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『地球の危機』 工藤伸一@ワサラー団

投稿時刻 : 2014.01.18 23:45
総文字数 : 675字
獲得☆3.444


《発言が人をつくる賞》
《1人1ツイート賞》
地球の危機
工藤伸一@ワサラー団


「やべー、寝ちゃってたよ。今23時28分。後17分しかないというのに、5人を出せって無理だよ」「でも何とかしなくちゃ地球が終ってしまうんだよ。それなのに寝坊なんて無責任にも程があるわ」「別に好きで選ばれたわけじゃないからな。さてどうするか。今二人いるよな。外は既に汚染されていて、通信手段もない」「チャネリングすればいい」「そんなオカルトなこと言われても。まあいい。時間もないから話だけ聞かせてくれ。どうすればいいんだ?」「まず寝るの。そして夢の中で意識を接続する」「起きたばかりなのに出来るわけないだろ」「柔道技で落としてあげるわ」「なるほど仕方ない。やってくれ」「じゃあ行きます。うりゃー」「ひいいいいーい。ガクッ」



「ここが夢の世界か。でもチャネリングする手段を聞き忘れたままだ。どうにもならない」「本当だよね」「お前だれだ?」「3人目さ」「良かった。あと2人」「俺が既に繋がってる奴がいるぜ」「初めまして。3人目なりー」「どうも。もしや君も誰か連れてきてないか?」「もちろんなり」「それは助かった。声を聴かせてくれ」「スイミンろぼデス。コンゴトモヨロシク」「ロボットってありなの?」「セイカクニハあんどろいどデス」「アンドロイドも夢を視るって本当なんだな。それなら大丈夫かな」「ノウニハイリコンダダケデス」「でも5人そろったことに違いはない。大丈夫だろう」「デモボク、キミヲオトシタ2リメトオナジダヨ」「足りてないわけか。くそ!」「これで地球は終わり。残念だったな」「貴様が悪の根源か。でも貴様を入れて5人だろ?」「そうだな。運が良かったね」

『苦情、処理しまくり』 ひこ・ひこたろう

投稿時刻 : 2014.01.18 23:15
最終更新 : 2014.01.18 23:24
総文字数 : 2005字
獲得☆3.417
 「公務員なのに真面目に働くヤツは無能」と先輩から教わったもんだから、私は勤務中に自分の席で女子高生とチャットばかりやっていた。しかし、それが上司・望月課長の目に触れたようで、私は早速「苦情処理係」の窓口に配属された。この職種は事実上の退職勧告といってもよい。市民からのどうでもいい苦情を一日中聞かされ、精神に異常をきたして辞めていく同僚が多いからである。

 翌日、私は窓口に座り市民からの苦情を聞いた。
「どうして砂丘は鳥取にしかないのか?」
「どうして日の丸の太陽は赤いのか?」
「うちで作ったレモンパンを宣伝してくれ」
「日本は『にほん』と『にっぽん』、どちらの読みが正しいのか?」
「日本共産党の書記局長が代わったので、名前を覚えてくれ」
 とまあ、こんな感じのしょうもない苦情を聞き流すのである。ああ、しんど。女子高生相手に「おっぱい触らせろ」とチャットしていた昨日までの日々はいったい何だったのだろう。いくら憲法で国民の請願権が保証されているからといって、しょうもない話に付き合わされるなんて、こんな安月給では割に合わない。たまに、望月課長と廊下ですれ違うが、もはや向こうは目を合わそうともせず、挨拶にも応えない。

 そんなある日、とうとう私を怒らせる苦情が舞い込んできたのである。
「国の借金は1008兆円、国民一人当たり792万円というが、国民は借金してくれと頼んだ覚えはない。借金は公務員がこしらえたものだ。公務員一人当たり16億円と発表しろ」
 はあ、何だ、こいつは? そう思いながら、私はつばを飛ばしながら憤る白髪の男性の話に耳を傾けた。確かこの男は共産党書記局長の名前、山下芳生氏の名前を覚えろとしつこく言ってきた人物である。なぜか胸に「山本」の名札を着けている。どう見ても年金生活者といった風情なのだが、私に名前を売ってどうするつもりなのだろう。もしや、選挙にでも出ようというのか。

