閉じる


洋画部門

スーサイド・ショップ

2013年10月1日鑑賞

これであなたも首を釣りたくなる?稀有な駄作

パトリス・ルコント監督、初めてのアニメ作品です。ネガティブな一家が家業として代々引き継いできた「自殺用品専門店」
首吊り用のロープから、毒薬、一発だけ弾の入った自殺用ピストルから、果ては、ハラキリセレモニー用の日本刀まで置いてあります。


そんな商品を売るのは、奥さんから「ミシマ~」と呼ばれるご主人なんであります。
よほど、三島由紀夫はフランスではハラキリの代名詞になっているのでしょうか?
二人の子供がいて、自殺屋さんにふさわしい、とてもネクラな子供に育っております。そんな夫婦に三人目の子供が生まれます。この子が、どうにも自殺屋さんに似つかわしくなく、とってもほがらか。周りにニコニコと愛想がいい。その笑顔を見てると、皆ハッピーになって、誰も自殺屋さんにやって来なくなる恐れがあります。そこで夫婦は、この超ポジティブな子供を、何とかネガティブに育てようとするのですが……というおはなしです。
  フランスを中心にした、ヨーロッパで作られた作品なんで、きっと、ダークファンタジーみたいな仕上がりになっているんだろう、どんな捻りを効かせてくれるのか? と期待しましたが、まったく何のひねりもないんです、これが……。
実にあっさりしてる。
せっかく「ハラキリ」とか「ミシマ」とかいう、キーワードが出てくるのですから「自殺の美学」みたいなエスプリや、香りを効かせて欲しかったなぁ、と思います。
また、ショップにやってくるお客は皆当然、自殺志願者なのですが、何に絶望して、自殺しようとするのか? それは全く描かれていないんですね。冒頭、電線に止まっているハトまでも、絶望して自殺してしまう所はすこし笑えますが、それほどこの街や、社会や、家族や、自分に対して、自殺に至る、納得出来る強烈な動機が必要です。その説明が何にもない。だから映画のセカイに入って行けない。
お陰さんで途中、僕は爆睡してしまいましたが(( _ _ ))..zzzZZ

 


アニメの表現については、日本は世界最先端を行っているわけです。日本人はアニメをみる目が肥えているのですね。本作はアニメ表現という点でも、あまり目新しい事もなく残念です。
以前観たアリ・フォルマン監督の「戦場でワルツを」というシリアスなアニメはとても斬新でした。
爆睡から覚めてスクリーンでは
「自殺はしちゃダメ、人生を楽しもう」という、あまりに当たり前すぎて、かえって虚しいメッセージのオンパレードとなります。
料金払って警察や、お役所のキャンペーンスローガンを見ているようで、実に損した気分にしてくれる作品です。(^_^;)
なるべく気をつけて、観る作品を選んでいるのですが、時にはこういうハズレ映画にぶち当たります。まあ、僕がもし映画監督なら、この作品を作った時点で首を釣りたくなるでしょうね。
**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆
配役 ☆☆☆
演出 ☆☆
美術 ☆☆☆
音楽 ☆☆

