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−1−


「バカっ!ふざけないでよ!納得できるわけないでしょ!?」 
「だから、あの子とは遊びなんだって!本気なわけねーだろ!」 
酒場の一画が騒がしい。 
陣取るハンター達も皆一様に苛立ちの表情を浮かべながら、嗜好品を弄んでいる。 
朝一番で酒場に来たハンターは、事の一部始終を把握していた。 
しかし、語る言葉は少ない。 

ある狩猟団のハンターの男女はおそらく(というより十中八九間違いなく)恋人同士なのだろう。 
しかし、ある日男ハンターが他の女に浮気し、恋人である女ハンターにそれが発覚。 
女ハンターは彼氏に問い詰めるが、相手は悪びれた様子もなく言い訳している。 
そう、ただの痴話喧嘩だ。 
犬も食わないし、ランポスも喰わないだろう。 
しかし、それをこの酒場で二人が鉢合ってから、ずっと変わらぬクオリティでお送りされているのだ。 
マイナスのオーラはマイナスしか生まなくなってくる。 
酒場の空気は澱んでいた。 
「もーいい!アンタなんかと話したくない!」 
「あぁ、あぁ、好きにしろよ!適当な所で帰ってこいよ?」 
「帰るか!」 
散々女が罵った挙句、捨て台詞を吐いて、その場を立ち去った。 
女は適当な(それでも彼氏から出来るだけ遠い)テーブルに座ろうとした。 
だが、のんべんだらりとしたハンター達はみな不景気な顔で、その場を動いて狩りの依頼を受注しようともしない。 
座ろうと目を配った先のハンターなど、どうやら自分達のみっともない姿を一部始終見ていたようだ。 
苛立ちと恥ずかしさで……怒りが沸く。 
「なによアンタ!見せモンじゃないわよ!」 
そして荒い鼻息を鳴らすと、受注カウンターに向かった。 
この苛立ちは仕事でもしないと晴れない。 
逸る気持ちは注意力を失い、狩れる相手も狩れず、逆に命取りになる事があるが、今の彼女にそんな心の余裕など無かった。 
「ミーシャ!なんか無いの!?気分が晴れるような仕事!」 
カウンターの受付嬢のミーシャは笑顔で呆れながら、羊皮紙の束を木箱から取り出し、何枚か吟味した。 
そして、今だブルファンゴの様に猛っている彼女を見た。 
「そんな状態で仕事に行っても言いわけ?余計なお世話だと思うけど、狩りに集中できないようなら貴女の方が彼らの獲物になっちゃうわよ?」 
言われて彼女は、フンっと鼻を鳴らす。 
「それじゃあ、このまま大人しくギルドハウスに帰れってわけ?冗談じゃないわよ!」 
「『狩り』こそ、冗談じゃ済まないわよ?」 
ムスっとしたままヘソを曲げた彼女に呆れながら、ミーシャは再び羊皮紙の依頼書をめくった。 
「初心に帰って、『クック先生』に勉強教えてもらったら?」 
そう言うと、ミーシャは一枚の依頼書をカウンターに置いた。 
「イャンクックの討伐?しかも一頭だけ?こんなのルーキーの仕事じゃない」 
「だから、『初心に帰って』って言ったのよ。狩り以外の事で思い煩ってるなら、原点に立ち戻ってみるのもいいかもよ?」 
「初心ねぇ……」 
気分転換なら、自分がいつも受けているような上位の依頼よりも、手軽な仕事の方がいいかもしれない。 
時間が経つと、だんだん落ち着きを取り戻してきた。 
「仲間も新しい人入れてもいいんじゃない?」 
「はぁ?こんなペーペーな仕事、一人で十分よ」 
「組む仲間も『初心に帰って』、よ。悪くないと思うわよ?あなた好みのイイ子に出会えたりして」 
「もう、そういうのはコリゴリ……」 
彼女がそう言うな否や、大きな音を立てて酒場の扉が開いた。 
そして、誰かが転がり込んで来た。 
その転がりようは正に肉団子である。 
肉団子はよろよろとよろめきながら人間の形を取り戻していた。 
「あいたたた……。やっと開いたぁ……」 
肉団子改め、その人間はため息を漏らしながら、身体中の埃を払っていた。 
酒場中のハンター達は大きな音を立てて転がり込んで来た『彼』を見て、卑下た笑い声を上げた。 
背丈は小柄で、長い金髪を後ろに結っている。 
服装は、ハンターの初心者に毛が生えたような装備をしている。 
そして、体格に釣り合わない不格好な長剣を装備している。 
そう、彼もハンターなのだ。 
しかし、風格や威厳の欠片もない。 
そしてなにより……顔立ちが若過ぎた。 
少年……まさしく少年と呼ぶべき姿だった。 
「うわ……何アレ?メチャクチャど新人なんだけど……」 
「見ない顔ね。初めてかしら?」 
少年はきょろきょろ辺りを見回すと、受注カウンターを見つけ、テコテコと歩いて来た。 
「初めまして。今日はじめてこの街に来ました」 
ミーシャは笑顔で迎え入れる。 
ハンターズギルドは、来る者拒まず。 
されど、去る者追わず、である。 
「いらっしゃい。ハンターズギルドへようこそ。ハンター登録するわね」 
「はい、よろしくお願いします!」 
少年は飛びっきりの笑顔でミーシャに微笑んだ。 
ミーシャは素直ではつらつとしたこの少年に好感を持った。 
この好奇心に満ち、良い意味で世間を知らないこの少年は毒されていない。 
そして、少年の横で彼を値踏みしている彼女もかつてはこんな時があったのだ、と思い返していた。 
(成長って、穢れを知る事なのかしら) 
「名前と出身地、それと主に使っている得物と狩猟経験を教えてくれる?」 
「あ、はい!」 
少年ははつらつと返事をした。 
「素直なイイ子ね♪」 
ミーシャは笑顔で返した。 
「名前はシュウです。出身地は……えぇっと……町とか村に住んだ事ありません。ずっと実家の牧場で暮らしてました」 
「そう。出身地は特に問題ないわ。生まれの素性を聞いておきたかっただけ。得物と経験は?」 
「あ、はい。道具は……一応大剣です。狩猟経験は……大物はイャンクックだけです……」 
シュウの狩猟経験がイャンクックだと聞き、酒場のハンター達は再びシュウを哂い出した。 
「ギャハハハ!クックが最高だとよ!こりゃ新米もいーとこだぜ!」 
「おい、小僧!死にたくなかったら、さっさとママんトコに帰りな!」 
ケラケラと笑うハンター達と嘲笑に、シュウは戸惑った。 
下世話なハンター達に、ミーシャと女ハンターは呆れかえった。 
「……気にする事ないわよ、あんな連中。アンタも名前が売れるようになったら、誰も笑ったりしないわ」 
女ハンターは下世話なハンター達を睨んで、シュウにそう言った。 
「あ、ありがとうございます。優しいんですね!」 
シュウが顔を明るくしてとびっきりの笑顔を向けると、思わず彼女は顔を赤くした。 
「そ、そんなんじゃないわよ!他人を哂うような奴が大嫌いなだけよ!」 
そう言って、顔を背ける。 
「そうね。他人を哂う癖に大した働きもせず、ツケで飲んで、楽な仕事で稼いで……。そんなハンターになるかどうか、あなた次第ね、シュウ君。何か聞きたい事がある?無いならハンターランクを決めちゃうわ」 
「あ、そうだ。忘れてた……」 
シュウは懐から鈍く輝く、小さな金属板を取り出した。 
板には短いチェーンが輪になって括り付けられていた。 
「この名前の人、知ってますか?」 
シュウはその板を−自分の背丈より首ひとつ低い−受注カウンターに置いた。 
「『狩人票(ハンター・タグ)』?」 
ミーシャはタグを受け取ると、そこに刻まれている名前を反芻した。 
名前を頭に入れると、タグをシュウに手渡した。 
「その名前のハンターはこの街にはいないわ。残念だけど」 
「そうですか……」 
ミーシャは気を落とすシュウの(繊細で柔らかい)髪を撫でた。 
「力になれなくてごめんなさい。他に質問が無ければ、この街での狩猟許可を出すわ。それからハンターランクなんだけど……イャンクック討伐が大物なら、ランクは『ルーキー』ね。マスターに聞かなくてもそう判断するわ」 
「ありがとうございます!頑張りますね!」 
屈託の無いこの笑顔。 
ミーシャはこの少年の笑顔を好意的に受け取った。 
「ハンターランクがルーキーなら、今この仕事があるわ」 
そう言って差し出したのは、先ほど女ハンターに見せた狩猟依頼だった。 
「クックの討伐ですか?」 
「そ。あなたの力量に合った仕事だと思うわ。もっとも、初心を無くした誰かさんに依頼したかったんだけどね♪」 
ミーシャはそう言って、女ハンターを見ようともせずにクスリと笑った。 
「悪かったわね……」 
ふと、ミーシャは思いついた。 
「ねぇ、カレン。このルーキー君をサポートしてあげたら?」 
「はぁ?なんで私が?」 
女ハンター、カレンが驚嘆の声を上げた。 
「さっきも言ったじゃない。『初心に帰る』。彼と仕事したら、忘れてた気持ちを思い出せるわ。それに、こんな可愛い子を一人で狩猟エリアに放り出せないわ♪」 
「うぅ〜……」 
カレンがこの街を拠点に狩猟生活を営んで以来、ミーシャの笑顔の裏の頑固さは知っているつもりだ。 
どんなに上物の依頼が来ようとも、受けるハンターの技量が見合わないと、ミーシャは絶対に依頼を受注させなかった。 
ハンターがコゲ肉の塊になって帰ってくるのは一向に構わないが、狩猟依頼を出す依頼人は絶対に成功させてくれるのを願ってギルドに依頼するのだ。 
依頼人の信頼、そして依頼人がなけなしの金で支払う報奨金は絶対である。 
それ故、ミーシャは依頼内容と受注するハンターを吟味する。 
ハンターとしての腕と信頼がギルドの掟とも言えた。 
今回の狩猟依頼は、本当は大した事はない。 
とある孤島の密林に山菜狩りをする村人達が、大型モンスターであるイャンクックが住み着いたせいで、満足に収穫をする事が出来ない、というものだ。 
依頼人当人にしてみれば一大事だが、大型モンスターの中でも容易に討伐し易いイャンクックは、狩猟経験のあるハンターであれば、十分討伐可能である。 
ハンターを生業にするかどうかの最初の分岐点であり、ここでイャンクックを狩れないようではハンターと名乗ることも出来ない。 
常人では相手に出来ない獣を己の得物ひとつで仕留める。 
それゆえ特別な存在であるとされるのだ。 
まさしく、イャンクック狩りはハンターライフの原点である。 
数多のモンスターを狩って驕った価値観を省みるのも良いかもしれない。 
それに……。 
(う〜ん……) 
「?」 
この新人が明日の骸(ムクロ)になるのは目覚めがいいものではない。 
カレンは自他共に認めるベテランハンターだ。 
過去には、昨日まで語り合い、酒を飲み、再会を誓い合った同業者が黒焦げの骸になって帰ってきたことも、何度も経験している。 
それが決して気分の良い物だと思ってはいないが……。 
(こんなガキに死なれちゃね……) 
恐らく、歴代最悪の後味の悪さを覚えるだろう。 
せめて、この狩りだけでも無事に終わらせれば、このルーキーは当分黒焦げになって戻ってくる事はないだろう。 
驕りたかぶらなければ、の話だが……。 
「……いいわよ、引き受ける」 
カレンは依頼の受注を引き受けた。 
「あら♪どうしたの〜?気が変わっちゃった?」 
「そんなんじゃないわよ!ただ……」 
「ただ?」 
驕りたかぶっているのは、自分のほうだ。 
「……なんでもない。さぁ、ホラ!アンタの仕事なんだから、契約金ぐらい出しなさいよ!」 
「あぁ、はいっ!」 
カレンは自分の気持ちに一旦の整理を付けると、シュウの頭を叩いた。 
シュウは呆れる程小さかった。 
背丈は受注カウンターよりひとつ頭分高いぐらい。 
カレンやミーシャに比べたらそれこそお子様だ。 
恐らく、同じ世代の年頃の子供の中でもチビに入るだろう。 
そのチビ助のシュウは懐からゼニー硬貨の入った布袋をカウンターに置いた。 
(小タルでも踏み台にしたほうがいいんじゃないの?) 
思わずため息をつく。 
この子供のお守りを、イャンクックを討伐しながら行わなくてはいけないのだ。 
何が自分好みのイイ子だ。 
カレンは鼻を鳴らしながら、依頼書にサインをするシュウを見下ろしていた。

