閉じる


本文

線維筋痛症とその不全型である慢性広範痛症/慢性局所痛症の治療成績の比較:2007年と2011年の結果の集計

 

抄録

 線維筋痛症(FM)とその不全型である慢性広範痛症(CWP)/慢性局所痛症(CRP)に同一の治療を行うと、有効以上(P=0.9147)、著効以上(P=0.1639)、治癒の割合(P=0.0566)には両群に有意差はなかったが、FMの不全型であるCWP/CRPの方が治療成績がよい傾向があった。

 

戸田克広

廿日市記念病院リハビリテーション科

 

目的

 2007年4月[1]と2011年12月[2]の2回、線維筋痛症(FM)およびその不全型である慢性広範痛症(CWP)と慢性局所痛症(CRP)の治療成績を調べた。2回の報告を集計し比較した。

 

方法

 2007年4月[1]と2011年12月[2]の2回、線維筋痛症(FM)およびその不全型である慢性広範痛症(CWP)と慢性局所痛症(CRP)の治療成績を別々に調べた。2回の報告には患者の重なりはない。最初の報告は2004年4月から2007年3月までに広島県立身体障害者リハビリテーションセンターで治療を行った患者の治療成績であり[1]、2回目の報告は2007年4月から2011年12月まで廿日市記念病院で治療を行った患者の治療成績である[2]。2回の報告を集計した。

 1990年にアメリカリウマチ学会が定めた分類基準を満たす患者をFMと診断した[3]。具体的には身体5か所(右半身、左半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部)に3か月以上痛みがあり、18か所の圧痛点を約4 kgの力で押して11か所以上に圧痛があれば、他にいかなる疾患が合併していても自動的にFMと診断される。それに記載された身体5か所に3か月以上痛みがあるがFMの基準を満たさず、他の疾患で症状を説明できない患者を慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)と診断した[4]。CWPの基準を満たさないが、肩こりのみや腰痛症のみより痛みの範囲が広く、他の疾患で症状を説明できない患者を慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)と診断した[4]。初診時にCWPまたはCRPであったが途中でFMの基準を満たした場合、初回の報告ではFMと見なし、2回目の報告ではCWPまたはCRPとみなした。

 2004年4月から2011年12月までと治療期間が長いため、治療期間により具体的な治療方法は異なっている。しかし、FM患者でもCWP/CRP患者でもすべての患者に同じ治療を行った。2013年4月時点での具体的な治療方法は拙書[5]を参照していただきたい。

 3か月以上治療を行ったFM、CWP、CRP患者の治療成績を調べた。薬物治療を終了しても痛みが再発しない患者を治癒とみなした。患者に「初診時の痛みを100とすると現在の痛みはいくつですか。」と尋ねて30以下の痛みになったが薬物治療を継続している場合を著効、31-90の痛みになった場合を有効、痛みが91以上の場合を不変・悪化と見なした。患者の自己判断で治療を中止した場合にはカルテの記載からいずれに該当するか判断した。

 

結果

 FM患者は女性65人、男性13人の合計78人、13歳から81歳まで平均46.8歳であった。治療期間は3か月から51か月(平均18.5か月)であった。FM患者78人において治癒6人(7.7%)、著効19人(24.4%)、有効34人(43.6%)、不変・悪化19人(24.4%)であった。

 CWP/CRP患者は女性55人、男性17人の合計72人、25歳から87歳まで平均55.2歳であった。治療期間は3か月から55.5か月(平均14.9か月)であった。CWP/CRP患者72人において治癒13人(18.1%)、著効18人(25.0%)、有効24人(33.3%)、不変・悪化17人(23.6%)であった。

 有効以上(P=0.9147)、著効以上(P=0.1639)、治癒の割合(P=0.0566)には両群に有意差はなかったが、FMの不全型であるCWP/CRPの方が治療成績がよい傾向があった。(図1)

 

考察

 CWP/CRPにFMと同じ治療を行えば、有意差はないが、FM以上の治療成績を得ることができる。FMとCWP/CRPの治療方法は同じであるため、FMの診断基準は臨床的にはほとんど価値がない。FMの診断をすることと、FMの治療が適用になることは異なることを理解する必要がある。FMの診断基準は学会発表や論文作成の時に有用であって臨床的にはほとんど価値がないことを理解しておく必要がある。

