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ご挨拶

 

 

映画ファン、ならびに読者の皆様へ

 

 昨年中頃から私は、パブーで映画レビュー集を、毎月5日に月刊誌として発行する事にいたしました。

発行日まで決めてしまうなんて、私にとって、ちょっと冒険でしたが、御陰さまで毎号500を超える閲覧数を記録しております。毎月楽しくお読みいただければ、レビューの書き手としては大変嬉しいことです。この場をお借りして、拙い文章をお読みいただいた読者の皆様に、篤く、篤く御礼申し上げます。

さて、わがままな映画レビューをお読み頂いている読者の皆様。私のわがままに、もうちょっとおつき合いくださいませ。

ここに、昨年、私が鑑賞した洋画27作品、邦画22作品の中から、わたくし、天見谷行人が選ぶ、マイ・ベスト5作品を発表したいと思います。


選考基準は

①もう一度スクリーンで鑑賞したい作品である事。

②DVDをコレクションしたい作品である事。

③上記①、②を両方満たす事。

以上三点です。


では、さっそく発表にまいりましょう。



2013年洋画ベスト5


第一位 フライト

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=jEKF2EfSBQk

 

第二位 シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=_9HS3XWGRZg


第三位 二郎は鮨の夢を見る

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=Bwy2ubbQ-2s


第四位 ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=c4BYOCglirQ

 

第五位 テッド

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=HE4qt3172Mc


次点  「終戦のエンペラー」

    「キャプテン・フィリップス」

    「ダイアナ」の三作品。以上でした。



2013年邦画ベスト5


第一位 風立ちぬ

      予告編 https://www.youtube.com/watch?v=a3PBiLDXawU


第二位 そして父になる

      予告編 https://www.youtube.com/watch?v=sRGhEzALb4w


第三位 利休にたずねよ

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=rEsYGCsof9M


第四位 少年H

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=Du-p0UsLbiQ


第五位 くちづけ

      予告編 http://www.youtube.com/watch?v=LoBkAi0m4tI


次点   「舟を編む」

     「さよなら渓谷」の二作品。以上です。



2013年の映画を振り返って

**洋画部門**

 

さて、昨年の洋画のベスト5。あくまで僕が個人的に好きな映画の順にベスト5を挙げてみました。

まずは第一位の「フライト」

何と言っても脚本が良いですね。それに僕の大好きなデンゼル・ワシントンさんが主演。久々に重厚な演技を堪能いたしました。

人間って,そんなに単純じゃない、いろんな角度から光を当てれば、当然いろんな陰影を形作る訳ですね。デンゼル・ワシントンさんは、そういう人間の多面性を、実に緻密に演じる事の出来る俳優さんだと思います。その魅力が、本作では十二分に活かされています。

乗客の命を救ったパイロットは一体ヒーローなのか? 

それともアル中で薬物中毒の、憎むべき犯罪者なのか? 

ロバート・ゼメキス監督と、デンゼル・ワシントンさんの、お見事な映画操縦法を、たっぷりとお楽しみください。

さて、第二位の「シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」は、本当に楽しい作品です。一昨年の暮れに劇場公開で、僕は封切りのときに観に行きました。しかし、年明け正月、初詣の帰り、やっぱり楽しいので、もう一回観に行きました。

そのため本作を2013年の作品とさせていただきました。

なお、本作の中で、主人公達が日本人のコスプレをするシーンがあります。これを日本に対する侮辱だ!と目くじらを立てる方もいらっしゃいましたが、僕は全然、悪意を感じませんでした。なにしろ、このシーン、劇場では全員大爆笑でしたよ。僕はその場に居合わせたのですから。

むしろ、今ヨーロッパでは、大変な日本ブームが起きているのです。貿易関係の仕事に就いている僕の知人は、世界中を飛び回っています。

その方が言うには、

「ヨーロッパでは、若者がJapanese SAKEがオシャレだ,と言って飲んでるよ。いま彼らにとってジャパン・イズ・クールなんだよ」とのことでした。

本作も、日本への憧れと敬意を感じましたね。

その日本食を代表するのが「SUSHI」でしょう。

第三位に入った「二郎は鮨の夢を見る」は、スシの頂点を目指し続ける、職人さんを描いたドキュメンタリーです。

その人こそ、小野二郎さん。

ミシュランガイド・五年連続三ツ星、さらには現役最高齢の三ツ星シェフとして、ギネスブックに載っていると言う、日本料理界、いや,日本の宝と言っても言い方ですね。

その「SUSHI」の神様のような方に密着取材を試みたのは、若いアメリカ人監督でした。いったいどうなってるんでしょうね、日本の映画界は? 外国人の方が、日本の良さをしっかり理解して、アピールしてくれているじゃないですか。

浮ついたものばかり撮らないで、しっかり腰据えて、キャメラを回してほしいものですね。

しかも,この作品を僕が評価したいのは、名人、小野二郎さんだけに注目するのではなく、その心と技を学びたいと言う、若い弟子達も、ちゃんと描いてくれた事です。この監督、とてもいい視点を持っているなぁと思いました。

同じく第四位もドキュメンタリー映画となりました。

「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」

国際的なバレエコンクールと、一流バレエダンサーを目指すティーンエイジャーたち、そして彼らの家族を描きます。

芸術で「メシを食う」ようになるまでには、とてつもない才能、努力と訓練、運も必要でしょう。そしてなにより、家族の協力がなければ成り立たない。そんな厳しい世界を垣間見せてくれます。美しく踊る,ただそれだけのために、こんなにも努力する、若者のひたむきな姿が胸を打ちます。

そして、そして大健闘!!

第五位に入ったのが ”あの”「テッド」です。

この作品、実に多くの話題を振りまきましたね。

クマさんのぬいぐるみが出てくる映画なのにR15指定。良い子の皆さんは見ちゃダメ!! という作品なのです。見ちゃダメと言われると、よけい見たくなるのが人情と言うもの。

この作品、皆さん仰るように、たくさんのお下劣なセリフやシーンが、これでもか!と出てきます。でも作品全体を通してみると、実に良く出来た秀作である事が分かるはずです。ハリウッド映画の”オイシイ”ところを、ギュッと全部詰め込んだと言っても過言ではないですね。ラブストーリーに、アクション、男同士の友情、果てはカーチェイスまで。そして何より、B級おバカ映画への、限りない愛情に満ちた作品なのです。

次点となりました「終戦のエンペラー」「キャプテン・フィリップス」「ダイアナ」どれも甲乙つけがたい大変な力作でした。

 

**邦画部門**

さて、邦画部門、2013年は正に邦画の当たり年といっていいでしょう。

僕にとっての第一位は文句なし。なんといっても……

「風立ちぬ」なんですね。

宮崎駿監督は大きな時代の変わり目を敏感に感じ取りました。明らかにもう日本は、アブナイ時代にハマり込んでしまった。これからは大きな逆風の時代に入ると感じたのでしょう。その中で若者達に「しっかり生きてほしい」という想いを込め、渾身の力を振り絞って、作品に仕上げました。レビューをお読みいただければ分かりますが、僕はこの作品を初めて観終わったとき

「ああ、宮崎駿監督は筆を置くつもりだ」

と感じました。

その後、僕の予感は的中しました。本作は宮崎駿監督、引退作品となりました。

皆様、この作品が最後だと覚悟を決めた、宮崎駿監督の強烈なメッセージを読み取ってくださいませ。

さて、第二位「そして父になる」

カンヌ映画祭で賞を取った作品でもあります。しかし、そんな事関係なく、本作は素晴らしい完成度です。どの部分を観ても隙がない。良い脚本、的確なキャスティング。子供達の、のびのびとした自然な表情と演技。それを引き出した是枝監督の手腕を大きく評価したいです。

第三位は「利休にたずねよ」

これはもう,完全に僕の趣味で選びました。興行成績はいまいち伸びていないようですが、映画の美しさは本当に素晴らしい。絵画鑑賞のように、ゆったりとした気分で,じっくり楽しみたい作品です。モントリオール映画祭で賞を取ったのも頷ける完成度の高さでした。

第四位の「少年H」

これこそ、本当の本物の反戦映画です。戦前,戦中、戦後の混乱期を生き抜いた、一市民を淡々と描きます。そこに声高で、直接的な、反戦を訴えるメッセージはひとつもありません。しかし、国が戦争に突入すれば民間人はどうなるのか? 自分の信じる宗教の自由は? なにより「何も言えなくなる」状況がいかに恐ろしいことであるのか。それをこの映画は教えてくれます。ちなみに、映画の舞台になっているところは、僕の住んでいる神戸でございます。戦前のハイカラな街,神戸をお楽しみください。

そして大健闘!!

