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次元特捜バナナJ

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次元特捜バナナJ

CODEバナナ⓪「はじめまして」

 

「えーん。見失っちゃったーっ!………」

 あっ…、こんにちは!私、次元特捜バナナJです…。

実は私今、犯罪者を追っていたのです。

しっかしー、逃げられちゃったんですよね……。

この地球付近で………。

 私、天下に名高い次元特捜ったってまだ新人で、一人も逮捕したことがないんですぅ。

やっぱり、悪い人は怖いしー…。

元々私は次元特捜になろうなんて、これっぽっちも思ったことはありませんでした。

でも、ごく普通のとーってもかわいい私が、何で次元特捜なんかになっちゃったかというと……。

 

あれは、私が日曜の休日を利用してキャンディ星に遊びに行ったときのことです。

田舎の惑星育ちの私…。都会の惑星に来たなんて初めて…。

でも、勇気を出して遊びに来ちゃったの!もちろん、両親・友達にも秘密で…。

だって、

「キャンディ星に行く」

って言ったらみんな反対するだろうし、もしばれたら友達のみんな私のことを不良扱いするに決まってるもん。

でも私、いつまでも子供でいたくない…。

だから、みんなに内緒で来たんだ。

 初めて都会の街に立った感想。

「す・すごい…」

都会ってやっぱり…すごい…。

たくさんの人。大きな建物がいっぱい。

もう圧倒されっぱなし。あんまりキョロキョロすると”いなかもん” て思われちゃうかな…。

私は一生懸命”都会っ子”のふりをして街の中を歩いていました。

 

 そんな時です。

「ねぇ、君」

って声をかけ、私の肩をポンとたたいた人がいたのです。

お・男の人の声…。

つ・ついに来た…。

私…、これを期待していたんですっ!

自慢じゃないけど、私って顔はかわいいんです。

スタイルは…。

まぁ、それは置いておいて…。

服装も、本なんか読んで研究してお小遣い全部はたいて都会っぽく決めてみたし、絶対声をかける人がいるって思ってたんだ!

 私、胸がドキドキ!

だって…こんなの初めてなんだもん…。

 私は、そっと後ろを向きました。

………かんげきっ!

そこには、とってもかっこいい男の人が私を見つめ、ニコッと微笑みかけてくれています。

わくわく!あわてないで、落ち着くのよ…。

私は自分に言い聞かせるように心の中でつぶやくと勇気を振り絞って、

「な・なんですか?」

声がふるえてたかな…。

男の人は急に真剣な顔になりました。

どーしよー……オーケーしちゃおうかな…。

断ろうかな…。

でも、この人なら私…。

すごくすごく頭の中がパニック!

決めた!!

男の人は言いました。

「あのー、次元特捜に入りませんか?」

「はい!私…こういうことは初めてだ…か…えっ?じげんとくそう???」

がーん!!

じ・自衛隊の勧誘のように、私は次元特捜に勧誘されてしまったーっ!!

と・都会にはこんな恐ろしい落とし穴があったのか………。

「あ・あの、私ちがくて…」

「よかったー。ここにサインしてね」

「はい…」

私はサインしてしまいました。

 

 これがそもそもの間違いでした。

その後、どうなったかは覚えていません。

ショックで気絶してしまったのです。

本当に情けないです。

 気がつくと、私は見知らぬ部屋のベッドに寝ていました。

”もう、うちには戻れない…お嫁さんにもいけないのね”

都会なんかにこなけりゃ、こんな事にはならなかったのにな…。

なんて後悔してると、ドアが開いてさっきの男の人が入ってきました。

「とうとう私も女になるのね…」

「な・何、言ってんの?」

「えっ…あっ…」

ポッ。

顔が赤くなる私。

「大丈夫?いきなり倒れるんだもーん。びっくりしちゃった。だからあわててここに運んだの」

「こ・ここは?」

「次元要塞ダストベースの中さ」

「ダストベース?じゃー、次元特捜の本部…」

「そう、ほんとは普通の人間は入れられないんだけど、もう君は次元特捜になる手続きを済ませてたからね」

うっ…私は、私は次元特捜なんかになりたくないよー!