 医学的に説明のできない痛みを、精神科は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断し、慢性痛やリウマチの領域はFM、CWP、CRPと診断している。精神科と慢性痛/リウマチの領域が連絡を取らず、全く別個に診断基準を決めたために起こっている珍事である。現在のDSM-5の次の精神科領域の実質的な世界的診断基準であるDSM-6を決める際には慢性痛/リウマチの領域から医師を加えるべきである[6]。

 著者は薬物治療と非薬物治療を組み合わせて治療を行っている。非薬物治療としては禁煙、有酸素運動、味の素や人工甘味料アスパルテームの摂取中止を行っている。認知行動療法は具体的に何をすればよいか分からないことと、それを行う者がいないため、行っていない。具体的な薬物治療に関しては、拙書を参照していただきたい。

 

まとめ

 FMとその不全型であるCWP/CRPに同一の治療を行うと、有効以上(P=0.9147)、著効以上(P=0.1639)、治癒の割合(P=0.0566)には両群に有意差はなかったが、FMの不全型であるCWP/CRPの方が治療成績がよい傾向があった。

 

論文

1) 戸田克広: 線維筋痛症とchronic widespread pain(CWP)・不全型CWPの治療成績の比較. 臨整外. 44: 1203-1207, 2009.

2) 戸田克広: 2011年12月における線維筋痛症と慢性広範痛症/慢性局所痛症の治療成績の比較. ブクログ, 2013, http://p.booklog.jp/book/76631

3) Wolfe F, Smythe HA, Yunus MB, Bennett RM, Bombardier C, Goldenberg DL, Tugwell P, Campbell SM, Abeles M, Clark P, Fam AG, Farber SJ, Fiechtner JJ, Franklin CR, Gatter RA, Hamaty D, Lessard J, Lichtbroun AS, Masi AT, McCain GA, Reynolds WJ, Romano TJ, Russell IJ, Sheon RP: The American College of Rheumatology 1990 Criteria for the Classification of Fibromyalgia. Report of the Multicenter Criteria Committee. Arthritis Rheum. 33: 160-172, 1990.

4) 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.

5) 戸田克広: 線維筋痛症の診断と2013年4月時点での治療方法—線維筋痛症の治療は変形性関節症にも有効—. ブクログ, 2013, http://p.booklog.jp/book/74033

6) Toda K: Physicians in the chronic pain field should participate in nosology and diagnostic criteria of medically unexplained pain in the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 6. Amazon Services International, Inc., 2013, http://www.amazon.co.jp/participate-unexplained-Statistical-Disorders%E2%80%936-ebook/dp/B00BH2QJG4/ref=sr_1_2?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1362485795&sr=1-2



著者紹介

著者紹介

 

戸田克広(とだかつひろ)

 1985年新潟大学医学部医学科卒業。元整形外科医。2001年から2004年までアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)に勤務した際、線維筋痛症に出会う。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や原因不明の痛みの治療を専門にしている。2007年から廿日市記念病院リハビリテーション科(自称慢性痛科)勤務。『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)を2010年に出版。電子書籍『抗不安薬による常用量依存—恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、抗不安薬の罠、日本医学の闇—』http://p.booklog.jp/book/62140を2012年に出版。ブログにて線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群や痛みの情報を発信している。実名でツイッターをしている。

 

 2010年に『線維筋痛症がわかる本』を書いて約3年になります。すでに絶版になりましたが、電子書籍は購入可能です。新しい薬物の発売などがあり修正が必要です。現在、一般人が理解可能な医学書を書いている最中です。本書籍がその中核になります。線維筋痛症のみならずその周辺疾患や抗うつ薬などの英語論文を徹底的に読み、そこで得た知識を実践した経験を基にした書籍です。線維筋痛症の治療はほとんどすべての慢性痛に有効です。医学書を出版していただける出版社があれば声をかけていただければ幸いです。

 

ツイッター:@KatsuhiroTodaMD

 実名でツイッターをしています。キーワードに「線維筋痛症」と入れればすぐに私のつぶやきが出てきます。痛みや抗不安薬に関する問題であれば遠慮なく質問して下さい。私がわかる範囲でお答えいたします。