第五位「くちづけ」

僕はこの作品を、ぜひ多くの人に観てもらいたいと思います。知的障害者のグループホームを描く、室内劇の形式なんですね。

主演の貫地谷しほりさん、難しい役どころを、よく頑張りましたね。

知的障害をもつ主人公を、大変自然に演じました。そのお父さん役に竹中直人さん。この二人芝居を堤幸彦監督が、優しくベールをつつみこむように、映像をキャメラに収めてゆきました。

優しい,優しい、優しさに溢れる映画となりました。

なお、次点は「舟を編む」「さよなら渓谷」を選んでみました。

2013年、女優として際立っていたのが、「さよなら渓谷」「そして父になる」に出演された、真木よう子さんでしょう。僕はこの人に最優秀女優賞を差し上げたい気分です。

 蛇足ですが、話題となりましたジブリ作品「かぐや姫の物語」

僕は新たなアニメ表現の可能性を示した作品である事は認めます。

しかし、いち観客として観た場合、「かぐや姫」「竹取物語」を描くのであれば、平安王朝のきらびやかな装束、そして王朝文化を楽しめる作品にしてほしかったのです。

俗に十二単と呼ばれる女房装束の美しさは、やはり実写には、かないません。

すでに「竹取物語」は1987年、市川崑監督によって、実写映画化されております。ぼくはDVDで何回も繰り返し鑑賞いたしました。

やはり美しいのです。

なぜ高畑監督はアニメにこだわり続けたのでしょうか? 思い切って高畑監督初の、実写映画に挑戦してみてほしかったですね。

以上、2013年劇場公開の映画を振り返ってみました。

 


受賞作レビュー怒濤の10連チャン!!

 では、おまたせいたしました。昨年の洋画、邦画各ベスト5に輝いた作品の映画レビューを、怒濤の確変、ノンストップ!! 激アツ10連チャンでお楽しみくださいませ。まずは邦画部門第五位からです。

 

邦画部門第五位 くちづけ

2013年5月25日鑑賞

***マコは、うーやん、いっぽん、だいすきだよ***


悲劇であるのに、どこかユーモラス。重い内容なのに、どこか軽やか。
久々に味わいのある邦画を観たなぁ、と思える作品である。
物語りの舞台は、知的障害の人達が集まって住んでいるグループホーム。
ロケーションなし。
ほとんどのシーンが、ホームの中。
リビングでの会話で成り立っている、室内劇の形式だ。

邦画で室内劇の秀作といえば「今度は愛妻家」、アイドルの怪死をめぐるサスペンス喜劇「キサラギ」、それに三谷幸喜監督の「笑いの大学」などが思い浮かぶ。
本作の堤幸彦監督は「20世紀少年」をはじめとして、アクション映画がお得意と思われがちだが、渡辺謙主演の「明日の記憶」も手掛けた。ジックリとキャメラを据えて、人間ドラマを描ける監督さんでもある。
ヒロインは貫地谷しほりが演じる。
僕は「スウィングガールズ」の時から彼女のファンである。朝の連ドラ「ちりとてちん」でその実力を見せつけた。
ぼくはかつて彼女の人物レビューに
「どんな過酷な環境でも確実にエンジンがかかる便利なスポーツカーである」と評した。
いつも感じるのだが、この人、周囲の期待を裏切らない。
どんな役でもこなして見せる。
脚本家や監督の狙った演技プランを、いともやすやすとやってのけてみせる。
だから、使いやすい「便利な女優」で片付けられてしまう恐れがあった。彼女の最大の長所が最大の弱点でもあった。
貫地谷しほりでしか演じられない、このキャスティングしかあり得ない、というところまで行き着くのか?
「ちりとてちん」はまさにそれだった。
 本作ではどうだろうか?

ヒロインの父親は竹中直人が演じる。
「愛情いっぽん」というペンネームで、過去にヒット作も世に出した事のある漫画家である。だが今はマンガをやめてしまった。
妻とも死別し、知的障がいをもった娘を育てるために、自分の生活の大部分を費してしまっているのだ。今はチラシのイラストを描いて生活を支えている。
障害を抱えたマコを父親いっぽんは、色んな施設を渡り歩き、ようやく安住の地を見つける。そこがグループホーム「ひまわり荘」だった。
ある事情で、マコはいっぽん以外の男性を怖がる。
だが、このホームだけは違った。マコはこのホームに馴染んでゆく。それどころか、仲間の「うーやん」(宅間孝行)と結婚するとまで言い出すのだ。
映画の後半、父親役の竹中直人と貫地谷しほりが、二人でソファに座っているシーンが印象的でいいなぁ。
月明かりが二人を照らす。儚く淡いブルーの照明、まるでキタノブルーを思わせるシーンだ。
心の琴線に触れる、という言葉があるが、音楽もこの作品の重要な要素だ。
ハープのポロリ、ポロリと爪弾かれる音の粒は、とてもピュアで、作品が持っている彩りと雰囲気を、より高い次元に運んでくれる。

この作品を観ながら、僕はふと命の重さの事を想った。
それはぼくが五十代を超えたこと、数回も救急車のお世話になったこと、全身麻酔で二回手術台に横たわった事、そして亡き母の生存年齢を、すでに超えてしまったことによるのであろう。
考えてみよう。
蟻一匹と蚊一匹の命は、どちらが重いだろうか?
可愛いペットである猫一匹と、犬一匹の命はどちらが重いのか?
そして健常者と障害者の「いのち」は、どちらが「軽い」のか?
ぼくにはわからないのだ。
むしろ両者を天秤にかける行為、そのものが、神と呼ばれるこの世界の、原理原則に背いているとしか思えないのだ。
障害を持った人を看護すると言うお話では、ミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」がある。
正直ぼくは、あの重く悲しい作品を見るのが辛かった。あそこまで観客に、辛い思いを共有させる事は如何なものかと思った。
障害を持った年老いた妻を、これも年老いた夫が介護する、老老介護をケレン味なく描いた。淡々と描かれる悲劇は、重く苦しい。パルムドールに輝く作品であっても、僕は決していい映画作品とは思わない。
よほどこの「くちづけ」の方が、映画作品として洗練されている、と僕には思えるのだ。
この作品で知った事がある。刑務所に入っている服役者のうち、五人に一人が知的障害者だという事。
街中を大きなビニール袋を抱え、ヨロヨロ歩く薄汚れたホームレスの多くは、知的障がい者である事。
そして犯罪を犯したと見なされ、運悪く逮捕されてしまった知的障害者は、えん罪に陥れられる恐れが極めて高いことだ。
障害者を家族に抱えるということや、障害者の性、結婚、そして障害者の犯罪という極めてデリケートな内容を、作品として昇華させた宅間孝行の原作、脚本が光る。