−2−


船で二日かけ、密林に囲まれた孤島に辿り着いた。 
カレンは愛用のランスのメンテナンスを船中で行っていたが、シュウは布で包まれた長剣を磨こうともしなかった。 
それどころか、船に乗る事も躊躇していた。 
「し、沈みません……よね?」 
沈むわけないだろう。 
どれだけ経験が浅いのかわからないが、ハンターの得物と狩りで使用する支給品が一緒に乗ったぐらいで沈むような船は用意しない。 
やはり、世間知らずだ。 
ただ、一旦船に乗ってしまえば、シュウは水を得た魚のように生き生きとした。 
「見て!お魚がいっぱい居ますよ!」 
「はいはい、すごいすごい……」 
「あ、お魚跳ねましたよ!」 
「わかったわかった……」 
完全なおのぼりさんであった。 

密林地帯に着いても、シュウは今だに興奮していた。 
「ほら!見てください!綺麗な貝殻拾っちゃいました♪」 
ランスを背負ったカレンはうんざりだった。 
本当にど素人の新人だ。 
これではクック討伐という話も見栄で嘘ついたとしか思えない。 
(でもまぁ……わからなくはないんだけどさ……) 
狩猟依頼で未知の狩猟場に初めて行った時の興奮。 
カレンも昔、何度も経験した。 
自分が成長し、ハンターとして一歩ずつベテランになっていく実感を持つ事が出来た。 
さすがに、シュウほど大騒ぎしなかったが。 
「はいはい、そこのおのぼりさん。本来の目的忘れてない?」  
「あっ!そうでしたね……えへへ♪」  
シュウは恥ずかしそうにはにかみながら頬をかいた。  

