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13th World Congress on Painで線維筋痛症の一般演題を発表した者は線維筋痛症と筋筋膜性疼痛の関係をどのように考えているか

 

 

戸田克広     

 

抄録

 2010年に開催された13th World Congress on Painにおいて線維筋痛症(FM)の一般演題を報告している者24人中、筋筋膜性疼痛(MPS)はFMの部分症状あるいは前段階であると考えている者は12人(50%)、MPSとFMは異なる疾患であるが合併することがあると考えているものが8人(33.3%)であった。わからないと答えた者が4人(16.7%)であった。

 

目的

 線維筋痛症(fibromyalgia: FM)と最も鑑別が困難な疾患は身体表現性障害やFMのグレーゾーンである慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)や慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)を除けば、筋筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome: MPS)である[1]。FMにかかわっている者がその関係をどのように考えているかを調べた。

 

方法

 2010年にカナダのモントリオールで開催された13th World Congress on PainにおいてFMの一般演題を報告している者24人にFMとMPSの関係をどのように考えているかを口頭で尋ねた。

 

 

結果

 MPSはFMの部分症状あるいは前段階であると考えている者は12人(50%)、MPSとFMは異なる疾患であるが合併することがあると考えているものが8人(33.3%)であった。わからないと答えた者が4人(16.7%)であった。(図1)

 

考察

 医学的に説明のつかない痛みや症状をリウマチ科や慢性痛科はFMやそのグレーゾーンであるCWPやCRPと診断し、治療を行っている。同じ病態を精神科は身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断、治療している[2]。同じ病態を、異なる診療科が異なる診断、異なる治療を行うという異常事態が起きている[2]。FMの方が身体表現性障害より科学的根拠のある有効な治療が圧倒的に多いため、身体表現性障害と診断するよりFMやそのグレーゾーンと診断する方がほぼ間違いなく治療成績がよくなる。FMやグレーゾーンを認めれば、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)は存在しなくなる。そのため、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)はFMの鑑別疾患にはなりえない。

 MPSはトリガーポイント(trigger point: TrP)を特徴としているが、30人の FM患者を調べると大部分の圧痛点はTrPという報告[3]や、同一人物のTrPを複数のMPSの専門家が診察すると大きな不一致があるという報告[4]があり、TrPの存在そのものやMPSの存在そのものを疑わざるを得ない報告がある。教科書的にはFMとMPSは独立した疾患と見なされているが、FMの診療にかかわる者の約半数はMPSはFMの部分症状あるいは前段階とみなしている。もちろん、医師全体ではMPSはFMの部分症状あるいは前段階とみなす医師は半数よりかなり少ないと私は推測している。

 MPSはFMの部分症状あるいは前段階であるという仮説が正しければMPSは存在意義を失ってしまう。MPSと診断されてもトリガーポイントブロック(trigger point block: TrPB)を行わず、FMの治療を行えばよいからである。逆にFMやその不全型であるCWPやCRPにTrPBを行えばよいという考えもあるが、TrPBあるいは局注を受けたFMやその不全型患者の話を総合するとTrPBあるいは局注には数日程度の有効性はあっても、長期的な有効性はないようである。FMに対するTrPBの10日程度の短期効果は報告されているが[5]、長期効果は報告されていない。MPSへのTrPBの有効性は二重盲検法によりプラセボより有意に優れていることは確認されていないと日本神経治療学会治療指針作成委員会は述べている[6]。ここで言うプラセボとは単に針を刺しただけの治療を意味すると私は考えている。TrPB を受けたMPS患者の話しを総合するとTrPBには数日程度の有効性はあっても、長期的な有効性はないようである。

 MPSの最大の問題点は標準的な診断基準がないことである。FMの診断基準はあいまいであるという批判をしばしば受けるが、標準的な診断基準がないMPSの方がさらにあいまいである。日本のペインクリニック領域ではMPSが重要視されており、その結果FMやその不全型と診断される可能性が少なくなり、それがFMの普及を妨げる一因になっている。同一の患者を、MPSを専門にする医師が診断するとMPSと診断され、FMを専門にする医師が診断するとFM 、CWP、CRPと診断される。異なる医学理論が衝突した場合の解決方法は、簡単である。治療成績が優れた医学理論が正しいのである。私は2007年から2011年までの[7]、および2011年から2013年までの[8]、FM、CWP、CRPの1-2年間の治療成績をすでに発表した。前述のように私が個人的に調べたMPSの治療成績よりFM、CWP、CRPの治療成績の方が優れている。しかしそれでは公平な比較とは言えない。公平な比較を実現するためにMPSに対するTrPBの1年程度の長期成績あるいはFMに対するTrPBの1年程度の長期成績を発表していただければ幸いである。

 

文献

1) 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.

2) 戸田克広: 同一症状、同一患者が診療科により全く異なる診断、治療が行われている異常事態—線維筋痛症か身体表現性障害または心因性疼痛かー. ブクログ, 2013, http://p.booklog.jp/book/67945

3) Ge HY, Wang Y, Danneskiold-Samsoe B, Graven-Nielsen T, Arendt-Nielsen L: The Predetermined Sites of Examination for Tender Points in Fibromyalgia Syndrome Are Frequently Associated With Myofascial Trigger Points. J Pain. 2009.

4) Lew PC, Lewis J, Story I: Inter-therapist reliability in locating latent myofascial trigger points using palpation. Man Ther. 2: 87-90, 1997.

5) Affaitati G, Costantini R, Fabrizio A, Lapenna D, Tafuri E, Giamberardino MA: Effects of treatment of peripheral pain generators in fibromyalgia patients. Eur J Pain. 2010.

6) 日本神経治療学会治療指針作成委員会: 標準的神経治療:慢性疼痛. 神経治療. 27: 591-622 http://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/mansei.pdf, 2010.

