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アバンタイトル

 

 

最終話 旅立ちの季節

 

 

 

 

 

 

 

268 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: 3hrm5Atsp

 動きあった?

 

269 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: Rh464h35w

 巨人キタ━(゚∀゚)━!!!!!

 

270 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: 1gxEQL3jV

 イエエエエエエエガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

271 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: e2fXHPaHs

 自衛隊は?

 

272 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: 7QXBWBno4

 ちょwwwwwww74式とかwwwwwww

 10式出せ!10式!!

 

273 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: GcX6Qplcu

 >>272

 10式でも一緒でしょ

 

274 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: i2LHGP43Y

 徹甲弾より榴弾のほうが効くでしょ

 

275 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: G8IY4T4Sa

 >>274

 さすがに使ってるだろwww榴弾www

 榴弾より放水して溶かしたほうがいい気もするけど

 

276 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: my8x2drTm

 自衛隊は巨人より竜巻のほうに苦戦してる気がする

 

277 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: FbT3Gdrwb

 魔女っ娘どうしたん?

 何してんの?

 

278 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: sLwtmUckp

 >>277

 やられた

 

279 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: nz01nultf

 >>278

マ 

ジ  ハ ,,ハ 

デ (;゚◇゚)z 

!?

 

280 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: CUefGWkCP

 >>278

 てきとーなこというな

 

281 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID:Newsbucy0

 こちらスネーク

 赤い覆面戦士特攻 消息不明

 ラクシュピオニィ トゥインクルファウンテンで

 雪の巨人撃破wwwwww

 

282 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: CUefGWkCP

 >>281

 ソースはよ

 

283 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: sLwtmUckp

 >>281

 ソース!

 

284 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: my8x2drTm

 >>281

 ピオニィってピンク?みどり?

 

285 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID:jpol7ref0

ありのまま今起こった事を話すぜ!

ついさっきの話なんだけど目の前で人が掻き消えた。

京都の天橋立のそばにある切戸の文殊に

高校入試の合格祈願で友達と3人で行ったんだ。

そしたら後ろから小柄な女の子が来て俺にぶつかったんだ。

謝りもしないで走っていったから頭にきて追っかけたんだよ。

そしたらその女、何かお守りみたいなもの頭の上にかざしながら

ワケわかんないこと必死な声で叫びだしたんだ。

「シンハ!」とか「キンバ!」とかそんな風に聞こえた。

受験ノイローゼとかそんなんで

やばい子なのかなぁなんて思ってたら

女の子の体が黄色って言うかオレンジっていうか

ぼんやりと光りだして目の前でふっと消えちゃったんだ。

催眠術だとか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ!

 

286 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:03:48.02 ID:sycQz1Bd0

>>285

空気嫁!!11111

 

287 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: my8x2drTm

 >>285

 流れ考えろ

 

288 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID:jpol7ref0

 誤爆www

 

289 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09   ID:Newsbucy0

ミレニィキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 

290 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID:jpol7ref0

 >>287

 スネークするならせめて写真くらい張れ

 

291 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日) 13:59:57.09 ID: nz01nultf

 自衛隊竜巻で壊滅

 ソースはNHK

 

292 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:04:02.19 ID:NgGfaIk/O

おいテレビつけろ!回線戻ったぞ

 

293 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:04:44.48 ID: aHaHg7ekZ

みどりキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!

 

294 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:05:11.28 ID:mjW1Zpa/O

みどりキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!

 

295 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:05:12.49 ID:sycQz1Bd0

みどりキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!

 

296 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:05:13.58 ID:kc8ugyNaP

みどりキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!

 

297 :本当にあった怖い名無し:2017/02/13(日)14:05:13.72 ID:trb9nl9d0

みどりキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!

 

 


旅立ちのとき

 

 轟音を立ててわたしの方へと向かって雪の巨人が崩れ落ちてきた。

 その白い体に一閃、オレンジの光が走る。

  するとその線を中心に、一瞬にしてぶどうの房のようにいくつもの火球が生まれ、連続した爆音とともにわたしは爆風に地面へと叩きつけられた。

 何とか立ち上がると、あたりは真っ白な水蒸気につつまれていた。

 そうだ、赤木君! 赤木君!

 先ほどの張りぼてはきっと見間違いだ!

 文珠を使って回復させてあげればきっとまた微笑んでくれるはず!

 真っ白な水蒸気の隙間から影が見えた。

 うつむき加減で動いている。やっぱり無事だ!さっきのは気のせいだったんだ!

「赤木君!」

 わたしは影に向かって思いっきり飛びついた。が、それはわたしの想像よりはるかに小さく、その勢いでわたしと影は雪の上にもつれるように転がった。

「え?」

 そこにいたのはミレニィだった……

「え? 何で……」

「ごめん……ぼたんちゃん……間に合わなくって……」

「え? 何のこと……」

 涙ぐんだミレニィの声がわたしの心の不安を煽る。

 わたしの下にいるミレニィの視線が左側を向いている。

「やだ、やめてよ……なにしゃくりあげてるのよ……また……わたしを驚かせ……ようったって……無事に決まってるじゃない……そうよ……ただ……赤木君は……気を失って……いるだけ……なん……だから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 張りぼてだ。

 張りぼてだ。

 張りぼてだあぁああぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁ……

 すがり付いて揺さぶってみるけどまるで反応がない。

「んぐっふぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ…………」

 さっきみたいに抱きしめてよ!

 ラクシュミーの体じゃないと折れちゃいそうなほど力強く!

 あの熱く燃える唇でキスしてよ!

