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夜風は囁く

 えんじの上衣《じょうい》は正義のしるし。
 茶色の髪の青年が、調子っ外れな歌を口ずさみながら、えんじ色の上着を袖で腰に結わえた。慣れた手つきで剣帯を留め直し、「これでよし」と胸を張る。
 ここは、峰東《ほうとう》州の都ルドスの、馬車の行きかう中央通り。町の治安を守る警備隊、その証しである制式上着は、夏には薄手のものが支給されるのだが、この炎天下に襟つき長袖は暑苦し過ぎる、と言って、彼――ガーランはまともに着用したためしがない。
「なんだ、その変な歌は」
 少し先を歩いていた警邏の相方が、怪訝そうにガーランを振り返った。こちらは、前のボタンこそ留めてはいないものの、上着をちゃんと身に着けている。尤《もっと》も、これが普通であって、「警備隊の誇り高き象徴」を結んだり団子にしたりするのは、隊内ではガーランぐらいのものだ。
「一昨日しょっ引いた羊泥棒が、『えんじの上衣はムカつく奴ら』とか何とか歌ってやがったんでな。正しい内容を広めようと思ってな」
「よくやるよ」
 呆れ顔になる同僚を見て、ガーランの頬がますます緩んだ。悪戯っぽい光を目に宿し、より素っ頓狂な歌を披露し始める。
 いいかげんにしろ、と同僚が眉を吊り上げるのと時を同じくして、道の向こうの路地からガーランの名を呼ぶ声がした。
「うわ、やべ。さっさと行こうぜ」
 大慌てで歩調を速めるガーランを、同僚が小走りで追いかける。
「行こうぜ、って、あれ、東の助祭長だろ」
「だから逃げるんだよ。あのクソ坊主、俺のことをていのいい使いっ走りとしか思ってないんだからな。どうせまた、『教会の前のドブ掃除を頼むわ』とか何とか言いやがるに決まってる」
 と文句を言いながら、人波をかき分けたガーランの前に、ひらりと人影が立ち塞がった。
「名を呼ばれて無視をする奴があるか」
「お、おやっさん……!」
 いつの間に先回りをしたのか、噂の人物が、腕組みをしてガーランを睨みつけていた。
 こんがりと日焼けした小麦色の肌に、白い僧衣が輝いて見える。袖口から覗く腕は、老境に身を置く者とは思えないほど鍛え上げられており、その活力に溢れたさまは、若いガーランと比べてもなんら遜色がない。現に今も、小柄な助祭長に対して頭二つ分は背が高いはずのガーランが、圧倒される一方である。流石は、若い頃、南方で船乗りをしていたという、元・荒くれ者だ。
 先ほどまでの余裕はどこへやら、すっかり意気消沈してしまった様子のガーランに対し、助祭長が得意げに口角を上げる。
「他でもない、おぬしに頼みがあってな」
 ほらきた、と呟いてから、ガーランは両手を腰にあてた。
「なんだよ。ドブ掃除か?」
「そんなつまらぬ用事に、わざわざ警備隊員殿のお力など借りぬわ」
 しれっと言い切る助祭長に、ガーランの眼差しが冷ややかなものとなる。それを気にしたふうもなく、助祭長は言葉を継いだ。
「礼拝堂の尖塔に、カラスの死骸が引っかかっておってな。それを取っ払ってもらえんかな」
 ガーランの背後で、同僚がふき出した。
「やっぱり掃除じゃねえか」
「尖塔に登ろうにも、わしはもう歳だし」抗議の声を華麗に受け流して、助祭長は語り続ける。「司祭様のお手を煩わせるわけにはいかぬし、助祭も侍祭も高い所は駄目だと言いよるし、癒やし手達の伴侶をあてにしようにも、独り身の者か年寄りしかおらぬし、いかんせん男手が足りんのだ」
「俺だって忙しいんだぞ」
 吐き捨てるように反論を口にするガーランだったが……。
「酒場でくだをまく暇はあるのに、可哀相な老いぼれの頼みを聞く時間はないというのか。なんと無慈悲な」
 見事に返り討ちにあい、彼はがくりと肩を落とした。
 助祭長は、そんなガーランの様子を満足そうに見つめて、それからそっと声を潜めた。
「それに、あまり『あのこと』を広めたくない。既に知っているお前は適任だ」
「また、それかよ」
 何やら口の中でぶつぶつと悪態をついたのち、ガーランは両手を上げて降参した。
「分かった、やりゃいいんでしょ、やりゃあ」
「仕事がひけたら帰りに寄ってくれ。死骸を放置しておいて、良からぬ虫が病気を運んできたら大変だからな」
 と、そこで助祭長は片目をつむってみせた。「町の平穏を守るのがおぬし達の仕事だろう?」
 ガーランは心底悔しそうに石畳を蹴りつけた。
 
 
 
