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【4】 変化する孤独

さっきから気になっていたのだけど、森の木が寄り添ってきて、歩くのを邪魔してくる、なぜかしら?
遠くの木の上で、別のガラスのハトがパタパタして、光をさえぎったりもしてる、そんなに迷子にさせたいのかな?
小さな岩が、足元にコロコロ近寄ってきたせいで、つまづきかけたりもした。なんか、この森、変。私の邪魔してばかりいるみたい。
気になったから、コロコロ近寄ってきた、小さい岩をつかまえてみた。すると、グニャグニャしながら逃げようとする。
「どうして、逃げるの?」
『私にかまわないで~、離して~』
かわいそうになって、力をゆるめたけど、なぜか、逃げようとしない。
「もしかして、一緒に遊びたいの?」
『やめて~、仲良くしたら、禁止令が守れなくなる~』
また、禁止令か。
「仲良くしたら、ダメなの?誰がそんな命令したの?」
『話しかけないで~、ヤダヤダ~』
小さな岩が、狐のような姿に変わっていきはじめ、泣き叫んでいた。
「あなた、狐さんだったの?」
驚いて手を離すと、狐さんは、ピョーンと、草むらの中に隠れた。ガサゴソと、葉っぱが揺れ動いているだけだった。

遊びたければ、仲良くすればいいのにね~。変なの。


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最終更新日 : 2014-02-02 12:54:06

【5】 禁止令

日差しが、また、私めがけて光っている。
「ハトさん、禁止令って何なの?」
『よくわからな~い』
深く考えられないらしい。
「岩のおじちゃ~ん、禁止令って何なの~?」
返事がない。集中してるからかな。
岩に向かって、手を使って遊んでみた。
「ハンド君、ハンド君、また、遊んでほしいみたいよ」
ガラスのハトが、私の手、ハンド君にスポットライトをあてて、その影が森の中をゆれ動く。影の動きに合わせて、近くの葉っぱも揺れ動く。
「ぴょっこんぴょっこん、ぽんぽんぽん」
ハトの光が渦をまき、葉っぱの彩りが、ハンド君の周りを着飾っていき、みんなで音と光の彩りを楽しんでいる。
岩が、クスクスと音をたてて揺れ始めた。
『わかった、わかった、やめてくれ~、ぽんぽんぽん』
岩の頭がパカッと割れて、檻の中で小さなハートが踊ってる。
「ぴょっこんぴょっこん、ポンポンポン」
みんなで、心ひとつになって踊っていく。
「ぴょっこんぴょっこん、ぽんぽんぽん」
みんなの気持ちが、高ぶってきたとき、突然、大地がゴゴゴ・・・と揺れ始めた。
葉っぱが、あわてて逃げて行った。
ガラスのハトも、急に光を失った。
岩も、頭を閉じはじめ、小さなハートの動きが止まっていく。

『禁止令は、王様が私たちに課した試練、この試練を味わうことで、ハートが成長していくんだ、むしゃむしゃ』
岩の中から、低い声で、そんなつぶやきが聞こえてきた。
「むしゃむしゃって、試練を味わってるの?それって、おいしいの?」
『苦しいけれど、おいしい』
「なぜ、苦しいの?」
『檻の中のハートが、遊ぼうとして、抵抗するからだ』
「変なの、ハートのままに、自由に遊んで生きればいいのに」
『何を言っているのかわからない、ハートは檻の中でじっとしているものだろう?』
考え方は、人それぞれだから、どれが正解ってないのだろうけど、何か変だな~。
「禁止令を守らなかったら、どうなるの?」
『闇に落ちていく、らしい』
「闇に落ちたらどうなるの?」
『傷だらけになって死ぬ、らしい』
「らしい、らしい、って、実際に、闇に落ちた人を見たの?」
ゴゴゴゴ・・、岩が揺れながら、また、沈黙してしまった。
大地の揺れもおさまり、また、暗い闇の静かな森に戻っていった。

