から桜家の大黒柱となっていったのです。

こんな当たり前の事が普通に出来る事、それが幸せなのだと気づきました。そうしてやっと努力が実り、チェリーとアンズにも心配させないで暮らしてもらえる日がやって来たのです。久しぶりの我が家で喜んで駆け回るチェリーとアンズの姿に涙が溢れ、二度と離さないと誓いました。

「ごめんね…今まで本当にごめんね…」

 

 

この幸せな生活を継続出来るかどうかは心がけ次第。

でも、きっと大丈夫。

大切な家族が側にいてくれる限り、これからも頑張っていける…!

 


奥付


オーロラさんの館 

犬の決意~私たち家を出ます


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著者 : フルーツとタルト
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