 
 折角の貴重な日勤日だったってのに。盛大な溜め息とともに、ガーランは礼拝堂の丸屋根の梯子に手をかけた。もう一度深く溜め息をついて、いざ、茜色に染まる空へと段を上る。
「非番に酒飲んで何が悪いってんだ。つうか、酒でも飲まなきゃ、あんな苦労の多い仕事、やってらんねーよ、くそったれ」
 ここなら助祭長の地獄耳も及ぶまい、と、ガーランは心置きなく毒づいた。途中から仕事の愚痴になってしまっているのも構わず、風を相手に鬱憤を晴らす。ひとしきり文句を吐き出したところで、また大きく息をつき、それから、少しだけ眉間を緩めた。
「まあ、あのクソ坊主のためじゃなくて、教会のため、ってんなら、屋根でも何でも登りますけどね」
 ここ、東の教会は、生命の神アシアスを祀っている教会だ。
 アシアス信仰は、この国における実質的な国教であり、他の八百万の神々とは一線を画する存在であった。それは、祈りによって神の加護を得る「癒やしの術」の影響力によるところが大きい。アシアスの教会には大抵、「癒やし手」と呼ばれる術者を集めた治療院が併設されており、そこは、アシアスへの感謝の「気持ち」を持つ者なら誰でも――たとえ異教徒でも――救いを求めて訪れることができるのだ。
 ガーラン自身、子供の頃から治療院には何度も世話になっている。つい先月も、捕り物の際の刀傷で、ここに駆け込んだことを思い出し、ガーランは心の中で頭《こうべ》を垂れた。それから、よし、と気合を入れ直して、最後の段を登りきる。
 夕暮れの鐘に背中を押されながら、ガーランは尖塔に辿り着いた。
 そこは、円蓋屋根の頂上にしつらえられた東屋とでもいうべきものだった。大人が四人ほど手を繋いで輪を作れば、丁度これぐらいの広さになるだろう。その円形の床の中央に、そこらにある井戸と同じぐらいの大きさの丸い穴が、ぽっかりとあいていた。
 その穴は、礼拝堂丸天井の天辺にあけられた、明かり取りの眼窓《めまど》だった。尖塔は、この円形の窓から雨が礼拝堂内部に入り込まないよう、傘のような役割を担っているのだ。
 穴の縁は周囲の床よりも少し高くなっており、気をつけてさえおれば、そうそうこの眼窓から落ちることもない。が、流石にこの高さである。ガーランは、黒々とあいた穴から充分な距離をとって、壁際に背負い袋を下ろした。荒縄の束と麻袋を取り出して、やれやれと一息をつく。
 そこへ、ガーランの名を呼ぶ声が、足元から響いてきた。
 ――聞こえる、聞こえる。
 そうっと眼窓から下を覗けば、会衆席の間に、ちんまりと佇む助祭長の姿が見える。ガーランは、にんまりと口の端《は》を引き上げた。
 これこそが、昼間、助祭長がガーランに耳打ちした「あのこと」であった。一体どういうからくりなのだろうか、礼拝堂内の音が、驚くべき明瞭さでこの塔の上まで響いてくるのだ。
 今からおよそ二十年前、父親の大工道具を勝手に使って壊してしまったガーランは、叱られるの嫌さに教会の尖塔に隠れて、偶然この秘密に気がついた。そうして、自分を探しに来た助祭長――当時はまだ助祭であったが――に、興奮した面持ちでこの大発見を報告した。
 ところがガーランの思いをよそに、助祭長はこの知らせを聞くなり、難しい顔で、「悪戯する人間が現れてはいけないから」とガーランに口止めをした。今から思えば、悪戯は勿論のことだが、「司祭様達が祈りの声に耳をそばだててるらしいわよ」といった不名誉な噂が立つことを、彼らは心配したのだろう。
「おおーい、ガーラン、首尾はどうだ」
 過去から現在へと意識を戻すと、ガーランは穴の上へと心持ち身を乗り出した。そして「問題ねえよ」と返答する。
「……なんだって? 声が小さくてよく聞こえんわ」
 そういえば、聞き耳のからくりは礼拝堂から尖塔への片道のみだったな、と、ガーランは改めて腹の底から声を張り上げた。
「何も問題ねえっての。今から仕事にかかる」
「そうか。山神様のお使いだからな、くれぐれも丁重に頼むぞ」
 ついでに俺のことも丁重に扱ってもらえませんかね。そう胸の内でぼやきつつ、ガーランは大きく息を吸った。
「助祭長のアンタが、んなこと言ったら、アシアス様が嫉妬すんじゃねえの?」
「我らが主は、そんな狭量なお方ではないわ」
「そうだな、アンタが神職につけるぐらいだもんな」
 助祭長の豪快な笑い声を聞きながら、ガーランは辺りを見回した。
 梯子と反対側の屋根の縁に、物悲しい黒い影が、風に揺らめいてぶら下がっていた。
 ガーランは慎重にカラスの死骸を屋根から下ろした。夏の日差しに冒されつつあるそれを麻袋に入れ、閉じた袋の口を荒縄の端に結わえつける。それから眼窓の傍に膝を突き、階下へと袋をゆっくり下ろしていった。
 助祭長が袋を受け取ったのを確認して、ガーランはやれやれと立ち上がった。両手を軽くはたき、大きく伸びをする。そうしてガーランは周りをぐるりと見回した。
 西にそびえる連山の縁が、燠火《おきび》のように鈍く光っている。血の色にも似たその明かりも、やがては薄汚れた灰に静かに埋もれていくのだろう。東の地平線から迫り来る藍色の下、家々の灯りが点々とまたたき始めているのを見下ろしながら、ガーランはそっと目を細めた。
 大陸を東西に分断する山脈に沿って、その麓に細長く伸びている坂の町、それがここルドスだ。町の中心を南北に貫く大通りを境目に、西の高台に為政者など上流階級に属する者の住居が、東に下々の者どもの住み処がある。この東の教会は、その中央通りから細い路地を一角《ひとかど》くだった所にあった。
 ガーランの生家は、ここから少し北の、いわゆる職人街にあり、物心ついた頃からこの辺りは彼の庭だった。助祭長こと「おやっさん」は、そんな彼が何か悪さをするたびに、遠慮のないゲンコツを喰らわせてくれていたものだった。
 まさか、おやっさんを返り討ちにしたくて励んだ体術や剣術が、自分の身を立ててくれることになろうとは。つい口元を緩ませたところで、当の助祭長の呼び声を足元に聞き、ガーランは慌てて咳払いをした。
「どうしたガーラン、何か問題でもあったか」
「人使いの荒い誰かさんのせいで、疲れてんだよ。ちょっと一服してから降りるわ」
「そうか。ならば、わしはこいつを裏の畑に埋めに行ってこよう。真っ暗になる前に、気をつけて降りてくるんだぞ」
「へいへい」
 薄暗さを増した町並みの上を、心地よい風が吹き抜けていく。比較的標高のあるルドスの夏は、日さえ暮れてしまえば、とても過ごし易い。しばし夕涼みをば、と、ガーランは壁際に腰を下ろした。
 壁に身を預けると、手足の先から疲れが一気に這い上がってくる。警備隊という職務の特性上、日勤日といえども仕事が長引くことは珍しくない。ガーランは助祭長の依頼に応えるために、昼から一度も休憩を取っていなかったのだ。
「感謝しろよクソ坊主」
 言葉に見合わぬ穏やかな笑みを口元に浮かべ、ガーランはそっと目を閉じた。
 
 
 ――なんてこったー!
 ガーランが次に目をあけた時、周囲は深い闇に包まれていた。
 満天の星の下、山肌に這いつくばる灯りの数から判断するに、時刻はどうやら真夜中のようだ。毒虫にどこも噛まれていないことと、眼窓から落ちなかった幸運にほっとしつつ、ガーランは立ち上がった。自分のあまりの間抜けっぷりに、助祭長に八つ当たりする気力すら湧いてこない。心の中でべそをかきながら、凝り固まった肩をほぐしていると、地の底、もとい階下の礼拝堂から、人の声が聞こえてきた。
「……どうか報いを」
 それは、触れれば切れそうなほどに張り詰めた、女の声だった。
 眼窓から下を覗けば、闇に沈む会衆席を、月明かりがおぼろかに浮かび上がらせている。だが、床に差し込む月の光も、声の主のところまでは届いていないようで、姿かたちは勿論、その影すら定かではない。
「苦しみを与えたまえ」
 切々と放たれる呪詛の声に、ガーランは身動き一つすることができなかった。
 
 
 