これが、この国の王様が望んでいることなのかしら?変なの。


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最終更新日 : 2014-02-02 15:41:30

【6】 遠くのお城

禁止令って、そんなにいいのかな。試練ってそんなにおいしいのかな。私も、ちょっと、味わってみようかしら。
「どうすれば、禁止令をもらえるの?」
岩は、沈黙を続けている。
再び、サンサンと輝き始めた、ガラスのハトさん聞いてみた。
「どうすれば、禁止令をもらえるの?」
『知らな~い、王様に聞けば~』
「どうすれば、王様に会えるの?」
『あそこに行けば、いいんじゃない?』
ガラスのハトが、遠くを指し示しているけれど、森の向こうだから、見えない。
「見えないんだけど~」
『なぜ、見えないの~?私には、見えてるのに~』
そりゃぁ、あなたの位置からは、よく見えるでしょうに。相手の立場にたって、深く考えていないんだな~。
『私の上に上りなさい』
沈黙していた岩が、ゴゴゴ、っと、岩の手を伸ばして、私を岩の上に乗せてくれた。
寝ていたんじゃないんだ。手があるんだ。ビックリ~。
高い視点から見ると、森のはるか彼方の高台に、ブロックのようなお城が見えた。
「遠いね~、どう行けばいいのかしら」
『ゴロゴロ行けばいいじゃないか』
岩が、誇らしげに言った。
「私は、岩じゃないんだから~」
岩はまた、沈黙してしまった。
『その、種、くれたら、近道を教えてあげるよ』
どこからか、声がした。
ガラスのハトが、その声がする方向を照らした。
はずかしそうに、小さな木が揺れて、つぶやいている。
『その、ポケットに入っている種、ちょうだい』
ポケットをさぐってみた。あぁ、匂いがいまひとつの花の種か。
まだ、持ってたんだ。忘れてた。
『とてもいい匂い』
「そうかな~、いいよ、あげる」
小さな木がユサユサと揺れたかと思うと、狐の姿に変わっていった。狐は種を受け取ると、うれしそうにとびまわった。
「なんだ、さっきの狐さんが化けてたのか~」
自分の正体を知られてしまった狐は、あわてながら、また小さな木に変身して、少し離れて様子を見ている。
「じゃぁ、近道、教えてね」
小さな木はゆらっとうなづき、うれしそうに、ゆらゆら揺れながら、歩いていく。でも次第に、たくさんの木の中にまじっていき、どこに行ったかわからなくなってきた。
「お~い、狐さ~ん、どこに行ったの~?」
横にいた小さな木が、突然つぶやいた。
『僕を見分けるためには、この光が必要なのかも』
あ、そばにいたんだ。「この光」って、ガラスのハトさんの光のことかな。
「ハトさん、この小さな木を照らし続けることはできる?」
『う~ん、私も、その種くれたら、照らしてあげてもいいけど~』
「あなたも、この種の匂いが気に入ったの?」
『そういうわけじゃないけど、狐さんが喜んでいたから~』
「いいよ、あげる」
ガラスのハトに種をげると、うれしそうに飛び回り、虹を作って道の行く先を照らしてくれた。
『わたしは~、虹の光~』
調子にのって、飛び回っていたら、岩にぶつかりそうになっって、急に光を失った。
『この岩は、嫌い』
岩から離れて、小さな木の側に逃げていった。岩の中の闇に取り込まれ、また輝けなくなることが怖いのだろう。
小さな木の側で揺れながら、再び虹色に輝き始めた。
岩のおじちゃんが、何を思ったか、グリグリっと岩の手を伸ばして、虹をさわろうとした。

すると、また虹が消えていく。
「あの虹にさわりたいのなら、ガラスのハトさんを助けてあげると、さわれるかもよ」
『どう、助ければよいのだ?』
「岩の陰でも、光が届くように、岩をパカっと開いてくれるかな~」
『え?岩を開く?そんなこと、できるわけがない』
「さっき、おおさわぎしたら、岩の頭が開いたじゃない」
『あれは、偶然だ』
「じゃぁ、もう一度思い出してみて。どんな気持ちの時に、岩が開いたか」
『あの時は、楽しくて、とてもいい匂いがしたかな』
「どんな匂い?」
『その、ポケットに入っている種の匂いと同じかな』
「じゃぁ、この種あげるから、協力してくれる?」
長い沈黙が続いた。また、機嫌が悪くなったのかな・・。
『いいよ』
ボソっと、岩がつぶやいた。ゴゴゴ、と岩の手が伸びてきた。岩に種をあげると、しばらく沈黙した後、中から声が聞こえてきた。
『ぴょっこんぴょっこん、ポンポンポン』
岩が揺れ始め、岩の頭がパカっと割れて、檻の中のハートが踊っている姿が見えた。
あっけにとられて、じっと見てると、また、岩は、閉じてしまった。
『一緒に、ついていこう。必要な時に、岩は開けるから。』
私を、ひょいと岩の上に乗せ、ゴゴゴっと、音をたてながら、動き出した。
「ちょっと、待って、あの虹の光を追いかけていくのよ」
『わかった』