座礁しそのまま捨てられていた小船を改修したベースキャンプに荷物を降ろすと、カレンは硬いベッドの上に地図を広げた。 
この狩猟場である孤島の地図。  
それはエリア毎に番号が振り分けられていた。  
「いい?イャンクックの目撃情報は丘の上の草原地帯……エリアでいうとココね。あと、ベースキャンプの裏側にある、離れ小島に繋がる密林地帯のココ。絶対ってわけじゃないけど、相手はバカでかい生き物なのよ。狭い場所は好まないわ。わかった?」 
「はい」  
シュウは意外な程真剣な眼差しで地図を注視していた。  
その鋭い眼差しに、カレンは、  
(新人でもハンターってワケね)  
シュウのハンターとしての素質を覗くことができた。  
ランスを背負い、シュウに付いてくるように指示をする。  
一旦ベースキャンプから離れたら、移動先で地図を広げるような真似はしない。
隙があれば、攻撃的なモンスターに手痛いダメージを食らうことになる。  
その為に、ベースキャンプで地図を広げた際に狩猟場の全体図を頭に叩き込む必要がある。  
カレンは後ろに付いてくるシュウの様子を見る。  
イャンクックの鱗と甲殻を使った防具を着、重そうに布で包まれた長剣を背負っている。  
普段あんなに重いのでは、実際に使用できるのだろうか?  
片手剣で十分だろうと思う。  
途中、アプトノスやモスなどの草食動物をやり過ごしたが、洞窟の近くになると肉食獣の鳥竜種・ランポスが徘徊している所を出くわした。  
「面倒くさいわね……。群れを呼ばれると厄介だわ。いくら目標がイャンクックでも、ランポスと一緒に乱戦したくないわね」  
「やり過ごしますか?」  
この日初めて、シュウはハンターらしいまともな意見を述べた。  
「このパーティーのリーダーはアンタよ?どうするかはアンタが決めたら?」  
今日の狩りは「新人研修」だ。  
狩りの判断もすべて、リーダーであり研修生であるシュウの判断として問われる。  
第一、ハンターとして生きていく以上、パーティーのリーダーとしてメンバーを統率しなくてはいけない場合もある。  
一人前のハンターとしての決断力。  
今回は2人のパーティーの場合の決断が必要だ。  
いずれは3人4人と統率する時もあるが、それはその時だ。  
「……やり過ごします。無駄に命を奪いたくありません」  
やり過ごす。  
それがシュウの判断だった。  
理由は「無駄な殺生を好まず故」。  
この判断が結果的に吉と出るか凶と出るかはまだわからない。  
正直、ルーキーの判断など、場数を踏んでいる経験者の判断と比べれば勘と同じだと、カレンは経験者として知っている。  
なぜなら、ルーキーの判断は経験によって裏打ちされた物ではないからだ。  
シュウに先見の明があるかどうか、それは本番の狩りで証明されるだろう。  
しかし、結局の所、狩りは「狩るか、狩られるか」の二通りの結末しか用意されていない。  
もしシュウの判断が間違いであっても、結果的に獲物を狩り獲れれば良い。  
もちろん、間違っていた場合は代償も払う必要があるが。  
「……その判断、信頼しとくわよ」  
「……はい」  
本当はカレンが判断した方が早い。  
だが、それではシュウをリーダーにした意味がない。  
この狩りは「新人研修」であり、副次的には「初心に帰る」狩りである。  
いざという時以外、自分が表に出る必要はない。  
ランポスに気付かれぬよう、二人は姿勢を低く屈みながら移動した。  
獰猛であり、また生まれつきのハンターであるランポスは知能も高い。  
気付かれれば仲間を複数呼び、取り囲み、ある時は一匹を囮にして隙を作らせ、襲い掛かる。  
そして自分達が劣勢と分かれば、何度も仲間を呼び、数の力で獲物を狩り取る。
そんなランポスと、目標である飛竜を同時に相手にしては、修羅場は必至だ。
ランポスに気付かれぬように静かに迂回するシュウとカレンだったが、ランポスは一頭では済まず、やはり群れで活動していた。
先に出会ったランポスは獲物を捜し求めていたのだろう、鋭い眼の視線を仕切りに走らせていた。  
エリアを越えても、同じように獲物を捜し求めるランポスに出くわす。  
丘の中腹から洞窟前のエリアまで、ランポスの群れは行動を広げて活動していた。  
獲物を捜し求める「先遣隊」だけでも面倒だが、彼奴がその泣き声で群れを呼べばかなりの数のランポスが集結する。  
何頭いるかは計れないが、相手をするだけ厄介なだけだ。  
ランポスの先遣隊に気付かれずに洞窟までたどり着いた二人は、入り口をそっと窺った。  
飛竜はたまに洞窟などで身体を休めることもある。  
上空から出入りできる場所に身を潜めることも可能だが、ハンターが飛竜を狩り取るには絶好のポイントである。  
カレンは、  
(この中に居てくれると助かるんだけどな……)  
と思いながら洞窟の入り口を覗いた。  
「入りますか?」  
シュウがカレンに問う。  
「なんで疑問形なのよ。入るわよ」  
カレンはそう返し、足を踏み入れた。  
シュウも同じように足を踏み入れた、その時だった。  
ランポスの甲高く不愉快な声が二人の耳に飛び込んだ。  
「気付かれたっ!?」  
カレンは踵を返すと、ランスを抜いて構える。  
シュウは布で巻かれた大げさな長剣を、そのまま吊り下げていた肩のフックから外し、布に包まれたまま構えた。  
カレンは思わず、ぎょっとした。  
「ちょっ!?ちゃんと抜きなさいよ!」  
「……見て下さい」  
カレンよりも冷静な温度で、シュウは洞窟を背にして、ランポスの悲鳴の先を見た。  
それは漆黒に近い紫だった。  
飛竜の体系をしているが、よく見れば、竜脚亜目ではなく、鳥脚亜目であることがわかる。  
そして、所々に、ハードでパンクな空気を醸し出すオーラがあった。  
あれは明らかにイャンクックではない。  
イャンクックの派生種とも言われる、イャンクックとは別種の鳥竜、  
「い、イャンガルルガ!?」  
イャンクックに似ているが、生態系はまるで別物の生物である。  
孤独を愛し、そして常に攻撃的であるため、遭遇するハンターの中ではジョーカー扱いされている。  
しかし、それでも同じ生き物、狩り穫れぬ事はない。  
だが、イャンガルルガはしぶとい。  
その攻撃性と生への執着は並大抵ではなく、古傷を持っているイャンガルルガはかなりの強敵である。  
しかも、シュウとカレン、そして鳴きわめくランポス達の前に飛翔し、舞い降りたイャンガルルガは、片耳は千切れ、片目を失っているが、それがつい最近ではないことは見ればわかった。  
カレンの街のギルドでも何度か耳にした事があるモンスターの通り名を思い出した。  
「スカー・フェイス(傷顔)……」  
それは、ギルドが目撃した中でもっとも強く、未だに討伐されていない最強のイャンガルルガの事である。  

