目次
はじめに
火あぶり地蔵とカタストロフィー願望 2012年10月15日号
ムクドリの群れ。迷惑と魅力 2012年11月15日号
よさこいの必須科目と共通言語 2012年12月15日号
そうか公園の水鳥の楽園 2013年1月5日号
ロボットプロレスを草加から世界に発信 2013年1月15号
草加市歌はスイングしてる 2013年2月15号
谷塚の地名から古代が見える 2013年2月15日号
寝そべって走る自転車、リカンベント 2013年2月25日号
浅間神社に富士山がある 2013年3月15日号
女子プロレスラー米山香織選手のストーリー 2013年4月15日号
辰井川をさかのぼる冒険 2013年4月15日号
クルーザーと戯れるイルカの群れ 2013年5月15日号
草加文化会館敷地内にある大きな樽 2013年6月5日号
ニュースポーツを体験しよう! 2013年6月15日号
神輿の作法 2013年7月15日号
ヤンキー文化が発する 街おこしのメッセージ 2013年8月15日号
今、町工場が熱くなっていること 2013年9月15日号
浅草で父娘活弁士、麻生八咫(やた)・子八咫(こやた)の舞台を堪能 2013年9月25日号
「100円商店街」のワークショップ 2013年10月15日号
草加ふささら祭り「踊るん♪よさこい」レポート 2013年11月5日号
「今様・草加宿」市民推進会議は草加の代表チーム 2013年11月15日号
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よさこいの必須科目と共通言語 2012年12月15日号

 11月4日(日)、草加ふささら祭り2日目、綾瀬川左岸広場のメインステージと、パレードのために開放された道路(県道足立越谷線)では、「踊るん♪よさこい」というイベントが行われていた。埼玉県内と近県から、そして福島からも、よさこいチーム35団体が集結した。パンフレットによると踊り子は総勢2000人ということだ。

 日が傾いてメインステージプログラムの最後にかかったとき、草加のよさこいチーム7連が急きょ招集された。ステージ上と前に子供も大人もずらーっと並び、1つの演舞が始まった。演目は「心ひとつに」だ。

「心ひとつに」は2010年に「草加よさこいを育てる会」が発表した草加よさこいのテーマソング。市内の大小の様々なお祭りによさこいが登場すると必ず見聞きする、市民にはすっかりなじんだ演目だ。

 

 動画「心ひとつに~by 草加よさこいを育てる会」

 

 つまり草加のよさこい関係者ならみんな踊れる必須科目。これが草加のよさこいだ、と誇れて、草加がひとつになれる土台だ。

 数百人による「心ひとつに」は力強かった。

 表彰式のあと、フィナーレの総踊りが始まった。曲目は「うらじゃ音頭」というタイトル。

 2000人がいっせいに踊る。弾むリズムと陽気なメロディで盛り上がりつつ、ああこれで終わってしまうというせつなさも漂い、簡単でダイナミックな振り付けの、つまりフィナーレにもってこいの演目。

 手をつないで、何人かずつの輪になって踊る場面がある。曲が進むうちに輪が融合して大きくなる。最後には客席を取り囲む巨大な輪になっていた。

 輪の外では、各連の旗師が大きく振り回す色とりどりの数十本の旗が乱舞している。その迫力も見ごたえがあった

 感動してしまった。よさこいを甘く見ていた。

 「うらじゃ音頭」は、どうやらだれでも踊れて、だれとでも手をつなげて、間違いなく盛り上がるテッパンの演目らしい。

 調べてみたところ、これは岡山県の「おかやま桃太郎まつり」の一環として開催される「うらじゃ」というお祭りのメインテーマだとわかった。

 

 動画「総踊り4 岡山うらじゃ2012 mususukunjp

 

 岡山からはるばる草加に伝来し、お祭りを盛り上げてくれた「うらじゃ音頭」。おそらくこの演目は、日本全国のよさこいのフィナーレで活躍しているに違いない。

 広告でもタイアップでもなく、チームからチームへ、祭りから祭りへと直に伝えられた、よさこい界の共通言語のひとつが「うらじゃ音頭」なのだ。

 よさこい祭りは高知で1954年(昭和29年)に徳島の阿波踊りに対抗して始まった。400年の歴史があるという阿波踊りに比べれば、ほんの最近始まったばかりのお祭りだ。

 そして1992年に始まった札幌の「YOSAKOIソーラン祭り」をきっかけにして、急激に日本中に広まった。

 日本各地で1年間に開催されるよさこい祭りの数は、すでに全国各地にある阿波踊りの祭りを遙かにしのぐらしい。

 