哀しいけれど美しい、そして残酷であるのに軽やかさを感じさせるこの作品。
 初の主演でこのような難しい役どころを演じあげた貫地谷しほり、そして竹中直人にぼくは拍手を惜しまない。
なお 劇場でご覧になるときはハンカチをお忘れなく。
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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ
監督   堤幸彦
脚本   宅間孝行
主演   貫地谷しほり、竹中直人
製作   2013年
上映時間 123分

予告編はこちらから

http://www.youtube.com/watch?v=LoBkAi0m4tI


邦画部門第四位  少年H

2013年8月23日鑑賞

**  お父さんが紡ぐミシンの音、復興の音   **


お恥ずかしながら原作者の妹尾河童さんが神戸生まれだったとは知らなかった。
妹尾さんの体験した戦前の神戸が、細部に渡って再現されていて、街の雰囲気がなんともいい。
ハイカラな国際都市、港街KOBEがスクリーンに映し出される。
実際、僕も1960年の神戸生まれ、神戸育ちである。
実家近くの山陽電車の駅には、外国人の親子連れが普通に電車を待っていたし、近くの山へ友達と遊びに行けば、ブルドーザーを動かしているおっちゃんを、外国人の子供がちょっかいを出して、からかっていた。
「オッサン、ナニ、ヤットンネン!!」
見事な神戸弁であった。
僕の知る地元、神戸はそう言う神戸なのである。
(神戸大丸、旧居留地付近、ロケがこの近くで行われています)


本作の水谷豊演じる、妹尾さんのお父さん。
この人は何とも立派な人だなぁ。
妹尾少年の家はクリスチャンである。
たとえ肌の色が違っても、西洋人も日本人も、神の下では同じ人間、おなじ、迷える子羊なのだ。
しかし、世の中の空気は戦争へと向かう雰囲気にあった。何もかも天皇陛下の為に、国を挙げて「撃ちてし止まん、鬼畜米英」なのである。
戦時中のクリスチャンの人々は、かなり白い目で見られていたであろう事が、本作からうかがえる。本当に肩身が狭かったであろう。
妹尾さんのお父さんは洋服店を営んでいる。神戸という土地柄、外国人との付き合いもある。彼らから注文を受け、大きな外国人の身体を採寸するお父さん。ミシンを踏んで、洋服を仕立ててゆくお父さん。
物静かで、優しい人物として、水谷豊が、実に丹念に演じている。
何のケレン味もない、市井の人物なのだが、そういう人を演じると言うのはたいそう難しいだろうと思う。
「この人に仕立てを頼めば、いい洋服を作ってくれる」
そういう信頼と誠実さを感じさせる人物である。
そんなお父さんもやがて、ミシンを踏んでいる場合ではなくなってくる。外国人は次々と危険な国、日本を離れてゆく。
家族が食ってゆく為には、イヤイヤながら「国防服」などという、おしゃれな街、神戸には到底似合わない服も縫わねばならない。慣れない消防訓練もやらねばならない。
妹尾少年自身も、学校では軍事教練をやらされる。更には裸婦を模写したページがあるスケッチブックを教官に見つけられ、こっぴどく叱り付けられる。
なお、この作品には戦場の場面は一切出てこない。
しかし、これが紛れもない、戦争をやっている国の、一般人の暮らしなのである。

子供が自由に絵を描く事も、自由に祈る事も、「我らがテナー」と呼ばれたオペラ歌手、藤原義江のレコードを、自由に楽しむ事さえ出来ないのだ。


後半、描かれる神戸大空襲の様子はまさに、地獄絵図のようである。やがて敗戦。
あれ程までに大和魂を、愛国を、突貫精神を訴えていた大人たちは軽々と豹変する。
「これからは民主主義ですから」
ニコニコしながら言う大人たち。
なんという無節操。妹尾少年の胸に大人たちへの不信感が募る。
なんで、こんな境遇になってしまったのだろうか?
焼け跡を眺めながら、お父さんは不甲斐ない自分を悔やんでいるように見えた。
「戦争はいつか終わる。その時、恥ずかしい人間になっとったら、アカンよ」
戦時中であるにもかかわらず、妹尾少年に、やさしく、力強く諭してくれたお父さん本人が、自信をなくしてしまったようだった。
しかし、お父さんはやがて、焼け残ったミシンを修理する。それは妹尾少年が、家が焼ける直前に持ち出したものだ。
そして、お父さんは再びミシンを踏み始めるのである。
カタカタカタ……カタカタカタ。
妹尾家の戦後、妹尾家の神戸は、ミシンの音から復興するのである。それは、平和を自分たちの手で紡いでゆこうとする、神戸のごくありふれた、いち市民の、ひとつの覚悟の音のように、僕には聞こえた。


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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ

監督   降旗康男
主演   水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝
製作   2012年
上映時間 122分

予告編映像はこちらから
http://www.youtube.com/watch?v=Du-p0UsLbiQ


邦画部門第三位 利休にたずねよ

2013年12月19日鑑賞
秀吉が愛し、嫉妬し、憎んだ、利休の「美」

珍しく、この作品は原作も読んでおりました。時間軸を遡ったり、思い切ってフッ飛ばしてみたり、よくこんな文章表現、プロットの構成が出来るものだなぁ,と感心しながら読みました。まあ、それぐらいのこと、朝飯前にやっちゃう山本兼一さんだからこそ、本作で直木賞受賞となった訳ですが。
さて,本作はその映画化作品。何ヶ月か前に映画館で、ふと、「利休にたずねよ」のポスターを見かけたときには
「ほんとに映画化するのか?!、いや、したのか?!」
そして市川海老蔵さんが千利休を主役として演じるって、「マジかよ?!」
と一人、映画館のロビーで突っ込みを入れていたのを思い出します。


ただでさえ、時代劇は金がかかる。正確な時代考証に基づく衣装やカツラ、もちろん当時の町並みの復元も必要になります。本作は並の時代劇ではまず、絶対にチャレンジしない「茶の湯」「千利休」を描こうというのです。これはとんでもない高いハードルです。
まず、役者さんが茶の湯の手前作法を習得してゆかねばならない。その上、使う茶道具の手配、さらには映画で登場する黄金の茶室や、侘びを極めた建築物と言える「待庵」どれもこれも、国宝級のものばかり。これをどう映画に撮るのか? 
実際、本作では、まあ、まず、あり得ないと思える、千利休さんが,本当に使ったお茶碗が登場したりします。
これ、国宝級ですよ。値段のつけようがない。
なんと言う贅沢な映画なんでしょうか。どれだけ、途方もない手間暇をかけた作品でしょうか。
これら、国宝級のお宝がスクリーンに映える本作。そんな中、僕が素晴らしいと着目したのは「光の効果」でした。
撮影、照明スタッフさん達がほんとにいい仕事してるんです。
惚れ惚れするぐらいの映像美を、キャメラに収める事に成功しています。
茶室は薄暗いものです。外からの自然光は、和紙を貼った障子から透けて入る仄かな光です。その光が、役者さんたちの顔半分を、ほんのり明るく照らす。反対側の顔半分は、ほとんど真っ暗なシルエット。だけど照明、撮影スタッフは、ここで頑張りましたね。
その暗い顔が判別できるか,出来ないか、ぎりぎりのところを見切ってキャメラに収めてるんです。