小さな木が進んでいく方向を、ガラスのハトが作り出した虹の光が照らしていく。その後ろを、岩のおじちゃんがゴゴゴ・・と歩いていく。私を岩の上に乗せて。
「ぴょっこんぴょっこん、ポンポンポン」
『ぴょっこんぴょっこん、ポンポンポン』

大地は、時々揺れるけれど、みんな、それ以上の、笑いの揺れを感じてるから、大丈夫みたい。


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最終更新日 : 2014-02-02 15:44:36

【7】 冒険の始まり

頭の中に、天真爛漫なハートを閉じ込めている、岩のおじちゃん。
仲間に入りたいのに、きらわれることばかりしてる、孤独で小さなキツネさん。
深く考えなくて、天真爛漫なお日様のふりしてる、ガラスのハトさん。
そんな同行者と共に、王様のお城に向かっていくことになった。でも、道の先に進むためには、王様が命令した禁止令を守らないと、先に進めないようになっていた。

「素のままでいるな」という禁止令を守っている森では、人の姿のままだと通れなかった。岩のおじちゃんの中に入ることで、通ることができた。

「子供であるな」という禁止令を守っている森では、はしゃいでいると通れなかった。みんなまじめに一列になって、行儀よくしていると、通ることができた。

「成長するな」という禁止令を守っている森では、障害物を乗り越えようとすればするほど、通れなかった。無理に努力せず、あきらめた途端に、通ることができるようになった。

「成功するな」という禁止令を守っている森では、迷子になったり、ケガをしたり、何をやっても肝心なところで失敗してしまう。開き直って「わざと迷子になってやる!」と、むちゃくちゃに動きまくったら、すんなりと通れた。

「実行するな」という禁止令を守っている森では、動こうとすればするほど、身動きがとれなくなってくる。何もせず、考えごとをしながら待っていたら、いつの間にか通り抜けていた。

「重要な存在になるな」という禁止令を守っている森では、それぞれの役割を果たそうとすればするほど、何もできなくなっていった。あきらめて、周りの風景になじんでいたら、いつの間にか通り抜けていた。

「仲間になるな」という禁止令を守っている森では、なぜかケンカするよう仕向けられ、仲たがいしてしまい、それぞれが自主的に行動することで、通り抜けられた。

「信用するな」という禁止令を守っている森では、それぞれが自主的に行動していることを疑うように仕向けられ、信用せず、何事も事実関係を確認し合うことで、通り抜けられた。

「健康であるな」という禁止令を守っている森では、ケガをしたり、病気になったりすることが多くなり、そのたびに、森の妖精たちに助けられた。健康じゃないし、このまま、この森にいれば、身の回りの面倒を見てくれるので、旅をやめようかと、心の病にかかったら、ポンと、森の外に放り出されてしまった。

「考えるな」という禁止令を守っている森では、これからどうしよう、と考えれば考えるほど、その考えを打ち消す出来事に遭遇した。もう、何も考えず、ただ、感じるままに動いていくと、いつの間にか通り抜けられた。

「感じるな」という禁止令を守っている森では、どこに向かっていくか、感じることさえできなくなった。好きな匂いもわからず、視界もさえぎられ、音も聞こえず、五感をふさがれた。仲間の存在すら感じられない中で、感情も失われ、ただ、無になることで、いつの間にか通り抜けていた。

「存在するな」という禁止令を守っている森では、自分自身が生きているのか、死んでいるのか、それさえもわからない状態の中で、ただ、この世界と一体になって「自分」という存在が消えていった。森を抜けたのか、森たちと一体になって歩んでいるのか、その区別さえもわからなくなってきた。というより、区別する必要さえも感じなくなってきた。

たくさんの心の試練を味わってみた。
でも、どれも、つまらなかった。
だって、私には、もともと、王様からいただいた、禁止令がないから。
みんな、禁止令を持っていない私を不思議がっていたけど、私はこのままでいいと思っている。それじゃダメなのかしら?


