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女性線維筋痛症患者のbody mass index

 

緒言

線維筋痛症(以下FM)患者には肥満が多いと報告されている。FMの論文は欧米から主に報告されており、body mass index(以下BMI)に関する報告には黄色人種はほとんど含まれていない。黄色人種であるFM患者のBMIはほとんど報告されていない。

 

方法

 女性FM患者47人の初診時のBMIを測定した。白人や黒人との混血と明らかに推測される者は一人もいなかった。1990年にアメリカリウマチ学会が発表した分類基準を満たす場合をFMと診断した。

 

結果

 平均年齢は45.2歳(12-83歳)であった。BMIの平均は22.6であった。BMI18.5未満の低体重は7人(14.9%)、18.5以上-25未満の標準体重が29人(61.7%)、25以上—30未満の過体重が7人(14.9%)、30以上の肥満が4人(8.5%)であった。

 

考察

 女性ではBMIが高いとFMの有病率が高くなる[1]。BMIが高いとFMの症状が強く生活の質が低い[2]。スペインの研究では女性FM患者のBMIは26.40 +/- 4.46であり健常陣のBMI23.64 +/-3.45とは有意差があると報告されている[3]。スペインの研究において、FM女性での肥満の割合は33.7%であり、同年齢の女性でのスペインでの肥満の割合26.4%よりも多かった[4]。

 アメリカのKimらは強度肥満23.6%、中等度肥満22.2%、過体重26.8%と報告している[2]。スペインのCarbonell-Baezaらは女性患者の33.3%は肥満であり、39.2%が過体重と報告している[5]。アメリカのOkifujiらはFM患者の50%は肥満であり、21%は過体重であり[6]、Okifujiらは別の報告ではFM患者の47%は肥満であり、30%は過体重であると報告している[7]。また、イタリアのUrsiniらはFM患者の40%は肥満であり、30%は過体重であると報告している[8]。一方、本研究では8.5%が肥満であり、14.9%が過体重であった。欧米人に比べると日本人には肥満が少ないため、当然といえば当然の結果である。本研究では対照群がないため断定はできないが、BMIに関して健常女性と有意差はないと推定している。

 20週の減量プログラムを完了したBMIが25以上の女性FM患者31人では、平均4.2 kg (4.4%)の減量により症状が軽減した[9]。Bariatric手術という減量のための手術を受けた48人(平均BMIは51)を6-12か月経過観察すると体重が平均41 kg減った結果、BMIの平均は36になり、術前FM患者は12人(25%)いたが術後には1人(2%)になった[10]。ただし、減量が有効なのか食事療法そのものが有効なのかわからない面がある。研究終了後に食事療法を含む減量を継続できることが重要である[11]。

 私は、一般的な健康法として、FMの全患者に標準体重を保つことを勧めている。全FM患者に有酸素運動を勧めている。減量を勧めると、人工甘味料アスパルテームを摂取する人がいる。甘さが砂糖の200倍であり、カロリーがないため、減量目的でそれを摂取する人がいる。発癌性、記憶障害などの副作用疑惑があるが、その真偽は私にはわからない。しかし、アスパルテームによりFMが発症した症例が報告された[12]。空腹感を強めることなどにより、アスパルテームは体重を増加させることが示唆されている[13]。少なくともアスパルテーム摂取により減量できるというエビデンスは私が知る限りない。人工甘味料入りの炭酸ソフトドリンクを毎日飲むと早産の危険性が78%増加する(OR 1.78 95%CI 1.19-2.66)[14]。以上の報告を総合すると、FMやその不全型の患者はアスパルテームを摂取しないことが望ましい。ネオテーム(商品名ミラスィー)はアスパルテームの誘導体でありアスパルテームの30-60倍の甘さがある。現時点ではFMやその不全型の患者に有害かどうかは不明であるが、摂取しない方が無難と考えている。

 

まとめ

 女性FM患者47人中、低体重は7人(14.9%)、標準体重は29人(61.7%)、過体重は7人(14.9%)、肥満は4人(8.5%)であった。日本人FM患者は欧米の患者ほどは太っていない。BMI25以上の患者は減量することが望ましい。FMやその不全型の患者は人工甘味料アスパルテームを摂取しないことが望ましい。

 

引用文献

1) Chaiamnuay S, Bertoli AM, Fernandez M, Apte M, Vila LM, Reveille JD, Alarcon GS: The Impact of Increased Body Mass Index on Systemic Lupus Erythematosus: Data From LUMINA, a Multiethnic Cohort. J Clin Rheumatol. 13: 128-133, 2007.

2) Kim CH, Luedtke CA, Vincent A, Thompson JM, Oh TH: The association of body mass index with symptom severity and quality of life in patients with fibromyalgia. Arthritis Care Res (Hoboken). 64: 222-228, 2012.

3) Hernandez ME, Becerril E, Perez M, Leff P, Anton B, Estrada S, Estrada I, Sarasa M, Serrano E, Pavon L: Proinflammatory cytokine levels in fibromyalgia patients are independent of body mass index. BMC Res Notes. 3: 156, 2010.

4) Aparicio VA, Ortega FB, Heredia JM, Carbonell-Baeza A, Delgado-Fernandez M: [Analysis of the body composition of Spanish women with fibromyalgia]. Reumatol Clin. 7: 7-12, 2011.