 今、日本中の街で、すごい勢いでよさこいチームやよさこい祭りが誕生しているのだ。B級グルメやローカルアイドルもそうだが、よさこいも地域振興の目玉になっているのだろう。そしてよさこいは、地域同志が手をつなぎ感動を共有することにも貢献しているのだ。

 

関連リンク

Wikipedia「よさこい祭り」

Wikipedia「YOSAKOI」

Wikipedia「うらじゃ」

●草加よさこい公式Webサイト http://www.soka-yosakoi.com/Pages/default.aspx


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そうか公園の水鳥の楽園 2013年1月5日号

 年末の午後、写真が趣味の娘につきあってそうか公園に行った。広い敷地を歩いていれば何かいい撮影対象があるだろうと思ったのだ。

  そしてひょうたん型の「修景池」で、格好の撮影対象に出会った。対岸付近で大騒ぎしている無数の水鳥だ。岸辺にいる親子が餌を撒いているのだった。

  娘はあわてて対岸へ走った。

  水上にいる数種類の水鳥はカモの仲間だろうか。小さい女の子が投げ入れる餌を求めて殺到する鳥たちのアップや集合写真、そしていい表情を求めて娘はシャッターを切った。

 滑空して着水し餌を強奪する白い鳥もいる。1度など女の子のお父さんがまだ手に持っているパン切れ目がけて飛んだまま直に奪い取る場面もあった。

 シャッターチャンスの連続に娘は熱中した。水鳥たちの饗宴を遠巻きに見ているカラスやハトたちには目もくれなかった。

 撮った写真は数百枚に達していた。

 

 あとで調べたら、どうやらそうか公園修景池は野鳥の楽園らしい。

 「しらこばとNETWORK」というサイトの「そうか公園(草加市)」というページには、そうか公園と周りの柿ノ木田んぼに生息している野鳥として、カモ(ホシハジロ、カルガモ、キンクロハジロ、ハシビロガモ、コガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、マガモ)、カワウ、ゴイサギ、アマサギ、ダイサギ、コサギ、ムナグロ、コアジサシなどの名前が挙げられている。

 灰色と茶色の交じった羽の色の鳥がたくさんいたが、あれはカルガモらしい。

 手から直接パンを奪い取った白くてきれいな鳥はユリカモメであることもわかった。

 池の中の小さな島の木の陰に大きな白い鳥が潜んでいた。しばらくしてゆったりと羽ばたいて空高く去って行ったが、あれはダイサギという鳥だったかもしれない。

 今度撮影に行くときは図鑑を持って行こう。


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ロボットプロレスを草加から世界に発信 2013年1月15号

 2012年11月3日、綾瀬川左岸広場では「草加ふささら祭り」と同時開催の「草加商工会議所まつり」が開かれていた。その片隅に「ロボットプロレス」の会場があった。もともとロボットにもプロレスにもそれほど強い関心はなかったのでちらっと見て通り過ぎようと思ったのだが、見始めたらすぐにくぎ付けになった。

 ロボットが二足歩行したり踊ったりして話題をさらったのは何年前だったか。ここ草加でロボットプロレスを披露するロボットたちは、歩くし踊るしそれどころか殴る、キックする、反り返って投げる(ジャーマン・スープレックス・ホールドというそうだ)。そしてギャグの身振りまで繰り出すのだ。ロボット技術はこんなに高く広く進歩していたのかと驚いた。

 リングアナウンサーの太く歯切れいい声と解説者の軽妙な声のやり取りもプロっぽく、試合の盛り上げに大いに貢献していた(しきりにプロレスラーの名前や名場面を引用するので、プロレスに詳しい人ならもっと楽しめたかもしれない)。

 次々と出てくるロボットたちの個性と高度な演出で作り上げられた完成度の高いエンターテインメント。リングを取り囲む観客たちは大いに笑い、喝采した。

 年が明けて1月4日、NHKのテレビ番組「特ダネ!投稿DO画」でこの草加ロボットプロレスが紹介されたようだ。後日NHKオンラインのサイトに動画がアップされていた。ロボットプロレスの素晴らしさが改めて確認できた。(https://www.youtube.com/watch?v=xMGnOMKDmsk

 映像の中にロボットプロレス主催者へのインタビューがあった。ミステル・タマオ総統と名乗る怪しい覆面男。「大学でロボット技術を学んだタマオ総統。普段はゲームメーカーで働いているそうです」というナレーション。