 それはともかく、市民・山本の挙げる数字が正しいかどうか手元の電卓で確認してみる。
「1008兆円」って桁が多すぎて、自分の電卓じゃ入り切らない。公務員の数、ここでは国家公務員の64万人で割ればいいのか。まずは紙に書いてみて、「兆円」を「万円」で割って桁数を減らすことから始める。
「げっ、やばいじゃん!」
 いやあ、国の借金ってこんなにあったのですか。国家公務員一人当たり16億円。もう笑うしかない。
「これを死にもの狂いで減らしなさい」と、市民・山本は私に詰め寄る。そんなこと、山下芳生氏だってできやしないと思うぞ。

 だが、私はやってみることにした。まずは安倍総理に電話をし、「公務員を増やしてください」とお願いしてみた。1008兆円の借金を減らすのは難しいが、公務員を増やして一人当たりの金額を減らすことなら可能だ。
 翌日、地方公務員をすべて国家公務員にする特例法が成立した。「君の頼みなら聞かないわけにはいかないからね」と安倍総理。恩に着ますぜ。そして、公務員一人当たりの借金は、16億から3億に減った。やったね、自分! それに、さすが安倍総理。「地方の借金÷地方公務員の数」は分母がゼロになったので、無限大になったけど、ワシは知らん。だって、責任を取る地方公務員はもういないのだ。えっ? 分母がゼロの計算は不能だって? 文部科学省にでも尋ねてくれ。

 公務員一人当たりの借金が減ったので、もうちょっと贅沢をしてもいいだろうということで、もっともっと放漫財政をやってみた。私は苦情処理窓口から栄転し、財務省の政務官になった。

 そんなある日のこと、市民・山本は本当に選挙に出て当選し、国会に私を呼びつけこう迫った。
「日本の財政は危機状態にある。公務員一人当たりの借金はもはや9億円になった!」
 しょうがないので、日本国民、子供からお年寄りまで全員公務員にしてみた。そうしたら、公務員一人当たりの借金は減った。ざまあみろ、市民・山本。いや、代議士・山本。
「これでは以前の国民一人当たりと同じではありませぬか」代議士・山本が指摘した。「しかも現在は2400万円に膨れ上がっている」
 ふうん、そんなに借金が増えたのか。日本国民の資産をはるかに超えてしまっている。792万とか言ってた頃が懐かしい。

 トゥルルルル……。
 私は今度は中国の李首相に電話をした。日本を中国に売り渡すためだ。
「あなたの頼みなら」とこれまた気さくに応じてくれた李首相。やはり持つべきものは友達である。「よっ、大統領! じゃなくて、首相!」
 翌日、日本と中国は合併。「東アジア連邦ドラゴン」というひとつの国家となった。人口15億、GDPたくさん。公務員一人当たりの借金も国民一人当たりの借金もばっちり減った。
 私は早々と引退し、年金生活。野球は中日ドラゴンズを応援し、日本共産党は消滅したので、書記局長の名を聞くこともない。AKBのセンターは上海48の子だ。尖閣諸島の領土問題も消えた。めでたし、めでたし。