 でも……でも、頬に伝わってくるのは……ニスをひいた新聞紙の冷たい肌触りだけだ……

 ……ギリギリで止めるって約束したのに……

 ……それを信じて赤木君は巨人に向かっていったのに……

 わたしが

 わたしが……

 わたしが…………

「わたしのせいでぇえぇぇええぇぇえぇぇ……」

 自分で自分が許せなかった。

 この体を引き裂いてしまいたいような思いに駆られて、襟元をつかみ力をこめる。しかし、思った以上に丈夫な衣装は傷つくことはなく、わたしの力だけが空回りして指をはじき、爪の先がジンジンと痛んだ。

 服に馬鹿にされているように感じて指先から胸元へ視線を移す。

 如意宝珠……

「そうよ……こんなものがあるから……こんなものがあるから、みんな苦しまなければならないのよ……」

 わたしは変身を解くと如意宝珠を地面へとたたきつけた。

 如意宝珠は厚い雪へとめり込んだ。

 でも、そんなもんじゃこの気持ちは治まらない。

 頭をかきむしり、髪を引っ張る。

 一部はブチブチと千切れ、一部は根元から抜けた。

 自分でやったこととはいえ、その痛みにもイラついた。

「いっそ、死んじゃえば……痛みも……苦しみも……」

 足元に目を落とすと手ごろな大きさの瓦礫がある。

 わたしはそれを手に取ると、頭を大きく後ろにそらし、瓦礫へと向かって頭を振り下ろした。

 

 気がつくといつも変身するような空間でわたしはクルクルと縦に回転していた。

 重心をコントロールして何とか回転を止め辺りを見回す。

 上下も左右もはっきりしない金色に輝く空間にピンクとも紫ともわからない雲が漂っている。

「ここは……」

 死後の世界なんだろうか……

「ここはあんたはんの心の中じゃッハ」

 背後から声がした。振り返るとシンハ……いや、色が違う。赤っぽいシンハだ。

「あなたは?」

「わしは切戸文殊のシンハじゃッハ。キリちゃんでええで」

「キリ……ちゃん……」

「あんたはんに何ぼ声掛けても聞いてもらえんかったから、悪いとは思おたけど、こうして心の中に入らせてもろうたんじゃッハ」

「心の……中……」

「せや、わしと…あの…千代ちんで、さんざん声掛けたんやけど、さっぱり聞こえてへんかったもんなぁ、あんたはん」

「…………」

 やさしく穏やかな関西弁がすさんだ心にしみこんでくる。

「申し訳ない思たけどな、いろいろ説明聞いたりとかする時間無いさかい、今までのあんたはんの記憶見せてもろたッハ。あんたはんの彼氏、ええ男やったんやなぁ……」

 わたしの目の高さにある雲がいくつものスクリーンになって、赤木君との思い出を映し出していた。

 ピンチを救ってくれたときの赤木君。あの時も……あの時も……

 うそをついていたことを本気で後悔して泣いている赤木君。

 復讐心で暴走した赤木君。

 やだ……人工呼吸のあのときの思い出まで……

 そして、雪の大巨人へと向かって駆け出していく赤木君の大きな背中……

「赤木君……赤木君……わたし……」

「命がけで好きなオナゴ守るなん、今日びの男にはなかなかおらへん……ほんまにええ男や」

「それなのに……それなのにっ!」

「仕方なかった……仕方なかったんや……」

「だって!」

「岩井戸は強かった! 雪の大巨人もごっつ強かった! あんたら二人は必死になって考えて、戦って……その結果や……あいつがおらへんかったら、あんたはんとこうしておしゃべりもできひんかったんやで……」

「だってわたしがうまく出来なかったから赤木君は!」

「納得ずくであいつは行ったで! 何の憂いも無い、ええ顔やったッハ。あんたはんはそれにしっかりと応えた。それだけだッハ」

「でも!でも!」

「そやな、急に言われても困るわな。ただな、これだけは忘れんといとき。その体、その命は赤木がくれた大切な命や。粗末にするようなことだけはしたらアカン。わかるな」

「……うん……」

 そうだ、赤木君のおかげで今わたしは生きているんだ。

 力強い口調の切戸のシンハの言葉にわたしは自分を恥ずかしく思った。

「ええ子や。これからあんたはんはあいつの命を、生きた証を守り伝えていかなあかんのや」

「え? えぇっ!……そこまでの仲にはまだ……まさか! やっぱり寝てる間に……」

「あほか! あぁ、いやいや、こっちの言葉が足らんかったッハ。あんな、命を伝えていくっていうのは何も子供作って育ててくコトだけちゃうんやで」

 わたしの恥ずかしい勘違いを切戸のシンハはあわてて訂正した。

「赤木が何を思い、何を考え、何をしてきたか。何が好きで、何が苦手でとかそんなささいなトコも含めてやな、一番そばに居ったあんたはんが覚えておいて、時に語り継いで、後々の人に伝える。それがあんたはんが勘違いしたのとは別の命の伝え方や」

「命を……伝える……」

「そしてもう一人、あんたはんにしか伝えることの出来ない命があるッハ」

「もう一人……」

「せや、岩井戸や……」

「岩井戸……」

 その名前に思わず体が震えた。

「そないな顔しないどき、せっかくのべっぴんが台無しや」

 切戸のシンハがなだめようとするがこの惨劇を生み出した憎い相手だ。抑えようにも怒りがふつふつとわいてくる。

「今一歩であんたも岩井戸みたいになったかもしれへんかったんや。弥彦と赤木、どっちも助けよう思ってうまいこといかんかった。あの苦しみを抑えきれずに岩井戸はああなってしもたんやッハ!」

「…………」

「いろいろあって腹が立つのはわかるッハ。じゃが、岩井戸もあんたはんと同じような悲しみや苦しみを抱えた末にああなったっていうことは理解してあげんといかんッハ」

「でも! このまま見過ごすようなまね!」

「せや、あいつの後悔の念、子供らへの執着、そんな一切合財を断ち切ってやらんとアカン」

「でも、わたしみたいに聞く耳なんて持ってないと思うんだけど……」

「そこでアベちゃんの出番やねん」

「アベちゃん?」

「安倍の文殊のシンハや。ちなみにおたくんとこは亀岡やからカメちゃんな」

「……カメちゃん」

「おっと、話がそれたな。アベちゃんにはな、智慧の利剣に姿を変える力があるねん」

「ちえの……りけん……」

「せや、悟りを開くために執着や煩悩を切り払う、文殊様の持ってらっしゃる刀やな」

「それで……岩井戸を……」

「正確には岩井戸の執着をやな……それが出来るのはあんたはんだけなんやで」

「わたし……だけ……」

「せや、わしらも精一杯サポートはするさかいな。ほんならそろそろ元の世界に戻ろか」

 

 2

 

「ぼたんちゃん! ぼたんちゃん!」

 目を開けると千代ちんが必死な顔をしてわたしを揺すっていた。

「だいじょうぶ……だいじょぶよ千代ちん。来てくれて……ホントにありがとう」

 わたしが声をかけると千代ちんは安心したのか、わたしの首に手を回し抱きついて泣き出した。

 千代ちんの頭を撫でながら辺りを見回す。

 まず目に入ったのは雪に突き立った赤木君だ。ありがとう……そして、ごめんなさい。

 わたしたちのそばで見上げているのは赤っぽいシンハ、キリちゃんだ。

 キリちゃんがふと視線を右へと向ける。

 つられて目をやると先ほど大巨人がいた辺りに小さなものが動いているのが見えた。

 緑と黄色の子犬? いや、シンハだ!