思いっきり大きな声で叫びたかったけど…私、内気なんです…。

黙ってうつむいている私。

「君が入ってくれてほんとーによかったー!うちのフルーツ部隊はおれとレモンだけだったんだよ。あっ、遅れたけど、おれはコードネーム・メロンだ」

「そして私がコードネーム・レモン」

ドアから女の人が入ってきました。きれいな女の人…。

「ごめんなさい…今日中に一人、うちの部隊に入れないと、うちのフルーツ部隊は解散されちゃうの…」

「えっ…」

 

ここで「次元特捜」とは何かについてお知らせします。

「次元特捜」とは、簡単に言うと、我々一般人を悪い人たちから守ってくれる宇宙規模の警察のことです。

昔はね。

昔は、というのは確かに今から250年くらい前のいろんな星と同盟やら協定を結び始めた頃はいろーんな悪いことをする人がいっぱいいっぱいいて(歴史は苦手だから詳しくは知りません…)、その頃は次元特捜が活躍していたけど、そのおかげか、もうはっきり言ってたまーに事件はあるみたいだけど、本当に平和な世の中になって次元特捜さんもこの本部、つまり次元要塞をのぞいて、支部も全部なくなっちゃったんですよね。

それに従って上層部もほとんど崩壊していてなーんと、給料が50年前と同じ、どんなベテラン次元特捜でも、今の普通の会社の新入社員の給料の足元にも及ばない、命かけてる割りには情けない職業になってしまったのです。

なりたくない職業ベスト1しいうよりも、もうこんな職業があることすら都会の人たちは知らないんですよね。

私…いなかもんだから…知ってたけど……。

 

 とってもきれいなレモンさんがベッドで半身の私の横に座りました。

あ、いい匂い…。

「私たちのフルーツ部隊は私とこのメロンとそしてもう一人オレンジってのがいたのよ」

「いた?」

メロンさんが壁により掛かりうつむいて目をつぶりました。

「死んだのよ」

ちょっとつらそうにレモンさん。

続けてメロンさんが、

「我々フルーツ部隊は、全宇宙指名手配者のザンコク星人を追っていた。と言っても君にはピンとこないだろうが…」

「はい…」

「ザンコク星人…ザンコク星人の生き残りのある博士は、自分の星が破壊したのは他の星の人間、つまり、鎖星をしていたザンコク星に我々が入り込んで生態をめちゃめちゃにしたからだ、と勝手に決めつけ復讐のため全宇宙で犯罪を繰り返しているやつだ」