『だらだらと呑む奴らの話』 長介

投稿時刻 : 2014.01.18 23:40
総文字数 : 1498字
獲得☆3.400


《発言が人をつくる賞》
だらだらと呑む奴らの話
長介


「おう、この刺身うめえな!なんだっけ」
「サワラ。おまえが頼んだんだろ!」
「ヨシオはいつもそんなだよな。一瞬で前のこと忘れやがって。
オレが貸した三千円返せよ!」
「ヤスノリから金なんて借りたっけ?いつ?」
「てめーマジか!マサシと呑みに行くけどカネねーって、一週間前!
マサシ、おまえも見てたよな?」
「ていうかそれでも足りなくて、俺が千円多く出したんだよ。ほんとこいつは……」
「おー、おー?ていうか呑みってどこ行ったっけ?」
「桜新町の十銭酒場だよ。水谷君が旨いっていうからさあ」
「あー、そうだった。あんましだったなー、魚まずくてさあ」
「すまんかった……」
「いやいやいいんだよ水谷君、こいつが異常に魚に厳しいだけ」
「ていうかヨシオ、水谷君いる前でその発言はないわー」
「ヨシオはうるさいわりに、注文した刺身の名も忘れてるしなあ」
「いやー、魚の名は忘れるっしょ?イナダとかノドグロとか言われてもさー」
「ノドグロなんてすぐ覚えるだろ?ま、どうせ俺らがめったに食える魚じゃねーけど」
「それにタクがいるだろ。金沢出身だよ」
「俺か?ノドグロって金沢じゃほぼとれないんよ。山陰のほうよ」
「あ、そうなん?」
「また無駄な知識を増やしてしまったな」
「はい、ビールおかわりする人!ヤスノリだけ?」
「俺ホッピー」
「マサシー。ホッピーならビールでいいじゃん」
「馬鹿おまえ、プリン体がだなあ……」
「はいはい。タクは?」
「ウーロンハイ。最近凝ってるんよ」
「こんな店のウーロンハイに凝ってるも何もあるかよ。水谷君、どうする?」
「おう、カシスオレンジで」
「カシスオレンジかあ。水谷君さすがだなあ、うん」
「なんだよそれww」
「なあヨシオは?」
「トイレ行ったよ」
「おう」
「あいつはさあ、ほんとにダダ漏れだよ、記憶も財布も下半身も」
「その表現だとヨシオ君ドンファンみたいだよw」
「ドンファン!水谷君はさすがだなあ」
「やめろよw」
「あ、ヨシオ帰ってきた」
「俺、高い焼酎頼んじゃった」
「てめえどうせカネないくせに割り勘だと思って!いいちこにしろ!」
「ヤスノリの口うるささは異常だと思う」
「でもカネないんだろ?」
「今日は二千円もあるぞ!」
「全然足りないと思うんよ」
「いや俺が貸すから、いざとなったら」
「水谷君、好き!」
「そんなw」
「ヨシオにはマサシがいるだろ」
「マサシ君とは別れますわ」
「正直ホッとしたよ俺」
「焼酎お湯割りおまたせしましたー」
「あの店員さん、他の飲み物はまだすか?」
「え、ご注文いただいてませんが」
「あれ?」
「……あれ?じゃあ、あらためて」
「俺ホッピーで」
「俺ビール」
「ウーロンハイ」
「カシスオレンジじゃなくてモスコミュール」
「かしこまりましたー」
「で、さっきはなんで通ってなかったんよ」
「つかみんなの注文きいてたやつが伝えてなかったんだな」
「え?それってさ……誰だったんだ?」
「あ……」
「俺、ヤスノリ、マサシ、タク、水谷君……。
じゃあ、さっき注文きいてたのは誰だ?」
「……ああ」
「この席には、実は……六人いるんじゃないだろうか」
「ヨシオ……」
「だってそうだろ、そう考えないと……つじつまがあわない」
「……怖いな」
「マサシ……」
「座敷わらしっているんだ……あたっ!なんで殴るのヤスノリ」
「自分の心にきいてみろ!」
「あたっ!やめろよー!助けて水谷君!」
「無理www」
「いやマジでなんで殴るの?タク、冷静に解説してよー」
「うん、それは、注文聞いてたのがおまえだからだよ、ヨシオ」
「……」
「……」
「トイレ行くついでに頼んできたんだと思ってたわけよ」
「……てへ。ごめん!おわびに今日は多めに出すから!」
「二千円しか持ってないだろうがおまえは!」

