目次
はじめに
はじめに
更新履歴
更新履歴
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戦場の一休宗純(課題30:時代劇)
「戦場の一休宗純」人物表
「戦場の一休宗純」本文
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三転倒立ライフスタイル(課題29:ホームドラマ)
「三転倒立ライフスタイル」人物表
「三転倒立ライフスタイル」本文
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君のアドリブパパ(課題28:喜劇)
「君のアドリブパパ」人物表
「君のアドリブパパ」本文
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STAP2号対ドロチ~北半球最後の戦い~(課題27:アクションドラマ)
「STAP2号対ドロチ~北半球最後の戦い~」人物表
「STAP2号対ドロチ~北半球最後の戦い~」本文
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ライン上のゴースト(課題26:サスペンス)
「ライン上のゴースト」人物表
「ライン上のゴースト」本文
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失われた地図を集めて(課題25:メロドラマ)
「失われた地図を集めて」人物表
「失われた地図を集めて」本文
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BLACK BENGO(課題24:弁護士)
「BLACK BENGO」キャラクター表
「BLACK BENGO」人物表
「BLACK BENGO」本文
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君が生きるために大切なことはいつも伝えられなかった(課題23:医師)
「君が生きるために大切なことはいつも伝えられなかった」キャラクター表
「君が生きるために大切なことはいつも伝えられなかった」人物表
「君が生きるために大切なことはいつも伝えられなかった」本文
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ワケあり先生とハダカの王子様(課題22:教師)
「ワケあり先生とハダカの王子様」キャラクター表
「ワケあり先生とハダカの王子様」人物表
「ワケあり先生とハダカの王子様」本文
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再会の脱法ハーブ(課題21:刑事)
「再会の脱法ハーブ」キャラクター表
「再会の脱法ハーブ」人物表
「再会の脱法ハーブ」本文
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プライバシー・ゼロの国(課題20:記者)
「プライバシー・ゼロの国」人物表
「プライバシー・ゼロの国」キャラクター表
「プライバシー・ゼロの国」本文
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約束のカヌー(課題19:別れの一瞬)
「約束のカヌー」人物表
「約束のカヌー」本文
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10秒チャレンジ(課題18:愛する一瞬)
「10秒チャレンジ」人物表
「10秒チャレンジ」本文
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ちゃいくら(課題17:憎しみの一瞬)
「ちゃいくら」人物表
「ちゃいくら」本文
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論文盛りました?(課題16:裏切りの一瞬)
「論文盛りました?」人物表
「論文盛りました?」本文
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一日一善、ときどき変態(課題15:男と女)
「一日一善、ときどき変態」人物表
「一日一善、ときどき変態」本文
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ペテン師のレクイエム(課題14:再会)
「ペテン師のレクイエム」人物表
「ペテン師のレクイエム」本文
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オレスタイル(課題13:古痕)
「オレスタイル」人物表
「オレスタイル」本文
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ウォーター・ビジネス(課題12:雨)
「ウォーター・ビジネス」人物表
「ウォーター・ビジネス」本文
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九尾の狐とディープフリーズ日本列島(課題11:雪)
「九尾の狐とディープフリーズ日本列島」人物表
「九尾の狐とディープフリーズ日本列島」本文
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ホームレスのライフノート(課題10:葬式)
「ホームレスのライフノート」人物表
「ホームレスのライフノート」本文
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シンデレラは嘘をつきすぎてる(課題9:結婚式)
「シンデレラは嘘をつきすぎてる」人物表
「シンデレラは嘘をつきすぎてる」本文
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18歳以上閲覧できません(課題8:不安)
「18歳以上閲覧できません」人物表
「18歳以上閲覧できません」本文
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ミイラ男は焼肉の秘密を知っている(課題7:宿命)
「ミイラ男は焼肉の秘密を知っている」人物表
「ミイラ男は焼肉の秘密を知っている」本文
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アフター・ネグレクト(課題6:死)
「アフター・ネグレクト」人物表
「アフター・ネグレクト」本文
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お父さんもう来ないで(養成講座課題:別れ)
「お父さんもう来ないで」人物表
「お父さんもう来ないで」本文
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紙袋の女(養成講座課題:出会い)
「紙袋の女」人物表
「紙袋の女」本文
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はしるかける(養成講座課題:魅力的な叔父さん)
「はしるかける」人物表
「はしるかける」本文
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奥付
奥付

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プライバシー・ゼロの国(課題20:記者)

「プライバシー・ゼロの国」人物表

 人 物

飛田勢至(とびたせいじ)(40)フリーライター

新条冴子(40)月刊『リベルテ』副編集長

雪原此方(こなた)(28)警備局総合情報分析室技術職


「プライバシー・ゼロの国」キャラクター表

飛田勢至40)は名古屋出身。フリーのジャーナリスト。大手新聞社の社会部記者時代は、調査報道で数々の賞を受賞。原発事故を契機に新聞社の報道方針とそりがあわず退社。現在は主に総合雑誌『リベルテ』等に寄稿。

 

