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   目  次

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   まえがき

 

第1章 上がる電気料金

     地域独占の電力会社の成立ち /規制部門と自由化部門の電気料金格差 /

     電気料金値上げの理由

 

第2章 電源別コスト算定の前提条件

     試算モデルの条件 /原発特有の問題 /原発特有の試算条件項目 /

              廃炉に係わる問題 

 

第3章 電源別コストの試算結果

     2010年版モデルプラントの試算条件 /2004年版と2010年版の試算結果

 

第4章 原発の発電コストを再試算

     試算モデルの現実に即した入力条件 /再試算結果 /既設原発の発電コスト

 

第5章 原発ゼロに向かって

     電気料金値上げの実相 /原発再稼働に固執する理由 /

              エネルギーと会計のブラックホール /責任を持ったエネルギー政策

 

   あとがき

 

   参考文献

 


まえがき

  福島第一原発の悲惨な事故を踏まえ、政府(エネルギー・環境会議コスト等検証委員会)は、平成23年12月にコスト等検証委員会報告書で各発電方式ごとのコスト試算を公表しました。コスト等検証委員会は、仮定した試算モデルから水力、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力などの発電コストの試算結果を公表しました。これを受けて多くの人が、コスト等検証委員会報告書を熟読し、評価する意見、妥当な意見、原子力に与している意見、太陽光発電に与している意見など様々な意見がネット上に表明されました。

 その後、平成25年度になり電力各社が、経産大臣の電気料金値上げ認可を得たので、規制部門たる家庭の電気料金を値上げしました。また、高圧・特別高圧の電気を使っている自由化部門代表の工場やビルなどの電気料金も先に値上がりしました。いずれも電気料金値上げの理由が、電力各社とも原発の長期停止による代替えの火力発電の燃料費高騰を挙げています。更に、関西電力は平成26年12月17日に前回と同じ理由で、電気料金値上げの意向を表明しました。このような状況を受けて、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力の各発電コスト比較を思いつきました。発電コストの比較は、平成23年のコスト等検証委員会報告書が参考になります。これによれば、2010年モデルで原子力8.9円/kwh以上、石炭火力9.5円/kwh~9.7円/kwh、LNG火力10.7円/kwh~11.1円/kwh、石油火力22.1円/kwh~23.7円/kwhで、原子力は無事故で動かせれば安そうです。 

 筆者は、本当に原子力の発電コストが安いか、コスト等検証委員会報告書の理解に努めました。報告書は難解ですので、モデルプラントの試算条件を平易に書くことで、自分自身が理解できるよう心掛けました。試算モデルには2010年モデル、2020年モデル、2030年モデルの3種類があります。ここでは、2012年から2013年にかけて電気料金が値上げされた理由を探っており、直近の2010年モデルを使います。

 福島第一原発の事故から3年目に入り、コスト等検証委員会報告書の原発特有の項目(事故リスク対応費、政策経費、追加的安全対策費)の内容が大幅に変わりました。その為、原発の発電コストの再計算が必要です。更に、原発のモデルプラントの試算条件に、廃炉処理費用の項目があります。この廃炉処理費用680億円の見積り根拠は、平成23年のコスト等検証委員会報告書から確かめえず、廃炉作業が先行している東海原発の廃炉費用見積りから推定しました。その結果は、廃炉費用が建設費用にほぼ匹敵する驚きの費用です。原発特有の項目の費用見直しと廃炉費用を考慮すると、50基の原発が40年間無事故で設備利用率70%でも一番安い電力は石炭火力、二番目に安い電力がLNG火力、三番目に安い電力が原子力です。

 また、既設原発の発電コストは安いと思い込み再稼働を叫んでいますが、発電コストを推算すると無事故で設備利用率が70%でも一番安い電力は石炭火力、二番目に安い電力がLNG火力、三番目に安い電力が原子力です。既設原発を再稼働させれば赤字発電するだけなのに、経済性を無視して再稼働を叫んでいます。原発の発電コストには、何か特別な問題が潜んでいます。