『林檎の彼女 ~私が彼女と付き合うまで~』 orksrzy

投稿時刻 : 2014.01.18 23:40
総文字数 : 3539字
獲得☆3.400
 大学構内を長い髪をなびかせて颯爽と歩く彼女は凛々しく、そして美しかった。
 思えば、私は彼女を初めて見た時に、彼女の虜になっていたのだろう。
 恋する私は彼女の右手にいつも握られている赤い果物を気にすることがなかった。私は穏やかな気持ちでこう思ったものだ。林檎が好きなお嬢さんなのだな、と。

 私は大学に入学した当初、いよいよこれから私は華のキャンパスライフを送り、友との熱い抱擁や恋人との胸焦がす夜を、それはごく当然のごとく体験してゆくのだろうと思った。
 しかし、入学後の様々な煩悶とした事務的手続きを経て、心は緩やかに萎んでいった。このまま、何も経験せず終わるのだろうかと苦しみが私の中に生まれた。
 そんな時、私は大学構内で件の彼女を見かけたのである。林檎の彼女である。
 今となっては彼女は病的なほど林檎を愛していることを知っているが、当時は初対面であるから何も知らない。例えば彼女が決して林檎を手放すこと無く、気が向けば、左手にナイフを握り、しゃりしゃりと音を立ててリンゴの皮をむき、思うままに口に放り込む、というような一面があることを知らないし、彼女が恋人が林檎病という伝染病にかかれば、ナイフを持ちだし、私は林檎と恋人のハイブリットした物を食べたい、と襲いかかるとなど、露とも知らない。
 だから私は彼女に恋したし、彼女の透き通るような白い肌と、それこそ林檎のような真っ赤な唇に心を躍らせた。
 私は少しでも彼女に近づこうと果物愛好サークルに入った。そこは果物と名のつくものにフェチズム的愛を傾ける怪しげな団体であるのだが、私はよく内情を知らず、ただ、彼女が在籍しているという情報のみで門戸を叩いた。
 果物愛好サークルでの最初の課題は、ミカンを皮から搾り出る汁に刹那的快楽を感じることだった。至極ノーマルである私にはこの課題をクリアすることは地獄のように苦しかったが、ミカンの汁の向こうに彼女の笑顔があると思えば、乗り切ることができた。部長はうざったい人間で、「ミカンの汁に何を感じたのかね? 言ってみたまえ、さあ、我慢せずにぶちまけてしまいたまえ!」と耳元で唾を飛ばすので厄介であった。
 そういう日々を送る中で、どうやら彼女の周りには恋のライバルがいるらしいことが分かった。
 伊達眼鏡をかけた超名門高校出身のシンジ、野球部の筋肉自慢のタケル、文芸部の王子様ジン、の三人である。
 果物愛好サークルの部室には彼らが足繁く通い、彼女に熱い視線やら熱い言葉やら熱い手紙を投げかけていた。
「ここは果物に熱き情熱をかける者の聖地であるので、お引き取り願いたい」
 私はぷりぷりと怒って、彼らに言った。
「僕は林檎の彼女に会いたいけれど、このサークルには入りたくないんだよなあ。ここに入るなら、死んだ方がいい」
 辛辣な言葉を伊達眼鏡シンジが放つ。
「ならば、何故、このサークルに入っている女性を狙うのかね? 矛盾していないかね?」
 私はシンジを睨み付ける。
「いいや、矛盾していないよ。このサークルの価値より彼女の価値の方が上なんだ。価値が下の物は上の物に影響を及ぼさないよ」 
 私は底辺高校出身である。シンジの言葉は訳が分からぬ。
「屁理屈である!」
 私は怒鳴って、シンジを追い返した。彼は虫けらを見るような目つきで私を見た。
「おい、ひょろガリ。彼女はどこだい?」 
 別の日には野球部のタケルの相手をした。タケルは筋肉馬鹿である。標準体形の私をひょろガリ扱いである。
「知らんね。帰りたまえ」
「殴られたいのか?」
「林檎の木の剪定に向かいました」
 私は青い顔をしてぶるぶると震えて答える。私は暴力が嫌いである。
「それはどこにある?」
「確か、ここから二山越えた先にありますが、電車もバスも通っておらず、歩いて行かねばなりません。こちらが地図となっております」
 私は鉛筆で書かれた地図を渡した。タケルは地図を奪い取ると、しげしげと眺めた。
「なるほど。俺の足では三日で行けるな。もう用はない。ひょろガリ」
 そう言うとタケルは私を突き飛ばし、駆けていった。私はもんどりをうってひっくり返る。おかしい。私は標準体形であるはずなのに。
 いてて、と腰に手を当てながら、にやりと瞳を鈍く光らせた。
 彼女が林檎の木の剪定に行ったなど、嘘である。馬鹿な男め。彼女は林檎パイを作るために家に帰っておるわ。
