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that was why.

傷つけられたのが君だったから
許せなかった
もし自分が同じ目に遭ったなら
どんな事をしても耐えられた
でも君の瞼が閉じてしまったから
僕はあの時心に決めたんだ
鬼になると
 
もう既に触れられる対象もなく
魂だけとなってしまった君だけど
その全てを守り抜きたい
だから僕は一度人生を捨てたのかもしれない
一人だけ幸せになんてなれなかったんだよ
たとえ人がそれを弱さと名付けても
あの光景を見ていないからそんな事が言えるんだ
 
未だ肌に焼けついて離れない光景は
思い出す事も憚るような悲しみで満ちている
忘れるものか
あの日は僕そのものだというのに

時計針

時計針の音がやけに耳に障る夜
目を開けて眠れずにいても
広がる景色は心の中のものだけだった
 
時に楽しげな思い出ばかり切り取り
時に悲しく苦い思い出ばかりを蘇らせては
指先で弄んでいる
 
蘇るんだよ、今でも
白黒にさえならずにさ
 
手を伸ばせば届きそうな距離に気付けば
過去はいつもそこにいて手招きをする
 
ぐっとこらえる足元
耐える痛みは経験したものじゃないと分からないだろう
近づきたいから遠ざかった
想っているから触れられなかった
痛みがまだ蘇るから泣かなかった
その気持ちが少しでも分かるのなら
相当きつかったろうね今まで
人が上を向けるのも
下を向いてしまう事くらいに
突然やってくるものだから
焦らずじっくり待つ事が必要な時もある
そうも言ってられないだろうけどね

『射抜いてくれよ』

突き刺さるような満ちた眼差し
しかしその瞳の奥でいつも見え隠れしているものは
野望に隠れた悲しさと孤独
 
暗い目の持ち主はいつもそう
心に鍵をかけている
触れられる事が怖いから
その鍵穴を抹消する事さえあるね
光に一歩踏み込んでしまえば
この身ごと消えてしまいそうな感覚に駆られている
 
弱い犬ほどよく吠える、と何度自分に向けて囁いた?
見せかけでもいい
そんな望み方しかできない
ねじきれそうなこの心を
その眼差しで
射抜いてくれよ
赤い閃光の如くに

when?

痛みが零れ落ちる音がした
君の耳にもし届いていたら――
そう考えるほどに狂おしくさえなる
君に心配をかけない
それだけが全てだった
笑うだろうけどね
 
果てても笑ってた
刺さっても微笑んでいた
弱り果てても強がり
壊れても壊れてなどいないと言い切った
僕が止まるのは、いつなの?
 
きっと止まる事など許されないのだろう
今更それを悲しいだなんて名付ける気もない
それを僕は使命として受け止めたんだ
何を得ても何かを引き換えにするのなら
引き換えにすれば何かを得られる事も決まっているのだろう
 
得るばかりじゃないさ
ただ、失うばかりじゃない
決して

『どうせ泣くのなら』

手の甲に涙こぼれおちる
悲しい涙じゃない
嬉し涙さ
どんな痛みも吹っ飛んでしまうような瞬間に出会ったんだ
これはまるで君を想っている時のような温もり
心に向けて広がっていくよ
陽光の如くに
 
眼差しからも思わず優しさが溢れだす
いいかい?その頬が涙に濡れた回数だけ
君は微笑む事ができるんだ
自分をそれでも責めてしまうのなら
そうして自身を責め続ける君が
愛おしくて仕方がない
もう止められない
 
どうせ泣くのなら君のために泣きたい
どうせ笑うのなら君のために笑ってたい
全部自分のために向けるのは飽きてしまったんだよ
満たされない思いはこうして満たされていく
いつだって一人のために生きてたい


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