「平和な世の中だと思っていたのに…」

「まだまだ悪の根は絶たれていないのよ」

「一般の目に触れる犯罪はなくなったかもしれないが、犯罪は何百年たったってちっとも減っちゃいないんだ。ザンコク星人だってその中の一人に過ぎない」

「信じられない…」

座っていたレモンさんが立ちました。

フッとため息をついて、

「もうやめましょ。メロン、やっぱり私たち間違ってたわよ。こんな卑怯なやり方で頭数合わせようなんて…」

「だけど、今日中に仲間見つけなきゃ…。求人情報誌に広告出しても全然こなかったじゃないか。こんな給料じゃまともなやり方じゃ、誰も次元特捜なんかにならないよ!」

「だけど…こんなかわいい子をだまして…」

「だましてないよ。入らないか?ってきいたら、はい。ってな」

私に同意を求める…。

答えに困る私。

確かに「はい」とは言ったけど…。

続けてメロンさんがレモンさんに、

「もうこの子をあきらめると今日で解散だぞ」

「仕方ないわ…。ザンコク星人はきっと他の部隊が捕まえてくれるわ。だいいち、うちの部隊は、ザンコク星人捜査からおろされたし…」

「レモン。おまえそれでいいのかよ……」

「………」

「本当にいいのか?死んだオレンジはおまえの婚約者……」

「やめて!……」

なんか大人の会話…。

私は聞くだけ。

「あの時、せっかくミルク星まで追い詰めたのに、おれがあんなミスさえしなきゃザンコク星人を逃がしたりは…」

「メロンあなたのせいじゃないわ。あれはオレンジのミス」

「いや、おれのせいだ…。ザンコク星人に最終兵器、惑星破壊爆弾をセットする時間を与えてしまった」

なんかでっかい会話。

私は聞くだけ。

「そしたらオレンジは自分が惑星破壊爆弾を止めるからっておれらに逃げるザンコク星人を追えって……」

唇をかみしめるメロンさん。

「追ったけど逃げられたのは私たちの責任。だけど爆弾を止められなかったのはオレンジの責任」

「爆弾を止められなかったって?」

思わず疑問に思った私は質問をしてしまう。

「ん?だから惑星がドッカーン」

「え…いつの話ですか…」

「そうちょうど一ヶ月前の話ね」

「ニュースでそんなのやってなかった…」

「そんなのニュースで流したら平和な世の中がたちまちパニックになるでしょ」

ごもっとも。

再びメロンさんとレモンさんの会話。

「おれが止める役に回るのが本当だった」

「メロンらしくないわ。何後悔してんのよ。メロンが止める役になったとしてあなた爆弾止められた?」

「………」

「ザンコク星人が惑星破壊爆弾を持ってる事をつかんだのはオレンジなのよ。あのときメロンよりオレンジの方が惑星破壊爆弾についての知識があった。だからオレンジがやったのよ」

「………」

「だけど…仲間が…そう私の一番好きな人が死んだんだもん。自分の手で敵を討ちたいとは思っていたわ。でも仕方ないじゃない。次元特捜の部隊は最低3人いなきゃ。オレンジが死んで一ヶ月目。規則だもん。今日までに仲間見つけられなきゃ部隊は解散てね」

「うん…わかった…。他の部隊を信じよう。きっとやつを捕まえてくれると…。ごめんな」

急に私にふってくる。

「い・いえ…」

「それにしても今日は疲れたよ。いくら声かけても変な勧誘だと思ってみんな逃げちゃって」

変な勧誘のくせに…。

「これであきらめようと思っていた時、人通りの中を立ち止まってる君がいて…」

うそ…歩いてたんだけど…。やっぱり都会のスピードと田舎のスピードは違うんだ。

「時間もなかったし、子供でもいいや。と思って声かけたわけだ」

「子供…」

ムッ!

「私、子供じゃないもん!」

思わず大きな声で叫ぶ私。

クスッと笑うレモンさん。

あわててメロンさんが、

「あ、ごめんごめん…うそうそ。君があんまりかわいかったんで思わず声をかけたんだ…」

プッとレモンさんがふいて笑いをこらえる。

どいいうこと?

私はもう口をとがらせてふくれています。

当然!

「ごめんなさーい。別に悪気は…」

「そうそう。おれもさ、悪気はなかったの…。あ…レモン。おれ契約書もう上に出しちゃったよ」

「うそー!」

「え…契約書って?」

「ほら君サインしたろ。次元特捜になります。っていうあれ」

「あれ」

「そう、あれ」

ガビョーン!

「ならメロン、早く取り消してもらってきなさいよ」

「そうだな」

メロンさんが出て行きました。

レモンさんと二人きりの私。同姓なのになんかドキドキ。

「もう安心よ。ごめんね。迷惑かけちゃって」

「いえ…いいんです…」

「それより家に連絡しなくて大丈夫?あなた未成年でしょ?」

「はい…」

「うちどこ?キャンディ星?」

「私…」

言葉に詰まる私。

それを察したレモンさん。

「あ…あなた家出してきたの?」

「ち・違います…。ただ内緒で他の星に来ただけ…」

「もう夜よ。きっとうちの人心配してるわよ」

「夜になる前に帰って…みんなに内緒で…黙っていようと思ったの…もう最終便も出ちゃった……うっ……」

目からどんどん涙が落ちてくる…。

もう本当にどうしよう…。

両親にしかられ…お小遣いも三ヶ月くらいもらえなくて…。

友達からは不良扱いされて仲間はずれにされて…。

それでもって大人達からはあることないこと噂されて…。

私もう生きていけない!

 私はレモンさんに抱きついてえんえん泣いています。

「大丈夫よ。わたしがちゃんとご両親に説明してあげるから」

「だめっ!きっと男にだまされて次元特捜のお世話になったとか思われちゃう…えーん!」

「たしかにメロンにだまされたけど…」

「違う!私…だまされたんじゃないもん…。そんな…そんなバカじゃないもん…。私は昔っから次元特捜にあこがれてたの…。だからサインしたの…。決してメロンさんがかっこよくて、それで私がかわいいからナンパして変なことをしようとしているのを知ってて「はい」って言って、実は勧誘だったって後から気づいたんじゃないもん……」

私は自分で何を言ってんだかもうわかんない!