 ミステル・タマオ総統は、全国からロボットアーティストたちを集結させることのできる熱いプロデューサーだ。ロボットプロレス「できんのか!」オフィシャルサイトも運営している。

 ちなみに「ITmedia ガジェット」というサイトで、ロボットプロレスの主催者「小俣氏」(小俣善史氏)へのインタビューがある。インタビューが始まると、小俣氏は覆面をかぶって「ミステル・タマオ総統」に変身した。

 さて上記の「できんのか!」オフィシャルのサイトには動画が貼られている。去る11月3日のロボットプロレス、『第3回天下ネジ武道会』の告知動画だ。顔を出して告知を行っているのは「ねじあさい」と名乗る人物。彼は草加市内でネジ製造の浅井製作所を経営する浅井英夫氏。ロボットプロレスのための技術協力をはじめ、さまざまな面から草加のロボットに尽力している。

 ミステル・タマオ総統(小俣善史氏)とねじあさい氏(浅井英夫氏)の2人のキーマンが登場した。

 もう一人のキーマンがいる。小俣克彦氏だ。

 草加商工会議所のサイトで、落語家三遊亭春馬氏がロボットプロレスの紹介をしている。

 

「草加商工会議所まつりではロボットフェスティバルと題して『ロボットプロレス』をご紹介しております。これは会議所まつり企画イベント部会長である小俣克彦さんが『ロボットを通して子供達にモノづくりを』との思いから5年前から始まったもの。」

(「三遊亭春馬のそうかソムリエ」より)

 

 小俣克彦氏は草加市内の金属加工業「東京製鎖株式会社」を1969年から経営するかたわら、草加の産業推進やまちづくりに寄与している方だ。

 ロボットプロレスは、草加から世界に発信する、草加の産業界の夢を託された文化なのだ。

 

関連リンク

●YouTube「Robot Pro-Wrestling Dekinnoka! Channel」
https://www.youtube.com/user/atamo21

●ITmediaガジェット「1機50万円のロボットがマットに叩き付けられる!? ロボットプロレスは過激なエンタテインメントだった!! 」

http://gadget.itmedia.co.jp/gg/articles/1112/20/news092.html


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寝そべって走る自転車、リカンベント 2013年2月25日号

 草加市弁天に「日本教育備品」という会社がある。学校や学習塾用の机や椅子を中心とした備品を製造販売している。

 

 ホームページを見ると、机、椅子、黒板などの主力商品の写真つきメニューが並んでいるが、いちばん下までスクロールするとちょっと変わった自転車の写真がある。
「NiKIRIN Recumbent 椅子に腰掛けた姿勢で走る、愉快な乗り物の紹介です。」という説明が添えられている。
 リカンベントという変わった自転車をこの会社は取り扱っているのである。

 

 同社のホームページによると、リカンベントとは「椅子に寄りかかるような姿勢で乗る自転車」とのこと。
 寝そべった姿勢で乗るため、空気抵抗が少なく、楽にスピードが出せるようだ。
 同社では毎月試乗会を開催して、リカンベントの普及に努めている。
 初めてだと難しそうだが、みなさん意外に簡単に乗りこなせるようになっている模様。

 リカンベントについて調べたら、愛好する著名人たちがいることがわかった。
 たとえば落語家桂文枝氏(2012年に襲名するまで桂三枝)の名前が挙がる。

 

 そういえば昨年9月、「徹子の部屋」に出演したときの放映をたまたま見たのを思い出した。
 あまりスポーツをたしなまない文枝氏が唯一楽しんでいるのがリカンベントだと、話していた。
 サイクリングウェアとヘルメットを身に着けて、淀川沿いを悠々と寝そべりながらリカンベントを漕いでいる映像が流れた。いかにも楽しそうだった。

 

 ミュージシャン平沢進氏は日常的にリカンベントを使用しているという。
「RIDE THE BLUE LIMBO」という曲のミュージックビデオで自身がリカンベントに乗っているシーンが収められている。曲調ともあいまって、リカンベントは未来の乗り物のように見える。

 

 ノンフィクション作家、科学ジャーナリストである松浦晋也氏。ブログや著書でしばしばリカンベントの魅力に言及している。
 松浦氏は技術史、文明史の観点からこれからの乗り物としてリカンベントに可能性を見出しており、また自身も日常的にリカンベントを愛用している。