 次の日、夜半過ぎ。準夜勤を終え帰途についたガーランは、ふと、教会に寄ってみようと思い立った。
 昨夜は結局、ガーランが呆然としている間に、呪詛の主はさっさと礼拝堂を退出してしまったようだった。意を決したガーランが、屋根の梯子をくだり、礼拝堂の二階の回廊に降り立った時には、辺りには人の子はおろかネズミ一匹見当たらなかったのだ。
 ――あんな忌まわしい祈りを神に捧げる者がいるとはな。
 他人の不幸を神に願うなど、果たして許されることなのだろうか。ガーランは眉を寄せた。
 呪いは、呪った者に返ってくる。彼は子供の頃に何度もそう言い聞かされ育ってきた。そして、今でもそれは真理だと思っている。
 尤《もっと》も、呪いは勿論のこと祈りにしても、呪文や印のちからによって恩恵を賜る「癒やしの術」と違い、神がそれらを漏れなく拾い上げてくださるかといえば、決してそういうわけではない。だが、それでも人は神に祈り続けてきたし、これからも祈らずにはおられないだろう。人々にとって神という存在は、「心の支え」そのものに他ならないのだ。
 そういえば、と、ガーランは苦笑を浮かべた。教会は当然として、鎮守の大木と呼ばれている楡の木や、天高くそびえる霊峰相手にも、「良縁がありますように」だの「逃げた羊が無事帰ってきますように」だの、皆好き勝手に祈っているな、と。神様も、管轄外の仕事を請け負った場合は、それぞれの担当の神様に申し送ったりするのだろうか、などと馬鹿なことを考えてみる。
 そうこうしているうちに、ガーランは東の教会に辿り着いた。簡素な門をくぐり抜け、年季の入った石畳を奥へと進む。灯りこそ灯されていないが、祈りに訪れる者のために、礼拝堂は夜中も施錠されることはない。盗まれて困る物など何もないからな、と豪胆に笑う助祭長の顔を思い浮かべながら、ガーランは礼拝堂へ向かった。
 と、暗闇の中、前方でひらりと何かがひるがえった。
 次いで、静かに扉が閉まる音。
 ガーランは口をきつく引き結んだ。そして、今度は気配を殺して歩き始めた。正面にある、先ほど何者かが入ったと思われる扉を横目で見て、礼拝堂の側面へ回り込む。
 例の眼窓の真下、祭壇のある祈りの場は建物の一番奥まった所にある。その場所へ少しでも近づくべく、ガーランは壁際を這い進んだ。植栽を避けながら、側壁に並ぶ腰高窓の下部に隠れるようにして。
 そろそろか、と足を止めたガーランの耳が、遠い声を捉えた。
「何卒、愚か者に報いを」
 暗がりをぬって聞こえてきたその声は、ともすれば風の音にかき消されてしまいそうなほど小さく、だが、決して弱々しくはなかった。並々ならぬ思いを込めて、静かに紡がれる、闇の祈り……。
 ――意外と若そうだな。
 紡がれる言葉の内容とは裏腹に、凜とした美しさすら感じられる、声。俄然興味が湧いてきたガーランは、声の主の姿を求めてそっと身を起こした。窓の下辺に手をかけて、そろりそろりと頭を上げる……。
 体勢を変えようとした拍子に、ガーランの靴が小枝を踏んだ。枝の折れる音が、夜のしじまにやけに大きく響き渡る。
 しまった、とガーランが思う間もなく、礼拝堂の中を足音が走り去っていった。慌ててガーランも立ち上がり、建物の表側へと向かう。
 木の根に何度も躓きながら植え込みを抜け、なんとか礼拝堂の正面へ出たガーランを待ち受けていたのは、人っ子一人いない静まり返った前庭と、……微かに残る甘い花の香りだけだった。
 
 
 
 翌日、準夜勤二日目。同じく準夜勤だった警備隊隊長の、「飲みに行かないか」との誘いを断って、ガーランはまたも教会へ向かった。どうしても「彼女」のことが気になったからだ。
 この世知辛い世の中、ガーランだって人を呪ってやりたくなったことは、これまでに何度もある。「ヘソ噛んで死ね」程度の悪態なら、正直なところ日常茶飯事だ。ヘソではすまない鬱憤について、酒場でくだをまくことも、珍しくもなんともない。
 昨夜の彼女にしても、ああやって呪詛を声にして吐き出して、心の安寧を保っているのだろう。呪いの言葉を神に聞かせるのはどうかと思うが、独りで恨みつらみを抱え込むよりは、ずっといい。
 ――耐えて、耐えて、その挙げ句、限界に達して、取り返しのつかないことになるよりは……。
 時を巻き戻すことは、誰にもできないのだ。そう、神にすらも。ガーランは苦虫を噛み潰したような顔で、夜道を急いだ。
 
 昨日よりも少しだけ早い時間に教会に着いたガーランは、迷うことなく礼拝堂に入り込んだ。勝手知ったる何とやら、入り口脇の狭い階段を登り、二階の回廊から丸屋根へと出る。件の人物を尖塔で待ち伏せする作戦だ。
 果たして、ガーランが眼窓の傍に腰を下ろすのとほぼ同時に、階下から足音が聞こえてきた。
 作戦成功、と口角を上げたガーランだったが、下を覗いてがっくりと肩を落とした。一昨日と同様、月明かりはその人物を照らしきることができず、ただ何者かの気配だけが、闇の中にぼんやりと感じられるばかりだったのだ。これでは、下の彼女がどこの誰だか、判別のしようがない。
「卑怯者に、相応の報いを」
 凜とした声が、礼拝堂の壁を駆け上がり、眼窓を抜けて、ガーランの耳元をそっとくすぐる。
 なすすべもなく、ガーランは唇を噛んだ。
 
 
 
 次の日、ガーランは夜勤だった。
 夜警に出ている間も、ガーランは礼拝堂へ、あの声の主へと、思いをめぐらせていた。
 ――今日も祈りに……、いや、呪いに行っているのだろうか。
 愚痴をこぼす相手として、神は打ってつけの存在かもしれない。尖塔に誰かさんが隠れているようなことでもない限り、その思いが他人に漏れることはないのだから。
 だが、もしも、それが単なる恨み節などではなく、決意表明だったらば……。
 ガーランは、ごくりと唾を呑み込んだ。
 そっと山の方角を振り返れば、月明かりの中、家々の屋根の向こうに切り立った崖が見える。大昔に大きな鬼が腰掛けに使っていた、と謂われている「居敷きの崖」だ。
 九年前、ガーランの目の前で、一人の娘があの崖から身を投げた。
 その娘は、ガーランもよく知っている娘だった。実家の裏に住んでいた、一つ年下の、いつもガーラン達悪ガキどもから少し離れたところで一人静かに本を読んでいた、内気な娘。
 
 それは、ガーランが警備隊員になって一年目の春のことだった。まだ実家住まいだったガーランが、裏庭で剣の素振りをしていた時、珍しくも彼女のほうから、木柵ごしに彼に問いかけてきたのだ。ねえ、あなたは人を斬ったことがあるの? と。
 答えを口にするのが躊躇われて、ガーランが黙ったままでいると、彼女は小さく笑った。笑って、一言を呟いた。
「あのひとを、ころしてやりたい」
 彼女が最近、婚約までしていた男に捨てられたということを、ガーランは人づてに聞いていた。なんでも、相手の男が他の女の財産に目がくらみ、婚礼を目前にあっさり鞍替えしたらしい。
 ガーランは、彼女に何と言えば良いのか、分からなかった。分からなかったから、ただ、おざなりに言葉を返した。
「そんな物騒なこと、言うなよ」
 しばしの沈黙ののち、彼女はそっと目を伏せた。そうね、と囁くように言葉を残して、彼女は去っていった。
 
