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エピローグ —大切な贈りもの—

 

 その日の朝。シェイラは、学院の泉に訪れていた。
 いつもと違うのは、先日の騒動で所々が荒れていたこと。幸いにも、あの像は無事に姿を留めていた。
「今日もここでしたのね。シェイラ」
 振り返ると、ハンナの姿。
「あ、おはよう。…うん、早く元の泉に戻ってほしいから」
 シェイラは笑った。いつもこの場所で見る、彼女の姿で。
「ロイル先輩も、さっきあちらの庭園で見かけましたわ。シェイラと同じ事を言ってた」
 フフッとハンナが笑うと、シェイラもそれにつられて一緒に笑った。
「しばらくは、その姿のままでいるつもりですの?」
「うん。あの姿は、いつでもなれるけど…急に変わったらみんなビックリするし。それに…」
「それに?」
「悪い虫がつくから、やめてくれって、彼が…」
「…意外とヤキモチ焼きなんですのね」
 ハンナは、半ば呆れ顔でごちそうさま、と呟いた。
 
「ハンナ…」
「なんですの?シェイラ」
「…助けてくれて、本当にありがとう」
 そんな事ない…と一瞬言いそうになったが、言葉が違うような気がして、止めた。
 
 こんな時、一番ふさわしいのは、どんな言葉だろう。
 
 彼女は、すぐ身近にある大切なその言葉に気づいて、笑顔で贈ることを決めた。
 
「…こちらこそ、私の声を聴いてくれて、ありがとう。シェイラ」
 
 
—二人の笑顔を見守るように、焔天使の像が朝露と陽光で輝いていた…。
 
 

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最終更新日 : 2014-02-08 21:05:24

この本の内容は以上です。


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