−3−


カレンは戦慄した。  
冗談ではない。  
相手は容易いイャンクックだと思っていた。  
ところがそうではなかった。  
もしかしたら依頼者が姿形の似ているイャンクックと勘違いして依頼してきたのだろうか?  
しかし、その真相はもうどうでもいい。  
圧倒的に不利だ。  
こちらはまだ戦闘経験も未熟で連携も取れていない新米を含む二人。  
それに比べて、相手は歴戦のハンターを相手に生き抜いてきた鳥竜種の顔役である。  
正直、カレン一人で勝てる相手ではないと、自身でわかっている。  
だが、今回はズブの素人をつれているのだ。  
「アンタ!ここは逃げるわよ!」  
ランスを背負うと、シュウの肩に手をかける。  
しかし、シュウは動かなかった。  
だが、微かに震えている。  
「いやです……」  
「ビビってんのわかってんだから!強がらないで、逃げなさい!」  
カレンは恫喝した。  
シュウが見栄を張っているのはわかっていた。  
討伐依頼の目標が当初より遥かに強者だとは運がなかったが、それでも引くべきときに引く。  
蛮勇は勇気ではない。  
犬死にである。  
しかし……、  
「いやだっ!!!」  
後方の洞窟にまで反響するバインドボイスだった。  
カレンは思わぬ咆哮に、すくみ上がった。  
そして、シュウの表情を見た。 

驚嘆……そして歓喜。  
興奮を隠しきれていない。  
極上の幸福と狂喜。  
明らかに、シュウはスカー・フェイスと出会って喜んでいた。  
それは、初心者の反応ではなかった。  
狩りを至上の喜びであると認識している……正真正銘のハンターの反応だった。  
「グワァアアアアアアアアア!!」  
シュウのバインドボイスに気付いたスカー・フェイスは、自身の持つ高音のバインドボイスを放った。  
思わずシュウも耳を塞いだが、すぐに布に巻かれた長剣の柄を握りしめた。  
「うわああああああああ!!」 
シュウのバインドボイスが再び咆哮した。  
それは警戒や恐れなどではない、歓喜に満ちた声だった。  
シュウは身体中で喜びを表現しながら、右手に携えた長剣を持ったまま、イャンガルルガ目がけて突進していった。  
「ちょっ!?馬鹿ぁ!」  
イャンガルルガ『スカー・フェイス』は蛮勇であり、喜び猛っているシュウに向かって、火球ブレスを放った。  
それも一発だけではなく、二発、三発と続けてだ。  
カレンは凍り付いた。  
あの馬鹿、あっという間に黒こげになる……。  
カレンは思わずランスを構える。  
火球がカレン目がけて飛びかかってきたからだ。  
「うぅっ!!」 
焦げる匂いが鼻をつき、ブレスの衝撃が身体を揺さぶり、もう少しで跳ね飛ばされているところだった。  
だが、ランスの盾でガードし、なんとか耐え抜いた。  
このガードの良さが、ランスの良点でもある。  
カレンは直ぐに盾から顔を出して、シュウを見やった。 

……シュウは生きている。  
しかもスカー・フェイスの火球ブレスを軽やかに回避していた。  
(うそ……!?)  
カレンは今まで、あんなに軽やかに動くハンターを見た事がなかった。  
曲芸の様に前転し、側転し、後転し、火球ブレスを避けている。  
ふと、スカー・フェイスのブレスが止んだ。  
と、同時に、着地したシュウは、イャンガルルガが自分の舞を見てくれたかどうか期待するような顔で、にこやかにかの鳥竜種に微笑んだ。  
それは、狩猟場において、狩るか狩られるかという、命のせめぎ合いの場には相応しくない、あっけらかんとした笑顔だった。  
カレンはただただ見ているしかなかった。  
スカー・フェイスは、自分の火球ブレスを鮮やかに避けられ、余裕の笑みを浮かべたシュウに向かって、高音のバインドボイスをあげた。  
それは自分を嘗めた人間に対する怒りだった。  
高音のバインドボイスにカレンもシュウも両耳を手で塞いだ。  
だが、スカー・フェイスが咆哮をやめ、その片方しかない目でシュウを睨みつけると、シュウは再び屈託の無い笑みを浮かべた。  
そして、シュウが発した言葉に、カレンは言葉を失った。  
「楽しいよ!さぁ、狩ろう!」  
シュウは右手に携えた長剣を構えた。  
だが、長剣には布が巻かれたままだ。  
なぜ巻かれたまま外そうとしないのか、カレンにはわからなかった。  
あれでは、斬れる物も斬れない。  
(まさか……)  
斬らないつもり?  
「いやああああああ!」  
シュウが長剣を縦に構え、スカー・フェイスの懐に潜り込む。  
在来種より比較的巨体なスカー・フェイスと、同年代の年の子の中でも低身長であるシュウは、あまりにも個体差が大きすぎた。  
だが、その低身長が、シュウの長所になっていた。  
懐に飛び込んだシュウを、その長い尻尾で弾き飛ばそうとしたスカー・フェイスだったが、難無く頭上をかすめ、軌道から回避されてしまった。  
その間に、シュウは布に巻かれたままの長剣をスカー・フェイスの右脚の腿に打ちつけた。  
だが、イャンガルルガの固い甲殻と鱗に弾かれる。  
しかし、諦めずに二打目を打ちつける。  
スカー・フェイスは足下をうろつく小動物に苛立ち、右脚でシュウを蹴り上げようとした。  
だが、その蹴りはシュウの身軽な後転ジャンプの前に敢えなく空を切る。  

