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第一章 〜春の細胞たち〜

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静かな春の宵のこと


静かだね、と

あなたが銘打つ

二時の宵

 

あけすけに

満開見頃の

サクラたち

 

整然と凛然と

雌蕊露わに眠る宵

落ちない散らない

雄蕊の長針

僅かな距離を縮めるまでは

果てるわけにもいかなくて

 

うつくしさ

痛み感じる頂点のまま

眠れるサクラを

透写せんと

ひっそり見守る満月に

涅槃が映るとサクラは笑う

 

本当に

静かな夜の一幕で

あなたの呼吸が寝息に変わる

甘く歪んだ時間の境

乱れた夜具の青い陰へ

おちるひとひらの花びらを

もう一度くちびるへ

そっとのせてほしいから

静かなままに目を閉じて。

(FIN)

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