他にも、広間から外を見るショットでは、外の明るさ、室内の仄暗さ、人物に当たる光、それぞれの明かるさを、すべて細かに調整しながら映像化していますね。本当に素晴らしい仕事です。
さて、千利休という人物は、茶の湯だけにとどまらず、美意識、芸術の巨人である事は間違いないでしょう。この人への興味は尽きないですね。
時の絶対権力者、織田信長の茶頭となり、いわば芸術の総合プロデューサーとなる訳です。
美しさとは何か? それは千利休が”美しい”と言えば、時代がそれに追随する訳ですね。自分が”美”の基準になる。さらに信長亡き後,千利休は豊臣秀吉に仕え、ここでも茶頭となります。派手好きの秀吉は利休に、有名な「黄金の茶室」を作らせます。さらに、これぞ秀吉の真骨頂といえる大イベント「北野の大茶会」
皆さん、気がつきませんか? これって「茶の湯バブル」なんですよ。
もう、これ以上はない、というぐらい「茶の湯」は全盛期を迎えるんですね。かつて1980年代、バブリーな日本では、夜な夜な、ジュリアナなんて言うクラブで女の子が踊り、札束が巻き散らかされておりました。
茶の湯でもそれが起こった訳です。しかし、バブルは弾ける運命にあります。千利休の凄みは、その「茶の湯バブル」の次に来るものを予感していたような気配がある事です。
彼は、純粋に美しいものとは何か? 人をもてなすとはどういう事か?を追求し続けた人だと思います。

茶室では亭主と客の関係があるだけ。一期一会の出会い。
そこには天下人であろうが、武将であろうが、一人の人間になります。
肩書きや地位は何の意味も持ちません。裸の人間力、あるがままの美意識が試されている場所、それが茶室なのです。
利休の美意識が生んだ「待庵」では、武士といえども、刀を抜いて、にじり口と呼ばれる、低い入り口から入らねばなりません。
そこで客は「亭主」に対し、自然に「頭を下げる」ことになるのです。それを天下人にやらせてしまう、千利休の度胸と美意識への、揺るぎない自信。そして強靭な決意。それゆえ、勇猛な武将でも利休の前では、震え上がりました。


さて、秀吉は天下人です。自分より偉い人間は、この「日の本」にはいないと思いたいのです。
だからこそ、信長が愛した、日本一の茶人、千利休を自分の支配下、自分の所有物である、と世間に認めさせる事によって、自分の”威厳”を演出したかったのでしょう。
しかし、秀吉の最大の不幸は、利休の「美」を理解できる感性を持ち合わせてしまった事でした。
「なぜ、こんな美を、あの利休は生みだせるのだ?」
秀吉には、悔しいけど、その美を生み出せません。悔しい,悔しい!!本当に悔しい!
やがて天下人である秀吉は、千利休に嫉妬、憎しみ、恐怖さえ感じたのだと思いますね。
まさに、可愛さ余って,憎さ百倍。権力者が部下の才能に嫉妬したとき、それは実に醜悪きわまりないものとなります。
秀吉は千利休の「美」を屈服させようとしました。
「切腹を申し付ければ、あの利休と言えども、俺に頭を下げにくるヮ」
しかし,秀吉の読みは外れました。千利休は自分の「美」は誰にも支配する事は出来ない、と「死」を持って訴えたのです。
本作はまさに映画は芸術作品である、という事を改めて感じさせてくれます。絵画鑑賞のような気持ちで、亭主である利休さん、そして観客である、あなたとの一期一会の”一服”をお楽しみくださいませ。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ

監督   田中光敏
主演   市川海老蔵、中谷美紀、伊勢谷友介、大森南朋
製作   2013年 
上映時間 123分

予告編映像はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=rEsYGCsof9M



邦画部門第二位 そして父になる

2013年9月24日鑑賞
より善く生きようとする家族のために


カンヌ映画祭で絶賛された本作。先行上映会で鑑賞した。映画の作り方、やっぱり是枝監督うまいなぁ、というのが率直な感想。
たとえば、これってちょっと思わせぶりなカットじゃないの、と思うシーンがいくつかあった。ぼくは、そういう、映画作家の作為が露骨に表に現れた作品は大嫌いだ。
だけど本作は「これはちょっと……」と思った正にその瞬間、次のシーンに移っている。まるで、観客である僕の心を読まれているかのようだった。それはもう、絶妙のタイミングであり、お見事な編集としか言い様がない。

なお、映画作家としての主張ある絵作りと、映画作品の完成度は決して比例しない。どんな芸術作品でもそうである様に、熱っぽく伝えようとすればするほど、その監督の意思表示は、観客を置き去りにした、ただの独りよがりとなる。
この作品では、それが全く破綻しない形で、監督の意思表示がなされているのだ。
物語は子供を病院で取り違えられた、ふた家族の話である。
片方の父親(福山雅治)はエリートサラリーマンだ。6歳になる一人息子と奥さん(尾野真千子)の三人家族。都心の一等地の高級マンション住まい。情操教育のためだろう、子供をピアノ教室にも通わせている。だが、我が子はあんまりピアノが上手くない。
父親は仕事が生きがいだ。息子と一緒に風呂に入ることもない。
「自分の事は自分で出来る子供に育てる」が父親のモットーだ。しかし、実のところは、家庭よりも、仕事にウエイトを置いた生き方をしていたい、という本音もチラリと見えるのだ。
もうひとつの家族は対象的に、庶民的な田舎の電気屋である。子供は三人いる。家計は苦しいようだ。奥さん(真木よう子)は弁当屋のパートの仕事をしている。父親(リリー・フランキー)は子煩悩で、子供と一緒に風呂に入るのが楽しそうだ。手先が器用なのだろう。子供が壊れたおもちゃを持って来ても、嫌な顔もせず、自分も楽しそうに直してみせる。
このふた家族に病院から知らせが入る。
「六年前、お子様を取り違えていました」と。
いまさら……なんで……
いまどき、そんな初歩的なミスが起きるなんてと、彼らは耳を疑う。
家族はDNA鑑定を受けた。

発達した最先端科学は冷酷な現実を突きつける。
「生物学的に、あなたのご子息ではありません」
やがて、ふた家族は弁護士を立て、病院と裁判沙汰になる。その間にも、ふた家族の交流がギクシャクしながら続けられてゆく。
厳しい現実を前に、ふた家族は一歩前へ踏み出そうとする。
お互いの子供を週一回交換して、将来のため、新しい生活に慣れさせようというのである。

この作品で最も印象的なのは、子供達の実に自然な姿である。
是枝監督こだわりの演出術なのだろう。
子供達はとても演技しているとは思えない。自然な表情がスクリーンに映える。
無邪気に遊んでいる子供達。この子達にはなんの罪も無いのだ。
この子達のために何ができるのだろう。
この子 達に向かって、厳しい現実を、一体、どう伝えたらいいのだろう?
 自分だったらどうするのだろう? と、いつの間にか、つい自分に降り掛かって来た災難の様に感じてしまう。
しかし、これは紛れもなく映画である。映画とは嘘っぱちの作り物なのだ。
しかし、観客である僕達は、この嘘っぱちの世界に見事に引きずりこまれる。
是枝監督の演出は、一見、何も作り込んでいないように見える。しかし、出来上がった作品は、こんなにも観客の心を捉えてしまう。
これぞ「是枝マジック」と言っていいと思う。
当初は対立していた両家族。ダンナ達はそれぞれ、仕事や、ステータスや、示談金にこだわったりする。
それに比べ、お互いの奥さんは、やがて、心を通わせてゆく。
自分がお腹を痛めて産んだ、紛れもない我が子を、六年間育ててくれた人。
それはお互い、今、目の前にいるこの女性(ひと)なのだ。
この辺りの、父親、母親の皮膚感覚の違い、温度差。子を産んだ女と、その夫と呼ばれる男の間にある、深くて暗い溝を是枝監督はさりげなく描いてみせる。