リカンベントには“必死”という言葉は似合わない。リラックスできる乗車姿勢で、目の前の道路から頭上の空までの広い視界を楽しみつつ、ゆったりと乗って、なおかつ適度に速いというのがリカンベントの楽しさであり、便利さでもある。
(「リカンベントに乗ってみようよ(松浦晋也のモビリティ・ビジョン)」より)

http://archive.wiredvision.co.jp/blog/matsuura/200901/200901231330.html


 知れば知るほど興味がわくリカンベント。これはもう試しに乗ってみるしかないだろう。

 日本教育備品に連絡すれば試乗会に参加できるようだ。

 


補足)

草生人 2013年初夏号「自転車特集号」にて取材させていただきました。
PDFファイルはこちらから:http://www.asymos.com/soseijin/isuue/


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浅間神社に富士山がある 2013年3月15日号

 谷塚駅の東側、瀬崎町を散歩し、ふらっと浅間(せんげん)神社の境内に入った。夏に賑わう祭りの時以外では入ったことがなかった。

 境内を奥に進むと別の鳥居があった。小御嶽(こみたけ)神社と書かれている。そして鳥居の向こうに奇怪な塊があることに気付いた。岩だらけの山だ。高さは3~4メートルだろうか、頂上に向かって急勾配にそそり立っている。ちょうど富士山のような形。公園にありそうな子供が遊ぶための山にしてはごつごつして危険な風情だ。実際、「危険です のぼらないで!!」と書かれた看板が立てられている。

 その山の頂上に小さな祠(ほこら)のような物が設置されているところを見ると、これが「小御嶽神社」の本殿ということらしい。

 

 帰宅してから調べてみた。

 わかったことは、まずあの富士山のような山はまさに「富士塚」といって、富士山を模して築かれた山だったのだ。どうやら東日本を中心に1,000を超える富士塚が存在するらしい。
 また、鳥居に書かれた文字、「小御嶽神社」とは富士山5合目にある神社の名称であることがわかった。
 つまり、山と神社をセットで富士山から拝借して瀬崎町で再現していたのだ。

 

 参考:Wikipedia「富士塚」

 

 また瀬崎町の「浅間神社」は正式には「富士浅間神社」といって、富士山の神霊である木花咲耶姫命(コノハナノサクヤビメ)が祀られているということだ。
 そして浅間神社は、静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社を総本宮として、なんと日本中に約1,300社も存在しているという。

 

 参考:Wikipedia「浅間神社」

 

 草加にある富士塚や浅間神社は、富士信仰のネットワークを通して日本中につながっているのだ。

 

 ところで富士山は活火山である。
 奈良~平安時代や江戸時代にも噴火の記録がある。 
 噴火の光景は当時の人々にどんな感情を植え付けただろうか。

 また、浅間神社に祀られている古事記と日本書紀に登場する女神、コノハナノサクヤビメは、火の中で出産をしたという言い伝えがある。そこから火山である富士山に鎮座して東日本一帯を守護することになったという。

 火の神であり、噴火を鎮める水の神でもあるというコノハナノサクヤビメに、人々は何を求めたのだろうか。

 毎年7月に瀬崎町の浅間神社で催されるたいへんな賑わいを見せる例大祭は、かつては各地から富士信仰の団体が参拝に来ていたという。

 

 参考:広報そうか ふるさとの歴史をたずねて「富士浅間神社(瀬崎町)」
 

 もしかしたらこのお祭りは、年1回、富士山が活火山であることを思い出し、天災に備えるための行事だったのではないだろうか。


>※草生人 2013年3・4月号(防災特集号)に転載


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クルーザーと戯れるイルカの群れ 2013年5月15日号

 4月28日、日曜日。草加市高砂のスポーツ自転車専門店、ロードギャラリーミラノが運営するクラブ、「チーム・ミラノ」のアサラン(朝の走行会)に同行した。

 

 毎週日曜日に100キロランと50キロランを交互に開催している。この日は50キロランなので朝8時出発だ。集合場所は草加栄町のセブンイレブン前。快晴だ。

 体にぴったりはりついた赤系の派手なミラノのユニフォーム姿の筋肉質な男女が、数人集まっていた。塀には精悍なロードバイクが数台立てかけてある。

 ミラノの店長、岩澤克政さんは普段着。チーム・ミラノのロゴがでかでかと貼られたワゴン車を、サポートカーとして運転するからだ。機材や人のトラブルに対処するために、サポートカーを必ず同行させるという。