7) 戸田克広: 2007年4月から2013年6月までの線維筋痛症およびその不完全型(慢性広範痛症/慢性局所痛症)の治療成績の比較. ブクログ, 2013, http://p.booklog.jp/book/75704

8) 戸田克広: 2011年9月29日から2013年6月までの線維筋痛症およびその不完全型(慢性広範痛症/慢性局所痛症)の治療成績の比較. ブクログ, 2013, http://p.booklog.jp/book/75705

 


著者

戸田克広(とだかつひろ)

 1985年新潟大学医学部医学科卒業。元整形外科医。2001年から2004年までアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)に勤務した際、線維筋痛症に出会う。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や原因不明の痛みの治療を専門にしている。2007年から廿日市記念病院リハビリテーション科(自称慢性痛科)勤務。『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)を2010年に出版。電子書籍『抗不安薬による常用量依存—恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、抗不安薬の罠、日本医学の闇—』http://p.booklog.jp/book/62140を2012年に出版。ブログにて線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や痛みの情報を発信している。実名でツイッターをしている。

 

 2010年に『線維筋痛症がわかる本』を書いて約3年になります。すでに絶版になりましたが、電子書籍は購入可能です。新しい薬物の発売などがあり修正が必要です。現在、一般人が理解可能な医学書を書いている最中です。本書籍がその中核になります。線維筋痛症のみならずその周辺疾患や抗うつ薬などの英語論文を徹底的に読み、そこで得た知識を実践した経験を基にした書籍です。線維筋痛症の治療はほとんどすべての慢性痛に有効です。医学書を出版していただける出版社があれば声をかけていただければ幸いです。

 

ツイッター:@KatsuhiroTodaMD

 実名でツイッターをしています。キーワードに「線維筋痛症」と入れればすぐに私のつぶやきが出てきます。痛みや抗不安薬に関する問題であれば遠慮なく質問して下さい。私がわかる範囲でお答えいたします。

 

電子書籍:抗不安薬による常用量依存―恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、精神安定剤の罠、日本医学の闇―http://p.booklog.jp/book/62140

 日本医学の悪しき習慣である抗不安薬の使用方法に対する内部告発の書籍です。276の引用文献をつけています。2012年の時点では抗不安薬による常用量依存に関して最も詳しい日本語医学書です。医学書ですが、一般の方が理解できる内容になっています。

 

・戸田克広: 「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して!―まず知ろう診療のポイントー. CareNet 2011

http://www.carenet.com/conference/qa/autoimmune/mt110927/index.html

 薬の優先順位など、私が行っている線維筋痛症の最新の治療方法を記載しています。

 

・戸田克広: 線維筋痛症の基本. CareNet 2012

http://www.carenet.com/special/1208/contribution/index.html

 さらに最新の情報を記載しています。線維筋痛症における薬の優先順位を記載しています。

 

英語の電子書籍です。

Physicians in the chronic pain field should participate in nosology and diagnostic criteria of medically unexplained pain in the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-6

http://www.amazon.com/participate-unexplained-Statistical-Disorders-6-ebook/dp/B00BH2QJG4/ref=sr_1_2?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1361180502&sr=1-2&keywords=katsuhiro+Toda

医学的に説明のつかない痛みを精神科医は身体表現性障害と診断し、痛みの専門家は線維筋痛症あるいはその不完全型と診断しています。治療成績は後者の方がよいと推測されます。2013年に精神科領域の世界標準の診断基準であるDSM-5が運用予定です。次のDSM-6では医学的に説明のつかない痛みに対する分類や診断基準を決める際には痛みの専門家を加えるべきです。

 

Focus on chronic regional pain and chronic widespread pain_Unification of disease names of chronic regional pain, chronic widespread pain, and fibromyalgia_

http://www.amazon.com/regional-widespread-pain_Unification-fibromyalgia_-ebook/dp/B00BH0GK7O/ref=sr_1_1?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1361180502&sr=1-1&keywords=katsuhiro+Toda

線維筋痛症の不完全型である慢性広範痛症や慢性局所痛症と線維筋痛症を区別する臨床的意義はありません。

 

ブログ:腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へー中枢性過敏症候群ー戸田克広 http://fibro.exblog.jp/

 線維筋痛症を中心にした中枢性過敏症候群や抗不安薬による常用量依存などに関する最新の英語論文の翻訳や、痛みに関する私の意見を記載しています。

 

線維筋痛症に関する情報

戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.

医学書ではない一般書ですが、引用文献を400以上つけており、医師が読むに耐える一般書です。

 

 


電子書籍

通常の書籍のみならず電子書籍もあります。

電子書籍(アップル版、アンドロイド版、パソコン版)

http://bukure.shufunotomo.co.jp/digital/?p=10451

通常の書籍、電子書籍(kindle版)

http://www.amazon.co.jp/%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E7%AD%8B%E7%97%9B%E7%97%87%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%9C%AC-ebook/dp/B0095BMLE8/ref=tmm_kin_title_0

電子書籍(XMDF形式)

http://books.livedoor.com/item/4801844

 


奥付け

13th World Congress on Painで線維筋痛症の一般演題を発表した者は線維筋痛症と筋筋膜性疼痛の関係をどのように考えているか

 

2013年11月12日 第1版第1刷発行

http://p.booklog.jp/book/79071/read

著者:戸田克広

発行者:吉田健吾

発行所:株式会社ブクログ

    〒150-8512東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー

            http://booklog.co.jp

 

 

 


奥付



13th World Congress on Painで線維筋痛症の一般演題を発表した者は線維筋痛症と筋筋膜性疼痛の関係をどのように考えているか


http://p.booklog.jp/book/79071


著者 : 戸田克広
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/katsuhirotodamd/profile


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