「家族」というのは一見、大人たちによって作られている様に見える。
だが、実は家族は、子供の成長と共に「家族という共同体」そのものが成長してゆくのだ、と改めて感じさせられる。
是枝監督は、その家族の成長をじっと見つめている。そこに感じるのは、人間の悪意を見つめるのではなく、善性を見つめる姿勢である。
この作品が、見終わったあと、なにかスッキリとした心地よい余韻が残るのはそのためだ。
この作品を一言で語るなら
「より善い家族になろうとする人々」
のお話なのだ、と僕は思う。

 

アニメ界の巨匠、宮崎駿監督は言う。
「子供達に、この世界は生きるに値するんだ、と伝えたい」
本作の是枝監督は、宮崎駿監督と同じような、強い覚悟を持って、人間の善性を圧倒的に肯定している。
人間の悪意を描く作品は多くある。しかし、人間の善性を固く信じて作り上げた映画は、今やそれだけで貴重な作品なのだ、と僕は固く信じたい。

**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ

監督   是枝裕和
主演   福山雅治、尾野真千子、
真木よう子、リリー・フランキー
製作   2013年
上映時間 120分

予告編映像はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=sRGhEzALb4w


邦画部門第一位 風立ちぬ


 

***逆風の中、夢を追い続ける若者達へ***


最初にこの作品を観終わって「ああ、宮崎監督は大変な作品を作ったものだ」と圧倒された。と同時に、
「もしかすると、宮崎監督はこの作品を最後に、筆を置く覚悟かもしれない」と思った。
生半可な映画レビューなど、書く隙さえ与えないような、緻密さと厳しさを持つ作品である。
いま、二回目の「風立ちぬ」を鑑賞して、ようやく個人的な感想を書き留めておこう、と思った。
本作は子供向けには作られていない。また、宮崎監督は、初めて実在の人物を取り上げた。
零戦の設計者として著名な堀越二郎と、文学者の堀辰雄を、まるでエンジンに送り込む、ガソリンと空気の混合比のように、実に巧みに混ぜ合わせているのだ。決して単純に足して二で割っただけの人物像ではない、宮崎監督オリジナルの第三の人物像なのである。
この二人の人物に共通しているのは、彼らが生きた時代である。大正から昭和、そして戦争の時代を生きぬいた人物だ。
ぼくは以前から、大正から昭和の始めにかけて、実はとても良い印象をもっていた。
その時代には「大正デモクラシー」という夢があった。束の間の好景気があり、街には「モダンボーイ・モダンガール」(略してモボモガ)と呼ばれる西洋風なファッションを楽しむ男女がカフェに集い、カルピスが始めて飲まれ、宝塚少女歌劇が人気を博した。
活気あふれる街と庶民の文化が花開いた時代だ、と僕は感じていた。
その空気感は本作のヒロイン菜穂子と、二郎の恋物語の背景としてふさわしい、ロマンチックな雰囲気に溢れている。

しかし、本作でも取り上げているように、大正12年には関東大震災があり、銀行の取り付け騒ぎや、恐慌への恐れもあり、更には軍内部の圧力が徐々に限界点に達しようとしていた。1932年、昭和七年には五・一五事件が勃発、犬養首相が射殺される。
宮崎監督のような希代の創作者は、時代の空気を、誰よりも敏感に感じるセンサーを持ち合わせている。
この作品は宮崎監督から、若者達への「最後の」メッセージであろう、と僕は感じた。
「これからの日本は、決していい時代には向かわない」
若者は、そういう厳しい時代、向かい風の時代に、やむ終えず立ち向かわざるを得ない。そんな若者達へ宮崎監督は、あの無謀な戦争へ突き進んだ時代に生きた、生き抜いた、堀越二郎と堀辰雄という人物像を、あえてぶつけてみようと試みたのだ。
そういうメッセージを若者達に送ろう、という決断に至った宮崎監督の覚悟の強さを僕は思う。
それは時代のセンサーとしての強烈な覚悟であろう。
実はその覚悟を知る一つのヒントが本作のタイトルである。
ご承知の通り、宮崎監督の作品は、いままで「となりのトトロ」「紅の豚」という風に、作品タイトルに「の」がついていた。

それは宮崎アニメ成功の方程式でもあり、シンボルでもあった。本作のタイトルは、その大事な成功の方程式をかなぐり捨てているのである。
宮崎監督はそれほど必死で伝えたいのだと思った。
時代を作るのは大衆である。
実は大衆は愚かである。
僕から言わせれば多数決など糞食らえである。
多数意見は真理だろうか? 正義だろうか?
いいや、絶対にそんな事はないのである。
大衆は実に簡単に間違える。
それは歴史をみれば明らかだ。
そして、今また、大衆は間違えようとしている。
そういう時代に入ったのだ、ということを宮崎監督は感じ取ったに違いない。
因みに、ヒトラーはまったく合法的に政権を取っている。また、当時のドイツ国民の9割はそのヒトラーを熱狂的に支持した。
その決断、多数意見は真理だったか?
圧倒的多数は正義であったか?
答えは歴史のなかにある。
だから歴史に学ぶ意義があるのだ。
本作は日本の戦争について、直接的な表現をあえて避けている。また、紛れもなく強力な殺人兵器であり、武器である戦闘機を作った、堀越二郎という人の責任には触れていない。これは実にデリケートな問題である。宮崎監督が描きたかったのは、その側面ではないのだ。
宮崎監督が創造的にこしらえあげた「堀越二郎」という人物像は、あくまで「夢をカタチにする」表現者として作品に登場するのである。
映画監督は自分の夢を映画という表現方法でカタチにする。
同じように航空機設計者は夢を飛行機に託す。
当時、飛行機を作る事は軍用機を作るという事と同じであったのだ。
堀越二郎が幼い頃から憧れた、イタリアの飛行機設計者カプローニと、夢の中で語り合うシーンがある。

足元にはおびただしい戦闘機の残骸。
どこまでも青い空に上ってゆく、パイロット達の幾多の命。
「一機も帰って来ませんでした」
二郎はつぶやく。
それでも時代の風は吹いている。
若者はその向かい風の中で夢をみる。
若者達は困難な時代のなかで、これからどんな夢をカタチにしてゆくのだろうか。
僕はこの作品を、出来るだけ多くの若い人達に観てほしい、と思う。どんな感想を持ってもいい、今、理解出来なくても構わない。烈しい向かい風の中で、宮崎監督のメッセージに、ふと気がつく時が、必ず来るであろうと思う。

なお、私の信条として、新作映画の総合評価は常に最高点を四点までにして来た。だが、ストーリー、声優のキャスティング、映像、演出、音楽、どの項目を眺めても、ケチの付けようがないのだ。
ゆえに2010年公開、中島哲也監督の「告白」以来、二作目の満点評価となった。


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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆☆
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作品データ

監督   宮崎駿
声優   庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊
製作   2013年
上映時間 126分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=a3PBiLDXawU



洋画部門第五位 テッド

2013年2月27日鑑賞
***いやぁ~、いい映画じゃないですかぁ~***


全然予想と違いました。
予告編や前評判では、スケベで品の悪い、テディベアを使ったブラックコメディーなんだろうと思ってました。
全然違った。
いい意味で予想を裏切られました。
映画への愛が一杯詰まった映画なんですね、これは。