 一方、電力各社が電気料金の値上げ理由に挙げている火力発電の燃料費高騰ですが、発電コスト試算シートの為替レートを90円、95円、100円と変動させましたが、もともと燃料費の安い石炭火力と熱効率の高いLNG火力は、さほど発電コストに影響しません。試算結果は、電力会社の値上げ理由と真逆になりました。

 福島第一原発事故で原発の安全神話は崩壊しましたが、同時に原発の設備利用率低下が発電コスト構造を露呈しました。福島第一原発事故により、原発は金の卵になれず、放射能の卵になりました。原発ゼロは、今や国民大多数の意見です。原発以外の電源で発電すれば、安価な電気料金となり、かつ、末代までの放射能問題が避けられます。


第1章 上がる電気料金

 地域独占の電力会社の成立ち

 電力会社の地域独占は、戦争遂行の必要性から生まれました。さかのぼること昭和13年、国家総動員法と同時に電力管理法が施行され、国内全ての電力施設を国が接収し、新たな日本発送電株式会社に発電と送電設備を一元統制化し、配電事業を9ブロックに分割しました。戦後、日本発送電株式会社が解体され、9配電会社にそれぞれ発電設備を移管することで、発電から送電・配電までを一つの会社が一環して行う、いわゆる発送電一環体制を確立するとともに、9配電会社を地域独占の電気事業会社として再編されました。ここに、電力会社の地域独占が誕生し、昭和63年には沖縄電力が民営化し、現在の10電力会社体制になりました。

 電力の小売事業は、電気事業法による参入規制によって、地域の電力会社に小売り供給の地域独占が認められてきましたが、1995年からの規制緩和により、現在では家庭用等規制が残る部分を除いて、自由化されています。これにより原則、契約電力50kw以上の特別高圧または高圧需要家、いわゆる工場・大規模なビル等は、地域の電力会社以外に新電力と称する特定規模電気業者から電気を購入できるようになりました。それ故に10電力会社は、特別高圧または高圧需要家において新電力と電気料金の競争をしています。

 

 規制部門と自由化部門の電気料金格差

 地域の電力会社は、家庭などの電気料金規制部門と工場・大規模ビル等の電気料金自由化部門の両方に電気を販売しています。その結果、次のような状況になっています。

 

  東電利益9割は家庭から…電力販売4割弱なのに←2012年5月23日の読売新聞から

 電気料金の値上げを巡って、東京電力が経済産業省に提示した料金の収益構造の概要が22日分かった。それによると、2006~10年度の5年間の平均で電気事業の利益の9割強を家庭向けなど 「規制部門」 から稼いでいる。家庭向けの料金制度は、発電コストを積み上げた原価を元に料金が決まるが、算定方法の見直しを求める声が改めて強まりそうだ。

 23日に開かれる 「電気料金審査専門委員会」 の第2回会合で提示される資料によると、東電が販売した電力量2896億キロ・ワット時のうち家庭向けは38%、大口向けが62%だ。売上高でみると、電気事業収入4兆9612億円のうち家庭向けは49%、大口向けは51%とほぼ同じ比率だ。だが、1537億円の利益のうち家庭向けは91%、大口向けは9%になっている。つまり、電力量で4割弱を販売している家庭向けから9割の利益を稼ぎ出している構図だ。

 東電管内は、ガス会社や石油元売りなどが特定規模電気事業者(PPS=新電力)として電力小売りを手掛けており、大口向け市場は比較的競争が激しい。値下げを強いられるため、家庭向けで利益を確保しようとしていたとみられる。

 