住まい兼事務所は雑居ビル屋上のプレハブ小屋。趣味は喫煙。睡眠不足のストレスを煙草で補うヘビースモーカーである。

 

飛田のモットーは、体制や社会権力におもねることなく真実の報道を貫くこと。3ヶ月に1回は特ダネをあげること。言動はぶっきらぼうで攻撃的だが、緻密で粘り強い取材に基づいた飛田の文章にはファンも多い。

 

但し、己の信念に従って行動しすぎる面があり、周囲との摩擦が絶えない。大手マスコミには彼を忌み嫌う者も大勢いる。

 

最近は、『リベルテ』の副編集長で大学時代同級生だった新条冴子(40)との仕事が多い。気心の知れた仲だが、冴子は飛田の自由奔放な姿勢と人気に嫉妬している。


「プライバシー・ゼロの国」本文

○飛田の家・外観(朝)

  都心の雑居ビル屋上のプレハブ小屋。

  新条冴子(40)、小屋の扉を開ける。

 

○同・室内(朝)

  本が乱雑に積まれている。

  飛田勢至(40)、PCに向かい遠隔操作ウィルス事件の記事を入力。

  冴子が来る。

冴子「おはよう飛田君。朝から仕事?」

飛田「徹夜だよ」

冴子「ちょっと話したいことがあるんだけど」

飛田「手短にな」

冴子「パソコンの電源切ってもらえる?」

飛田「は?」

冴子「携帯の電源もお願い」

飛田「冴子、どうした?」

冴子「他に聞かれちゃまずい話なの」

  飛田、PCの電源を落とし煙草を吸う。

飛田「『リベルテ』の副編集長様に頼まれたんじゃ仕方ないな」

冴子「珍しく素直じゃない」

飛田「突然電源落とされたら困るだけだよ」

  冴子、鞄から書類を出す。

冴子「これ読んでみて。匿名の情報提供」

飛田「日本国政府が行っている無差別スパイ活動に関する告発?」

冴子「最初は私も鼻で笑ったわ」

飛田「普通に考えれば、悪戯か罠だろ」

冴子「2通目はこれ。添付ファイルつき」

  冴子、書類の束を出す。

飛田「公安の機密文書じゃないか。こんなに」

冴子「パスワード解除するまで丸一日かかったんだから。それでもごく一部だって」

飛田「一般市民の通話履歴、インターネットのアクセスログの無差別大量収集。これが事実だとしたら、大変なことになるぞ」

冴子「飛田君、今日、時間ある?」

飛田「暇なら徹夜で書いてないぜ」

冴子「この情報提供者と面会の約束があるの」

飛田「何だ? 2人で初デートか?」


冴子「残念。飛田君もご指名よ」

飛田「趣味が悪いな、そいつは」

  飛田、ジャケットを羽織る。

 

○ホテル・外観

  外資系の高級三ツ星ホテル。

 

○同・レストラン・店内

  飛田、煙草を吸っている。冴子はコーヒー。飛田の灰皿は吸殻だらけだ。

飛田「おい、もう1時間は待ってるぞ」

冴子「向こうも慎重でしょ」

  雪原此方(28)、数独のパズル雑誌を持って、店内をゆっくり歩いてくる。

冴子「彼じゃない?」

飛田「まさか、あんな若い奴が?」

冴子「だってほら、目印のパズル雑誌」

飛田「こっち来るぞ、合言葉」

冴子「ホテルのお食事はいかがでした?」

雪原「……最悪です」

  雪原、飛田と冴子を見つめる。

雪原「では、僕についてきてください」

  飛田と冴子、席を立つ。

 

