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   もっきゅんと川遊び

 

 もっきゅんはもけ族の男の子。たんぽぽの綿毛みたいに白くてふわふわ。今日も、もっきゅんは同じもけ族のお友達のもっちゃんと一緒に川に遊びに来ていました。
「ねえねえもっきゅん」
「なんだい?」
「川に来たけど、何するのー?」
 もっちゃんは首を傾げています。そんなもっちゃんを横目に、もっきゅんは木の棒を拾っています。
「この棒で遊ぶのさ」
「川に来たのに棒なんて拾ってどうするっていうの?」
 もっちゃんはまたも首を傾げます。
「この棒で魚を捕るんだよ、もっちゃん」
「魚を捕るのね、もっきゅん。それなら私やったことあるわ。ちょっと貸して」
 もっきゅんは言われた通りにもっちゃんに棒を渡しました。もっちゃんは胸いっぱいに空気を吸い込んで、思いっきり吐き出しました。それから棒を川の水に突き刺したのです。
「もっちゃん、捕れるかい?」
「全然駄目ね、何がいけないのかしら。魚を一突きにしてやろうと思ったのに」
 もっちゃんは仏頂面でもっきゅんに棒を渡しました。
「もっきゅん、何かやってみせてよ」
「いいよ、ちょっとだけ待っててね」
 もっきゅんは棒を受け取って、笑顔で答えます。それからもっきゅんは、川岸を散策し始めました。
「ねえもっきゅん、私は魚を捕るために何かをしてと言ったのよ? どうして川岸なんか散策するのかしら」
「僕は魚を捕るために川岸を散策してるんだよ、もっちゃん。いいから見ててごらんよ」
 ほんの少しだけ歩いて、もっきゅんは手頃な大きさの棒を拾い上げました。棒が二本になりました。するともっちゃん、何かを閃いたかのように頷いて、もっきゅんから棒を取り上げました。
「わかったわ、もっきゅん! 貴方が今何をしようとしているのか、私が当ててみせましょうか?」
「なんだい、言ってみなよ」
「貴方は今、この二本の棒をこうやってハサミみたいにバッテンに組み合わせて、魚を挟んで捕ろうとしているんでしょう」
 もっちゃんは、二本の棒をハサミのようにちょきちょきと動かします。
「それでやってみるといい、魚は捕れるかな?」
 もっちゃんは先ほどしたように二本の棒をハサミのようにちょきちょきと動かして魚を捕ろうとしました。だけど何回やっても何回やっても、魚なんてちっとも捕まりやしません。
「まるで駄目ね、魚の方が今日は機嫌が悪いみたい。私なんかに捕まってやるもんですかーって、そう言っているように感じるわ」
 もっきゅんはもっちゃんから棒を受け取って、また川岸を散策し始めました。
「違うよ、それはもっちゃんの方が駄目なんだ。ただ、突いたり挟んだり。そんなに攻撃的になってはいけない」
「攻撃しないで捕る方法なんてないわよ。そんなの、ハサミ無しで紙を切れって言っているのと同じよ」
「違うよもっちゃん。ハサミが無くても紙は切れるんだ」
 もっきゅんは川岸に落ちていた古びたロープを拾いました。
「見ててごらん、今度こそ正解を教えてあげよう」
 そして二本の棒をバッテンの形に組み合わせます。もっきゅんはその継ぎ目をロープで結んでしまいました。ガッチリ結ばれて、とてもさっきみたいにちょきちょきと動かすことなんて出来ません。
「それからどうするの?」
「そうだなあ、ちょうどそこに細い木の根っこがいくつか抜けているね。それを貰おう」
 もっきゅんは、木の根っこに手を合わせてから根っこを拾い上げました。するとその根っこを、さっきのバッテンの形をした棒に絡めます。するとどうでしょう、根っこがネットのようになって、網ができました。
「今度こそわかったわ! それは網ね、それで捕まえるんでしょう? 網を置いて待つだけだから、攻撃しなくても捕れるってことね」
「そうだよ、何も攻撃をする必要はないんだ。皆、魚を捕るということはまず魚を殺す必要があると言うけれど、それは違う。もっと多方面から物事は考えなければいけないよ、もっちゃん」
「わかったからやってみましょうよ!」
 もっちゃんはもっきゅんから網を取り上げ、川の水にその網を浸けました。
「これで待てばいいのね! なあんだ、意外と簡単じゃないの」
「じゃあ、待ってみよう」
 もっきゅんともっちゃんはただ待ちました。待っている間は退屈しないように、時間の流れを速くするために、二人で水切りをして遊んでいました。
 網を仕掛けてから三時間が経ちました。
「ねえ、そろそろいいんじゃないかしら。見てみましょうよ!」
「そうだね、そろそろ頃合かもしれないね。どれ、僕が見てこよう。もっちゃんはここで待ってて」
 もっきゅんは、少し濡れながらも、仕掛けていた網を川から引き上げて、もっちゃんの所に持ってきました。その時、網から何かが落ちたような気がしました。ドキドキの瞬間です。もっちゃんは期待に胸を膨らませてじーっと網を見つめています。
「魚はいるかな」
 もっきゅんも網を覗き込みます。見たところ、魚はいないようです。姿が見えません。もっちゃんは、スズキのように大きな魚が網にかかっていると期待したのですが、残念、ミジンコ一匹いやしません。
「なあんだ、いないじゃないの。あれだけの事を言っておいて捕れないなんて、もっきゅんは駄目ね」
「何を言う、ここに一匹いるじゃないか」
 もっちゃんは不思議に思います。
「もっきゅんは一体何を言っているのかしら、魚なんてどこにもいやしないじゃないの。水に濡れておかしくなったのかしらね」
「違う違う、君は網しか見ていないだろう? もっと別の場所に視線を移すんだ。もっと広い視野で見るんだよ」
 もっちゃんは網から視線を外し、辺りを見渡しました。するとおかしいのです。もっきゅんの体が白色ではなくなっていたのです。まるで何かが張り付いているように見えました。
「あー!もっきゅん、それ!」
「そう、僕の体に張り付いていたんだよ。さっき網から転げ落ちて来てね、これは面白いと思って黙っていたんだ」
「もう、意地悪な人ね!」
「でももっちゃん、これでわかったはずだよ」
「ええ、物事は広い視野で見ないといけないのね、これからは気をつけるわ」
 もっちゃんは、今日も、もっきゅんから一つ学んで賢くなりました。


奥付



もけ族のもっきゅん① もっきゅんと川遊び


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著者 : 猫鰯ひろき
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