特にB級アクション映画への、監督のこだわり、敬意、オマージュが一杯詰まってます。
B級アクション映画や、オバカ映画が大好きでよく見ていると言う「コアな映画ファン」には、もう、たまらなく面白い!と思います。
主人公の少年ジョンは、クリスマスに両親からクマのぬいぐるみをプレゼントされました。
彼は人付き合いが苦手。友達が誰もいない。
「くまさん、僕と友達になってよ。一生の付き合いだよ」
そう言って彼はクリスマスの夜、ぬいぐるみのクマを抱いて、すやすやと眠りました。
彼の願いは神様に届きました。それはクリスマスの奇跡となりました。
朝、眼を覚ましたジョン。
「おはよう」
話しかけて来たのは、まさか!? クマのぬいぐるみ!?
さあ、それから家族は大パニック。そして、生きて人間と話が出来るクマのぬいぐるみのニュースは、全米を駆け巡りました。テレビのワイドショーに単独出演。まるでハリウッドスター並みの大人気。ジョンと一緒に公園を散歩していると、サインを求められます。モッコモコの手でサインをする、ぬいぐるみのクマ、その名は「テッド」


そしてー
『ーあれから四十年!!』じゃなかった。これでは綾小路きみまろさんですね。
……あれから27年が経ちました。
ジョンはレンタカーショップに勤める、中年のオッサンになりました。相変わらず友達は少ない。でも、嬉しいことに四年間付き合っている彼女がいる。ロングヘアーでかなりの美人。いま同棲中。二人だけの甘~い濃密な時間を楽しんでいると、そこに割って入ってくるヤツがいる。

それがいまやおっさんになったテッド。ぬいぐるみのクマも歳をとるんですね。
ジョンとは「オレとお前は一生友達」と誓った仲です。
だから、彼女のことも相談する仲だし、いっしょにイケナイ葉っぱを吸って、ラリってハイになったりする間柄です。

ジョンの恋人ロリーは、そんな二人を観て
「あなたのために言うのよ。テッドに出て行ってもらえないかしら」とジョンに持ちかけるのですが……。


この作品、僕が一番驚いたのは「音楽のセンスの良さ」なんです。
もうねぇ、僕は大絶賛したい!!
これは、こういう場面だから、こういう音楽を入れるべき。そして音楽を必要としないシーンは、絶対に音楽を入れちゃダメ!!
そう言うことがちゃんと出来てるんです。
これ、当たり前なようで、実はなかなかセンスが必要です。意外に難しいんですよ、皆さん。
ほんと、もう、まじめに他の監督は見習ってほしいぐらいです。
とってもお洒落で、気が利いていて、映画をより引き立てている。本当に音楽の使い方がうまいなぁ~、と唸ってしまいました。
この作品はB級アクション映画への愛が一杯詰まっています。
更にはラブストーリーあり、男と男のファイトシーンあり、サスペンスあり、何とカーチェイスまであるという、ハリウッド映画の美味しいところ全部がこれ一本にギュッと詰まってる。
もうこれはフルコース楽しめるオトナの映画なんですね。

偏見など持たず、是非、映画館で楽しんでみて頂きたい作品です。
なお「F●CK YOU!」「Bitch!」なんかの汚いコトバが連発されるので、カップルで観に行ってはマズい、と仰るレビュアーの方も結構いらっしゃいますが、僕は個人的に、意外にカップルで観に行っても、盛り上がるんじゃないかと思いますよ。心の広い女性であれば……許してくれるんじゃないかと。
是非、彼氏、彼女と、お二人で笑いながら鑑賞してみて下さい。
僕はもう一回観てもいいかなと思える作品でした。
R15+指定なので、「よゐこ」の皆さんはまだ観ちゃダメよ。
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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   セス・マクファーレン
主演   マーク・ウォールバーグ、ミラ・キュニス
製作   2012年 アメリカ合衆国
上映時間 106分

予告編はこちら

http://www.youtube.com/watch?v=HE4qt3172Mc



洋画部門第四位 ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!

 


***それでも君は踊り続けるのか***


以前バレエの先生と話をする機会があった。
「先生、バレリーナって結婚を機会に引退って考えるものですか?」
一瞬、間があった。
こいつ、何をアホなことを訊いておるのだ、という感じで
「何言ってんの!! たかが結婚でバレエ辞めるもんですか!!」
今度はこちらが「エッ?!」と絶句した。
バレエのセカイ等、何も知らない私には思いもつかない言葉だったのだ。バレリーナにとっては、人生の一大イベントである結婚も、「たかが」結婚なのである。彼女たちにとってバレエとは、人生そのものなのだ、と了承した。
食べるのもバレエのため。肉体トレーニングもバレエのため。普段の何気ない生活もバレエを中心に廻っている。

この作品は、バレエダンサーを目指す若者たちの、コンテストの模様と、そこに出場するまでを取材したドキュメンタリーである。


全世界レベルで行われる決勝の舞台、誰もが憧れるファイナリストになるためには、まずは各国で行われる予選を勝ち抜かなければならない。その予選ですら、凄まじくレベルが高いのである。

「もう、この子は天才」
「彼女は踊るために生まれて来たんだ」
なんて言うティーンエイジャー達が、それこそ掃いて捨てるぐらい集まってくる。

そんなコンクールに出場する本人は、もちろん緊張はしている。しかし、それ以上に、家族や専属のコーチの緊張がハンパではないのだ。自分たちが手塩にかけて磨き上げ、育てた才能。それが世間に認められるのか? それとも今までやって来たことは全て無駄だと全否定されるのか?

実はこのコンクールは本人だけでなく、親と、指導者が、バレエにどれだけ真摯に取り組んだのかが判定される、評価される場でもあるのだ。それはまるで最後の審判さながらだ。
親が我が子のバレエに賭ける金の使い方も尋常ではない。
自分の子供をバレエダンサーにしようと決意した親にとって、「お金」は、もはや、タダの紙くずである。それこそ湯水のようにジャブジャブお金を使う。
子供のために専属の振り付けの先生を雇う。レッスンも広い専用ダンススタジオを丸ごと借りる。一足80ドルするトウシューズは一日で履き潰す高価な消耗品だ。

娘がコンクールを目指している会社社長は、娘の練習環境を整えるために自分の会社さえ移転させてしまう。

全ては愛する娘や息子のバレエのため。成功の切符を手に入れるため。
バレエに限らず、芸事を仕事にする、それで「飯を食っていく」ということはとても困難な道のりだ。実力はもちろん「運」も大切な要素だろう。
コンクールの映像は、観客として観ているこちらの胸まで苦しくなる。
とても残酷なのだが、ここで勝者と敗者がはっきり分かれる。幸いにも選ばれた若者達にとっては、正に夢の切符を手にしたようなものだ。
「あなたは夢を追い続けなさい」と大人達から許された特権階級の仲間入りなのである。
彼らのある者は、バレエ団からオファーがあり、ある者には名門バレエ学校の入学許可、スカラシップが与えられる。

スポットライトを浴びることを許されるのは、ほんの一握りの若者達だけ。

彼らは夢の階段をひとつ上った。
しかし、まだ次の階段が待っている。
いま、舞台袖から、スポットライトのその先へ、まさに踊り出そうとする若いダンサー達。思わず声をかけたくなる。
「君の歩いて来た道は間違ってない。自分を信じなさい。このチャンスを楽しみなさい」
若いダンサーは夢への一歩を今踏み出すのだ。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

監督   ベス・カーグマン
主演   アラン・ベル、ジュールズ・ジャーヴィス・フォーガティ

     ミケーラ・デ・プリンス
製作   2011年 
上映時間 94分

予告編はこちら

http://www.youtube.com/watch?v=c4BYOCglirQ



洋画部門第三位 二郎は鮨の夢を見る

2013年3月9日鑑賞
***二郎と弟子たちが奏でる「SUSHI」のシンフォニー***


NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」という番組で、ある鮨職人を取り上げていた。その人の名は「小野二郎」
黙々と鮨を握る姿。
僕はハッと思ってあわてて録画した。
その後、何回も何回も観た。
何度観ても新たな発見がある。
仕事とは何か?
職人とは?
極めるとはどういうことか?