 わたしは立ち上がり、シンハへと歩み寄る。

 何かを雪の中から掘り出して一箇所に集めているようだ。そうか文珠だな。

「シンハ!」

「……あぁ、どこまで数えたかわかんなくなったッ……ぼたん! 無事だったッハ!」

「シンハこそ!」

 振り返ったシンハはわたしへと向かってかけてくる。わたしは身をかがめ彼を受け止める。勢いに負けて尻もちをつくぐらいにはシンハは回復しているようだ。

「いたい! いたい! いたいッハー!」

「ああ、ごめん……」

 うれしさのあまり思わず力を込めすぎてたようで、そっとシンハを地面に下ろす。

 シンハは体をほぐすように二、三度回るとブルルと震える。

……しっかし、岩井戸にトリミングされたその姿がおかしくて、

「一人で突っ込むからそんなカッコにされるのよ」

 と、いうと

「冗談じゃないッハ! 何で岩井戸を真っ先にしとめようって頭にならないッハ? うまく戦力を分散させる作戦にのせられた人間に言われたくないッハ!」

 と、半切れで返された。

「おーいカメちゃん。お取り込み中すまんけどなぁ……」

 黄色っぽいシンハが声をかけてきた。おそらくあれがアベちゃんだろう。

「あんたの文珠、何ぼ数えても百と四個しかあらへんねん」

「マジッハ? まだどっかに落ちてないッハ?」

「文珠の反応を探る術を使ってみても文珠の形でこの辺に落ちとるのはこれだけやッハ」

「あ、そういえばわたし一個持ってる」

 先ほど赤木君の傷を治した文珠をシンハに差し出す。

「これだけッハ?」

「そうよ、ホワイエで借りたやつ。シンハが持ってた残りの三つはたぶん岩井戸が毛を刈ったときに取り上げてダデーナーにしてるはずよ」

「それじゃぁ、岩井戸は僕が完全体になれないようにしてるってコトだッハね」

 シンハが眉根にしわを寄せた。

「あと三つ……とはいえ、このくらいまとまった文珠があればなんとかなるんやないんか」

「自分は智慧の利剣になるからって気楽なもんだッハ」

「何言うとるんや。いっちゃんきついのワシやがな。千代ちんと合体するキリちゃんがうらやましいわ。なんでいっと先にうちに来るよう言っとかんかったんや」

「ずいぶんな煩悩じゃない? ホントにそんなんでだいじょぶなの? ハイこれ如意宝珠」

 千代ちんがわたしに如意宝珠を渡しながら会話に参戦する。

「まじめなときはまじめに、そうでないときはそれなりに、せやないとばててしまうがな。それにある程度がっつり遊ばんと悟りなんて開けへんのやで」

「そうなの?」

「せや、お釈迦様やてそうやった。賢者タイム言うてな、遊びつくした後に見えてくるもんがあるねん。ガリ勉が就職するより、元不良が更生した奴の方が使える、みたいなもんやッハ」

「なんだかわかったようなわかんないような例えね……」

「そんなことより、早よう変化の術式始めんと、奴さん来てまうで」

 キリちゃんが指摘するとアベちゃんの顔が急に真剣になった。

「そうだッハ。ただでさえ文珠が足りてないから術式にも少し時間がかかるッハ」

 そう言うシンハはいつの間にか以前のような毛並みに戻っていた。

「おま、言うてるそばから文珠無駄遣いするうてどないやねん!」

「ちょっとだけだッハ。あんな格好でいるのが耐えられなかったッハ」

「見た目と力とどっちがだいじやねん! 不垢不浄やろ、ホンマかなわんッハ」

 三人寄れば漫才師って文殊様の使いとしてはどうなんだ……

 しかしその後は三匹てきぱきと何かの準備を始めだした。儀式に使うのであろうか法具などを如意宝珠から取り出し並べだす。

「そういえば? 千代ちんと合体ってなんのこと?」

 先ほどはスルーしたものの気になったことを聞いてみる。

「如意宝珠で変身しただけじゃ力が足りないからって言ってね、キリちゃんの力も上乗せして戦うのよ。名づけてラクシュミレニィ・フェニックスモード!」

「フェニックス……」

「さっきの巨人もビーム一発でアレよ。浄化能力付だって言うから露払いは任せといて。ね、技の名前、何がイイと思う」

「相変わらずね……なんかホッとするわ」

「なによぉ、なんか馬鹿にされてるみたいじゃない」

 千代ちんが可愛らしくくちびるをとがらせる。

「でも……本当にいいの?」

「え?」

「千代ちんがいなくなってからの岩井戸はガチだったわ。何度も死ぬような目にあった」

「いまさらなに言ってんのよ、水臭い」

「でも」

「わらじみこしの話聞いてどんだけ悔しい思いしたと思ってんのよ? あたしがいたら絶対ぼたんちゃんをあんな目にあわせなかったのに、って……それに芋煮会のとき、いろいろ昔のこと話したでしょ。あたしはねぇ、仲間はずれにされるのが一番嫌いなの」

 千代ちんはそういって笑顔を作る。

「ありがとう……ほんとに、ありがとう……」

 抱きついたわたしの頭を千代ちんがそっと撫でてくれた。

 お経の声が聞こえてくる。シンハたちが儀式を始めたようだ。

 たしか三鈷杵と言ったと思うが、両端から三本の爪が伸びたような棒をアベちゃんがくわえている。その前にシンハとキリちゃんが座り如意宝珠に手を置いてお経を唱えている。

 これは……確か般若心経って言ったと思う。

 お経が二周したころ、宝珠から光が放たれ、その光はアベちゃんに注がれ、アベちゃんの体を光の粒子にする。

 光の粒子の中に浮かぶ三鈷杵、その片方の真ん中の爪が一段と輝きを増してきている。

 その輝きに目を細めていると、背後からゴゴゴゴ……と、不吉な音が聞こえてきた。

 振り返ると遠くから真っ黒で巨大な竜巻が近づいてくるのが見えた。

 岩井戸がやってきたのだ!