○同・雪原の部屋

  衣服や皿が散らかった部屋。飛田と冴子、椅子に座る。

  雪原はベッドに座る。

冴子「お名前は雪原此方さんでいいのね?」

雪原「携帯電話持ってますか?」

飛田「ああ」

雪原「バッテリー抜いてもらえます?」

  飛田、携帯のバッテリーを抜く。

  冴子、バッテリーが中々抜けない。

雪原「バッテリー抜けないなら、電源を切って奥の冷蔵庫に入れて下さい」

冴子「冷蔵庫?」

雪原「会話が聞き取り辛くなります」

  冴子、冷蔵庫に携帯を入れる。

飛田「すごい警戒ぶりだな」

雪原「遠隔地から携帯を操作して、盗聴器にすることなんて簡単ですからね」


  冴子、席に戻り、録音機を出す。

冴子「話、録るけど大丈夫?」

雪原「僕の話を記事にする時はネットに一度もつないでいないパソコンを使って下さい」

飛田「それもセキュリティ対策か?」

雪原「ネットにつないでいないパソコンに侵入するのは、僕らプロでも難しいんです」

冴子「いいでしょう。飛田君、質問お願い」

飛田「まず職歴について確認したい。警備局の総合情報分析室勤務というのは本当か?」

雪原「表向きは民間企業のSEですけどね」

飛田「何故機密情報にアクセスできた?」

雪原「僕は警備局のサーバの保守を任されてるんです。保守のために与えられたアクセス権限で、多くの秘密を見てきました」

飛田「機密文書をうちらに流した目的は?」

雪原「これ以上非合法な諜報活動を見過ごすわけにはいかなった。僕自身それに加担していることにも耐えられませんでした」

飛田「本当にそれだけの理由で命を危険にさらすような真似するか?」

雪原「集めた情報を利用して、時には無実の人を罪に陥れたり、人の人生をぐちゃぐちゃにかき回す様子も見てきました」

飛田「よくあるよな、不審な事故死や自殺は」

雪原「しかも工作員達は、自分が起こした事件や事故を手柄のように自慢するんです」

飛田「組織の中で感覚が麻痺するのはよくあることだ。けど君の行動は命取りになるぞ」

雪原「倫理的一線を越えていると何度か上司に訴えました。そんな判断をするのはお前の仕事じゃないと毎回一蹴されましたが」

飛田「いい上司だ。模範解答じゃないか」

雪原「この国に個人のプライバシーなんてない。誰かが公表する勇気を持たない限り、情報収集と監視の仕組みは膨張し続けます」

飛田「我が身を犠牲にしても構わないと?」


雪原「誰かを恐れたまま、納得できない仕事をし続けるのは嫌だった。僕は恐怖より、良心に基づいて行動することを選びました」

飛田「青い。けど本物の青さだ。応援するよ」

冴子「一人で公表しようとは思わなかったの?」

雪原「発表したら人の身に危険の及ぶ情報はどれか、僕にはわかりません。プロの目で情報を選別し、記事に変えて欲しいんです」

飛田「俺なんてマスコミの中じゃ不良だぞ」

雪原「僕『リベルテ』の愛読者なんです」

冴子「そうなの、嬉しいわ」

雪原「特に飛田さん、あなたのファンでした。メールの返信はもらえませんでしたが」

飛田「持ち上げても英雄にはしないぜ」

雪原「裏切者と罵倒されるなら光栄です」

飛田「雪原、お前を刑務所には絶対入れない。約束だ、情報は必ず記事にする」

  冴子、不満げな顔で録音機をしまう。

 

○飛田の家・中(夜)

  飛田、新品のノートPCで記事を入力。冴子、ボトルの水を飲みつつ現れる。

冴子「おつかれ。あの日からずっと仕事?」

飛田「毎日一時間しか眠れないよ」

  冴子、灰皿に積もった吸い殻を見て、

冴子「重労働ね。煙草、控えたらどう?」

飛田「それより、記事の掲載許可は下りたか?」

冴子「まだよ。警備局に裏取り中」

飛田「記事が出る前に告発の事実がばれたら雪原の身が危ない。急かしてくれ」

冴子「急がせてるわよ。弁護士の内容チェックもあるし、もうちょっと待ってよ」

飛田「一流雑誌の編集部は毎度色々大変だな」

冴子「あとね飛田君、悪いんだけど、編集部から記者が一人加わることになったの」

飛田「何だそれ」

冴子「牧野さん。知ってるでしょ」

飛田「ああ。愛想がいいだけの三流記者だろ」

冴子「うちの社内でも揉めてるんだから。上に通すにはベテラン記者の参加が必要なの」

飛田「雪原は俺と冴子を信頼して情報提供してくれたんだ。今の状況で雪原が知らない第三者が入るのはまずいって」


冴子「彼には私から話をつけておくから」

  冴子、記事の用紙を集める。

飛田「おい、何のつもりだ?」

冴子「記事は一旦うちの編集部で預かるから。飛田君、後は私達に任せて、休んだらどう?」

飛田「記事の権利は契約で守られてるはずだ」

冴子「パソコンもちょっと借りたいんだけど」

飛田「だめだ。データはそこにしかないんだ」

冴子「引き継ぎよ引き継ぎ」

  と、PCを引っ張る。飛田と取り合い。冴子のボトルの水がPCにかかる。

冴子「あ、ごめん、データ大丈夫?」

  飛田、PCを操作するが反応しない。

冴子「ほんとごめん。後で弁償するわ」

  飛田、胸ポケットから煙草を取り出す。

飛田「冴子には冴子の事情があるのはわかるよ。ただ今回は危ない山だ。俺も一歩踏み出して、自分が正しいと思うことをする」

  と、煙草の箱の中からUSBを出す。

冴子「それ、もしかして?」

飛田「バックアップ取ってないわけないだろ」

  と、USBメモリを指で回転させる。

飛田「この記事は俺が書く。雪原との約束だ。『リベルテ』で記事にできないなら、他の出版社に持っていく」

冴子「それはだめ。卑怯じゃない」

飛田「先に卑怯なまねしたのはどっちだ? 後3時間待つ。頼む、上の承認取ってくれ」

  冴子、早足で部屋を立ち去る。

 

○喫茶店・店内(朝)

  飛田、モーニングを食べている。

  帽子を目深にかぶった雪原、隣に座り、タブレットを差し出す。

  『リベルテ』電子版だ。

  『プライバシー・ゼロの国 無差別大量情報収集の真実』とある。

雪原「モーニングセットおいしいですか?」

飛田「最悪だな。ただ少しはましになった」

  飛田、煙草に火をつける。(了)