 

「みんな集まりましたね」と岩澤さん。ここでは数人だが、沿道の途中からの参加があるので、この先どんどん増えていくという。

「それでは出発しましょう!」

 私はワゴン車の助手席に乗せていただいた。

 

 県道草加流山線を東に向けて走る。渋滞気味で車が滞っている間にチームの自転車はすっかり見えなくなった。

 サポートカーが自転車を伴走するようなイメージを持っていたので少々拍子抜けだ。

 自転車は渋滞の影響を受けにくく、実は街中では自動車よりも速い乗り物なのだ。自転車最強。

 

 「ブログ、読ませていただきました。『手を叩く意味』。感銘を受けました」と、僕は岩澤さんが去年の5月29日にミラノのブログにアップした記事に言及した。

「ありがとうございます」と岩澤さんが答えた。

 

 現在26歳の岩澤さんは去年の4月にミラノの店員となった。それから間もなく5月22日に社長の木村隆博さんが亡くなった。

 木村さんは、計画していたツアーの下見をするために岩澤さんといっしょに車で出かけ、その途中で倒れたのだった。

 ブログにはその日のドライブの様子が、豊富な写真といっしょに詳細に淡々とつづられていた。

 風景が通り過ぎる中で交わされる何気ない会話が再現されていた。会話の内容は、結末を知っている読者にはとても重く感じられるものだった。

 木村さんは岩澤さんにこう問いかけたのだ。

 

「ガンちゃん。手を叩いたら音がなるよね?どっちから音が出ていると思う?」

 R.G.MILANO BLOG「手を叩く音の意味」(2012-05-29)

http://rgmilano.exblog.jp/15440216/

 

  三郷駅前を通過、江戸川を渡って左折。千葉県道5号松戸野田線へ。

 しばらく走ると田園風景が開けてきた。松戸野田有料道路(現在は有料ではない)に入っていた。

 反対車線を、正面から1台のロードバイクがこっちへ向かってくる。岩澤さんが手を振った。チーム・ミラノのユニフォームを着ていた。続けて次々とチームの自転車が走って来る。

 

 岩澤さんは脇の農道に車を止めた。車から降りたら、前方からも後方からもミラノメンバーのロードバイクが走っては通り過ぎていく。

 この道路を何往復もするトレーニングが、今日のアサランの主目的だったのだ。なんとストイックな日曜日。

 ふと気づいたら、トラクターが現れこっちに合図を送っていた。農道に入るから車をどかせという意味だ。私たちは車に乗り込んで運転を再開することにした。

 

 ミラノメンバーの自転車が前方を1列で走っている(必ず1列だ)。車がどんどん追い抜く。自転車ライダーはこっちを見て手を振る。

 先行の車が詰まって速度が落ちると、ライダーがどんどん追い抜く。

「クルーザーと戯れるイルカの群れみたいですね」と言ったら、

「知っている人にはそう感じていただけるんですが、自転車を嫌う人は迷惑がるんですよ」と岩澤さんが答えた。

 自転車の列はときどき順番が入れ替わるようだ。

 「先頭は風よけ役。随時交代するんです」とのことだ。

 

  やがて車は松戸野田有料道路から外れ緑豊かな道路を走り、沿道のローソンの駐車場に入った。

 先に着いていた自転車乗りたちが休憩していた。あとから到着する人たちもいて、アサラン参加者は合計20人ぐらいだったことがわかった。

 今回の参加者たちの年齢は、いちばん若い方が29歳で最高齢は68歳だそうだ。60代はあと2人いた。意外と年齢層が高い。

 68歳の方は自転車を初めてまだ7年だというから驚き。60代でロードバイクデビューなのだ! 精悍な体つきだったので何かやっていたのかとお聞きしたら「百姓だ」というあっさりした返答。


 

「ああ、一番若いのはオレです!」と26歳の岩澤さんが手を挙げた。

 

 岩澤さんはどんな人なのか、クラブメンバーの1人に聞いてみた。

「メンバーはみんな年長なのに、それを束ねる力量はすごい。頼れる男だね」

 

 アサランはこの場で解散となった。11時ごろだった。岩澤さんは草加に戻りこれからミラノを開店する。

 定休日の火曜と水曜は何をやっているのか尋ねたところ、有志を募ってツーリングに行くという。そこでもサポートカー担当だ。

 

 自分では自転車に乗る暇などない。1年中、自転車乗りたちをサポートする役割に徹しているのだった。

 