 つまり、家庭は電気料金が値上げされても否が応でも地域の電力会社からしか電気を購入できないが、自由化部門の需要家は、新電力から電気を購入する手段がとれます。その結果、東京電力が電気料金値上げ後に多くの顧客を失い、大半の顧客は新電力にシフトしています。たとえば、神奈川県は2013年4月以降、272ある県の施設のうちおよそ90%に当たる244の施設で、東京電力以外から電力の供給を受け、これによって電気料金は東京電力から供給を受けた場合に比べて、およそ1億5000万円の削減を見込んでいます。また、東京都世田谷区はちょうど1年前、111カ所の区施設で使う電気の購入先を東京電力から電気を買うのをやめて、2012年度は年間6650万円削減を見込んでいます。要は、2012年4月に大口料金を値上げした東京電力は、同年度中に11年度の10倍に相当する7000件の顧客を失いました。2013年度に入っても、7月1日までにさらに3500件が流出、大半は新電力にシフトしたとみられます。更に、自民党議員の河野太郎氏のブログによりますと、霞が関の各省は2010年度から東京電力から電気を購入せず、新電力から電気を購入しています。

 

 電気料金値上げの理由

 平成25年度になり電力各社は、経産大臣の電気料金値上げ認可を得たので、家庭の電気料金を値上げしました。平成25年4月に関西電力(9.75%)、九州電力(6.23%)、引き続き平成25年9月に東北電力(8.94%)、四国電力(7.80%)、北海道電力(7.73%)が値上げしました。なお、東京電力は平成24年9月に8.46%の値上げをしました。その家庭の電気料金値上げに先行し、電力各社とも大口需要家の電気料金を値上げしました。大口需要家と家庭の電気料金値上げの理由は、電力各社のホームページで見ることができます。次に、関西電力と九州電力の大口需要家の電気料金値上げの理由、及び東京電力と北海道電力の家庭用電気料金値上げの理由を記載します。

 

 (1)関西電力電気料金値上げの理由

 <火力発電比率の高まりにより、火力燃料費が大きく増加しています。>

 原子力プラントの停止にともない、発電単価が高い火力発電の比率が高まったことにより、火力燃料費が高まったことにより、火力燃料費が大きく増加し、東日本大震災前の平成22年度実績と比べると、平成25~27年度の3ヶ年平均で5,592億円増加すると見込んでいます。

 (2)九州電力電気料金値上げの理由

 <燃料費等の大幅な増加により、経営収支が大変厳しい状況です。>

 原子力発電所の再稼働の遅延に伴う燃料費等の増加により、平成23年度は2,300億円の赤字となりました。また、平成24年度は、緊急経営対策として1,500億円規模の削減を現在実施しているところですが、3,700億円程度の赤字となる見通しです。

 (3)東京電力電気料金値上げの理由

 <火力発電の燃料費などの大幅な増加>

 当社は、火力発電の燃料費などの大幅な増加にともない、2012年9月1日から、ご家庭や商店・事務所などで電気をお使いいただく低圧のお客さまの電気料金を、平均8.46%値上げさせていただきます。

  (4)北海道電力電気料金値上げの理由

 <原子力発電所の長期停止に伴い火力燃料費が大幅に増加>

 当社は、原子力発電所の長期停止に伴い火力燃料費が大幅に増加し、財政状況が急激に悪化したことなどから、本年4月24日、規制部門のお客さまの電気料金につきまして、平均10.20%の値上げを申請いたしました。

 その後、国による審査や公聴会等を経て、本日、経済産業大臣から認可をいただき、規制部門のお客さまの電気料金につきましては、平成25年9月1日から平均7.73%の値上げを実施させていただくことになりました。今回の値上げにあたっては、泊原子力発電所3基すべての再稼働を前提としております。

 

  平成26年12月17日、関西電力は電気料金値上げの意向を表明しました。関西電力は平成25年4月に電気料金を値上げしたばかりですが、今回の値上げ理由も高浜原発3、4号機及び大飯原発3、4号機が再稼働できず、火力燃料費などの負担が著しく増加したためとしています。原油価格の代表的な価格指標であるWTI原油先物は、平成26年7月末に100ドルを割り込むと、一気に急降下、平成27年2月は50ドル前後で推移しています。ガソリンは、平成27年2月9日時点で29週連続値下がりしており、火力燃料費も当然下がりますから、関西電力の値上げ理由に苦しみます。