5) Carbonell-Baeza A, Aparicio VA, Sjostrom M, Ruiz JR, Delgado-Fernandez M: Pain and Functional Capacity in Female Fibromyalgia Patients. Pain Med. 12: 1667-1675, 2011.

6) Okifuji A, Bradshaw DH, Olson C: Evaluating obesity in fibromyalgia: neuroendocrine biomarkers, symptoms, and functions. Clin Rheumatol. 28: 475-478, 2009.

7) Okifuji A, Donaldson GW, Barck L, Fine PG: Relationship Between Fibromyalgia and Obesity in Pain, Function, Mood, and Sleep. J Pain. 11: 1329-1337, 2010.

8) Ursini F, Naty S, Grembiale RD: Fibromyalgia and obesity: the hidden link. Rheumatol Int. 31: 1403-1408, 2011.

9) McNally JD, Matheson DA, Bakowsky VS: The epidemiology of self-reported fibromyalgia in Canada. Chronic Dis Can. 27: 9-16, 2006.

10) Hooper MM, Stellato TA, Hallowell PT, Seitz BA, Moskowitz RW: Musculoskeletal findings in obese subjects before and after weight loss following bariatric surgery. Int J Obes (Lond). 31: 114-120, 2007.

11) Holton KF, Kindler LL, Jones KD: Potential dietary links to central sensitization in fibromyalgia: past reports and future directions. Rheum Dis Clin North Am. 35: 409-420, 2009.

12) Ciappuccini R, Ansemant T, Maillefert JF, Tavernier C, Ornetti P: Aspartame-induced fibromyalgia, an unusual but curable cause of chronic pain. Clin Exp Rheumatol. 28: S131-133, 2010.

13) Yang Q: Gain weight by "going diet?" artificial sweeteners and neurobiology of suger cravings Neuroscience 2010. Yale J Bio Med. 83: 101-108, 2010.

14) Halldorsson TI, Strom M, Petersen SB, Olsen SF: Intake of artificially sweetened soft drinks and risk of preterm delivery: a prospective cohort study in 59,334 Danish pregnant women. Am J Clin Nutr. 92: 626-633, 2010.

 

 



著者紹介

著者紹介

 

戸田克広(とだかつひろ)

1985年新潟大学医学部医学科卒業。元整形外科医。2001年から2004年までアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)に勤務した際、線維筋痛症に出会う。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や原因不明の痛みの治療を専門にしている。2007年から廿日市記念病院リハビリテーション科(自称慢性痛科)勤務。『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)を2010年に出版。電子書籍『抗不安薬による常用量依存—恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、抗不安薬の罠、日本医学の闇—』http://p.booklog.jp/book/62140を2012年に出版。ブログにて線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や痛みの情報を発信している。実名でツイッターをしている。

 

ツイッター:@KatsuhiroTodaMD

 実名でツイッターをしています。キーワードに「線維筋痛症」と入れればすぐに私のつぶやきが出てきます。痛みや抗不安薬に関する問題であれば遠慮なく質問して下さい。私がわかる範囲でお答えいたします。

 

電子書籍:抗不安薬による常用量依存―恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、精神安定剤の罠、日本医学の闇―http://p.booklog.jp/book/62140

 日本医学の悪しき習慣である抗不安薬の使用方法に対する内部告発の書籍です。276の引用文献をつけています。2012年の時点では抗不安薬による常用量依存に関して最も詳しい日本語医学書です。医学書ですが、一般の方が理解できる内容になっています。

 

・戸田克広: 「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して!―まず知ろう診療のポイントー. CareNet 2011

http://www.carenet.com/conference/qa/autoimmune/mt110927/index.html

 薬の優先順位など、私が行っている線維筋痛症の最新の治療方法を記載しています。

 

・戸田克広: 線維筋痛症の基本. CareNet 2012

http://www.carenet.com/special/1208/contribution/index.html

 さらに最新の情報を記載しています。

 

ブログ:腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へー中枢性過敏症候群ー戸田克広 http://fibro.exblog.jp/

 線維筋痛症を中心にした中枢性過敏症候群や抗不安薬による常用量依存などに関する最新の英語論文の翻訳や、痛みに関する私の意見を記載しています。

 

線維筋痛症に関する情報

戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.

医学書ではない一般書ですが、引用文献を400以上つけており、医師が読むに耐える一般書です。

 


電子書籍

通常の書籍のみならず電子書籍もあります。

電子書籍(アップル版、アンドロイド版、パソコン版)

http://bukure.shufunotomo.co.jp/digital/?p=10451

通常の書籍、電子書籍(kindle版)

http://www.amazon.co.jp/%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E7%AD%8B%E7%97%9B%E7%97%87%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%9C%AC-ebook/dp/B0095BMLE8/ref=tmm_kin_title_0

電子書籍(XMDF形式)

http://books.livedoor.com/item/4801844

 


奥付け

女性線維筋痛症患者のbody mass index

 

著者:戸田克広

2013年3月21日 第1 版第1刷発行

 

2013年12月18日 第1 版第2刷発行

 

http://p.booklog.jp/book/80488/read

著者:戸田克広

発行者:吉田健吾

発行所:株式会社ブクログ

              〒150-8512東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー

              http://booklog.co.jp


奥付



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著者 : 戸田克広
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