「シンハ! キリちゃん!」

「間にあわへんかったか……」

 わたしの呼びかけに答えたのはキリちゃんだった。

「アベちゃんが吹き飛ばされたらかなわんッハ。千代ちん、足止め行くで」

「よし来た!」

 そういって千代ちんは胸の前に立てた手の平にこぶしを打ち付けた。

「待って!わたしも!」

「それはアカンねん。カメちゃんまで術を止めたら今までのことは水の泡やッハ」

「でもそれじゃわたしだけ……」

「だいじょうぶよ。これからぼたんちゃんがぼたんちゃんにしか出来ないことをやるように、あたしたちはあたしたちにしかやれないことをやりにいくだけなんだから」

「千代ちん……」

「岩井戸やっつけちゃって出番なくなったらごめんね」

「そないに簡単にはいかんがな」

「へへへ……」

 キリちゃんが渡した如意宝珠を千代ちんは高々と掲げた。

「オン・チンターマニ・ソワカ!」

 まばゆい光に包まれて現れたミレニィにキリちゃんが跳び付く。

 すると、ミレニィの体がオレンジ色に輝き背中の翼が一段と大きく開いた。

 それに伴い衣装もオレンジに変化する。そしてスカートの後ろから尾羽を模したような涙滴型が並んだようなビラビラが何本も生えて出た。

「ラクシュミレニィは何度でも蘇える! フェニックスモードいっきまーす!」

 おどけたようにそう言うと、ミレニィは竜巻へと向かって飛んでいった。

 

 3

 

「千代ちん体に力はいりすぎやで、もうちょいリラックスしぃ」

 空高くを目指し飛ぶあたしの頭の中に、キリちゃんの声が直接響いてきた。

「できるわけないでしょ、強がって見せたけど、ホントはめっちゃ怖いんだから」

「妖怪退治は慣れたもんや、まかしとかんかい」

「そうなの?」

「京都なんか妖怪の本場やがな」

「でも、妖怪退治ね……」

「なんや、急に嬉しそうになったやないかい」

「元彼が言ってたのよ、今のロケーションを楽しむ努力をしないと生きてるかいが無いって」

「ほう、ええこというがな」

「妖怪退治なんてなかなかできることじゃないじゃない、ラクシュミーだってそうよね」

「せやせや、宝くじに当たるより確率低いがな」

「ところで合体すると口に出さなくてもあたしの事がわかるのね」

「せや、こうやってシンクロすることでわしの力を使えるようになるわけや」

「あんまりプライバシーのぞかないでよ」

「千代ちんもいろいろ苦労してきたみたいやしな」

「なによ、もう見てんじゃん……」

「すまんかったな、何ぼでも岩井戸のコト探っとこうとして、少しな」

「飼い犬に脚かじられたくらいしか情報無くてごめんね」

「いや、そないなことじゃ済ませないくらいの怒りの感情が……いや、デリカシー無かったな」

「いまさらいいわよ、それにその辺は共有しておいたほうがいいと思うし」

「共有?」

「そ、あたしはぼたんちゃんをひどい目に合わせたあいつを絶対許さない……」

「えらい入れ込みようやがな」

「心のぞいたらわかってるでしょ、あたしが小学校のころ学校でうまくいってなかったの」

「せやったな」

「それでも年にいっぺんはお母さんの里帰りでこの町に来て、ぼたんちゃんと遊んで、その時だけは学校の嫌なこと忘れられたの」

「せやったんか……」

「農機具小屋の二階のあの部屋でじゃれあったり、果樹園の中を走り回ったり、ぼたんちゃんは一年に一度しかあえないっていうのに……いつも変わらずに仲良くしてくれた……」