カレンはようやく我に返った。  
シュウばかりに、強敵スカー・フェイスを相手させるわけにはいかない。  
カレンはランスを構え、先端をスカー・フェイスに向けると、足に力を込めて駆け出した。  
自身が走る槍になり、するどい先端をノーマークである左脚の腿目がけて突撃する。  
「グァアア!」  
突如、予期もしなかった方角からの攻撃に、スカー・フェイスは戸惑っていた。  
だが、自身も幾多のハンターと戦い生き延びてきた百戦錬磨の鳥竜種である。  
生き延びる事と、ハンターを屠る事は同じ事だった。  
だが、他のモンスターと違い、(いや、彼自身がそう思っている範囲でだが)人間、特にハンターという生き物を決して簡単に屠る事が出来る程、容易いものではない事を知っている。  
だから、侮らない。  
過小評価しない。  
カレンのランスが甲殻を貫き、太腿を刺すが、カレンの右手は手応えが感じられなかった。  
浅かった。  
おそらくはスカー・フェイスのご自慢の甲殻と鱗が、カレンのランスに大いに抵抗したのだろう。  
右手を手前に引けば、あっさりと左脚からランスの先端は抜けた。  
すると、スカー・フェイスは紫に染まった翼を広げ、上下に扇いだ。  
カレンとシュウの目の前から翼が生み出す疾風が駆け抜けた。  
シュウは両腕で目の前をカバーし、腰を落として風圧に耐えようとしたが、それでも身体がさらわれそうになる。  
「ワタシの後ろに隠れなさい!」  
カレンは叫ぶと、ランスの盾を構え風圧に耐えた。  
ランスの盾を構えると抵抗力が増し、腕が疲労するが風圧は防ぐ事が出来た。  
シュウはカレンの声に導かれるように、カレンの肩を掴み、滑り込むように後ろに隠れた。  
カレンも腰を落として抵抗力をできるだけ減らそうとした。  
「くぅ……ううううう!」  
風圧の大きな抵抗に苦しみながらも、カレンは耐えた。  
スカー・フェイスの翼の扇ぎは、自身が1メートル程滞空する程強力な風圧だった。  
だが、カレンは耐えた。  
耐え抜いてみせた。  
スカー・フェイスは、自身が生み出した風圧に耐えたカレンを睨むと、1メートル程の高さから両脚の爪を延ばして、滑空し、襲いかかった。  
カレンは飛びかかる爪を盾で防ぐが、大きな抵抗力が左腕にかかる。  
ガリガリと不快な音が盾から発せられた。  
だが、攻撃はそれだけではない。  
滑空し飛びかかってきた事によって、イャンガルルガの重心が、爪先に集中する。  
その爪の攻撃を防ぐという事は、イャンガルルガの体重を防ぐという事だ。  
強力な抵抗力は、防ぐという行為を逆に危うくする。  
一枚岩のように防ぐ構えは、人間の身体の各関節と筋肉に強大な負荷が掛かる。  
人間一人の重さならともかく、巨大なモンスターの体重など、人間の身体が支えられるわけがない。  
無理に抵抗すれば、身体は耐えきれず破壊される。  
それを逃れるには、抵抗力を外へ受け流す必要があった。  
カレンは防ぐ構えから、イャンガルルガの重心を左に受け流す。  
イャンガルルガの両脚はカレンの斜め左前の大地を掴んだ。  
カレンは左腕に強く残る負荷を気にせず、腰に力を入れて、ガードの体勢からそのまま右手のランスをイャンガルルガの左腿に突き刺した。 
固い甲殻の抵抗を感じ、ランスが浅く刺さる感触を得るが、構わない。  
二回、三回と、ランスを前に突き出し、ダメージを与え続ける。  
スカー・フェイスは左腿に感じる痛みを嫌い、左脚でカレンを蹴り上げようとする。  
だが、カレンはその度に、左腕の盾で防ぐ。  
その武器の特質上、ランスはガードの負荷が高い。  
女性が持つ武器としては不向きになるだろう。  
だが、あえてカレンはそれを選んだ。  
大型モンスターの脅威の最前線に立ち、注意を引きつけ、ひたすら耐える。  
「くっ!」  
スカー・フェイスの蹴り、そして尻尾の回転攻撃を防ぐ度に、カレンはその負荷に耐えた。  
その時、甲高い悲鳴が後方で鳴いた。  
忘れていた。  
スカー・フェイス以外にも、モンスターはいたのだ。  
完全に注意は前方に集中しており、後方はノーマーク。  
背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。  
だが、ランポスは悲痛な叫び声をあげた。  
カレンは前方への注意を逸らす事が出来ない為、後方で何が起きたかわからない。  
だが、カレンの背中に触れる人の手で初めて理解できた。  
忘れていた。  
自分は一人ではない事を。  
「カレンさん!離れて下さい!一人では耐えきれません!」  
シュウが叫ぶ。  
耐えきれないのは、シュウではなく、カレンだと。  
「……甘くみないで!こんな奴、私ひとりでも十分よ!」  
その時、わずか一瞬、意識が後方のシュウに向けられる。  
一枚岩の盾に隙が生まれた瞬間だった。  
スカー・フェイスのトゲ付きのこん棒のような尻尾が、ガードがゆるんだ盾に強力に叩き付けられた。  
「っ!?ああっ!!」  
カレンは仰向けに吹っ飛ばされた。  
強力な尻尾攻撃に、身体中に衝撃が伝わる。  
その尻尾の威力の強大さは、カレンが大きく吹き飛ばされた事によって証明された。  
シュウは持ち前の反射神経で、吹き飛ぶカレンに巻き添えを食らわなかったが、スカー・フェイスの次なる尻尾攻撃が目前に迫っていた。  
尻尾が迫り来る瞬間、シュウは弓なりに身体の上体を逸らす。  
トゲがシュウの防具をかすめると、バランスを崩して、そのまま草地の地面に倒れる。 
倒れ込んだシュウはそのままうつ伏せになり、膝を立て、スカー・フェイスを後ろにして、離れるように駆け出した。  
駆け出した先は吹き飛ばされたカレン。  
そのカレンに襲いかかろうとランポスが構えていた。  
ランポスがカレン目がけて飛びかかると、シュウは長剣の柄を両手に持ち、身体を右回転させて腰に力を込めて、長剣を飛びかかるランポスに食らわせた。  
長剣はランポスの細い首に食い込みへし折ったが、シュウは狙っていたわけではない。  
シュウの長剣に吹き飛ばされたランポスはそのまま息絶えた。  
だが、そんな事はどうでもいい。  
シュウは長剣を肩のフックに掛け納刀すると、地面にうつ伏せに倒れているカレンの上体を抱き上げた。  
「カレンさん!カレンさんっ!」  
カレンの目はおぼろげになり、瞳孔が定まっていなかった。  
そうとう強力な打撃力であったことがわかる。  
そもそも、人間は道具という文明があるからこそ、大型モンスターとの食物連鎖に対等の位置にいるのだ。  
本来の自然界では、圧倒的に人間の方が劣る。  
イャンガルルガとは、圧倒的に力負けしている。  
そのため、大型モンスターとの対峙は、一瞬の隙が文字通りの命取りになる。  
盾など、攻撃を防ぐ手段のない得物を持つハンターならば、尚更だ。  
ガードできる得物を持つハンターですら、その負荷は厳しい。  
シュウはカレンの身体を抱き起こすと、注意をスカー・フェイスに向ける。  
彼奴は絶好の機会だとばかりに、クチバシから黒煙を上げ、喉の奥を鳴らしている。  
次にする行動は直ぐに読めた。  
シュウはカレンの身体を担ぐ。  
大人の人間とさらには防具とランスの重量がのしかかる。  
だが、投げ出せるものか。  
シュウは力の限り、カレンを担いで、洞窟へ向かって駆け出した。  
駆け出すと、さっきまで二人がいた場所に、火球ブレスが着弾した。  
草を一瞬で焦がし、匂いが充満する。  
シュウはスタミナのある限り、必死に走った。  
血管が脈打ち、心臓の鼓動が聞こえる。  
空気が張りつめ、時間の間隔がゆるやかに感じられる。  
二弾目のブレスの軌道すらゆるやかに描かれているように見える。  
シュウは二弾目のブレスの着弾点を推測し、その軌道から外れるように避けた。  
スカー・フェイスは完全にシュウの視界に入らない後方である。  
シュウの後頭部に目があるわけでもない。  
スカー・フェイスの存在感、威圧、殺気。  
それらが固まりとなり、シュウに存在をアピールしている。  
……そして、風。  
風の流れが、スカー・フェイスの行動を伝えてくれた。  
シュウが洞窟の中に飛び込んだ時には、三段目のブレスが、洞窟の入り口に着弾した。 
そのまま洞窟に入り、逃げ込んだシュウの耳に、甲高いスカー・フェイスの咆哮が飛び込んだ。