 そして一週間後、ガーランは彼女と対峙する。捕り手と下手人という立場で、崖の上で。
 
 あの時、もっと親身になって彼女の話を聞いていれば。ガーランのこぶしが、固く握り締められる。
 ――もう二度と、あんな失態は繰り返さない。
 ガーランは、昨夜の礼拝堂の声を思い返し、唇を引き結んだ。あの、痛々しいほどに張り詰めた声は、九年前の彼女と同じ、覚悟を決めた者特有のものだ、と。
 ――いい声なんだけどな……。
 他人を呪うことなどやめて、いっそ妙なる調べを聞かせてくれたら。そう溜め息をついたガーランの脳裏に、ふっと閃くものがあった。
「……まあ、駄目でもともと、ってな」
 ガーランは小さく頷くと、にぃっと口の端《は》を上げた。
 
 
 
 夜勤明けの休日。昼間にたっぷりと身体を休めたガーランは、夜を待って教会を訪れた。
 二日前と同様、尖塔に上がって待ち構えていると、またしても夜半になって、女がやってきた。
「神よ。どうか我が願いを聞き届けたまえ」
 どんなに目を凝らそうと、月の光なくしては、女の姿は闇に沈んだきりだ。
 だが、それは、向こうにとっても同じこと。ガーランは二度三度と深呼吸を繰り返した。そう、下にいる彼女からも、暗い尖塔に潜むガーランの姿を見ることはできないはず。
「どうか、苦しみを与えたまえ」
 ならば、上手くやれば、彼女が一体どういう問題を抱えているのか、聞き出すことができるかもしれない。たとえ力にはなれなくとも、彼女の憂さを多少なりとも晴らすことができれば……。
 ガーランは、大きく息を吸い込むと、下腹に力を入れた。
「おのれの浅はかな行いで、傷つけられた者がいることを忘れぬよう、生涯消えぬ苦しみを」
「随分深い恨みなんだな」
 思いきってガーランが階下に放った声は、壁や床に反響しながら、暗闇の中へ吸い込まれていく。
 女が、黙り込んだ。
 女の出方を窺おうと、ガーランもまた口をつぐんだ。
 
 ――我慢比べか。
 中庭の木々が夜風に囁きを交わしている。
 沈黙を守り続ける女に、ガーランも無言で対抗した。
 と、不意に、階下の気配が揺らいだ。
 礼拝堂を吹き抜ける風の音が、ガーランの五感を惑わせる……。
 
 風がやみ、再び静寂が訪れた。
 ガーランはそうっと唾を呑み込んだ。全神経を集中させて、下の様子を探る。
 ――逃げられたか。
 小さく舌打ちして、ガーランは腰を上げた。溜め息一つ、礼拝堂に下りようと梯子へ向かう。
 その時、山のほうで突然ヨタカが鳴きだし、ガーランはぎょっとして動きを止めた。
 キョキョキョキョ、キョキョキョキョ。
 甲高い鳥の鳴き声が、小刻みに何度も夜陰を震わせる。脅かすなよ、とガーランが肩を落とした直後、軽い足音が眼窓の下から聞こえてきた。
 足音はまたたく間に遠ざかり、扉が開いて、閉じて、そうして今度こそ間違いなく真の静寂が世界を包み込む。
 危なかった、と、ガーランは思わず胸を撫で下ろした。
 
 
 
 次の日、準夜勤が終わると、またまたガーランは教会に直行した。
 今度は念のため礼拝堂の中を通らずに、暗闇に乗じて外から尖塔を目指すことにした。抜かりなく持参した背負い袋に靴を放り込み、木陰の死角を選んで石積みの外壁に挑みかかる。
 実は、ガーランが礼拝堂の壁に登るのは、これが初めてではない。去年も助祭長に庇の修理を頼まれて、壁から屋根へと登らされている。ただ、その時は助祭長が縄梯子を用意してくれていた。登はん訓練はガーランが最も苦手とする種目であったが、真面目に励んでおいて正解だったな、と彼は満足そうに自らに頷いた。
 ――迷える仔ヤギを群れに戻すのだ。どこから入ろうが、神様も大目にみてくれるに決まってる。
 月の光に助けられながら、ガーランはなんとか尖塔に辿り着いた。
 
 いつもどおりに眼窓の傍らに腰を落ち着け、息を殺して、ガーランは待ち続けた。
 半時が過ぎる頃、階下に変化が現れた。突然、隅の暗がりで何者かの気配が動いたのだ。
 ガーランは知らず息を呑んだ。
 扉は開かれなかった。つまり、彼女もまたガーラン同様、下で待ち伏せをしていたのだ。念には念を入れて良かった、と胸を撫で下ろしてから、ガーランは上唇を舌で湿した。
 階下では小柄な影が一つ、会衆席の隅々までを見回っていた。そのまま月明かりの中に留まってくれ、とのガーランの願いも虚しく、影は最後に窓の外を確認したのち、定位置に戻る。
 そうして、再び辺りは静謐に満たされた。
 さて、と、ガーランは顎をさすった。物事を先へと進めるためにも、彼女から情報を引き出さなくてはならない。
 ――野郎相手なら、話は簡単なんだがなぁ。
 こと女性相手ならば、「女たらし」の称号も輝かしい我らが隊長の真似をするのがいいだろう、そう結論づけてガーランは居住まいを正した。お定まりの呪詛を吐き出し始めた女の声を遮るようにして、眼窓から声を投げる。
「貴女のような美しい方に、かような呪いの言葉は似合いますまい」
 隊長の物真似にかけては隊内随一、とガーランは自負している。それに、これはガーランの本心からの言葉だった。尤《もっと》も、根拠など何もないのだが。
「美しい?」
 一呼吸置いて、鼻で嗤う声が響いてきた。対話成立、作戦成功だ。
「ふざけないで。あなたは誰? 昨日もいたわね。どこに隠れているの?」
 強気なところも悪くない。ガーランは満足そうに口角を引き上げた。さて何と名乗ったものか、しばし思案してから、ガーランはその瞳を悪戯っぽく輝かせた。
「私は精霊です。夜風の精霊です」
 さしものガーランも、神を騙るのはあまりにも畏れ多いと考えたのだ。
 一方、女は逃げるでなしに、靴音も高く、説法台や祭壇の裏を見て回っているようだった。残響のせいで、ガーランの声がどこから聞こえてくるのか判らないのだろう。そもそも、自分の声がこんな高い所にまで届いているなど、夢にも思っていないに違いない。
「隠れていないで、出てきなさい」
 ――意外と肝が据わっているな。
 ガーランは思わず笑みを浮かべた。気の強い女は隊長の鬼門だからな、などと勝手なことを胸の中で呟いてから、今度は、心持ちいかめしい顔で、「どこにも隠れてなどおらぬ」と助祭長の口調を真似てみる。
「嘘」
 冷たく一言を言い放ち、女は今度は窓を改め始めた、それから、祭壇の横手にある通用口を開く。
 まさか、このまま立ち去るつもりだろうか。ガーランは猿真似をかなぐり捨てて女を呼び止めた。
「だから、どこにも隠れてなんかいないって!」
「まさか」
「現に、どこにもいなかっただろ?」
「でも、精霊がヒトの言葉を話すなんて……」
 精霊もまた、神と同様にヒトの理に縛られぬ存在である。だが、そんなことは、ガーランの知ったことではない。
「精霊だって、たまには人恋しくならぁな」
「……ふうん」
 物凄く不審そうな声が、下から漂ってきた。が、ガーランは気にせず、ここぞとばかりに質問を繰り出す。
「で、この間から何をそんなに呪っているんだ?」
 女が、大きな大きな溜め息をついた。ややあって、投げやりな口調がそのあとを継ぐ。
「今度、結婚させられるのよ……」
「させられる? 好きでもないのに、ってことか?」
 また、溜め息が聞こえた。
 そして沈黙。
 やがて、いつもの感情を押し殺した声が、真っ直ぐ眼窓を突き抜けてきた。
「姉がいたの」
 唐突な話題転換に、ガーランは目をしばたたかせる。
「『いる』じゃなくて『いた』?」
「……死んだわ」
 吐き捨てるように発せられたその言葉を追いかけるようにして、どこかでヨタカが鳴き始めた。
 夜気を打ち震わせる鳥の声に、つい気を取られたガーランが我に返った時には、女の気配はすっかり消え失せてしまっていた。
 