第2章 電源別コスト算定の前提条件

 試算モデルの条件

 電力の小売り事業者である新電力各社は、原発を有しておらず自前の発電所で発電した電力のほか、工場などの自家発電設備から買い取った余剰電力、卸電力市場で集めた電力などを販売しています。それなのに地域独占の電力各社は、電気料金値上げ理由を原発の停止と代替えの火力発電の燃料費高騰にしています。このような状況を受けて、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力の各発電コスト比較が必要であり、参考になるのが平成23年12月のコスト等検証委員会報告書です。

 発電コストの算定手法は、将来の見通しを示すことが可能なモデルプラント方式です。電源ごとに想定したモデルプラントにおいて、一定の運転年数にわたって毎年発生する費用を、評価時点(運転開始時点)の価格に換算して合計した総費用を、当該運転期間中に想定される総発電量を、同時点の価値に換算して合計した総便益で除して求めます。各発電方式のモデルプラントは、2010年に一斉に運転を開始したとし、モデルプラントの条件を次のように予め決めます。なお、コスト等検証委員会報告書では、2020年と2030年に新たに一斉に運転を開始するモデル(燃料費・CO2対策費の上昇・技術革新等による原価低減を見込む)も検証していますが、ここでは取り扱いません。

 

 ① モデルプラントの条件

    稼働開始年、出力、設備利用率、稼働年数、熱効率、所内率

 ② 試算のための共通条件

    割引率、為替レート

 ③ 発電設備を建設・運営・終了するための費用

    資本費、運転維持費、燃料費、核燃料サイクル費、事故リスク対応費、諸税、設備の廃棄費用

 ④ モデルプラントに直接は関係ないが、電源別に配賦すべき費用

    政策経費

 

 モデルプラントの条件と試算のための共通条件に、なじみのない用語が使われており説明をします。

 所内率

 発電所を運転するには多くの付帯設備が必要になり、当然その設備自体も電力を消費します。基本的に、発電を行っている発電所では、自所で消費する電力は発電した電力で賄います。この賄う電力が発電した電力のうち、どれくらいを占めるかを表したのが 「所内率」 です。

 割引率

 割引率は、金融経済用語です。将来受け取る金銭を現在価値に割り引く(換算する)ときの割合を、1年あたりの割合で示したものが割引です。将来の現金は、現在の現金より不確実です。その分を割り引くのが割引率です。リスクが高いほど割引率は高くなり、現在価値は小さくなります。モデルプラントは、長期に亘り運転するので、一定の運転年数にわたって毎年発生する費用を、評価時点(運転開始時点)の価格に換算して合計した総費用を、当該運転期間中に想定される総発電量を、同時点の価値に換算して求めます。詳しくは、エクセルの発電コスト試算シートの内容を見てください。

 

 原発特有の問題

 原発は水力発電や火力発電と異なり、原発導入当初から今に至るまで安全に関し、社会的合意が取れていない発電です。福島第一原発事故前までは、安全神話を振りまいて事故が起こらないから放射性物質が発電所から飛散しないと強弁しました。福島第一原発事故は、万全の安全対策を施しても致命的事故では安全対策になりえなかった事を証明しています。原発事故を惹起させる想定外は、人間が考えるプラントでは常にありえます。

 更に、原発で生成される放射性物質の半減期が、途方もないくらい長いことです。亀井敬史著 『核なき世界を生きる』 によれば、ウランを燃料とする軽水炉原発では、核分裂反応の結果として原子質量243のアメリシウムと原子質量244のキュリウムという物質が生成されます。これらの超ウラン元素は、放射性廃棄物の管理期間を長引かせる大きな原因になるものです。ウランを燃料とする軽水炉原発では、1年間に100万キロワットという標準的な規模の発電所を運転したとすると、アメリシウムとキュリウムを併せ25キログラム生成されます。放射性廃棄物は年数が経過するに従って、有害度が下がっていきます。使用済み燃料棒を再処理しないで、適切に処置した上で地中に埋めてしまうと、自然界の放射能レベルになるのに数十万年かかります。仮に、青森県の六ヶ所村の再処理工場で化学処理したとしても、それでも自然界の放射線レベルになるのに1万年程度かかります。常軌を逸した放射性廃棄物管理期間です。