 

電子書籍:抗不安薬による常用量依存―恐ろしすぎる副作用と医師の無関心、精神安定剤の罠、日本医学の闇―http://p.booklog.jp/book/62140

 日本医学の悪しき習慣である抗不安薬の使用方法に対する内部告発の書籍です。276の引用文献をつけています。2012年の時点では抗不安薬による常用量依存に関して最も詳しい日本語医学書です。医学書ですが、一般の方が理解できる内容になっています。

 

・戸田克広: 「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して!―まず知ろう診療のポイントー. CareNet 2011

http://www.carenet.com/conference/qa/autoimmune/mt110927/index.html

 薬の優先順位など、私が行っている線維筋痛症の最新の治療方法を記載しています。

 

・戸田克広: 線維筋痛症の基本. CareNet 2012

http://www.carenet.com/special/1208/contribution/index.html

 さらに最新の情報を記載しています。線維筋痛症における薬の優先順位を記載しています。

 

英語の電子書籍です。

Physicians in the chronic pain field should participate in nosology and diagnostic criteria of medically unexplained pain in the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-6

http://www.amazon.com/participate-unexplained-Statistical-Disorders-6-ebook/dp/B00BH2QJG4/ref=sr_1_2?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1361180502&sr=1-2&keywords=katsuhiro+Toda

医学的に説明のつかない痛みを精神科医は身体表現性障害と診断し、痛みの専門家は線維筋痛症あるいはその不完全型と診断しています。治療成績は後者の方がよいと推測されます。2013年に精神科領域の世界標準の診断基準であるDSM-5が運用予定です。次のDSM-6では医学的に説明のつかない痛みに対する分類や診断基準を決める際には痛みの専門家を加えるべきです。

 

Focus on chronic regional pain and chronic widespread pain_Unification of disease names of chronic regional pain, chronic widespread pain, and fibromyalgia_

http://www.amazon.com/regional-widespread-pain_Unification-fibromyalgia_-ebook/dp/B00BH0GK7O/ref=sr_1_1?s=digital-text&ie=UTF8&qid=1361180502&sr=1-1&keywords=katsuhiro+Toda

線維筋痛症の不完全型である慢性広範痛症や慢性局所痛症と線維筋痛症を区別する臨床的意義はありません。

 

ブログ:腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へー中枢性過敏症候群ー戸田克広 http://fibro.exblog.jp/

 線維筋痛症を中心にした中枢性過敏症候群や抗不安薬による常用量依存などに関する最新の英語論文の翻訳や、痛みに関する私の意見を記載しています。

 

線維筋痛症に関する情報

戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.

医学書ではない一般書ですが、引用文献を400以上つけており、医師が読むに耐える一般書です。

 


電子書籍

通常の書籍のみならず電子書籍もあります。

電子書籍(アップル版、アンドロイド版、パソコン版)

http://bukure.shufunotomo.co.jp/digital/?p=10451

通常の書籍、電子書籍(kindle版)

http://www.amazon.co.jp/%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E7%AD%8B%E7%97%9B%E7%97%87%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%9C%AC-ebook/dp/B0095BMLE8/ref=tmm_kin_title_0

電子書籍(XMDF形式)

http://books.livedoor.com/item/4801844

 


奥付け

線維筋痛症とその不全型である慢性広範痛症/慢性局所痛症の治療成績の比較:2007年と2011年の結果の集計

 

2013年10月16日 第1版第1刷発行

http://p.booklog.jp/book/77973

著者:戸田克広

発行者:吉田健吾

発行所:株式会社ブクログ

    〒150-8512東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー

          http://booklog.co.jp

 

 


奥付



線維筋痛症とその不全型である慢性広範痛症/慢性局所痛症の治療成績の比較:2007年と2011年の結果の集計


http://p.booklog.jp/book/77973


著者 : 戸田克広
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/katsuhirotodamd/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/77973

ブクログ本棚へ入れる
http://booklog.jp/item/3/77973



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社ブクログ



この本の内容は以上です。


読者登録

戸田克広さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について