 
 
 それから毎晩、ガーランは礼拝堂の壁をよじ登った。
 女はいつも、開口一番「いるの?」と囁いた。
 ガーランが無言でいると、女はこれまでどおり呪詛を口にし始めたので、彼は毎回「いるよ」と答えなければならなくなった。
 そうすると、女はわざとらしい溜め息とともに、黙り込む。
 そうして、あまりの静けさにガーランがうっかり居眠りをしてしまいそうになる頃、女は「精霊」に話しかけてくるのだ。
 
 あなたは誰、どこにいるの、どこからきたの?
 俺は精霊で、ずっとここにいる。アンタこそどこから来たんだ?
 
 そんな問答を懲りもせずに繰り返しては、ヨタカの声とともに女は姿を消すのだった。
 
 
 
「また昨日も夜勤を交代してもらったらしいな」
 大あくびとともに警備隊本部に登庁したガーランは、訓練場の扉の前で、不機嫌そうな声に呼び止められた。しぶしぶ振り返れば、えんじの上衣をビシッと着こなした切れ長の目の青年が、いかにも文句を言いたげな表情で、階段を下りてくる。彼こそが、ルドス警備隊隊長その人だ。
「夜勤だけじゃなくて、ちゃんと非番も一くくりにして、交代してますから」
 文句は言わせませんよ、と唇を尖らせるガーランに、隊長は、「そういうことが言いたいんじゃない」と肩を落とした。
「いいかげん休みを入れないと、身体を壊すぞ」
「でも、それじゃあ夜勤も入れなきゃならなくなるでしょ」
「当たり前だ」
 隊長に真正面から顔を覗き込まれて、ガーランは思わず目を逸らした。しまった、と即座に視線を戻すも、隊長の目つきは険しくなるばかりだ。
「ガーラン、お前、何を企んでいる?」
「何も企んでいませんて。人聞きの悪い」
 ガーランはそう苦笑を浮かべてから、大きく息をついた。
「仔ヤギがね、懐かなくって」
「は?」
「群れに帰ってくれないんスよ」
 無言で眉をひそめる隊長に、ガーランは肩をすくめてみせた。
「そんなわけなんで、もう少し俺の好きにさせてもらえませんかね」
 
 
 
 そうして更に五日が過ぎた。
 ガーランと女は、お互いの正体は棚に上げたまま、世間話をぽつりぽつりと交わすようになっていた。
 ガーランは、会話の内容から女が良家の娘であると推理した。他愛ない話題に、さりげなく混ぜ込んだ政《まつりごと》の話に、彼女が難なく話を合わせて来たからだ。この国の歴史や社会情勢などなど、ガーランが職務上必要にかられて必死で詰め込んだそれらの知識を、彼女はとても自然に口にした。
 初等学校だけでは到底得られない博識さ。それは、彼女がいわゆる「上流階級」に属する人間だということを、示しているといえよう。そう思って眼窓から影の仕草を見れば、なるほど、彼女には確かにそこらの町女とは違う、優雅さや気品が感じられるような気がした。
 裕福な家のお嬢さんが、深夜お屋敷を抜け出してまで、呪いたい相手とは。ガーランの興味は、日を重ねるごとにますます深みを増していった。
 
 その答えは、何の前触れもなくもたらされた。
 ふと途切れた会話の糸を、どうやって繋ぎ直そうかガーランが考えていると、彼女がぼそりと呟いたのだ。まるで今朝見た夢の内容でも語るかのように、事も無げに。
「姉が、死んだの」
 それは、彼女がガーランと最初に言葉を交わした時に、口にした台詞と同じだった。
 ガーランは黙って続きを待った。
「身分違いの恋人を父に殺され、断崖絶壁から身を投げたわ」
 あまりにも衝撃的な告白に、ガーランは言葉もなく奈落を見つめる。
「姉は、父に仕えていた下級騎士と恋に落ち、将来を約束し合った。でも、父はそれに猛反対した。何故なら、父はさる有力者に、姉を嫁がせるつもりだったから」
 深呼吸一つ、なんとかガーランは平静を取り戻した。
「政略結婚、ってやつか」
「お相手は、五十を越えてまだ独り身の男で、良からぬ性癖が噂される人物だった。まあ、絶望する姉の気持ちも解らないでもないわね」
 淡々と紡がれる言葉からは、一切の感情が読み取れなかった。
「しかし、いくら縁談の邪魔になるからって、殺す、ってのは酷過ぎるぞ。どこかに訴えるとかできなかったのか? いくらお偉いさんでも、実の娘の告発なら……」
「枷が無ければ、ね」
 彼女の声が、更に一段低くなった。
「『お前が余計なことをすれば、妹を殺す』……父はそう姉を脅したのよ。
 母は早くに亡くなり、私達はたった二人だけの姉妹だった。だから……」
 なんて腐れ親父だ、とガーランはこぶしを握り締めた。そんな奴なんかとっとと見限って、姉妹で家を出てしまえば良かったのに。そう考えかけたガーランだったが、即座に「無理か」と思い直す。
 世間知らずの細腕の娘二人では、とても世の荒波を乗り越えてはいけないだろう。たちまち身を持ち崩すか、追っ手に捕まり連れ戻されるか。こうやって夜な夜な恨み言を神にぶつけるのですら、彼女にとっては精一杯の冒険のはずだ。
「妹を守りたい。でも、ヒヒジジイと一緒にはなりたくない。それで自ら……、ってことか」と、そこでガーランはあることに思い当たった。「って、まさか、アンタが今度結婚する相手って……」
「そうよ」
 なんだか急にやりきれなくなって、ガーランは大きく息を吐いた。
「で、アンタは、夜な夜な父親を呪い続けている、ってわけか」
「違うわ」
 刃物のような声音が、辺りの空気を両断する。
「私が呪っているのは、姉よ」
 彼女の言わんとしていることが理解できずに、ガーランはおずおずと問いかけた。
「でも、お姉さんは、亡くなったんじゃ……」
「ええ、あの崖から落ちたら、命はないでしょうね」
 冷笑とともに彼女は言い放つ。
 死者を呪う、ということの重さに気づいたガーランの背筋を、怖気《おぞけ》が走った。
 