 

 原発特有の試算条件項目

 (1)事故リスク対応費

 火力発電が事故を起こしても、原発のような放射性物質に起因する広範囲な、かつ、未来永劫に亘る事故にはなりません。原発の安全神話は福島第一原発事故で否定されたわけで、モデルプラントでも原発特有の悲しい事故が発生する仮定をします。事故リスク対応費は、万一の事故対応に備える積立金です。東京電力に関する経営・財務調査委員会報告書によれば、試算の時点で明らかな費用としては、東電福島第一原発の事故で、追加的な廃炉費用が約1.2兆円、損害賠償費用が一過性のものが約2.6兆円、初年度分が約1.0兆円、2年度以降の損害(単年度分)が約0.9兆円と試算しています。これらの費用の合計は5.7兆円になりますが、細かい費用も含め事故リスク対応費を5兆8318億円と算定しました。

 ただし、以下の項目は事故リスク対応費に含まれておりません。

  ・高濃度汚染対策費用

  ・除染により生じる廃棄物等の中間貯蔵施設の整備費用

  ・除染により生じる廃棄物等の最終処分関連費用

  ・生命・身体的損害

  ・政府による航空危険区域及び飛行禁止区域の設定に係る損害など政府指示に係る損害

  ・地方公共団体等の財産的損害

  ・汚染水対策費用(巨額の費用が見込まれる)

  ・その他

 

 その後、事故リスク対応費は予想通り膨らみ続けており、コスト等検証委員会報告書を見直す必要があり、大島堅一と除木理史(よけもとまさふみ)の 『福島原発事故のコストと国民・電力消費者への負担転嫁の拡大』 から引用した表1を事故リスク対応費に代えます。

 

 

   この結果、事故リスク対応費は5兆8318億円から11兆819億円に約2倍へと膨らみました。それでも、事故リスク対応費は暫定数値であり、今後も収束作業が進展するにつれ膨らみ続けます。

  

 (2)政策経費

 発電事業者が発電のために負担する費用ではないが、税金で賄われる政策経費のうち電源ごとに発電に必要と考えられる社会的経費を指します。つまり、政策経費とは発電に供する税金投入であり、いわば隠れた発電コストです。表2は、コスト等検証委員会報告書が示す2010年(平成22年)モデルプラントの政策経費です。

  

  交付金は、平成26年9月福島第一原発に伴う福島県内の除染で出た汚染土などに関する中間貯蔵施設受け入れに伴う費用(3010億円)と国が福島県に拠出した平成25年度からの 「福島再生加速化交付金(1600億円)」 を指します。試算モデルは40年間稼働する仮定をしており、政策経費に(3010億円+1600億円)÷40年≒140億円/年を追加しました。また、凍土方式遮水壁費用は、平成25年度から平成32年度の8ヵ年にわたり研究開発として国から支出されます。平成25年度予備費から約136億円、平成25年度補正予算から約183億円の合計319億円です。同じく、40年で割り約8億円/年を追加します。研究開発に失敗はつきもので、契約者に納期や性能の保障もなければ設備瑕疵担保責任のない契約ゆえ、政策経費になります。 凍土方式遮水壁は大量の電気を使いますが、319億円に8年間の維持運用の費用は含まれていません。

 コスト等検証委員会報告書が示す2010年(平成22年)モデルプラントの政策経費は、(注4)を除いた3183億円です。この政策経費は、各省から収集した情報を取りまとめた結果です。筆者がネットで平成23年度原子力関係の政策経費を確かめました。資源エネルギー庁作成の 『経済産業省関係の平成25成年度原子力関係予算について』 の平成23年度当初予算では、1110億円です。更に、文部科学省作成の 『原子力関連の独立行政法人及び公益法人への対応状況一覧表』 の平成23年度予算では、3277億円です。合計すると4387億円であり、コスト等検証委員会報告書が示す2010年(平成22年)モデルプラントの政策経費3183億円と乖離が大きいです。官僚が、コスト等検証委員会に正しい情報を報告しているか疑わしい。1200億円も数字が違えば、原子力の発電コストは変わりますが、ここでは表2の数値をそのまま使います。