「え…あなた…本当に次元特捜になりたかったの?」

「え…」

「メロンにだまされたんじゃないの?」

「違うもん…」

だって…本当にだまされた訳じゃないもん…。ただ、私の勘違いだもん…。

「あれ…そう…」

「え…何が?」

「だから、あなた今、言ったじゃない。次元特捜になりたかったって」

「え…私が?」

涙で目がまっ赤で鼻声で私。

泣くと何言ってるかわからなくなる性格です。

私…。

「あ…私の勘違いだったのね…。“誰も次元特捜に入らない”っていう先入観があったから、てっきりメロンがだまして連れてきたかと思って…。良かった…。これでフルーツ部隊は解散しなくて済むのね。オレンジの敵が討てるわ!あっそうだ。メロンを止めてこなくちゃ!」

「あ…あの…」

レモンさんは急いで部屋を出て行きました。

 私…本当に「なりたい」って言ったのかな?わからない…。て゜ももう本当にうちには戻れないもんな…。私…次元特捜になっちゃうのかな…。

 

「おめでとう。今日から君は次元特捜だ。コードネームはバナナ」

正式にはバナナJ。

JはジュニアのJ。

上の人も私を子供扱いしてるのかと思ったら、新人にはみんなこれがつくんだって。

 なーんだか成り行き上こーんなとんでもない職業につくはめになってしまったけど、素敵なレモンさんの悲しい気持ちを考えるとそんなことも言えなくなってしまいました。

「家出してまで次元特捜になりたかったなんてすごいのね」

「ほーんと、こんな安月給なのにな」

「………」

 次元特捜は秘密厳守のところなので友達はおろか両親にも自分が次元特捜だ、なんて教えてはいけないの。それに昇格すればするほど重要な任務に就くので、自分が死んだことにされたり…。

そう、フルーツ部隊の担当は重要事件が多いので私はなーんと、昨日キャンディ星に行った記録も抹消されて、故郷の田舎の星で交通事故で死んだことにされてしまいました。

これで本当にもう家には戻れなくなってしまったのね…。

でも私内気だから…、あのまま普通の生活していたら、平凡な一生送ってただろうなー。

普通の恋をして、普通の結婚をして、普通の普通の…エッチして…ポッ……。

「何一人で赤くなってるんだ?今日から一人前の次元特捜になるための待ってるんだぞ!」

「はい…」

「がんばろうね」

「はいっ!」

そう、なんか的確な言葉じゃないかもしれないけど、私は勇気のない女の子。

友達はみんないろんな経験してるけど…私はまだ何も。

もちろん、エッチなことばかりじゃないいろんな意味での経験って事よ…。

もう後戻りは出来ないけど、私、決めた。

みんなが誰も経験できない事をいっぱい経験して。素敵な女の子になるって!

 その日から私は一人前の次元特捜になるための訓練が始まりました。

と、言っても私は知能も運動神経もありません。

「………」

 メロンさんもレモンさんも言葉がありません。

初日から挫折しそうです…。

「私も最初はそうだったわ」

レモンさんが優しい言葉をかけてくれます。

うわーっ、なんかあこがれちゃうなー。

顔はきれいで優しくて…。

あー、私も早くレモンさんみたいになりたい。

「だめだ。こりゃ」

メロンさんはあきれ顔。

自分が私を次元特捜にしといてさ…。

メロンさんて、顔はかっこいいんだけど、ちょっと軽いのよね。

 そうこうしている間に訓練も一週間目。

もう足腰が痛くてたまりませんっ!ぜーんぜん私は進歩してません。

でもぜーんぜん悲観してないんだ。

どーんなバカでも強い次元特捜にすぐなれるんだ。

私はバカじゃないけど…。

だって、次元特捜には、全員に、ピコピコセットが配られるんだもん。

 ピコピコセットはちょうど私の両手の大きさくらいのケースの中にカプセルが12個はいっていてこれがいわゆる次元特捜道具なの。

このカプセルのボタンをピコピコ押すとそれぞれの道具に変身するんだ。

えーと、中でも注目なのがこのピコピコ恋射ベルト。

そう、これがあればどーんなに体力や運動神経がなくったって……、

「んー!恋射っ!」

普通の人間の何十倍の体力、スピード、反射神経などが身につくのだ!