※埼玉県のスポーツサイクル専門店 ROAD GALLERY MILANO

http://rg-milano.jp/


「ロードギャラリーミラノ」

草生人2013年初夏号「自転車特集号」にて取材させていただきました。

PDFファイルのダウンロードはこちらから:http://www.asymos.com/soseijin/isuue/



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ヤンキー文化が発する 街おこしのメッセージ 2013年8月15日号

●漢字の当て字のチーム名

 

 よさこいの連の名称に暴走族のような漢字の当て字が目につくため、暴走族とでも関係があるのではないか、と心配する人がいた。

 去る7月20日と21日に開催された草加よさこいサンバフェスティバルに出演した連だと、輝楽喜楽連(きらきられん)、疾風乱舞(しっぷうらんぶ)、朝霞襲雷華撃団(あさかしゅうらいかげきだん)あたりが、そんな余計な心配を引き起こすのだろうか。

 実際には輝楽喜楽連は草加市内の大人の女性チーム、疾風乱舞は平塚のダンススクールが母体となった若い女性たちのチーム、朝霞襲雷華撃団は朝霞市の若い男女のチーム。いずれも暴走族と無縁だ。

 ちなみに疾風乱舞は数々の受賞歴を誇る有名なチームである。今年の11月4日の「踊るん♪よさこい」にも出演するので、その艶やかな美の乱舞をぜひ見逃さないでほしい。

 

●よさこいに連なる「ヤンキー文化」

 

 裾の長い和のテイストの衣装や気合いの入ったかけごえから、よさこいと原宿竹の子族やヤンキー文化との類似を指摘する人は多い。

 この数年、ヤンキー文化は研究対象になりつつあるようだ。

 たとえば以下のような書籍が刊行されている。

 

ヤンキー文化論序説』(五十嵐太郎著)

 あらゆるジャンルの研究者、ライターたちが、硬軟あらゆる側面から日本に偏在するヤンキー的なものを執筆した本。

世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』(斎藤環著)

 精神医学者がヤンキー的なあらゆる事象、矢沢永吉、B ' z、EXILE、木村拓哉、白洲次郎などを分析しつつ、日本人の国民性をあぶりだす。

 

 ヤンキーな男女は日本中に大勢いて、生活や文化を享受している。ヤンキーじゃない人というと、どうやら「おたく」などがその代表といえるようだが、おそらくヤンキー層のほうが多数派なのではないだろうか。

 また、ヤンキーは「今・ここ」を肯定するメンタリティだと、大学の講義で聴いてきたと娘が言った。八百万(やおよろず)の神々がいる日本は、どこも神聖な場所であり、つまらない地元もすばらしい故郷たりうるのだ。これがヤンキーが地元で踏ん張って幸福を追求する動機なのかもしれない。

 最近草加のよさこいチームの関係者と話す機会が多い。彼らはみな仕事に熱心な市民であり、またまちづくり、まちおこしの活動にも情熱を傾けるきわめてまじめな大人たちだった。彼らはよさこいを通して街を元気にしようと真剣に考えている。

 よさこいに燃えるとき、自分の中のヤンキー魂に出会うのだろう。

 ヤンキーこそ地元の仲間がひとつになる共通の精神なのだろう。

 

●ヤンキー発のポジティブなメッセージ

 

 ヤンキー文化が気になり始めてから、ヤンキーならではの熱いメッセージが筆者の心にも届き始めた。

 たとえばNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』。橋本愛が演じる足立ユイは上京してアイドルになる夢を持っていたが、家庭のトラブルが元で夢が破れ岩手県北三陸に留まらざるを得なかった。そして見る見るうちに風貌、言動が不良に、すなわちヤンキーになっていった。

 だが、周囲の愛情によって明るさを取り戻し、最後は親友の天野アキ(能年玲奈)といっしょに地元のアイドルになった。まちおこしに身を投じたのだ。

 ヤンキーの青春模様を歌い続ける氣志團は、去年から「氣志團万博」という音楽フェスティバルを南房総(袖ヶ浦)で開催し、「自分の生まれ故郷で生きる若者たちに、勇気を与えること」という夢を高らかに掲げた。

 EXILEは斜に構えて威嚇するような目つきの男たちだが、彼らが歌う「Rising Sun」には日本の明るい未来を信じるまっすぐでポジティブなメッセージが込められている。

 これからの日本を考えるとき、ヤンキーは無視できないと思う。自分の中のヤンキーを見つめなおそう。



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