 

 (3)追加的安全対策費

 福島第一原発の事故を踏まえ、政府は4回にわたって、以下のとおり原発に対し、追加的な安全対策を講じることを指示しました。表3に、追加的安全対策の詳細を示します。今回のモデルプラントについても、同様の措置を講じる前提で試算します。なお、新たな安全規制が加わればその都度追加します。

  表3の追加的安全対策により資本費が増加します。資本費のうち減価償却費及び固定資産税、並びに、運転維持費のうち修繕費、諸費及び業務分担費が上昇します。たとえば、資本費の減価償却費は、建設費単価×出力+追加的安全対策費となります。

 

  

 

 原子力規制委員会は、平成25年6月に福島第一原発事故を受けて見直していた原発の新規制基準を決めました。電力各社は新たに義務付けられた追加安全対策を進めます。ゆえに、コスト等検証委員会報告書を見直す必要があり、日経新聞で報道された6原発の1兆3000億円を超す費用を追加的安全費用に代えます。モデルプラント当たり約2200億円となり、コスト等検証委員会報告書の194億円と比べると約11倍になりました。

 新規制基準で新たに求めた対策項目は、以下の通りです。

  ・沸騰水型軽水炉のフィルター付きベント装着

  ・電源車やポンプの配備

  ・緊急時対策所

  ・航空機墜落などのテロ対策

  ・活断層は最大40万年前の地層まで調査

  ・活断層が直下にあれば運転認めず

  ・東日本大震災を踏まえ最大の津波を想定

  ・防波堤や水密扉で浸水を防ぐ

 

 (4)核燃料サイクル費

 原発は、エネルギー国産化の観点からウラン燃料を使用後、使用済み核燃料を再処理して使う方式を (4)核燃料サイクル費選択しています。方式として、使用済核燃料は、全て3年後に六ヶ所村の再処理工場で再処理をする再処理モデル、使用済核燃料は、全て54年間中間貯蔵して地中に処分する直接処分モデル、使用済核燃料の半分は20年間六ヶ所村の再処理工場に貯蔵後再処理し、残りの半分は50年間中間貯蔵後に再処理する現状モデルの3通りがあります。コスト等検証委員会報告書では、3通りの核燃料サイクル費を試算し検証していますが、ここではMOX燃料を使うプルサーマル発電を前提にした現状モデルの核燃料サイクルを図1で示します。

 核燃料サイクル費と電気料金の関係から言えば、再処理工場の建設費と操業費や、高レベル廃棄物処理費用は、1980年代から総括原価方式の電気料金に含まれており、再処理工場の廃止措置費用なども、2005年10月の法律により電気料金から徴収しています。

  日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)など、核燃料サイクル施設の安全対策を強化する規制基準が、平成25年11月27日まとまりました。原子力規制委員会は、施行日の12月18日から事業者の安全審査申請を受け付けます。新規制基準施行後の焦点となるのは、再処理工場の審査です。規制基準は原発と同じレベルの地震津波対策を求めており、大規模な改修工事が必要となり大幅な費用増額となりますが、当然コスト等検証委員会報告書には反映されておりません。

 また、放射性廃棄物管理期間は最低で1万年、長くて10万年を要しますが、原子力委員会がコスト等検証委員会に提出した核燃料サイクルの処分スケジュールと実績は次の通りです。

  ・2000年に実施主体(原子力発電環境整備機構)を設立

  ・2002年から原子力発電環境整備機構が候補地の公募開始

   ・2013年に政府は、核のごみ最終処分場選定の公募方式を断念

  ・2036年から操業を開始

  ・2086年に処分施設の解体・閉鎖開始

  ・2096年に坑道を閉鎖

  ・その後300年間モニタリング等の措置を実施

 300年間のモニタリング以降は、費用が発生しない仮定です。放射性廃棄物の処分は、僥倖の上にも僥倖を重ね無事故を仮定しています。1万年以上に亘って無事故は、あり得るのでしょうか。原発は、人知を超えた代物です。