「シュパッ!」

見事なポーズ!しかもAI機能付きだから、経験すればするほどどんどんすごくなれちゃうの!こんな私でも恋射したらもう強いんだもんね!ただ知能はそのまんまだけど…。

あと、もう一つの悩みは恋射した時のコスチュームなのよねー……。

「なーんで肌がこんなにあらわにならなきゃいけないの!」

「機能優先!不必要なものは取り除いてある!」

メロンさんの力説。

「だってメロンさんのコスチュームは普通の格好じゃないですか」

「いや…それは……」

「確かにレモンさんは恋射後あんなコスチュームでも、スタイルいいから決まっているけど…」

「そんなことないわよ」

「私は…胸はないし…スタイル悪いから…やだなー……。それにやっぱり恥ずかしいしぃ…なーんかむだ毛の処理も大変そう…。まだ私はそんなないからいいけど……」

「え?何がないって?」

「え?あ…、メ・メロンさんのエッチー!」

バシッ!

「おれは無実だ!」

なんか私性格変わってきたみたい。

 

 私は次元要塞ダストベースのフルーツ部隊の部屋にいます。

大きな通信機の前でピコピコセットのマニュアルを見ながらピコピコセットの一つのピコピコレシーバーの周波数を合わせています。

「えーと、緊急時は…これで…あ…出来た!」

これでだいたいピコピコセットは使いこなせるわ。

だって簡単なんだもん。

「えー、ピコピコハンマーはたたくだけ。まぁ、あたったら細胞を分裂させる働きがあってどーのこーのとか難しい理屈はあるみたいだけど…。ピコピコホイップはムチでビシバシだし、加速装置は歯の奥にセットしてかみかみするとものすごい体力使うけど、瞬時に移動できるのね」

本当は歯に穴を開けなきゃいけないんだけど、私は虫歯があるから穴を開けずに済んだのです。

良かった…。

「それでピコピコメガネは、人の心が読めるけど、プライバシー保護の関係で、大まかな気持ちしかわからなくて、ピコピコライトは自分の視界だけが明るくなって暗闇の中、犯人に気づかれないで近づけて、ピコピコ…あれっ?このカプセルはなんだっけ?……きゃっ!」

ボムッ!バキバキッ!

部屋の中の机の上に大きなバイクが乗っかり机が潰れ、たくさんの書類などが風で宙を飛んでいます。

「あ…これはピコピコバイク。陸海空はもちろん宇宙でもどこでもござれの万能マシーン。あ、私、免許持ってないけどいいのよね、上の偉い人がくれたんだから……」

私はピコピコバイクをカプセルに戻し、メチャクチャになった部屋を整理し始めました。

その時ちょうどザンコク星人について書かれた書類が目にとまりました。

「それにしても意外よねー。ミルク星ったら別荘星として有名だった星なのに…。ちょうど季節外れであんまり人がいなかったので死亡者は少なかった…か。でも惑星を破壊できる爆弾を作れるなんてすごいなー。こんな人を私が捕まえられるんだろうか…。あ…」

次に足下の何か手紙みたいなのに気づく。

「レモンさん宛だ…」

見てはいけない…見てはいけない…と思いながら封筒の中から手紙を取り出す。

「あ…」

”今度の事件が解決したら結婚しよう…。オレンジ”