 
 
 ――腑に落ちねえ。
 夜道を歩きながらガーランは独りごちた。とはいえ、実際のところ何が腑に落ちないのか、自分でもよく分からない。おのれの頭が悪いことを恨めしく思いつつ、ガーランは今夜も日課をこなす。
「また来たのか」
「あなたもね」
「俺は夜風の精霊だからな」
 すっかり細くなった月の光が、頼りなげに床を照らしている。
 雄弁だった昨日が嘘のように、彼女はじっと黙りこくっていた。
『私を身代わりにして、自分は常世でのうのうと暮らしているなんて、許せない』
 昨夜、立ち去り際に彼女が残した言葉を、ガーランは反芻していた。
 八つ当たり以外の何ものでもない子供じみた捨て台詞を聞いて、ガーランは驚くと同時に首をかしげた。これまでのやり取りから想像していた彼女の人物像と、酷くかけ離れた印象があったからだ。
 普段の会話で窺える彼女は、とても聡明だった。ガーランの小芝居に対する反応一つとっても、愚かな小娘という像からはほど遠い。
 それが、いきなりのこの台詞だ。そうでなくとも、もやもやとはっきりしない「何か」が、彼女の姿を霞ませている気がして仕方がないのに。ガーランは知らず唇を噛んだ。
 ――姉さん、か……。
 兄弟のいないガーランには、それがどのような存在であるのか今一つ見当がつかない。なんとかして彼女の思考を辿れないか、と頭をひねるガーランの脳裏に、先日、同僚の妹が忘れ物を届けに本部にやってきた時のことが浮かび上がってきた。兄を容赦なく言い負かす妹を見て、ガーランは自分に妹がいないことを神に感謝しつつも、じゃれあう二人をどこか羨ましく思ったものだった。
 ――ああそうか、甘えているのか。
 意識を階下に戻したガーランは、何となく納得した。きっと、彼女達は仲の良い姉妹だったんだろう。姉が亡くなってしまった今も、彼女は姉に甘えにここにやって来ているのだ。「馬鹿なこと言わないの」との叱責を求めて。
 こうやって人目につかない所で羽を伸ばし、そうしてまた朝が来れば、たった独りで理不尽な運命と闘うのだ……。
 ――もしかしなくても、俺、お邪魔虫なんだな。
 悪いことしたなあ、とガーランが頭を掻いていると、久方ぶりに彼女が話しかけてきた。
「どうして、毎晩邪魔をするの」
 痛いところを突かれて、ガーランは密かに苦笑を漏らした。潮時か、と。
 ガーランはゆっくりと深呼吸をした。それから、腹に力を込めた。
「アンタみたいないい女に、呪いの言葉は似合わない」
「何も知らないくせに」
 あからさまに鼻で嗤う気配が伝わってくる。
 もう一度ガーランは息を整えた。
「いいや、知ってるさ」
 面と向かっては、とてもこんな台詞は言えないからな。そう心の中で呟いて、ガーランは胸腔一杯に空気を吸い込んだ。
「アンタが、しっかりと背筋を伸ばして、惚れ惚れするほど真っ直ぐに立ってるってことを」
 階下で、息を呑む気配がした。
 再び、沈黙が辺りを支配する。
 さて、猿芝居の種明かしといこうか、と、ガーランが腰を上げた時、遠くから木が軋むような音が聞こえてきた。
 ヨタカの声だった。
「星送りが始まるわね」
 ぽつり、と彼女が呟いた。
 星送りとは、毎年この季節に行われる追悼と慰霊の祭りのことだ。新月の夜から三日間、人々は死者を悼んで川におふだを流す。太古の昔から続く、夏の情景だ。
 彼女は、どんな思いで姉を見送るのだろうか。唇を噛み締めるガーランの耳に、いつになくしおらしい声が飛び込んできた。
「毎晩、こんな馬鹿な女の話に付き合ってくれて、ありがとう」
 不意打ちを喰らい言葉に詰まりながらも、ガーランはなんとか声を絞り出した。
「いつ、なんだ? 結婚式は」
「星送りの祭りが終わったら」
「って! もう五日もないじゃねえか!」
 礼拝堂内に、ガーランの悲鳴が何度も反響する。
 微かに、ほんの微かに、彼女が笑った。
「さようなら、精霊さん。今まで楽しかったわ」
 囁きが、夜風とともにガーランの頬を撫でる。
 そして、扉が開く音。
「待てよ!」
 そう叫ぶや否や、ガーランは屋根の梯子に飛びついた。何度も足を踏み外しそうになりながら、二階の回廊に下りる。階段を駆けくだり、扉を押し開き、礼拝堂の表へ飛び出した。
 見渡す限り動くものは何もない、寝静まった世界に、ただヨタカの鳴き声だけが虚しくこだましていた。
 
 
 
 次の夜、女は礼拝堂に現れなかった。
 
 ガーランは朝一番に本部に登庁すると、一目散に隊長の執務室に飛び込んだ。
「隊長、アンタお貴族様の端くれなんだったら、社交界ってのもお馴染みなんだろ? 星送りの祭りのあとに結婚式を挙げる奴の噂とか、知らないか?」
 窓際の執務机で事務仕事に勤しんでいた隊長は、書類から顔を上げることなく言葉を返してきた。
「すまないが、私はそういうことには疎いんだ」
「晩餐会に舞踏会に、高嶺の花をとっかえひっかえだったくせに、何が『疎い』だ」
「いつまでも昔のことを蒸し返すな」
 眼光鋭く、隊長がガーランを睨みつける。
「嫡男でもない上に、家を出てしまった『放蕩息子』が、そんな貴重な情報を持っているわけがないだろう」
「じゃあ、お屋敷に戻れば情報が手に入る、と」
 大きく身を乗り出すガーランに、隊長は思いっきり眉間に皺を刻んだ。
「ガーラン、お前、人の話を聞いているか?」
「聞いてますよ、隊長。俺が必要としている情報が、隊長のご実家にある、ってことっしょ? さっさと調べに行きましょう!」
 言うなり、ガーランは隊長の腕をむんずと掴んだ。そのまま椅子から引っ張り立たせようとするのを、隊長が全力で拒む。
「いや、だから、私は、父が彼女のことを認めるまでは屋敷の門をくぐらないと……」
「じゃあ、手紙書いてくださいよ。セバスのじいさんに、これこれこういう人を知らないか、って」
「お前、どうして我が家の家令の名を……、って、いや、そうではなく、ガーラン! 理由を言え! まずはそれからだ!」
 
「おかしいぞ」
 ガーランの話を一通り聞き終わるなり、隊長がきっぱりと言い切った。
「まず第一に、良家の娘が夜中に町をうろつけるというのがおかしい。ましてや東の教会だろう? 西ではなく」
 町の中央を貫く大通りの西と東では、住民の層が違っている。町の有力者や貴族といった「持てる者」の屋敷は、町の西側、山へと続く高台に建ち並んでいた。
「そもそも、騎士を擁するほどの有力者なら、普通は屋敷に礼拝堂があるだろう? どうして、わざわざ外に出る必要がある? お前、おかしいとは思わなかったのか」
 尊大に言い放つ隊長に対して、ガーランは盛大にムッとした顔を作った。
「俺にとっては、礼拝堂ってったら、教会にあるものと決まってるんでね」
「それにしても、だ。連れはいなかったのか? 馬車の音は? 婚礼を控えた娘が夜中に独りで出歩くなぞ、絶対にありえない」
「ありえないも、ありえなくないも、事実がそうなんだから仕方がないでしょう」
 一歩も退くつもりのないガーランの勢いに、隊長は溜め息をついて、ペンを手に取った。
 