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最終更新日 : 2014-02-02 14:38:38

【8】 王様の世界

やっとのことで森を抜けたら、王様の城が目の前にそびえたっていた。
それは、灰色で、四角い箱で、何の特徴もなくって、つまらない感じ。
ちょっと、落書きをしてみたら、門番に怒られちゃった。
あ、これって、さっき、どこかの禁止令で体験したな~。

門番につかまって、王様の前につれていかれたのだけど、王様は、宙を見つめながら、ぶつぶつつぶやいていて、私の姿に気づいてないみたい。
『あ~、その禁止令の苦しみは、共感できるな~、乗り越える姿が、美しい~』
もしかして、国民が味わっている禁止令を、王様も心の中で味わっているのかしら。
「あの~」
声をかけても、まったく、見向きもしない。
「わたしが見えませんか~?」
目の前に行っても、まったく見えていない感じ。
「どうして、無視するの~?」
こんなに、自己PRしてるのに。
「なんか、悲しくなってきちゃった」
あれだけ、禁止令の試練を乗り越えてきたのに、なぜか、涙が、ほろりと流れてきた。
『おや?こんなところに、おいしそうな心があるじゃないか』
「あ、気づいてくれた~」
『あれ?お前には、禁止令がないように感じるのだが、変だな~』
「そうなんです。禁止令が欲しくて、ここまで来ました」
王様は私をジロジロながめ、私が体験した森の中のできごとを、ぶつぶつとつぶやきながら、不思議そうに見ていた。
『そうか、君は、そんな存在なのか、、、』
王様は、少し困った顔をしていた。

『じゃぁ、君にぴったりな禁止令は、、、これだな』
私の姿が、だんだん消えていく。
『この国に存在するな、だな』
「あ~、これが、私の禁止令か~。でも、何もおいしくないな~。」
消えかけていくカラダのポケットから、小さな種が、ぽろっとこぼれた。その種の中から、かすかに声が聞こえてくる。
『ぴょっこんぴょっこん、ポンポンポン』
突然、私と王様のカラダが、宙を舞い、暗闇の中に放り出された。そこは、小さなハートが輝いている、岩の中だった。 そこには、小さな木があって、その枝が私と王様を包み込み、岩のさけめから、グングン空へ上っていった。
虹色の光が、私と王様を包み込み、まるで星空のように輝いていた。

『これは、いったい、何が起きたのだ?』
「う~ん、よくわからないけど、仲間が、遊んだだけかな」
『禁止令を守っただけでは、こんなことはできないはずだ』
「たぶん、禁止令を守らなかったんじゃないかな」
『禁止令を守らずに、こんなことができるのか?』
「心は、自由が一番だからね」
『心の自由だと?そんなことをすれば、世界の秩序はなくなり、王国は滅びるではないか』
「そんなの、やってみないとわからないじゃない」
『やってみて、ダメでした、じゃ、元に戻せないだろう』
「大丈夫。ここは、どうも私の王国みたいだから。王様の心のままに、好きなことやってもいいよ」
『お前の王国だと?ん~む、、、』

しばらくすると、王様のカラダが、虹色に輝きだした。
『お~、これは、これで、なかなか、、、』
次第に王様の姿がバラバラになっていき、いろんな星にちらばっていった。
「あらら、そんなにたくさんの星に行ってみたかったのね。」
しばらくすると、銀河の渦ができ、星たちが集まってきて、元の王様の姿に戻った。
「おかえりなさい。星の旅は、どうだった?」
『そうか、そういうことだったのか』
王様は、すっきりした笑顔で、私を見つめていた。
『そうだな、今は、お前の心の王国にいるんだったな。それもよかろう。』
そう言うと、王様のカラダがボロボロと崩れていき、かけらが集まり、最後は、小さな種だけになった。

「え~、どうなっちゃったの?そんなに、種になりたかったのかしら?」
私は、その小さな種を手に取り、そっと、匂いをかいでみた。
「わぁ~、いい匂い~」
目を閉じ、その匂いの世界に入り込んでみた。まるで、虹色の銀河をただよう感じがして、いつの間にか眠りについてしまっていた。


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最終更新日 : 2014-02-02 15:15:04


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