 

 

 

 

 

 

 

 


第3章 電源別コストの試算結果

 2010年版モデルプラントの試算条件

 2章で2010年版電源別コスト算定の前提条件を説明しましたが、主な試算条件を表4で示します。

   2004年版と2010年版の試算結果

 平成16年のコスト等検討小委員会報告書は、計算の前提条件等について詳細な記述がされているものの、それらの諸元をもとに、計算された数値を再現できません。一方、平成23年のコスト等検証委員会報告書は、発電コストを試算したエクセルの発電コスト試算シートを公表しており、誰もが試算された数値を再現できます。このような違いはあり、2004年試算と2010年モデルの主要電源のコスト検証結果を見比べられるよう表5にしました。

 

   

 この計算の意味は、2010年時点で原発を新設したとき、原発事故後の原発の設備容量がその後40年間維持されると仮定した場合、原発事故のコストを考慮すれば、原発の均等化発電コストは、8.9円/kwh以上になる、ということです。←A

  平成16年のコスト等検討小委員会の試算と比較すれば、福島第一原発の事故を受けて、原発に関しては追加的安全対策費、政策費用、事故リスク対応費が計上されました。また、平成23年のコスト等検証委員会報告書では、石炭火力、LNG火力、石油火力にCO2対策費を新設しました。なお、平成16年のコスト等検討小委員会報告書では、原発の発電コストは稼働率が80%の条件で5.3円/kwhと試算していますが、稼働率の最高が70%程度(*1)なので、平成23年のコスト等検証委員会報告書では、2004年試算モデルを稼働率70%で再試算しました。

 原発については、追加的安全費用、事故リスク費用等について先々増額が予想されることから、2010年モデルのコストは 「下限値」 を提示しており、8.9円/kwh以上との記述です。具体的には、損害額が1兆円増加すれば事故リスク費用は0.09円/kwh(*2)増加します。下限値の8.9円/kwhとすれば、石炭火力とLNG火力に比べ少し安いと言えます。

 

 (*1) 電気事業連合会の原子力発電所の資料によれば、設備利用率は2003年度59.7%、

      2004年度68.9%、2005年度71.9%、2006年度69.9%、

                 2007年度60.7%、2008年度60.0%、2009年65.7%、

                 2010年度67.3%です。

 (*2) 事故リスク費用単価0.09円/kwhは、損害額÷モデルプラント運転年数÷2010年度

                 原発の発電電力量で求めます。この式に数値を入れると、1兆円÷40年÷2722億kwh

                 ≒0.09円/kwhとなります。2722億kwhは、2010年度の日本全体の原子力の

                 総発電量(2882億kwh)から廃炉が決まっている福島第一原発の1~4号機の分

               (160億kwh)を引きます。ここで注意すべきは、2010年度の原発発電電力量

                2722億kwhです。今後、電力会社は40年に亘り、50基の原発が年間2722億kwh

                 の発電を維持できるかと言うことです。

 

  発電プラントは、 「建設」  「運転」  「廃止措置」 というライフサイクルをたどります。それぞれの段階で費用がかかりますが、収入があるのは運転時だけです。ですから、ライフサイクル全体の費用回収は運転時のみです。運転時の費用は、固定費と変動費に分類できます。表5の費用項目を粗く分類すると固定費は資本費、運転維持費、CO2対策費、追加安全対策費、政策費用、事故リスク対応費であり、変動費は燃料費と核燃料サイクル費です。原子力は、固定費が7.5円/kwhと変動費が1.4円/kwhですからその割合は、固定費が約84%の変動費が約16%です。石炭火力は固定費が5.2円/kwhと変動費が4.3円/kwhですからその割合は、固定費が約55%の変動費が約45%です。原子力は、固定費の割合が非常に大きい発電プラントです。