内容はそれだけ。

プルプル…。

急に怒りがこみ上げてきた!ザンコク星人許せない!私オレンジさんとは一面識もないけど、レモンさんが好きになった人だからきっといい人。

なのに…なのに…。

私はまた目に涙をいっぱいためて今にも泣きそう。

 そんな時、さっき机をつぶしたショックで横になってる通信機のスイッチが入ったみたい。

「おい、メロン聞こえるか。緊急チャンネルだ。上に気づかれるとやばいから手っ取り早く言うぞ!」

あ…さっきセットしておいたから…。

「ザンコク星人の宇宙船を発見した。繰り返すぞ。ザンコク星人の宇宙船を発見した。規則違反になるけど…、おまえらの手でオレンジの敵を…。現在位置を言うぞ!」

わぁ、みんないい人…。

安月給なのに…。

ザンコク星人捕まえたらわずかでも給料上がるのに。

ばれたら昇進に影響あるのに…。

私はいそいでそこらへんの書類の裏に現在位置からどの方向に向かっているかなどをメモしました。

「がんばれよ。フルーツ部隊!」

「ありがとう!」

涙声の私。

もう涙がぼろぼろ。

「じゃーな!」

「私、大人になったらきっとあげるから!」

「???」

泣いてる時は自分で何言ってんのかわかりません……。

 

次元要塞ダストベースの下部から発信するとてもとても小さな物体、もちろんピコピコバイク。

もちろん乗っているのは私。

メロンさんにもレモンさんにも内緒。

だって、もうどうしようもない気持ちになってザンコク星人が憎くって憎くって!

「ピコピコバイク。ワープよ!」

「ピコピコ…座標指定…ピコピコ」

「この紙に書いてあるとおり!」

「ピコピコ…READY…ピコピコ」

ピコピコバイクが頭良くて良かった…。

なにせ、免許ないし初めて運転するんだもん。

とにかくワープよ。

もちろんワープも初めての体験。

とにかく今はもうどうにでもなれって感じ。

私、危ない性格?

 

 ワープ終了。

「あー気持ちわりー……」

ワープ酔いしている私です。

なんかちょっと長いワープの間に少し気持ちが落ち着いた…。

「わ…」

誰もいない宇宙…。

私は広ーい宇宙空間に一人っきり。

怖い…。

急に私は普通の女の子に戻りました。

「え…どうしよう…」

勢いでここまでワープして来たけど…来ていったいどうするつもりだったのかしら…。

不安だよー。

宇宙に浮いている感じが怖いよー。

広いよー。

もう目が回りそう…。

「ねぇ、やっぱり戻ろう…。もう一度ワープ。ワープ酔い我慢するから…」

私は機械のピコピコバイクにすがるように話しかけます。

「ピコピコ… 先ほどここまでワープしたら帰りのエネルギーがなくなると報告しました…ピコピコ」

「だ・だったら何でワープしたのよー!」

ピコピコバイクを怒る私。

「ピコピコ…それでもワープを無理に強制したのはあなたです…ピコピコ」

冷静に言われてしまいました。

私は全然覚えていません…。

「どうしよう…」

「ピコピコ…対策を検索中ーーー。対策1。オープン通信で近くにいる仲間に呼びかけては…ピコピコ」

「だめ…この近くにはザンコク星人がいるのよ…気づかれちゃうじゃない。それに連絡くれた人もういないよ…」

「ピコピコ…対策2。緊急チャンネルでダストベースに連絡する…ピコピコ」

「私が勝手に来ちゃったってばれたらどうなるか…却下」

「ピコピコ…最善の策を考えつくまで話をしましょう…ピコピコ」

ピコピコセットは親切だな。

バイクに会話回路入れておいてくれてさ。

会話しているだけで少しでも気は安らぐ。

 

 会話ははずんで数時間。

「それでね。その男の子ったら女の子みんなにパンツ脱がされて泣いてるの!」

「ピコピコ…それでバナナさんは参加なさっ…REDALEAT…たんですか?…REDALEAT…ピコピコ」

「いやーね。聞いただけ!私まだ男の人の…え?今何か言った?」

「ピコピコ…REDALEAT…REDALEAT…未確認物体接近中…データ収集可能範囲に接近したら照合します…ピコピコ」

「未確認物体接近中?え…何よ…」

「ピコピコ…ただ今チェック中です…ピコピコ」

「そうじゃなくて…何で…」

「ピコピコ…データ収集可能範囲に入りました。ただ今照合中です。しばらくお待ち下さい。ピコピコ」

「私、何も悪いことしてないよー!」

もう頭の中パニック。

「ピコピコ…確認。データ照合。未確認物体はザンコク星人の宇宙船と確認しました。指示を待ちます…ピコピコ」

ドッヒェーッ!