これと全く同じことを、僕はあるドキュメンタリー映画で、今も学び続けている。
それは「セカイのオザワ」と呼ばれる、指揮者小澤征爾さんのドキュメンタリー映画「OZAWA」(1985年、デイヴィッド&アルバート・メイズルス監督作品)である。
この作品を創ったのがピーター・ゲルブさん。そして本作「二郎は鮨の夢を見る」を創ったのが、まさにその息子さんのデヴィッド・ゲルブさんなのだ。
「一流というのは二流に飽き足らない人のこと」
昔そんな言葉を聞いたことがある。
二郎さんの鮨は「国宝にすべき」とも言われる。あの「フレンチの帝王」と呼ばれるジョエル・ロブションも
「日本に来て一番楽しいのは、二郎さんのスシを食べているときですね」と言う。


二郎さんのお店のメニューは「おまかせ」というコースだけだ。「プロフェッショナル・仕事の流儀」や本作で披露される、二郎さんの鮨のコースは、まさに鮨のフル・オーケストラが奏でるシンフォニーのようだ。
さりげない第一楽章から始まり、徐々にふくよかさをます第二楽章。鮮やかな場面転回を見せる第三楽章。
それはまるで巧緻な建築物のように組み立てられてゆく。そして最も盛り上がるクライマックス。最終楽章。
五感と魂までひとつ上の次元まで持っていかれてしまう。そして豊かな余韻を残すエンディング。
気づくと、”ふぅわり”と現実の世界に戻って来ていることに気づかされる。
本作で使われるモーツァルトのピアノ協奏曲。
「SUSHI」と「モーツァルト」のまさかのコラボレーション。
だが「二郎さんが握る鮨」だからこそモーツァルトと見事に融和するのであろう。
小野二郎さんはその「SUSHIオーケストラ」の指揮者ではない。
小野二郎さんは現在87歳。
彼は今も現役で鮨を握る鮨職人であり「SUSHIシンフォニー」を奏でる「コンサートマスター」なのである。厚生労働大臣から現代の名工として表彰された職人さんであり、世界最高齢の現役三ツ星シェフとして、ギネスブックにも認定されている。まさに世界の料理界から注目される日本人だ。
そんな二郎さんにスポットをあてて、ただ賞賛する映像作品を作ることはたやすい。この作品の素晴らしさは、二郎さんだけをフォーカスするのではなく、日本の食文化である「鮨ないしは寿司」とその食文化をどのように後世に伝えてゆくか? ということも描いているところにある。
小野二郎さんが到達した「心」「技」「体」をどうやって弟子達に伝えてゆくのか?
いまや「SUSHI」は世界中で食されるグローバル化された食文化だ。
だが世界中にある「SUSHI・レストラン」の中で、芯のブレない「本当の本物のスシ」を食べさせる店と呼べるのは、ほんの一握りだろう。その頂点にあるのが日本の東京銀座にある「すきやばし次郎」であり「二郎握り」と呼ばれる匠の技、「スシの神様」が愛する「神の手」を持つ小野二郎さんなのである。
小野二郎さんと、僕の大好きな小澤征爾さん、お二人に共通していることがある。
それは「お客様に見てもらう部分は5%だけ」ということだ。残りの95%は影の悪戦苦闘なのだ。
二郎さんも小澤さんもしっかりと下ごしらえ、仕込みをやっているのである。
極上の味、極上の音楽を生み出すためには、客席からは見えない舞台裏での悪戦苦闘があるのだ。そして二郎さんも小澤さんも、その苦労を敢えて表に出そうとしたがらない。見せたがらない。
こういう人を本物のプロフェッショナルと呼ぶのだと思う。
ドキュメンタリー映画である本作も「OZAWA」も、敢えてその聖域に踏み込んだ。取材はOKされた。それは監督の熱意と粘りはもちろんのこと「作品を作る意義」を相手が認めてくれたからだ。だからどちらの作品も後世に残せる、貴重な映像記録となったのだ。

二郎さんは、今、その95%の部分を若い弟子達に任せている。若い人達に任せることで「二郎の鮨」を後世に伝えるためである。
玉子焼きを任せてくれるまで、何と十年を要する?!という「すきやばし次郎」での修行。この作品を観ていて嬉しいのは、何としてでも寿司の最高峰を目指そうと悪戦苦闘している、若い見習い職人さん達が育っていることだ。更に嬉しいのは、若い見習い職人さん達の姿と肉声を、監督が、この作品にとって欠かせない部分として、映像化してくれたことだ。


二郎さんの握りは「手当て」と呼ばれる下ごしらえが施される。これに途方もない労力をかける。修行に10年かかる玉子焼きに始まり、酢で締める鯖、藁で燻すカツオ、アワビの煮込み方、海老の茹で加減、アナゴの焼き加減。それらの工夫、ノウハウの継承。
しかし、これだけのことをやっても、お客さんの前に出せる「ハレの舞台」に上がれるネタは、その一部でしかない。
ドキュメンタリー映画「OZAWA」でもオーケストラのリハーサルで真剣勝負している指揮者、小澤氏と、若者を指導する教師、指導者としての小澤氏の両面の姿が描かれている。
製作者のゲルブ氏一家は、一流のアート感覚をDNAとして引き継いでいるのであろう。本作でも、その映画作りの視点が、日本や日本の食文化、その奥深さを捉えることに成功している。そしてなにより「鮨職人」小野二郎と、ひとりの人間としての小野二郎に惚れ込み、敬愛の念を持つ、監督の気持ちが痛い程伝わってくる。そんな二郎さんは今日も無愛想に黙々と鮨を握る。
西洋の心と日本の心が溶けあい、見事なハーモニーを奏でた本作。
ドキュメンタリー映画の傑作の誕生である。


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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   デヴィッド・ゲルブ
主演   小野二郎、すきやばし次郎スタッフ、山本益博
製作   2011年 アメリカ合衆国
上映時間 82分

予告編はこちら

http://www.youtube.com/watch?v=Bwy2ubbQ-2s



洋画部門第二位 シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜

***シェフ、最高の一皿でした!!***


美味しかったねぇ、この映画は。

いい映画は、劇場を出るときのお客さんの顔で分っちゃう。

レストランも映画も一緒。満足したお客には笑顔があるのです。
天才的な味覚と嗅覚を持った主人公、ジャッキー。彼はもちろん料理の腕も抜群。だけどこういう人に限って、なぜだか世渡りが下手なんですね。
だから、どのレストランで働いても、もめ事を起こしてクビになってしまう。ジャッキーには妊娠している恋人がいます。まだ籍は入れてない。「結婚しよう」とプロポーズはしたいんだけど、なにせ生活が不安定。何とか恋人と安定した生活を送りたい彼は、やむなくペンキ塗りの仕事をしています。
そんなジャッキーにチャンスがやってきます。
料理番組まで持っている有名三ツ星シェフ、アレクサンドル(ジャン・レノ)が、助手を捜していたのです。やがて二人はタッグを組んで、レストランの三ツ星を守るため奮闘するというストーリー。