 原発はウラン燃料を 「燃やして」 発電しますが、変動費は約16%(実態はさらに小)と小さく、費用の大部分が固定費です。このように固定費の割合が大きい発電プラントの場合、発電コストはそのプラントの設備利用率に大きく左右されます。次章では、原発の発電コストが設備利用率に大きく左右され、費用回収は収入が見込める運転時だけの観点から切り込みます。

 

 廃炉に係わる問題

 日本の原子力発電所で廃炉が決まっているのは8カ所です。そのうち4カ所は大震災で被害を受けた福島第一原発の4基。残りの4カ所は、日本初の原発である東海発電所1号機、純国産技術で最初に開発された「ふげん」 、それに中部電力で耐震性が問題となった浜岡原発1号機と2号機です。東海原発は、1998年に廃炉が決まりました。 「ふげん」 は2003年、浜岡原発は2008年です。廃炉へは原子炉の解体に着手しなければなりませんが、問題山積ゆえ着手できません。廃炉に着手した東海原発(出力16.6万kw、炭酸ガス冷却炉)の廃炉工程と進捗状況は、次の通りです。

  原子炉領域解体前工程   1998~2013年(16年間)

  原子炉領域解体撤去    2014~2019年(5.5年間) 2013年以降も原子炉は監視管理

                          この工程で発生する高レベル放射性廃材の持って行き場がなく作業中断。

  原子炉建屋解体撤去     2019~2020年(1.5年間)

  原子炉領域以外の撤去   2001~2020年(18.3年間)

  放射性廃棄物の短期処理 1988~2020年(23年間)

 原発廃止後の高レベル放射性廃材の恒久処理・隔離・管理に関しては未定であり、数千~数万年が必要ですが地中処分地がなく、かつ、地中処分地を整備する費用は積み立てていないかもしれません。結局、廃炉作業が遅れており、遅れれば遅れるほど廃炉費用はかさみます。

 廃炉期間について、平成25年8月の毎日新聞に参考になる記事が掲載されていました。英ウェールズ地方の26年間稼働したトロースフィニッド原発(出力23.5万kw、炭酸ガス冷却炉、2基)の廃炉作業は、1993年に着手しました。20年かけ廃炉作業を進めるも、放射線があまりにも強く、作業を

いったん2026年に停止、その後2073年に廃炉作業の最終段階に着手する予定です。ゆえに、廃炉期間は100年を見積らねばなりません。

 

 (参考) 原発の基数合計(54基)と出力合計(4912.2万kw)ー平成23年2月現在

    北海道電力  3基     207.0万kw

    東北電力    4基     327.4万kw

    東京電力    17基    1729.6万kw

    中部電力    3基     361.7万kw

     北陸電力    2基     192.0万kw

    関西電力   11基     976.8万kw

    中国電力    2基     128.0万kw

    四国電力    3基     202.2万kw

    九州電力    6基     525.8万kw

    日本原電    3基     261.7万kw

   ※ 関西電力美浜1号機と美浜2号機及び日本原電敦賀1号機は、運転後40年超の原発です。

 

  上記54基の原発の内、廃炉予定の原発

    東京電力福島第一原発1号機(46.0万kw) 平成24年4月19日に廃炉決定

    東京電力福島第一原発2号機(78.4万kw) 平成24年4月19日に廃炉決定

    東京電力福島第一原発3号機(78.4万kw) 平成24年4月19日に廃炉決定

    東京電力福島第一原発4号機(78.4万kw) 平成24年4月19日に廃炉決定

    東京電力福島第一原発5号機(78.4万kw) 平成26年1月31日に廃炉届出報道

    東京電力福島第一原発6号機(110万kw)  平成26年1月31日に廃炉届出報道

    関西電力美浜1号機(34万kw) 平成27年1月14日に廃炉予定報道

    関西電力美浜2号機(50万kw) 平成27年1月14日に廃炉予定報道

    中国電力島根1号機(46万kw) 平成27年1月14日に廃炉予定報道

    九州電力玄海1号機(55万kw) 平成27年1月14日に廃炉予定報道

    日本原電敦賀1号機(35万kw) 平成27年1月14日に廃炉予定報道

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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