「死ぬ前に…せめて…男の人とキスだけでもしたかったな…」

「ピコピコ…確認物体、こちらを確認したもよう。戦闘態勢に入ったもよう…ピコピコ」

「別に男じゃなくてもレモンさんだったら…」

「ピコピコ…確認物体、反転しました。回避行動に入るもよう。入りました…ピコピコ」

「え?回避行動。逃げるの?何で?」

「ピコピコ…確認。いん石のの接触と思われる外部損傷確認。攻撃不能のもよう…ピコピコ」

「攻撃してこないの………」

それを聞いたとたん、急に態度が強気になる私。

自分でも自分の性格わかりません。

「そうよ。私は次元特捜よ。何のためにここまで来たのよ。そうよ。そうなんだもん。オレンジさんの敵を討つのよ」

「ピコピコ…指示を下さい…ピコピコ」

「いけー!追うのよぉ!ザンコク星人をやっつけるの!」

「ピコピコ…どうしますか?…ピコピコ」

「えーっと…どうしよう…そう…こうげき…そう攻撃するの」

「ピコピコ…警告を出しますか?…ピコピコ」

「相手は惑星を破壊した凶悪犯人で、レモンさんの愛したオレンジさんを殺したやつよ!そんなの無意味!」

「ピコピコ…READY攻撃準備に入ります。射程距離まであと20秒…ピコピコ」

急いでピコピコバイクのピコピコビームについてのマニュアルを読む私。

「えーっと…エネルギーは100%で…」

「ピコピコ…READYエネルギー100%…ピコピコ」

「撃つと…えーっと…」

「ピコピコ…READY発射します…ピコピコ」

「エネルギーがなくなるので…え?えーっ!」

轟音とともにピコピコバイク先端の発射口から100%エネルギーのピコピコビームが発射されました。

ピゴーッ!

「ピコピコ…命中しました。ーーー。確認。確認物体の被害大、ただし、再び回避行動に入るもよう。入りました…ピコピコ」

「と・とにかくまた追って!追って捕まえて…それで…」

「ピコピコ…エネルギーがほとんど残っていません。見失う確率が高いです…ピコピコ」

「エネルギー余ってたらもらって…それで帰るの…うん…平気!」

だ・け・ど………、

「えーん、見失っちゃったーっ!………」

 

 と、いうわけです。

長かったですか?

あれから3時間です。

私は宇宙の迷子です。

ピコピコバイクのエネルギーがほとんどないので、タイムラグのないダストベースへの緊急通信はもう出来ません。

とりあえずSOS信号を通常通信で送っていますが、どんなに近くに仲間がいても、通信を確認するまで最低2年はかかるんだって。

2年もピコピコバイクの中にいるのか。

おふろにも入れないし、それより何も空気持つのかな?食事はどうするんだろ…。

「ピコピコ…空気は3日分残っています。食事は10日分保存してあります。エネルギー節約のため必要外の会話は慎みます…ピコピコ」

「やっぱり死ぬんだ…。さびしいな…。せっかくいろんな経験しようと思ったのにこんなに早く死ぬはめになるなんて…自業自得かな……」

 

 ちょっと近くに青い星が見えます。

「あれ…地球って言うんだよね」

「………」

「確か銀河系のポイント13の太陽系の青い星は地球って言うのよ。学校の地理の時間に習ったんだ」

「………」

「ここら辺の銀河系は未開拓地区だからよくわかんないんだけど、ここらへんにワープ空間の隙間があってワープ嵐にあったとき、よくここら辺にだされちゃうんだって」

「………」

「でね、えーっと…火星と地球は水も空気もエネルギー源や資源もあるからそこで休養して戻るんだって。これは…何の授業で習ったんだっけかな…」

「ピコピコ…現在地球方向に慣性移動中。火星へは5日。地球へは3日で到着…ピコピコ」

「あ…そうか…火星は無理だけど地球へ行ったら助かるかもしれないんだ……。ピコピコバイク!」

学校で習っておいて良かった………。

 

 3日目。

目の前に地球が見えます。

「苦しいよぉ…。息が…。もう空気がもうないんだ……。もうちょっとなのに………」

「ピコピコ…ただ今、最終突入角度計算中。計算終了後。軌道修正。ーーー。計算終了しました。軌道修正に入ります。ーーー。完了しました。これをもちましてエネルギーもゼロになります。では、ご無事を祈ります…ピコピ………」