 
 その日の夕方、警邏から帰投したガーランは、隊長に執務室に呼び出された。
 机の前に立ったガーランに、隊長は手に持った紙をぞんざいに机上に広げて見せた。
「該当者無し、だそうだ」
「は?」
「州知事が有する名鑑の中に、星送りの前後半年間に婚姻した、もしくは婚姻する予定の者はいなかった、とのことだ」
 その瞬間、ガーランは見えない手にがつんと頭を殴られたような気がした。
「夢みがちな乙女の、お姫様ごっこだったのではないか? 悲劇の姫に自らをなぞらえて、一人芝居を楽しんでいたところに、精霊を騙る馬鹿者が闖入し引くに引けなくなったとか、もしくは、お前の悪戯に気づいての仕返しだったとか……」ほんの少しだけ同情の色を瞳に浮かべて、隊長が椅子に背もたれる。「それとも、その者こそが、ヒトにあらざる存在であったとか……」
 まるで、隊長の声がどこか遠くから聞こえてくるようだ。
 ガーランは、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
 
 
 
 東の教会、礼拝堂より少し下がった所に建つ治療院。その裏手で、白いエプロンを身につけた若い女性が洗濯物を干していた。
 雲一つ無い夏空を背景に、何枚もの敷布が気持ち良さそうにはためいている。最後の一枚を干し終えた女性は、物干し場をぐるりと見渡してから、大きく頷いた。そうして空になった洗濯籠を抱え上げ、治療院の裏口へと戻ってくる。
 ガーランは、扉の陰から出ると、女性の進路を塞ぐような位置で足を止めた。
 女性が、怪訝そうな表情で立ち止まる。
 束ねられた褐色の髪は、日の光を受けて艶やかに波打ち、襟足を優雅に飾っている。涼しげな瞳は、澄みきった泉のごとく。思ったとおり、いい女じゃねえか、と、心の中で呟いてから、ガーランは姿勢を正した。
「アンタがラナさん?」
 ガーランの問いかけを――声を聞くなり、彼女の足元に籠が落ちた。
 ラナと呼ばれた女性は、しばし身動き一つせずにガーランの顔を凝視していたが、やがて何か観念したかのように、両手を軽く上げた。
「もしかして、私は、何かあなた方の仕事を邪魔してしまっていたのかしら」
 彼女の視線がえんじの上衣に注がれていることに気づき、ガーランは小さく首を横に振った。
「俺が勝手に夜の散歩をしてただけさ」
「とんだ精霊がいたものね」
 冷ややかな眼差しを、咳払いではね返して、ガーランは話を続ける。
「アンタの話を聞いていて、どうしても引っかかることがあったんだ」
 ラナの、形の良い眉が、すっとひそめられた。
「俺は頭が悪ぃからさ、何がどう引っかかってんのか、すぐには解らなかった」
「すぐには、ということは、今はもう解っているってこと?」
 挑戦的な質問に、ガーランは得意げに頷いた。
「アンタ達姉妹は、仲が良かった。特に、姉は妹のことをとても大切に思っていた。自分の幸せよりも妹の命を優先するほどに。でもな、そんなに妹が大事なんだったらなおのこと、何故死んだのか、腑に落ちねえんだよ。政略結婚なんだから、自分が死ねば妹が身代わりになることぐらい、いくらでも想像できるはずだ。死ぬほど嫌だった縁談を、死んでまで守りたかった妹に押しつける、っておかしかないか?」
 ラナの表情が、僅かに硬くなる。
「そもそも父親の脅し文句だって、『姉のお前がいうことを聞かなければ、代わりに妹を嫁にやる』でも良かったはずだろ? なのに、実際は違った。腐れ親父は妹の命を盾にし、姉は死を選んだ。妹では姉の代役にはなれなかったんだ。
 だが、妹に何か問題があったわけではない、というのは、今回政略結婚のお鉢が妹に回ってきたことから分かる」
 まさしくこの矛盾こそが、ガーランの抱いた違和感の大本だったのだ。
「つまり、こうだ。アンタ達は歳の離れた姉妹だった。それも、四つや五つどころではなく。幼い妹が後釜におさまることはないと確信できたから、姉は命を絶ったんだ」
 沈黙を肯定と捉えて、ガーランは話し続ける。
「すると、ますますアンタが姉を呪う理由が解らなくなる。その当時の姉の事情がアンタに理解できないことはないだろうし、それなら姉に甘えるにしてももっと違うやり方を選びそうなものだしな。そもそも、アンタが呪うべきは、父親だろう? そして、それをアンタ自身も承知していた」
 ラナが唇を噛む。
「なのに、アンタは姉を呪い続けた……」
 ガーランは一旦言葉を切ると、大きく息を吸った。それから、静かに言葉を継ぐ。
「……ラナ、アンタが『姉』なんだろ?」
 