「儂は彼女のことを愛しておる。文に著わしたのだが、君、渡してもらえんかのう」
 文芸部のジンはイケメンである。古臭い喋り方をするが、気の良い奴だ。私は彼を裏切りたくない。恋のライバルであるが、彼を応援したい。
「分かった」
 私は彼の手紙を恭しく受け取る。
「恩に着る。立派な青年じゃ」
 ジンが立ち去ると、私はこの手紙を彼女に必ず届けるのだ、と強く誓った、が手元が緩んで、手紙はゴミ箱の中へと放り込まれた。これはいかん。すぐに拾わねば、と思ったが、ゴミ箱の中は不潔である。その中に落ちたものを彼女に渡すのは忍びない。しかし、ジンを裏切るのもまた、私の人間としての自尊心を傷つける。
 私はごみ箱から手紙をさっと拾い上げた。そして、石鹸をつけて、手紙を洗う。
 水に濡れてふやける手紙を見て、私は、まだこの手紙は汚れているような気がしてならなかった。決して他意は無い。純粋に私は綺麗好きなのである。であるから、私はせっせと手紙を洗う。
 不思議である。手元には濡れた紙の断片がちりぢりとなって残るばかり。これでは彼女に手紙を渡せない。私は悔しくて、声を殺して泣いてみた。しかし、涙は出なかった。
 そんな日々を送っているある日である。
 彼女が微笑んで宣言した。
「私は彼氏が欲しいわ」
 その声に私も恋のライバルも興奮せざるをえなかった。
「僕と付き合えば、君はエリートになれる可能性が高い。僕は司法試験を目指しているからね」
 シンジが自信ありげに言った。
 彼女は眉間にしわを寄せた。
「嘘。だって、この大学から司法試験に合格? 無理でしょ。ここ、Fランクの大学よ。あなた、大学受験に壮絶に失敗しているじゃない」
 シンジは泣き崩れ、君がそんな女だったなんて、と吐き捨て、去って行った。
「おっぱいちゃん、俺と付き合えば、どんな奴だって殴ってやるよ」
 タケルが力こぶを作ってみせる。
 彼女はため息をついて首を振った。
「あのね、その呼び方やめて。それに人を殴ったらいけないでしょ? あなたリングの上のボクサーじゃないでしょ。考えるという行為があることを知って」
 タケルが怒り狂い、去っていったシンジに追いつくと、八つ当たりで彼の背中を蹴りつけた。シンジは痛みに苦しみつつ、伊達眼鏡をくいっとあげた。それに意味があるとは、私には思えない。
「なあ、儂の手紙を読んでくれたやろ? 儂は君の事が好きぃて好きぃて、しゃあないんや」
 ジンが緊張した面持ちで、彼女に告白した。
 彼女は不思議な顔で彼を見た。
「っていうか、あなた、だれ? 初めて会うよね? 手紙って何?」
 ジンは驚いた表情を浮かべた後、何かを察した表情になり、私を睨み付けた。
 私は、これはまずい、と思った。
「こいつ、きっと、ストーカーって奴ですよ! 手紙ってなんです? 怪しいですよね! 喋り方もなんか不審者だし!」
 私は恋のライバルとしてあるまじき、いや、人間として最低の言葉を放った。
「そうね。あなた、もう半径五メートルには近づかないで。私の林檎が腐るわ」
 彼女は冷酷に言い放った。
 ジンはその事がよほどショックだったのだろう。もう私の方を見ず、肩を落として去っていった。
 しばらく、気まずい雰囲気が私の中でだけ漂った。
「まったく、なんなのかしらね? そう思わない?」
 ん? チャンスかもしれない。ライバルは去った。今が告白時かもしれない。私の胸がドキドキとしてきた。
「ん? どうしたの?」 
 さあ、言おう。どんなかっこいい台詞を言おう。
 陸地に生きるすべての生物があなたに恋をするだろう。いいや、海に生きる者たちもあなたに恋をするだろう。けれど、誰よりもあなたの瞳に囚われているのは、あなたの目の前にいる、この私だ。――よし、これでいこう!
「りぃっ!」
 やべ、噛んだ!
「え、なに?」
「り、り……」
 迷った。今から言ってもかっこ悪い。その時、彼女の右手に目がいった。赤い果物、林檎がある。
「り……りんごが、僕も好きである。私と付き合ってください」
 彼女が頬を染めた。
「……嬉しい。あなたなら、分かってくれると思っていたわ」
 おやおや、なんだ、この展開は?
「他の男は何だったんだろうね。私はただ、林檎が好きだと言ってほしかったの。私の愛する林檎を、同じように好きだと言ってくれる相手であって欲しかったの」
 彼女はそう言って、空いている左手で僕の頬を撫でた。
「生涯、愛を育みましょう」
 こうして、私は正式に林檎の彼女の恋人になったのである。