あー………意識が………だんだん………遠くなる………。ちょっと体が…あったかいな………。大気圏に入ったんだ………。助かるといいな…私…………………。

 

 私は意識を取り戻しました。

「あ…助かったんだ……」

まだボケーっとしていますが、一生懸命状況把握しています。

右手で髪をかき上げながらまず自分の服装をチェック。

「あーん、汚れちゃったぁ…」

服は私服に戻っていて、地上の土で汚れています。

「レモンさんに買ってもらったお気に入りの服なのになぁ…」

ここは、どうやら森の中みたい。

木がうっそうと茂っていて、地上も土がいっぱいで草がぼーぼー。

田舎の私の星だってこんなとこもうないのに、地球ってもっと田舎なんだ。

「あ…ピコピコバイクは…」

あたりをキョロキョロ。

ない。

そして今度は腰に手を当て、

「ピコピコベルト……」

たぶん全部、地上に落ちたときのショックでカプセルに戻っちゃったんだ。

木に閉ざされて、光があんまり入ってこないので小さいカプセル探せない。

石がいっぱいあるから…。

それでも探す私。

だってこんな未知の星でピコピコセットがなくってどうやって生きていくの。

ピコピコセットがなかったら私は普通の女の子だもん。

 キラッと光った物に気づく。

「あっ!あった!」

カプセルを一つ見つけました。

急いでその場所に走る。

飛びつくようにスライディング。

「きゃーっ!」

私のかわいい手より早く、空中から今まで見たこともない羽の生えた黒い生物が、ピコピコカプセルを足(?)で持って飛んで行ってしまいました。

「何…今の?あれが地球の人間?」

スライディング状態のままの私。

すっかり腰を抜かしてしまいました…。

「あ!」

ちょうどこの位置からもう一つのピコピコカプセルが見えました。

私は、はうようにして歩く。

「カプセル…カプセル…」

もう怖くって、早くカプセルを取りたくて。

「あーん!もうやだーっ!」

今度は、土の中から変な生物が出てきたーっ!偶然出てきたみたいだけど、カプセルに気づくと口にくわえて土の中に。

「待ってーっ!」

私は土がモコモコしていく方を追うけど……。

 

「えーん」

私は木に顔をつけて泣きじゃくっています。

「もうやー!きゃっ!」

木に小さな生物。

私は再び腰を抜かして尻もちをドスン!

「何よ。この地球ってー!」

尻もちの振動かどうかはわからないけど、

「痛っ!」

頭を押さえる私。

上から何か落ちてきた。

「バカ!」

もうやけで叫んで、それを見る。

しかし、

「好きーっ!」

ピコピコケースです。

助かった!と、思ったのもつかの間。

「嫌いっ!」

ピコピコケースは開いた状態だったし何個か外に落ちていたので、そんなに中にカプセルはないだろーなー、とは思っていたけど、中には1個だけ。

「しかも、ピコピコメガネのカプセル」

ピコピコメガネは、人の心が読めるメガネ。ただしプライバシー保護のため、漠然とした部分しか読めません。それでも、嘘言ってるか、本当のこと言っているかもわからないんですよ。かすかに読める心から、良い人か、悪い人か、とか判断するなんて今の私には無理。

しかも、空飛んだり土の中に潜ったりする変な生物にこんなメガネ通用するわけないじゃない。

あったって意味ない道具………。

 

 結局、一生懸命あたりを探したけど、このピコピコケースとピコピコメガネのカプセルしかありませんでした。

「とほー………」

途方にくれている私。

次元特捜バナナJ。

これからこの地球で私を待ち受けているのはいったい何なのでしょう?私はこれからいったいどうなってしまうのでしょう?私はまだ男の人を知りません。

あ…関係ないや…。

とにかく、通信が仲間に届いて助けに来てくれるまでの間、私は一生懸命生きる。

未知の星、地球。

危険な生物ばかりの地球…。

とっても怖いけどがんばる!

「だってバナナは次元特捜なんだもん!」

だから…かっこいいメロンさん、素敵なレモンさん、早く私を助けに来てね…。

お願いだから………、きっと………、ね………。


試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。


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