−4−


洞窟の中は浅い水場になっていた。  
グリーブの中へ、水は容赦なく入り込み、身体を芯から冷えさせる。  
水の無い腐葉土に登ると、シュウはカレンをゆっくりと降ろす。  
身体中にのしかかる重量を降ろすと、シュウは荒くなった息を整えた。  
二三、深呼吸をすると、腐葉土の地面に横になっているカレンの傍に駆け寄った。  
カレンは目を閉じていたが、呼吸は緩やかに行われていた。  
先ほど見た時は意識が混濁していただろうが、今は完全に気を失っている。  
だが、モンスターの攻撃から身を守る為の防具は、今やカレンの身体を圧迫する以外の何物でもなかった。  
赤い甲殻のヘルムを外すと、狩りの前に見たカレンの茶色の髪が現れた。  
同じ甲殻のアームグローブを外すと、肉付きのいい、だが細く長い腕が現れた。  
グリーブを外すと、良く鍛えられている美しい脚が現れた。  
シュウは何度か逡巡する。  
腰当てと胴当ても外すべきだろうか?  
だが、この二つの装備が彼女の疲弊した身体を圧迫させているのも事実である。  
シュウは意を決して、この二つに手をかける。  
胴当てを外すと、白いインナーに包まれた豊かな乳房が現れた。  
腰当てを外すと、白いインナーパンツを履いた、艶やかな下半身が現れた。  
半ば怒られる事を覚悟していた。  
だが、放っておくこともできない。  
圧迫させていたカレンの防具を彼女の近くに一纏めにして置くと、シュウは自身のポーチから大振りな布巻きを取り出した。  
それは掛け布団とよべるほど、厚くも大きくもなかったが、外気の寒さをいくらかは防ぐことが出来る。  
その布をカレンに掛ける。  
シュウは辺りを今一度良く見渡した。  
天井の狭い、水場のある深い洞窟。
天井は空洞になっており、翼を持つ大型のモンスターは入り込めるだろうが、身体を休める以外立ち寄る事はない。
もちろん、小型や中型のモンスターは難無く入り込めてしまう。  
それでも、あの脅威であるイャンガルルガの攻撃から逃れる事は出来た。  
正直な話、あのスカー・フェイスは強敵である。  
あの体躯に、あの威力。  
長年にわたって、ハンター達の攻撃から生き延びてきたのだろう。  
あの大きさは脅威であった。  
尻尾攻撃も、ガードの集中が途切れたカレンを大きく吹っ飛ばし、昏倒させるほどだ。  
火球ブレスも恐ろしいが、なにより、大きく成長したあの体躯自体が脅威になっている。  
シュウは自身の、布に巻かれた長剣をみやった。  
最初は嬉しかった。  
滅多に会えない強敵に出会えた事を。  
次は楽しかった。  
強敵との死闘を。  
だが、最後は焦った。  
自分ひとりがやられるならいいが、先輩であるカレンが倒されてしまった。  
あの瞬間、一気に狩りへの情熱は冷め、生命の危機を感じた。  
(これが……パーティでの狩りか)  
この狩りは、自分ひとりではないのだ。  
自分の横に並び、共に戦う仲間がいるのだ。  
そして、その仲間も、ほんの一瞬の隙で命を失ってしまうのだ。  
……そんな事は初体験だった。  
自然と身体が振るえた。  
恐怖に駆り立てられ、好奇心がゆさぶり、闘争心が燃え上がった。  
あいつを……スカー・フェイスを狩りたい!  
だが、今は意識を失っているカレンの容態に注意すべきだろう。  
カレンはうなされていた。  
傍により、額に手を当てる。  
……冷たい。  
腕や脚も触ったが、冷たくなっている。  
この洞窟の外気と水で冷たくなっている。  
簡素なシェラフなどでは保温することも難しい程だ。  
このままでは凍死する。  
洞窟に完全に腰を下ろした状態では、移動も叶わない。  
シュウは立ち上がると、洞窟を駆け巡った。  
洞窟の奥に、モンスターの巣らしきものを見つけた。  
そのなかから棒状の骨をいくつか拾った。  
次に、岩壁に絡み付くツタの葉をいくつか拾った。  
カレンの場所まで戻ると、シュウは棒状の骨を床に置いて、組み立て、その中にツタの葉を持っている量の5分の1程詰める。  
のこりはカレンの下の敷く。  
シュウはポーチの中から金属製の長方形状の小物を取り出した。  
それは長方形状の着火装置だった。  
蓋を開け、円形の発火装置をまわすと、火花が長方形の金属の器に入った紐と細い金属棒を編み込んだ芯に着火し、大きな火が付く。  
その火を骨で囲んだツタの葉に伝え、火を移し燃やした。  
骨が熱せられ、燃えるツタの葉の熱で、骨にヒビが入る。  
ようやく周りが暖かくなった。  
シュウはポーチから紙巻きタバコの入った缶を取り出し、中に入った一本を口にくわえると、反対側に火を付けた。  
吸い込むと暖かい煙が酸味と共に口の中に広がった。  
着火装置の蓋を閉め、火を消すと、シュウは口にタバコをくわえたまま、自身の防具を脱いで、インナーのみになった。  
そうすると、カレンを抱き上げ小さなシェラフに包み、彼女の身体をさすった。  
タバコを吸って自身の身体を暖め、人肌にカレンも暖める。  
他人と共に行動する事がほとんどなかったシュウが思いつく、最善の方法だった。  
気のせいか、カレンのうめき声は止み、安らかな呼吸が聞こえるようになった。  