やはり、ミシュランの三ツ星の権威というのは大変なもので、もし、万が一☆がひとつ減った!なんて事になったら、もう大変。
ジャン・レノ扮する三ツ星シェフ、アレクサンドルは雇われの身です。レストランオーナーからは
「ひとつでも星を落としたら即刻クビだ」とプレッシャーをかけられているのです。このオーナーが、二代目社長でありまして、青年実業家なんですね。現場の事なんて何にも分ってないんです。だから、シェフに無断でキッチンの改装工事をしよう、客席の数を増やそう、なんて計画中です。そんな無理難題ばかり言ってくるオーナーにいい加減嫌気がさしていたアレクサンドル。
だけどそうも言っていられない。近日中にミシュランの調査員がやってくると言う情報が入ります。

「どうしよう、新しい創作料理を大至急作らないと☆が減ってしまう」
そこで三ツ星シェフ、アレクサンドルと助手ジャッキーは、最先端のフランス料理を食べさせると評判の、ライバル店へ偵察に行こうとします。
だけど料理番組まで持っているシェフは当然、「メンが割れてる」訳ですね。そこで二人はとんでもない方法を思いつくのですが……。
まあ、それは劇場でお楽しみ下さいませ。

何しろこの偵察シーン、僕が鑑賞していた劇場では全員大爆笑!!
まじで? ジャン・レノって、ドラえもん以外にこんな事もやるの? って感じです。もう、とにかく観て笑って頂くしかないですね。
そして、何より、スクリーンでとっておきのおいしそうな料理をたっぷりと御堪能下さい。
お正月の初笑いにはピッタリですよ。僕は初詣のついでにもう一回観に行ってきました。
う~ん、満足、満腹の一皿という作品でした。
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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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監督   ダニエル・コーエン
主演   ジャン・レノ、ミカエル・ユーン
製作   2012年 
上映時間 84分
予告編はこちら


洋画部門第一位 フライト
2012年3月11日鑑賞
*** これがデンゼル機長の神業さ  ***

久々にデンゼル・ワシントンらしい、人間ドラマに集点を絞った重厚な作品だ。
人間ってのはありきたりなアクション映画のヒーローみたいに単純明快じゃない。
何が善で何が悪か? 
その境界線ってどこだろうか? 
そして善人にも、悪人にもなってしまう、そんな自分って言うヤツはいったい誰なんだ?
その問いを観客へ投げかけるラストシーン。
映画作品として見事な「着陸」を観せてくれている。
デンゼル・ワシントン演じるウィトカー機長。
彼は経験豊かな機長だ。パイロットとしての才能はハンパじゃない。
彼なら旅客機なんぞ、それこそ鼻歌気分で片手運転出来るぐらいだ。
でも機長としての仕事は楽じゃない。
3日で10往復は、かなりのストレスを伴うのだろう。
彼はそのストレスからだろうか、よく酒を飲む。飲まなきゃやってられない。
フライトの朝、親しくなったCAさんとベッドイン、頭は二日酔いでフラッふら。
目覚めにコカインという鼻薬をシュッと一発決めりゃあ、もう、気分はヒーローでスーパーマン。シャキッと「ウィトカー機長殿」の姿に変身だ。このあたりのスピーディーな編集はお見事。
こういう、黒人のエリート層を演じさせたら、本当にデンゼル・ワシントンの独壇場だなぁ~とつくづく思う。
さて、離陸した旅客機は悪天候の中を飛んでゆく。機体がガタガタ揺れる。まるで遊園地のジェットコースター並みだ。だが、そこは熟練パイロット、ウィトカー機長である。雲の隙間を素早く見つけ、乗客に希望の太陽と青空を見せ付ける。
乗客やんやの大拍手。まさに千両役者ウィトカー機長だ。
まあ、こんなことぐらい朝飯前にやっちゃうのが、ベテランパイロットの経験と勘なのだろう。
だが、それも束の間。機体にトラブル発生。
エマージェンシー!! 
緊急着陸。
下がる、下がる、高度は下がる。
コントロール出来ない。あわや墜落!!
という局面でウィトカー機長はまさかの奇跡を起こす。
旅客機ではあり得ないアクロバット、背面飛行で、機体を立て直し不時着させるのだ。
気がついた時、彼はベッドに寝かされていた。
彼の目の前には弁護士がいる。
「機長、あなたの血液からアルコールが検出されました」という報告が……。
彼はアルコールに溺れていた。
止めようと思っても、どうしても止められない。
妻と一人息子よりも「酒」と「コカイン」を選んでしまった人間なのだ。彼は誰よりも自分のダメさ加減を分っている。だからよけいストレスが溜まる。そう言う複雑な人物像をデンゼル・ワシントンは実に丁寧に演じている。
ロバート・ゼメキス監督は「フォレスト・ガンプ」のとき、観客に実に理解しやすい主人公を描いた。
自分にも他人にも正直であること、誠実であることは、たとえ知的障害があったとしても「人間として尊い生き方なのだ」ということを、老若男女、誰がどう観ても分るように、優しく、かみくだくように描いた。
娯楽性も申し分なく、観終わった後、すがすがしい余韻が残る、傑作であると思う。

さて、今回の「フライト」はどうであろうか?
この作品は100人の観客がいれば、100通りの、全く異なる印象、全く異なる感想を持つことだろう。
そう言う作品なのだ。
監督は万人ウケはあえて選択しなかったのだ。

この作品は編集面でやや冗長さは感じられるが、決して駄作なんかではない。
正直、デンゼルファンの僕としては、最近の彼が結構、駄作としか言い様がない作品に、度々出ていることが気になっていた。だが、デンゼルの名誉とデンゼルファンのプライドに賭けて、これだけははっきり言っておく。

「本作は駄作なんかじゃあない」
この作品は観る人の「人生の経験値」に比例して、感動も深まってゆく作品なのだ。
ロバート・ゼメキス監督はそう言う作品にあえて創り上げた。だからこの作品を小中学生に見せても、ただの「アル中で薬物中毒のヤバい機長の話し」としか受け止められないだろう。

映画の終盤、ウィトカー機長は事故の公聴会に出席する。彼はそこである決断に迫られる。
それは自分で自分を裁く行為だ。
彼は冷静に、厳格に、自分を裁く。
それが人間として生きる道なのだと彼は決断した。

こんな難しい心理状況、それをデンゼル・ワシントンはまさに人間心理のアクロバット飛行のように演じてくれた。彼はこの作品を操る、見事なパイロット、操縦士だった。
 もしあなたが飛行機オタクで、派手な飛行機のアクロバットやスペクタクル、パニックの興奮をこの映画に期待するのであれば、毎月のように公開される、ハリウッドのアクション映画を観た方がいい。
コカ・コーラと(これもコカインからきているんだよね)ポップコーンをバリバリ頬張りながら楽しむ事をお勧めする。
本作は残念ながら、そちらの方面へは「フライト」しないのである。

しかし、もしあなたが人間を観察することが好きで、人間はどう生きるべきかを心の隅っこにでも忍ばせている人であり、そして映画からそのきっかけを学びたい、と思っている人であるなら、僕は、そんなあなたに、この作品を強くお勧めしたいと思う。
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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ
監督   ロバート・ゼメキス
主演   デンゼル・ワシントン、ドン・チードル
     ケリー・ライリー
製作   2012年 アメリカ合衆国
上映時間 138分
予告編はこちら



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