「ほぉかぁ」

「だからこの町は、ぼたんちゃんはあたしの故郷なのよ」

「故郷なぁ……ところで、そろそろええんちゃうか」

「そうね」

 竜巻の上空へと位置取ったあたしたちは熱線の照準を岩井戸へと向ける。

 手のひらからジャッ!と放たれた不意打ちの狙撃はわずかに外れ、真っ白な田んぼで大爆発を巻き起こす。

 その爆風の威力で竜巻は吹き飛ぶ。が、光と水蒸気で岩井戸を見失う。

「くっ、ギランバレーのせいね」

「ちゃうがな、片目つぶったから照準が狂うたんや」

「ところで岩井戸は?」

「左下や! 大きく離れて上昇中」

 キリちゃんの声に目をやると脚に緑の光をまとって上昇してくる岩井戸の姿が見えた。

「せっかくの妖怪退治のロケーションなんだからさ、言葉じゃなくて髪の毛がセンサーとかだと直感的でいいわ」

「ほな」

 キリちゃんがそういったとたんツーサイドアップがバサッと前を向く。

「多いよ!」

「こうやないのン?」

 今のやり取りで岩井戸を見失っ、

「距離300、攻撃確認、回避機動、右!」

 キリちゃんの声にあわてて右に飛ぶと、鋭い風切音が3つ通り過ぎていった。

 こちらも負けてはいられない。あたしはコントロールできる限りの火球を生み出すと岩井戸へと向かって放った。名付けて

「ホーミング・ファイヤー・サーツレイショーン!」

 部長によると対処しきれないほどミサイルをぶっ放す戦いを飽和攻撃、サーツレイションアタックと言うらしい。初めて部長の無駄にめんどくさい言い回しが役に立った。

「さぁて岩井戸ちゃん、どこまでも追い掛け回す火の玉にどれだけ対処できるかしら」

 反転して地面へと向かう岩井戸をあたしも追う。

 地面すれすれで低空飛行に移った岩井戸を追いきれず三分の一ほどの火球が地面に炸裂する。

 次に岩井戸が目指すのは田んぼの中にぽつんとある鎮守の森。こじんまりした森とはいえ、木々の隙間を抜けきれずに火球の半数がそこで失われた。

 障害物の多い立地が有利と気づいた岩井戸はまほろばの緑道へと入った。桜の枝が実質のバリアーとなって火球の侵入を阻む。有効打を叩き込むにはあたしも中に入らないと……

「アカン! 罠や!」

 キリちゃんの叫びにハッと我に返る。

 そうだ!足止めするだけでいいのに熱くなりすぎた。

 そう思って見た岩井戸はこちらに向かって腕を突き出していた。

 岩井戸から桜の枝のアーチが順々に外へと向かいながら開いて……

 巨人のこぶしに打ち据えらたように、圧搾空気の弾の一撃であたしははね飛ばされた。

「やばい! 立て直さないと!」

 と、身をひねる視界にチラチラと岩井戸が迫ってくるのが映……

「ぐぶぅ」

 ヒザ……お腹に……岩井戸の……

「がっ!」

 膝蹴りを受けて突き出したのどを岩井戸につかまれる。苦しっ……

「せっかく戦いに巻き込まれないように引越しさせてあげたのに……わざわざ死にに来るなんてねぇ、千代ちん……」

「がっ……ぐっ……」

 何か言い返してやりたいが息が……そうだ、飛んでふりきれば。

 翼を広げて大きく羽ばたき岩井戸の手を振り払い距離を置く。

「へぇ、意外とタフじゃない」

 腕を組んで余裕のニヤニヤ笑いの岩井戸。

「ビビリのパパに連れられて行ったその先で、お友達はできた?」

「うるさいっ!」

 むかつく顔めがけて火球を放つも岩井戸の腕の一振りで火球は気弾に四散させられる。

「あらあら気に障るコト言っちゃったかしら? だめよぉ、ちゃんとお友達作って集団行動できる子にならなくちゃ」

「うるさいっ! うるさいっ!」

 再び火球を放つもまたも難なく気弾でかき消されてしまう。

「奇襲に失敗したら火の玉投げることしかできないの? 芸が無いわね、あなた」

「だまれ! だまれ! だまれ! だまれ!」

 あたしは岩井戸の周りをぐるぐる回り、死角を探りながら火球を放つ。

「ふふふ、こんなことで、目でも回そうって言うのかしら?」

 岩井戸はあたしの攻撃など意にも介さない様子で笑う。

「火の玉のほうは優等生ね、まっすぐ飛んでくるから迎撃が楽でいいわ」

 時間差で放った二発の火球を岩井戸は一発の気弾で迎撃する。二発で駄目なら!

「二発が三発でも一緒よ!」

 また一振りで!

「緩急をつけたり、連発で打ち込んだり、アハハまるでゲームみたいで楽しいわ」

 あたしの攻撃が……ゲーム扱い?

「あらあら、ビビリなのはパパだけじゃなさそうね。だんだん間合いが遠くなっていってるわよ」

「もう許せない! くらえ! ミレニィサーカス!」

 あたしは力の限りの火球を生み出すと岩井戸へと向かって放った。

 無数の火球は納豆の糸のように白煙をひきながら岩井戸へと迫る。が、岩井戸が腕を払うと火球はまるでブドウの房ように次々爆発してしまう。

「言ったでしょう! 優等生のようにまっすぐ飛んでくることさえわかれば迎撃することなど造作もないって!」

 笑う岩居戸。

 しかし、爆煙のかげからジグザグの軌跡を描いて現れた火球が岩井戸へ襲い掛かった。

 よけきれない。

 「があああぁあぁぁぁああぁぁぁぁあぁっ!」

 爆炎の中から岩井戸の悲鳴が響く。

「たとえ集団から外れる劣等生だってね、結果的に目指した目標までたどり着けばそれでいいのよ!」

「たいしたもんや! 頭に血が上ったふりして相手を調子に乗らせて、フェイントをうまく決めよったッハ!」

「調子に乗るなぁっ!」

 黒煙の中から現れた岩井戸が、左、右と大きく腕を振るった。

「真空波や! 回避っ!」

 キリちゃんの声に体をひねり真空波をやり過ごす。

「苦し紛れが当たるもんですか! とどめよ! ミレニィ・レーザあがっ!」

 背中がっ……背中に……背中から……

 翼に……さっきの……真空波……落ちるっ……

「ブーメラン……っていうのかしら、奥の手は最後まで隠しておかなくちゃね」

 舞い散る羽根の向こう側にススにまみれた岩井戸が笑みを浮かべていた。

 

 風きり音とともに地面が近づいてくる。

「いっくら今のロケーションを楽しむ努力しろってったって、パラシュート無しのスカイダイビングはなぁ…………………………って、無視かよぉ……」

 背中の傷をキリちゃんが一生懸命治そうとしてくれている。が、さっきのミレニィ・サーカスでの損耗が激しく、そのための力があまり残ってないようだ。

 せめても空気抵抗を増やそうと体を大の字に開く。

「これはだめかもわからんね……だっけか……」

 背中の痛みは止まったが、翼の再生が追いつかない。

 っていうか羽根が生えた先から抜けていく。

「キリちゃんだけでもさぁ、合体止めて逃げたら? 飛べないの?」

「バカいわんとき! いま合体止めたら生命維持できんくなって千代ちん即死やで!」

「しかたないよ、どーんといってみよ」

「こんなときにおどけんでもええがな、頭の中怖い怖いていっぱいやがな」

「そーなのよねー……最初はぼたんちゃんのためならって思ってたんだけど……精一杯戦った末なら、しょうがないって思ったりしたんだけど……こんな……こんな惨めな考え方させられるんなら……いっそ一思いに……」

「そう考えんのが当たり前や、千代ちんも知ってる立派な坊さんも、八十すぎまで生きて最後の言葉は『死にとうない』やったんやで」

「え、だれ?」

「一休さんや」

「あはははははははははははは」

 なにがおかしいのかもわからないが笑いが出てきた。

 こうやって笑って死ねるなら、それもまたありなのかもしれない。

「キリちゃんと合体できてホンマ良かったわ、ありがとう」

「インチキな関西弁使わんといてや、わしがきっちり教えたるさかい」

 ああ、六年生のときのあれはやっぱり友達になろうの遠まわしな言い方だったんだなぁ……

 そろそろこの世界ともお別れだ、やだなー、ぶつかったら痛いんだろうなー、痛いとか感じる間もないのかなー、やだなー、やだなー、やだ、やだ、やだ! やだ! やだやだ!

「やだあぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁぁぁっ…………」

 怖くて目をつぶる。

 強い衝撃。

 でも、浮遊感。

「ミレニィ、遅くなってごめん」

 その声に驚いて目を開く。

「ピオニィ!」

 あたしを抱き上げたピオニィの姿はいつもの衣装にシンハの色をした鎧兜をまとっていた。

「ラクシュピオニィ・クシャトリヤモードだッハ」

「シンハと合体したのね」

 背中がむずがゆくなってきた。羽根がかなり復活してきたらしい。

「オッケーピオニィ、そろそろ飛べるわ。反撃開始よ! 岩井戸やっつけて関西弁講座だ!」

 

 4

 

「か、関西弁講座?」

 助け上げたミレニィはだいぶくたびれているようだ。無理させないほうがいいのかもしれない。

 とりあえず無事地面に下ろそうと、脇を抑え高度を下げる。

  高度約二メートル。このくらいならだいじょうぶだろう。

「離すよ」

 ふうわりと地面に降り立ったミレニィは、タタッと助走を付け、再び飛び上がりわたしに並んだ。

「だいじょうぶなの?」

「言ったでしょ、何度でも蘇るって」

 爆炎の中をくぐり抜けてススだらけになった顔でミレニィは笑って見せた。が、ほおを伝った涙のあとが生易しい戦いではなかったことを物語っていた。

「岩井戸の攻撃は、圧縮空気の気弾と真空波よ。ブーメランみたいな使い方もしたわ」

「ありがとう、大変だったでしょ」

「かませ犬は慣れっこよ。今日もおいしいトコはとっといてあげたからね。あそこよ」

 ミレニィの指差す先に、いた、岩井戸が腕を組んでこちらを見ている。

 わたしたちは彼女の二十メートルほど前の空中に止まった。

「あらぼたんちゃん。持ってきてくれたの、如意宝珠?」

「そんなわけないでしょ! あなたのその煩悩と執着を断ち切りに来たのよ!」

「あくまでも弥彦と弥三郎の復活を邪魔する……そういうつもりなのね……」

 岩井戸の顔が醜くゆがんだ。

「確かに愛する人と別れるのはつらいわ……でも、そのために関係ない人の命を巻き込むのは間違ってる! そんなふうに生き返ったとして弥彦君も弥三郎も喜びなどしないわ!」

「知ったような口を!」

 岩井戸が真空波を放つ。

 とっさに出したパリッチャで受け止める。

「そんな攻撃でパワーアップしたわたしを傷つけることは出来ないわよ」

「なるほど、クシャトリヤモードね。どうやら巨人を倒して文珠を全て手に入れたのね……」

「文珠を全て……そうね、これであなたもお終いよ……」

 たしか三個足りないはずだが、余計なことを言うとつけこまれそうなので虚勢を張った。

「そうよ、見せてやってピオニィ !あいつに引導を渡す伝家の宝刀『智慧の利剣』ってやつを!」

 ちょ、うわぁ~ミレニィ……その振りは……痛い……

「へぇ……文殊菩薩の智慧の利剣ね……それならこちらも刀でお相手しましょうか……」

 そういうと岩井戸は、如意宝珠を眼前に浮かべその中から大振りの日本刀を取り出した。

「弥三郎の刀で切り刻んであげる……」

「さぁ早く! こっちも!」

 ミレニィの声に仕方なくこちらも智慧の利剣を取り出す。

「え?」

 案の定ミレニィが固まった。

「ハハハハハ、そんなおもちゃでなにする気なの?」

 岩井戸が笑うのも当然だ。三鈷杵の柄からのびる智慧の利剣の刀身は二十センチ足らず。まるで小学生が『ちゃんばら』をする竹の物差しのような頼りないサイズだ。

 本来はもっと長いが、キリちゃんからのSOSを受けて術式を切り上げたためこの長さになったのだ。

 とはいえこんなことをミレニィの前で暴露したらえらく落ち込むだろう、だから

「クシャトリアモードになった今、あなたなんかこれで充分よ」

 そう言い放ち、あえてニヤリと口角を上げた。

「そう……それならその言葉……地獄で後悔するがいいわ!」

 言葉と同時に岩井戸が刀で空を切る。

 そこから発生した真空波をパリッチャで受け止める。

 真空波と同時に飛び掛ってきた岩井戸がパリッチャの反対方向から刀で切りつけてきた。

 そこに浴びせられるミレニィの火炎弾。

 岩井戸がひるんだおかげで刀を智慧の利剣で受け止めることが出来たが、もしもそのまま打ち込まれていたら、利剣は跳ね飛ばされてわたしもただではすまなかっただろう。

 ともかく反撃のチャンス!

 合わさっている剣を軸に体を回転させ、岩井戸の首筋めがけて回し蹴りを叩き込む。

 岩井戸は下を向いて数十メートル降下する。

 一気に決める!