タバコを何本吸っただろうか。  
シュウが気付かぬうちに、カレンは意識を取り戻した。  
最初に感じたのは、心地よさだった。  
人肌のぬくもり、人との触れ合い、子供の頃の原始の記憶。  
さまざまな記憶が呼び覚まされた。  
そして、おぼろげにだが、ゆっくりと意識を覚醒して目にしたのは、少年の顔だった。 
「あ、あれ?」  
その声に、シュウはようやくカレンが目覚めたと気付いた。  
「あ、カレンさん!」 
シュウはくわえたままのタバコを落とさないようにしながら、声に出していた。  
「あ、アンタ……」  
自分はどうなっていたのか?  
最初は理解できなかった。  
目覚めると、心地よい空間に包まれていた。  
自分が意識を失ったのは……確か、強力な衝撃に身体が痺れていた時ではなかったか?  
では、なぜ自分はここに?  
シュウが、吸い終わったタバコの吸い殻を水気の多い地面でもみ消す。  
ふと、カレンは気付いた。  
自身を纏う装備がない。  
しかも、身体はシュウの上に乗せられている。  
……一気に熱が冷め、事態を把握した。  
次の瞬間には、スパン!という小気味のいい音を立てて、手が出ていた。 
「い、痛い……」  
シュウは涙声で、叩かれた頬を摩った。  
「あ、アンタ!私に何してんのよ!」  
「ご、ごめんなさい……」  
事態を把握したカレンはとてもじゃないが、冷静でいられなかった。  
インナー一丁にひん剥かれ、男と一緒に文字通り肌を重ね合わされた。  
いきなりな展開に、耳まで真っ赤になった。  
「アンタ!私の彼氏じゃないくせに、なんでこんな!こんな……」  
先ほどのシチュエーションを思い出す度に恥ずかしくなる。  
だが、心地よかったのは本当だった。  
そして、冷静に考えれば、シュウの行動は決して色欲に目がくらんでの行動ではない事がわかっていた。  
だが、認める自分が悔しい。  
「すみません……。身体が冷たかったので、これしか方法思いつきませんでした……」 
同じインナー姿のシュウはしょんぼりとうなだれた。  
冷静に考えれば、この冷えて、水気の多い洞窟で、身体をあたためる行動などたかがしれている。  
現に今でも、シュウが作ったであろう、骨と草で作った薪は二人を暖かくしてくれている。  
そして、自分がさっき目が覚めるまで、どんな状態であったかは予想は出来た。  
シュウは、彼なりに最善を尽くしたのだ。  
もし逆の立場なら、自分もシュウに同じ事をしたかもしれない。  
だんだん、カレンは申し訳なくなってきた。  
シュウは自分の為にやってくれたのだ。  
それを張り手で応酬してしまった。  
「ご、ごめん……。私のためにしてくれたのに、叩いてごめん……」  
カレンが申し訳なく、詫びの言葉を言うと、シュウは穏やかな表情になって、首を横に振った。  
「いえ、僕も勝手な事してすみません」  
シュウは健気にも微笑んでみせた。  
カレンは何度この笑顔に驚いたか忘れてしまった。  
初めて街で出会い、一緒に狩りに出かけ、初めてモンスターと出会った。  
その度に、この笑顔を見せてくれた。  
こんなあか抜けな笑顔、以前に見た事があっただろうか?  
「アンタ……不思議なヤツね。なんで、そんなにいい笑顔が出来るの?」 
カレンに言われ、シュウは「?」を頭に浮かべた。  
「う〜ん……何か、理由があったほうがいいですか?」  
シュウの言葉に、カレンは首を横に振った。  
「ううん、無くてもいい。無償の笑顔が、アンタのいいところなんだね」  
そう言うと、カレンは、緩やかな微笑を浮かべた。  
カレンの微笑に、シュウも再び笑顔になる。  

思い出した。  
あれは初めてハンターとして狩りに出た時、初めて行く場所で、初めてのモンスターと出会い、仲間と笑い合った事。  
忘れていた。  
思い出すのに、時間が掛かるほど、笑顔を忘れていた。  
あの時の笑顔は、裏表のない、上辺だけじゃない、本当の笑顔だった。  
いつから、笑顔を忘れてしまったのだろう。  
いつから、喜びを忘れてしまったのだろう。  
いつから……。  

シュウは立ち上がると背伸びをし、カレンの頭を撫でた。  
「……ナニしてんのよ?」  
「いい笑顔をくれたご褒美です♪」  
素晴らしい笑顔を返すシュウ。  
カレンはそのシュウを胸に包んだ。  
「え……あ、あの……」  
「これは……私に笑顔をくれたご褒美よ」  
カレンはそう涙声で、シュウの耳元で呟いた。  
「……泣いてるんですか?」  
「ば、バカ…!」  
カレンがハッとして目尻に浮かんだ涙を拭くと、シュウの顔が目に飛び込んだ。  
先ほどの満面の笑みが、人を慈しむような顔になっていた。  
優しい顔だった。  
見ていて癒されるのがわかる。  
(チクショウ……)  
なんだか無性に泣けてきた。  
もう泣いてしまえ。  
このガキの前では、意地を張る事など意味がない。  
喜怒哀楽、すべての感情を揺さぶられる。  
悔しいが、嬉しくて泣けてしまう。  
卑怯だが、このガキの前では泣いてしまおう。  
そして嬉しくて、自分の中にある、シュウに対する気持ちを理解してしまった。  
無くしてしまったあの頃の感情。  
失って初めて気付いた。  

ただ単純に、人を好きになる気持ち。  

(そっか……。私、コイツの事……)  
もう一度シュウを抱きしめた。  
今度は自分の中に溢れ出た感情すべてを伝えようとした。  
カレンの腕は、華奢なシュウを身体を包み込んだ。  
少々痛いかもしれない。  
だが、それぐらい構わないだろう。  
自分の気持ちを伝えられるなら。  
すると、シュウが身体の下からカレンを抱きしめ返した。  
(え?)  
シュウの頭はカレンの胸の谷間に収まってしまって顔が見えない。  
それでも、シュウの腕は慈しみの感情に満ちている事がわかる。  