 洗濯物がばたばたと暴れる音とともに、一陣の風が二人の間を吹き抜けていった。
「……と、まあ、答えを知ったあとなら、いくらでも偉そうに言えるわな」
 ガーランは、少しばつが悪そうに頭を掻いた。
「答えを知った……?」
「アンタ達が歳の離れた姉妹だ、ってところまでは想像がついたものの、その先、なんでアンタが姉を呪うのかがさっぱり解らなくってな。でも、嘘や作り話というにはアンタの雰囲気は痛々し過ぎるし。とりあえず、アンタの正体は棚上げにすることにして、亡くなったという『姉』について調べてみたんだ」
「隊長さんね。確か、州知事の息子さんだとか。……本当、あなたが警備隊員だったなんて、迂闊だったわ」
「ああ、まあ、普通だったら俺みたいな庶民にゃ、お偉い方々の、しかも異郷の事情なんて分かりっこないからなあ」
 ふう、と息を吐き出すと、ガーランはこれまでの経緯を語り始めた。
「隊長んちで訃報の束を調べたところ、今から十年前に、さる南方のお貴族様が、妙齢の娘さんを不慮の事故で亡くした、という記録が引っかかった。
 どんな小さな手がかりでも欲しかったんでな、俺はここの助祭長に話を聞きにきた。南の海で船に乗っていたおやっさんなら、もしかしたら何か知っているかもしれない、ってね」
 そこでガーランは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「おやっさんも歳だね、思い出話につるっと悲恋の姫が登場した。口が滑ったことに気づいて、誤魔化そうとしやがったが、なんとか聞き出してやったぜ」
 引き換えに、今度の休日に教会の薬草畑の柵を修理する羽目になったことは、自分の胸にしまっておくことにする。
「十年前、世話になっていた船長が倒れたという知らせに、おやっさんは海を渡った。そこでおやっさんは、海岸の波打ち際に倒れていたアンタを見つけたんだ。
 事情を知ったおやっさんは、アンタをルドスへ連れてきた。そうしてアンタは、ここルドスで別人として暮らし始めた」
 ラナが、小さく頷いた。
「だが、最近になって、アンタは、風の便りに自分の妹が結婚することを知った。そうなんだろ? お相手は、自分の時と同じ、隣の領主。それで、アンタは後悔にうちひしがれた……」
 深い溜め息とともに、張り詰めるようだったラナの気配が緩んだ。一息つくガーランのあとを受けて、彼女は訥訥と話し始める。
「あの時、妹はまだ五つだったし、相手は既に老境にさしかかっていた。あの子が私の身代わりになるなんて考えもせずに、ただ絶望から、私は発作的に海に身を投げた……」
 そこで、ラナの口元が僅かに歪んだ。
「そもそもあの強欲な父が、将来有用な手駒になりうるあの子を、私への見せしめのためだけに殺すなんて、ありえない。父は見抜いていたのよ、運命を嘆くばかりで、自分からは何も動こうとしない私のことを。だからこそ、心にもない脅し文句を平然と口にすることができたんだわ。そんなことすら解らずに、私は……」
 喘ぐように息を繰り返し、ラナは顔を伏せた。こぶしを握り締め、もう一度大きく息をつき、震える唇を再度開く。
「あの子に謝らなければ、と思った。できれば代わってやりたかった。でも、私は既に死んだ人間だから、今更故郷には帰れない」
「だから、アンタは『自分』を呪ったんだ。何も知らない妹の代わりに、全身全霊を込めて呪詛を吐いた」
「……私が死んだと思えばこそ、あの子は運命を受け入れたのでしょう。ならば、今ここで私がのうのうと一人生き永らえていてはいけない。でも……」
 そこまでを語って、ラナは言葉を詰まらせた。握ったこぶしを胸にあて、青い顔で息をつく。
 ガーランはそっと目を細めると、彼女の言葉を引き取った。
「……でも、既にアンタは、ここになくてはならない人になっていた」
 息を呑み顔を上げるラナに、ガーランは片目をつむってみせた。
「相当頑張ったんだってな。おやっさんが誉めてたぜ。なんにもできなかった気弱なお嬢様が、今や治療院筆頭の癒やし手だ、って」
 唇を噛んで、ラナが顔を背ける。
 ガーランは怪訝そうに片眉を軽く上げたものの、そのまま話を続けた。
「実はさ、最初は『星送りの祭りのあとに挙式予定のある名家』ってふうに、『妹』の線で調べてたんだけどさ、それでは該当する家が見つからなかったんだよ」
 ラナが困惑の表情でガーランを見た。
 その様子を横目で見つつ、ガーランはすまし顔で言葉を重ねる。
「それがな、去年だったんだ。アンタの妹さんが結婚したの。なんてったって海の向こうだ、遠いからなあ、風の便りは風任せ、一年かかってやっとアンタのもとへ辿り着いたってわけだ」
「去年……!」
 なんてこと、と目を見開くラナをよそに、やけに勿体ぶった調子でガーランが口を開いた。
「そう。去年の星送りの祭りのあと、マタル領主の娘ロナと、カフタス辺境伯アクラムの結婚式が執り行われた、ってね」
「え?」
 ぽかんと口を開いて絶句するラナに、ガーランは遠慮なくにやにや笑いを浴びせかける。
 ラナは、たっぷり一呼吸の間、身動き一つしなかった。それからごくりと唾を呑み込んで……、そして、ガーランに噛みつかんばかりの勢いで詰め寄ってきた。
「アクラム!? イスハルではなく……?」
「前《さき》の辺境伯は、二年前にポックリ流行り病で亡くなって、ド田舎に追いやられていた甥が跡を継いだんだと。若いのに優秀だってんで、領民の評判も上々、結婚してからは愛妻家でも通っているって噂だ」
 それを聞いて、ラナはまるで糸が切れたかのように、へなへなとその場にへたり込んだ。
 ガーランは、黙って彼女を見守り続ける。
 やがてラナは、ぽつりぽつりと話し始めた。まるで独白のように。
「……私がいなくなれば、教会の皆が困る……、それはそうなのかもしれない。でも……、私は……私はただ、死にたくなかっただけなの。ここでの生活を手放したくなかっただけなのよ……」
 ラナの日に焼けた頬を、幾つものしずくが、つたって落ちる。
「あの時のことは、今でも覚えている。私は、全てを捨てて崖から身を投げた。誰かに助けられるなんて夢にも思わず、本気で命を絶とうとした」
 小さくしゃくり上げてから、ラナは激しく頭を振った。
「でも……! もう、駄目なの。物見櫓に上っても、居敷きの崖に行っても、もう足がすくんで動かない。死を選ぶほど嫌だったことをあの子に押しつけておいて、今更死ぬのが怖いだなんて、ふざけているにもほどがあるわ。だからせめて、自分のしたことをこの身に、魂に、刻みつけようと……」
 やがて彼女は両手で顔を覆って、静かに肩を震わせ始めた。
「折角おやっさんが助けてくれた命なんだ、死に急ぐことないだろ」
 ガーランはラナの前にしゃがみ込むと、その頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「妹さんも、良い旦那さんに恵まれてよろしくやってるわけなんだしさ」
 とうとう嗚咽を漏らし始めたラナの頭を、ガーランは撫で続けた。ここで抱き締めるのは反則かなあ、などと余計なことを考えながら。
 
 
 
 
「なんだ、その変な歌は」
 深夜の町角、警邏の終わり頃になって、同僚が思い余ったようにガーランに問いかけてきた。
「え? 歌? 俺何か歌ってたか?」
 真顔で返すガーランに、同僚は呆れ返った表情で天を仰いだ。「分かってないんだったら、いい」
「え? なんだよ、気になるだろ。歌がどうかしたのかよ」
 ガーランがしつこく食い下がると、同僚はこれ見よがしに肩を落としてみせた。
「幸せそうで良かったな、ってことだ」
「しあわせ? まさか! 夜勤続きでへとへとな俺に、そんなことよく言うな」
 はいはい、と軽くいなす相方に、ガーランはなおも言い募る。
「明日は明日で、貴重な休みの日だってのに、治療院の大掃除手伝わされるんだぞ。まったく、あのクソ坊主め、人使いが荒過ぎるっての」
 憮然とした口調とは裏腹に、その頬は緩み、足取りはどこまでも軽い。
「さーて、さっさと次の組と交代しようぜー」
 溜め息をつく同僚をあとに残し、ガーランは鼻歌を口ずさみながら巡回路を進んでいった。

 


  


GB(じーびー)

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ファンタジーや謎解き、恋愛など、その時々の萌えのままに書いています。タネや仕掛けのある物語が大好きです。

 

立神勇樹(たつかみ・いさぎ)

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くうねるあそぶ、をモットーに、読んだり書いたりしています。小説のジャンルは、ミステリ、刑事モノ、軍モノ、ファンタジー、現代もの、近未来ものなどなど。です。

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