 わたしも追って降下する。

 しかし、岩井戸まであと少しというところで横から強い衝撃を受ける。

 ミレニィがわたしの服を引っ張って軌道を修正したのだ。

 岩井戸は、あのまま進んでいたらわたしの居たであろう辺りを刀でなぎ払った。

「刀、鏡代わりにしてた」

 そういうとミレニィはわたしを離して岩井戸に牽制の火炎弾を数発撃った。

 刀で火炎弾を打ち払い体勢を崩した岩井戸に、隙無くパリッチャを構えて突撃する。

 岩井戸はこちらに足を向けるとパリッチャを蹴って間合いを取った。

 が、間髪を入れずにミレニィが火炎弾を叩き込む。

 一対二の不利を感じたのか岩井戸は地上へと向かった。

 いくらかでも遮蔽物があるほうが良いだろうと判断したのだろう。

 側道をつなぐトンネルをくぐったり、木の間を蛇行したりしながら米沢南陽道路沿いに南下していく。

「援護よろしく!」

 時折真空波を撃ち牽制してくる岩井戸に立ち向かえるのはパリッチャを使えるわたしだけ。

「ちょい待ち! 炙り出す! ミレニィ・レッド・カーペット!」

「レッドカーペット?」

 不思議な技のネーミングにミレニィのほうを向くと無数の火炎弾が行儀よく整列していた。

「行っけぇ!」

 の、号令一下、火炎弾は岩井戸が隠れていると思しきエリアにまさにカーペットを敷くように覆いかぶさり爆発炎上した。

「ぎゃあぁあぁぁぁああぁぁあぁぁぁあああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあああぁっ!」

 悲鳴とともに飛び出してきた岩井戸に向って智慧の利剣をかざし切り付ける。

 しかし、がむしゃらに振り回してきた長刀の間合いに入れず有効な攻撃とはならなかった。

 地上から約五十メートル。

 相手までの距離三十メートル。

 岩井戸は肩で荒い息をしている。

 振り返ればミレニィも同じだ。

 ミレニィの援護が無ければこの短い刀で有効打を叩き込むチャンスは無い。歯がゆいが回復を待たねば。

「……どうやら……本気で怒らせてくれたようね……」

 岩井戸が腕を突き出した。その手の中には如意宝珠。

「弥三郎と弥彦、復活のために集めたエネルギーを使えば……お前たちをひねりつぶす事など造作も無い……」

 如意宝珠がまぶしく輝く。

 如意宝珠が放っているのは光だけではない。

大半を岩井戸が取り込んでいるとはいえその巨大なエネルギーは、そこからもれる余波を浴びるだけで身震いするほどだ。

「はははははは……最初からこうすればよかったのだ……」

「ああああああああぁ…………」

 高笑いする岩井戸にミレニィが火炎弾を放った。

 が、気力の壁のせいで岩井戸の二メートルほど手前で四散する。

「うるさいハエだ!」

 岩井戸はミレニィにむかって如意宝珠を握った腕をブンと回転させながら突き出した。

 その回転で横を向いた小ぶりの竜巻が生み出されミレニィに迫る。

 ミレニィは回避しようと試みるが、竜巻の勢いに引き寄せられ、巻き込まれ、ぐるぐると回転しながら米南道路の土手ののり面に叩きつけられた。

「ミレニィ!」

 わたしの声にミレニィは何とか手を上げようとするが、かなわずその手は地に落ちた。

「人の心配をしている場合かい?」

 岩井戸が大太刀を振りかぶってわたしへと迫ってきた。

 反射的にパリッチャで受ける。が、

「ヒビが!」

 パリッチャに走る。

「うがぁっ!」

 にやりと笑い刀に力をこめる岩井戸。

 甲高い音を立ててパリッチャが粉々に砕け散り、岩井戸の腕が足元まで振り下ろされた……けど……生きてる……

「ふん! なまくらめ!」

 どうやら刀のほうも折れてしまったようだ。

 とりあえず間合いを取るもこれはチャンス!

 岩井戸のほうでも智慧の利剣を受けるすべは無くなった。

「うあぁあぁぁぁあぁあああぁあああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ…………」

 わたしは智慧の利剣を構えて岩井戸へと向かって迫る!

「さぁせぇるかぁっ!」

 真空波かと思いきや衝撃は横から来た!

 これは……竜巻に飲み込まれたのか……

 ぐるんぐりんと体中を回されて平衡感覚を失う中、巻き上げられた瓦礫が体中を撃つ。

 利剣だけは放しちゃ駄目だ!

 それだけを念じて右手に力をこめ、胸の中へと抱いた。 

 いったいどれくらいの間回っていたのだろうか、不意に竜巻の力が弱まった。

 はっきりしない意識の中、岩井戸が大きく腕を振りかぶっている姿が見えた。

「これでとどめだあぁっ!」

 特大の真空波がわたしにむかって放たれた。

 羽はぼろぼろで回避できない……これまでか……

 目の前が真っ赤に染まった…………

 その赤、明るく鮮やかなポスターカラーの赤。

 新聞紙やウレタンなどを撒き散らし粉々になる、赤木君だった赤鬼の張りぼて。

 たまたま巻き上げられたものが降ってきただけなのかもしれない。

 しかしわたしには、最後の力で助けに来てくれたように感じられた。

 なぜなら残骸の中に輝きながら浮かぶ三つの文珠……赤木君の最後の意地……

 その文珠を左手でつかむ。

 吸い上げようと思うより早く文珠から力が流れ込んできた。

 その力は体中を駆け巡り、右手の智慧の利剣へと流れ込む。

 利剣の刀身が先ほど岩井戸が振るっていた刀と同じくらいに伸び、輝きを放った。

「これで最後だあぁっ!」

 落下の軌道を岩井戸に合わせる。

「バカめ!どの道真っ二つだ!」

 岩井戸が真空波を放つ!

 自由落下のせいでかわせない!

 ドッ、と体に鈍い衝撃が響く。

 横をものすごい風きり音が通り過ぎていく。

 かわせた! ミレニィの体当たりのおかげで!

「あたしがつばさになるわ! 二人の力でやっつけるのよ!」

「ちがうわ! 三人よ!」

 次々と放たれる岩井戸の真空波を、ミレニィはひらりひらりと紙一重でかわして迫る、迫る!

「はああぁああぁぁああぁぁぁあああぁぁあぁああぁぁぁぁぁぁあっ!」

 気迫とともに振るわれた智慧の利剣が遂に岩井戸の胴をとらえた。

 そのとたん刀身が光を放ちわたしたちはその光に包まれた。

 

 5

 

「ここは……?」

 川のほとりにわたしと千代ちんは立っていた。

 その対岸にはパステルグリーンとベージュが大理石のように交じり合ったような巨大な球体が浮かび、その前には色とりどりの輝きが、キラキラと花のように星のように美しく広がっていた。

「ここは日本で言うところの賽の河原だッハ」

「シンハ!」

「え? じゃ、あたしたち死んじゃったの?」

「んにゃ、君たちには結末を見届けてもらうために来てもらったんやッハ」

「キリちゃん! それにアベちゃん!」

「あれを見てみぃ」

 アベちゃんの指した先には生気なく岩井戸が立っていた。

 その視線の先から岩井戸へと向かって何かがやってくる。

 時代がかったような古めかしい衣装に身を包んだ親子二人連れ。

 それを見た岩井戸はボロボロと涙を流しだす。

「弥三郎、弥彦……」

 岩井戸がつぶやいた。

「さあ、行こう、おふくろ」

 弥三郎が手を差し伸べる。

「ばぁば、ばぁば」

 弥彦が岩井戸の足にまとわり付いた。

「だけど……私は……」

「一生懸命助けようとしてくれたじゃないか、それだけで充分嬉しかったよ。心配かけたね」

「弥三郎! 弥彦!」

 岩井戸は晴れやかな顔をして弥三郎たちと一緒に向こう岸へと歩き出し、いつしか見えなくなってしまった。

「まぁ……岩井戸にとってはハッピーエンドなのかな?」

 千代ちんがポリポリと頭をかいた。

 その一行の向かうほうに見覚えのある大きな影を見つける。

「あれは! 赤木君、赤木君!」

「待つっハ!」

 ふらふらとそちらへ向かおうとするわたしをシンハが引き止める。

「さっきも言ったようにここは日本で言うところの賽の河原だッハ。向こう岸は空〈クウ〉行ったら戻ってはこれないッハ」

「シンハ! でも赤木君が!」

「耳をすますッハ。赤木が何か言ってるッハ」

 赤木君は口に手を当て大きな声で言った。

「……ありがとうー短い間だったが冬咲のおかげで充実した人生を過ごせたー」

「でも、わたし!……ファウンテン……うまくできなくて」

「気に病むな冬咲、これも運命だ……友達が欲しい、俺はその気持ちでこの世に生を受けたイレギュラーな存在だった……そんな俺が友だち……いやそれ以上の存在を得ることができたんだ。こんなに……こんなに嬉しいことはない!」