……とことん、卑怯だと思う。  

シュウの顔を自身の胸から解放した。  
そして、どちらが先かはわからないが、  

二人は唇を重ねた。

−5−


洞窟内は、再び静けさが訪れた。 
一枚のシェラフを、シュウとカレンが身体を寄せ合って包まっていた。 
「タバコ……、一本くれる?」 
カレンの言葉に、シュウはポーチから紙巻きタバコの入った缶ケースを取り出す。 
カレンはその中の一本を取り出すと口に銜えた。 
シュウは再びポーチを探り、先ほどの金属製の着火装置を取り出して、火を着けた。 
カレンはその着火装置を見やると近づき、タバコの端に火を着けて一服した。 
「アンタ、『ライター』持ってるんだ」 
「あ、はい」 
ライターはこの世界では高級品のひとつだった。 
用途はあらゆる物に着火する装置だが、主に喫煙の際に火を着ける為に使われる。 
細工も、薄く加工しやすい鉄板製から、調度品のひとつとして黄金製や鉱石を鏤めた物もある。 
いずれにしても加工を職人がひとつひとつ仕上げるので単価は高い。 
しかし、基本的な構造は規格化されているのでほとんど違いはなく、修理もしやすい。 
シュウの持っているのは金属製の比較的安めの代物だが、使い勝手が良い。 
そして、一般的なライターと違う点がある。 
「ギルドマーク……それ、ベテランハンターに支給されるやつでしょ?」 
「はい」 
シュウのライターは、ハンターズギルドの紋章が外側のケースに刻印されている代物だった。 
しかもそのマークの下には、個人名が記されている。 
それはハンターズギルドがハンターの功績を讃えて贈る品のひとつだ。 
その為に、マークの下に持ち主の名前が予め刻印されており、ハンター達のステータスになっている。 
「……アンタの師匠の?」 
「そうです。師匠が貸してくれたんです。『タバコも吸えない奴は舐められる』って」 
「そっか。いつかアンタも自前の貰えるようになんないとね」 
「そうですね、あはは」 
カレンはタバコを吹かしながらシュウの頭を撫でた。 
コイツはすごいハンターになる。 
今はまだ初心者扱いされているが、いずれベテランになる。 
この私を超すぐらい。 
ふと、思う。 
コイツの傍にいて、それを見てみたいと。 
シュウの師匠になる、というわけではないが、傍で成長する姿を見てみたい。 
もちろん、このガキに惚れてしまったという事もある。 
カレンは吸って短くなったタバコを地面でもみ消す。 
シュウはそれを見ると、傍らに置いていた防具を手に取った。 
カレンも思い出して防具に手をかけた。 
忘れていた。 
その前にまだやるべき事が残っている。 
防具を装着し、やるべき仕事を再認識する。 
シュウとカレンが防具を着終わった次の瞬間、上空から突風が吹き付けた。 
「!?」 
二人は咄嗟に武器を構え、腰を落として風圧を防ぐ。 
どうやらシビレを切らして向こうからお出ましになったようだった。 
「イャンガルルガ!」 
二人がその存在を認識すると同時に、イャンガルルガ『スカー・フェイス』の咆哮が洞窟中に響き渡った。 
狭く反響しやすい洞窟でのバインドボイスは想像を絶した。 
この水気で匂いを誤摩化す事が出来たのもさっきまでだ。 
もはや対峙するしか他は無い。 
だが……。 
「ここは場所が悪いです!逃げましょう!」 
シュウは長剣を納刀すると洞窟内部に通じる入り口にカレンを指差した。
飛竜が身体を休める為にこのエリアに入ることがあり、ハンターにとっては絶好の狩猟場所だと前述した。
それはその巨体ゆえに満足に飛竜が動く事が出来ないという事だ。
だが、裏を返せば、飛竜の身体が収まったこの洞窟はハンターにとっても逃げ場の無い場所でもある。
飛竜があらかじめその場所にいると知って奇襲をかけるのと、突然現れたのとでは話が違う。 
「言われなくても!」 
カレンがそう言い、シュウと共に走り出した瞬間、スカー・フェイスも「走り出した」。 
大きな両脚が大地を掴み、その巨体で二人を押しつぶそうとした。 
スカー・フェイスの巨体が二人に迫る。 
二人は洞窟内部の入り口目がけて、ジャンプして前のめりに飛び込んだ。 
二人は転げながら洞窟の中に入り込む。 
防具を着込んでいるお陰で擦り傷ひとつなく済んだが、意識は途切れさせない。 
先ほど二人が入った洞窟内部の入り口は狭く、スカー・フェイスの頭しか通れなかった。 
翼を含む胴体は入り口にぶつかり、内部に侵入することも出来なかった。 
二人が入り込んだ洞窟は先ほどまでいた場所よりも大きな空間だった。 
大きな洞窟の両脇は崖になっており、下が見えない。 
天井上部は、鍾乳洞だろう石灰石のつららが立っている。 
だが、最悪な事に、そこは肉食獣の住処だったようだ。 
何匹ものランポスが、二人目がけて咆哮をあげる。 
格好の獲物が来たとでも思っているのだろう。 
だが、二人は格好の獲物でもなんでもない。 
ハンターだ。 
「雑魚の相手をしているヒマはないわ!洞窟を突き抜けるわよ!」 
カレン、そしてシュウにはこの洞窟の構造はわかっていた。 
事前に渡された地図に洞窟と孤島全体の詳細な構図が記されていたからだ。 
この鍾乳洞の向かい側に行けば、ベースキャンプの裏側の密林に出られる事を知っていた。 
ランポスの強襲を、二人は回避する。 
目の前を遮る敵には、走り出して斬りつける。 
そして生死の確認もせず、武器を閉まって出口まで走る。 
走る、回避する、邪魔をすれば斬りつける、そして走る。 
心臓の鼓動はヒートアップし、腕や腿に乳酸が溜まるが知った事ではない。 
命より大切な事は他にない。 
ランポスの強襲をかいくぐると、眩しい日差しが二人を迎えた。 
二人は走りを止め、荒くなった息を整えた。 
密林の木々を、草食獣のケルピが走り、草を食んでいる。 
だが、ケルピは異変を察知した。 
それは二人の事ではない。 
「やっぱり来るわけね」 
日差しが遮られる。 
大きな翼を持った巨体に。 
その巨体が大地を踏みしめた時には、ケルピはその場から散って行った。 
カレンがランスを構え、その横でシュウが長剣を構える。 
「わかったわよ。もう逃げるのはナシ。決着つけようか?」 
カレンはシュウを見やる。 
もう見る前から分っていた。 
シュウは歓喜していた。 
「こっちは準備いいわよ!」 
「いきます!」 
決闘のゴーサインを出すようにスカー・フェイスは吠えた。 
シュウとカレンは二手に別れた。 
まずカレンがスカー・フェイスの懐に飛び込み、盾を構えながら、右手の槍で突き上げる。 
スカー・フェイスは槍の斬撃を食らいつつも、尻尾を使った回転攻撃でカレンに反撃をする。 
尻尾を振り回し、二回目の尻尾攻撃をカレンに食らわせた瞬間、スカー・フェイスの目に飛び込んだのは長剣を縦に構えて向かってくるシュウだった。 
スカー・フェイスの一つしか残っていない目に向かって、相変わらず布の巻かれた大きいが細い長剣が叩き込まれた。 
だが、その一撃は目に当たらず、大きくしゃくれたクチバシで受け止められた。 
もちろん、クチバシも無傷というわけにはいかなかったが、当初より遥かにダメージは少なかった。 
シュウは自分の一撃を確認すると、スカー・フェイスの胴体の下をくぐるように走り抜けた。 
「こっちを忘れてんじゃないでしょうね!?」 
カレンの声と共に、ランスがスカー・フェイスの尻尾や下腹部を突き刺す。 
『グァアアアアアアア!!』 
思わぬ一撃にスカー・フェイスは悲鳴を上げる。 
突き刺された所は、甲殻や鱗の比較的少ない身体の下の部分だった。 
スカー・フェイスは身体を180度変えると、翼の風で身体を持ち上げると同時に、カレン目がけて火球のブレスを3発連続で放つ。 
カレンは予め予測していた行動を読み、既にガードしており、ダメージは微塵も受けていなかった。 
だが、スカー・フェイスが予想していなかったのは、シュウだった。 
奴がいない。 
どこだ!? 
その答えは、短い滞空時間が終わり、着地した瞬間にわかった。 
スカー・フェイスが着地した瞬間、尻尾の裏側から思わぬ斬撃の一撃を食らった。 
それは尻尾がくの字に曲がる程強力なものだった。 
再びスカー・フェイスは悲鳴をあげた。 
カレンは囮りだったのだ。 
すべてはカレンに集中を向け、シュウの強力な一撃離脱攻撃を成立させるための作戦だったのだ。 
そうと分かれば、スカー・フェイスはシュウに集中を向ける。 
だが、尻尾攻撃をしても、その個体の小ささ故にあっさり避けられる。 
火球ブレスも軽身のシュウに回避される。 
スカー・フェイスが苛立つその瞬間には、今度はカレンのランスが身体の裏側を突き刺す。 
カレンに意識を向けなければ、ランスは何度も何度も自身をえぐるだろう。 
実に厄介だ。 
先ほどまでは容易い存在だと思っていたが、何があったのか、連携し鳥脚亜目の顔役である自分を翻弄している。 
スカー・フェイスにとって、これほど屈辱的な事はなかった。 
自分は数多の死地をくぐり抜けてきた。 
数多の人間を骸にし屠ってきた。 
自分を狩ろうとした者は残らず返り討ちにしてきた。 
だが、だがなんなのだ!?こいつらは!? 
カレンに注意を向ければシュウが攻撃し、シュウに注意が向けばカレンが攻撃する。 
大所帯ではなく、そして一人でもできない身軽な連携攻撃。 
二人は何も打ち合わせなどしていなかった。 
ただ、ただ自然とそうなっていた。 
お互いの長所を活かし、短所を補う作戦。 
これなら……いける! 


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