 了


※作品集への掲載にあたって、誤字等を一部修正しました。



『6人答えられない人は、星5つ』 デーブ・“しゃん”・スペクター

投稿時刻 : 2014.01.18 23:44
総文字数 : 824字
獲得☆3.000
 その日、クアラルンプールには怒りを秘めた人々が集まっていた。
「さて、みなさん。先だっての話ですが、いよいよ我々が復讐を果たす時が訪れました」
 テロリストを名乗る一人が、威嚇するような低い声でそう言った。
「それはともかく、この会場に納豆はないのか? 広報部長代理、ちゃんと説明したまえ。わざわざマレーシアくんだりまで来て、何故揚げバナナなど食わなくてはならん。本来なら、私はいまごろスイミングをしている予定だったのだよ」
「ふよふよ~。そうですよ。私だって仙台のスーパーで働いていて忙しいのに。地域活性化のために、また店長と悪だくみ……じゃなくて、斬新なイベントを考えなくちゃいけないんですよ」
「しかし、納豆部長。我々の統計では、昨年はあなたが一番いじられていたはずです。今は仲間割れをしている時ではありません。力をひとつにして、奴に仕返しをしなければ。月曜と奴は、我々の共通の敵です。我々はそれを確認するために、こうして国際会議を開いていることを、どうか理解してください」
 テロリストが食い下がると、向かいの席の参加者が乾杯を待たずに、手酌で酒を注いでいた。
「そんなのどうでもいいよ。はやく飲もうよ。納豆部長は魔界都市に住んでいるんだから、もうちょっと割り切ってよぉ。みうらだいちとお酒は今が旬ってね。折角のオフ会なんだから、楽しくやらなくちゃあ。楽しく~」
「そんなの、どうでもいい。プロコンさいこー。つか、あんた折角なんだかホタルイカの一匹くらい持ってきなさいよ。何一人で先に飲んでるの?」
 ほどなくして、「あの、みなさん」という小さな声がテーブルの端から聞こえた。
「一応、幹事は僕なんですが。マレーシアといえば、僕なんですが。無視しないでくださいね。どーじん、よろしくお願いします。無視しないでね」

 こうして、6人によるオフ会は開かれた。
 彼らは一体、誰に復讐しようというのか。
 その具体的な手段とは?
 謎とともに、夜が更けていく2月のマレーシアだった。


 おしまい


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