「……赤木君! 行かないで!」

「ありがとう冬咲、本当にありがとう!」

「赤木君! 赤木君!」

 手を振り続ける赤木君は光の粒になってついには流れの中に掻き消えてしまった。

「行っちゃったね……」

「……うん……」

 千代ちんの声はとても優しかった。

「さぁ、戻るッハぼたん、みんなが待っているッハ」

「……うん……」

「帰ったらお祝いしなきゃね! キリちゃんやアベちゃんにもソーセージご馳走しなきゃ」

 はしゃぐ千代ちん。だがシンハ達の顔色がなんだか優れない。

「どうしたの?」

 とたずねると、キリちゃんがばつが悪そうに

「実はな……」

 と、切り出だした。

「文殊様からこの一件の事でえらい怒られてんねん」

「せや、もう人間とは直接接するのはアカン……ちゅうてな」

「なによぉ、祝勝会ぐらい……ねぇ……」

 千代ちんが不満そうにわたしに同意を求める。

「結局、情が移ると別れづらくなるッハ。だから……」

「何よ……まさかここでお別れとでも言うんじゃないでしょうね……」

「…………」

 シンハは口を開かなかった。

「どうするのよ! わたしの大学入試!」

「そうよ! 関西弁講座だってあるんだからね!」

 千代ちんはキリちゃんに食って掛かる。

「関西弁ならわしなんかよりももっといい先生がいっぱいおるッハ。千代ちんの身近にな」

 キリちゃんの言わんとした事が何のことかはわかんないが、それで千代ちんは押し黙ってしまった。

「ぼたんならきっと僕がいなくても大丈夫だッハ」

「そんな無責任なことっ!」

「ぼたんはたぶんこの一年でいろんなことを学んだと思うッハ。勉強よりも、もっと大切なことを……」

「そんな……」

「いろんな出会いをして、いろんなことを知って、新たにしたいことが見つかった……ちがうッハ?」

「そう……だけど……」

「成し遂げるためにしなくちゃならないことはいっぱいあるッハ。強い意思が必要だッハ。でも……漠然としたものじゃなくて、明確な目標があればきっと……ぼたんの努力はかなうはずだッハ」

「シンハ……」

「それにぼたんは強くなったッハ。ぼたんならきっと大丈夫だッハ」

 シンハが、他の二人も金色の光の粒になってさらさらと崩れだす。

「シンハ! シンハ!」

「大丈夫、会えなくなるけど僕はあそこにいるッハ。ぼたんのことはいつまでも見守って……」

「シンハ! シンハぁ!」

 シンハは最後まで言葉を言い切ることなく光の粒になって消えてしまった。

 そしてわたしたちの体も金色の粒子となり、ふっと意識が闇に溶けた……

 


エピローグ

エピローグ

 

 桜の花が舞い散る中の卒業式なんてテレビやマンガの中だけの話だ。

 代わりに舞っている名残雪を頭と肩から払いのけ、大きなカートを引きながら、わたしは高畠駅太陽館の待合室へと入った。

 あれから4年後、わたしは念願の東京の大学へと合格し進学することになった。

 今日で高畠町ともしばらくお別れだ。

 あれからわたしたちの前にシンハが現れることは無かった。

 何度か文殊様にソーセージをお供えに行って怒られた。

 あの戦いでボロボロになってしまった高畠町。

 わたしたち中学生になにができるか?

 瓦礫撤去ボランティアやメンタルケアの声掛け運動などの声が上がる中、全校集会でわたしが提案したのは、復興のシンボルとして、なくなってしまった駅のオブジェ「赤鬼と青鬼の張りぼて」を再度作ることだった。

 ボランティア活動に比べ、はじめは冷ややかな目で見られていたものの、完成目前には皆競うように製作にかかわろうとしてくれた。

「ドコマデモ キミノトモダチ」

 その張りぼてを見あげながらあの二人のことを、いや、あの騒がしい一年間のことを、そして岩井戸の事をも思い返す。

 

 新幹線がホームへと入ってきた

「行ってきます……」

 そうつぶやいてわたしはつばさへと乗り込んだ。

 たいくつなこの町から旅立つ。

 でもいろいろ勉強して、いつかこの町に帰ってくるんだ……

 新しいこの町を作り上げるために…

 

 

 

 

 

 


あとがき

えー、まほろば天女ラクシュミーシリーズ

3年半近くかかりましてようやくひと段落です。

 

4月の頭にはおおむね完成しておりましたが、

某ワナビサイトにてボロクソ評価されまして、

書き直そうかどうしようかいろいろ悩んでましたが、

たいした手直しもせずに発表が今日の日になりました。

いまさらなんだかんだいっても自分の色ですしね。

 

本日平成26年6月14日より山形DCも始まりまして、

このお話をごらんいただいてシンハや赤木に会いに来て欲しいなと思ってる次第です。

 

そもそものきっかけがご当地プリキュアを作りたいなどと考えて書いておりまして、

いろいろと書いているうちに自分の町の知らなかったことやなんかいろいろと勉強することが出来まして

非常に有意義な3年間でありました。

先出のワナビサイトの感想で「地元ネタが多くて客観しできない」なんていわれましたが

自分の子供や地元の子供にいろいろ知ってほしいなんて意識がそうさせたのかもしれません。

 

書き出した直後に大震災ならびに原発事故が発生しまして、

こちら高畠は30kmエリアと山ひとつはさんで目と花の先ということで、

まだいろいろよくわかってない時期でしたから

女房子供だけでも北海道にでもにがさにゃなんて考えたりして

ふるさとがなくなる恐ろしさを突きつけられた一幕もありましたね。

 

ともあれ、ぼたんちゃんとシンハのお話はこれでおしまいです。

長い間お付き合いいただきましてまことにありがとうございました。

次回作はまた下ネタ童話を考えております。

宝くじでも当たれば画太郎先生あたりに絵をつけて欲しいと思っている

例のおなら三部作です。

そちらもまたお付き合いいただければと考えております。

 

それでは次回作でお会いできる日を楽しみにしております。

 

 


この本の内容は以上です。


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