総合評価 ☆☆
**********
作品データ

監督   パトリス・ルコント
主演   ベルナール・アラヌ、イザベル・スパッド
製作   2012年 フランス、ベルギー、カナダ
上映時間 79分

予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。



http://www.youtube.com/watch?v=ckHk91X_R3k


ダイアナ

2013年10月21日鑑賞
魅力的でありすぎた悲劇のプリンセス

僕がこの作品、いいなとおもったのは、ダイアナ妃に対して、監督、スタッフ、俳優たちすべてが、とても敬意を払っているということです。スクリーンから、その映画つくりの姿勢が見えるようです。
このお話はダイアナ妃が、チャールズ皇太子と別居し、事故死に至るまでの過程を描いてゆきます。
彼女の不幸は、皮肉にも、彼女があまりにも魅力的でありすぎたこと。そして、嫁いだ先が、たまたま英国王室であった事。更には、彼女が、自分の直感や、情念に大変素直に生きる人であった事。
これらが全て、複雑に絡まり、あの悲劇的な事件につながってしまったのでしょう。
彼女は別居後、病院で知り合った、パキスタン出身の心臓外科医ハスナットと知り合い、後に恋に落ちます。
彼女はなぜその医師に恋してしまったのか?
ハスナットはダイアナを「英国王室の皇太子妃」ではなく、一人の女性「ダイアナ」として接してくれたのです。
どこへ行っても付きまとう「英国王室皇太子妃」という窮屈なトレードマークにうんざりしていた彼女には、医師ハスナットのさりげない、分け隔てない人への接し方が、大変魅力的に見えたのでした。
やがて彼女は、ハスナットとこっそりデートを楽しむようになります。変装用の長い黒髪をつけて、出かけるクルマは執事のマイカーを借りて。
繁華街へ繰り出すダイアナ。宮殿には無い、とっても自由な雰囲気を楽しむダイアナ。もはや、恋人であるハスナットとファーストフード店に入るだけでもワクワクします。
この辺り、あの名作「ローマの休日」のアン王女のローマ散策シーンのようで、観ているこちらも楽しくなります。
さて、男女の関係にまで発展してしまった、ふたり。やがて、二人は真剣に自分達の立場や関係、将来を考えるようになります。
パキスタン出身のハスナットは、イギリスと言う異国の地で、心臓外科医になりました。それは独力で築き上げた地位です。彼にはその自負心もありました。ダイアナは、良かれと思って、もっと権威のある病院へ勤務出来るようにと働きかけます。しかし、医師ハスナットにとっては要らぬお世話。彼は激怒します。気まずくなるふたり。
さて、そんなふたりの交際をゴシップ記者が嗅ぎつけます。写真が新聞に乗る。世紀の大スキャンダル。いわゆるパパラッチに、ダイアナは四六時中追いかけ回されます。
知人とレストランに入り、一口食べようと口を開けたとたん、フラッシュがバシャッ!!! いやぁ 、有名人になると、こんな、嫌な目にも会うんですねぇ。
なお、映画後半、このフラッシュがバシャバシャ、光るシーンがありますので、鑑賞には気をつけてください。(余談ですが、知人にてんかん発作を持った方がおられます。強い光をみると発作が起きてしまうのです、こういう作品を鑑賞される際は、くれぐれもお気をつけくださいませ)
ダイアナ妃は後に、アバンチュールを楽しみながらも、紛争地に自ら赴き、惨状を目にします。
病院に寝かされた子供達。足が吹き飛んでいる。地雷でした。
何の罪も無い子供達が、多くの地雷で命や身体の一部を失ってゆく。国家や、大人達が仕掛けた戦争で、多くの子供達が不幸になってゆく現在進行形の出来事。
彼女は決意します。
自分は全世界から見られている存在。
ならば、それを逆手にとって利用する。世界の平和のために。子供達の幸せのために、自分は尽くそう。
全世界に影響力を持つ一人の女性として、ダイアナは人道的な立場から「地雷を無くそう」と呼びかけます。
ようやく自分の進むべき道を見つけたかの様に思えた時、彼女は不慮の事故で、あっけなく世を去るのです。
何という残念なことでしょうか。
彼女が生きていれば、もっと多くの子供達を救う活動が出来たかもしれません。
心より、敬意と哀悼の気持ちを、この映画に寄せたいと思います。
なお、主演のナオミ・ワッツさん、ダイアナ妃という実在の人物、そして大役をよく演じたと思います。それに医師役のナヴィーン・アンドリュースさんの演技が光りました。お二人に拍手を!!

**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
**********
作品データ

監督   オリヴァー・ヒルシュピーゲル
主演   ナオミ・ワッツ、
                 ナヴィーン・アンドリュース
製作   2013年 イギリス
上映時間 113分

予告編映像はこちら

http://www.youtube.com/watch?v=-vioxYLyqkE


ルノワール 陽だまりの裸婦

2013年10月22日鑑賞

 「幸せな肌、幸せな音につつまれて」


この作品はルノワールの晩年を描くものです。原作はルノワールの息子、ジャンが書いた著作だそうです。そのためか、監督もジャンの視点を尊重して描いた様に僕には思えました。

物語は、年老いたルノワールのアトリエに、若い女性モデル、アンドレがやってくるところから始まります。 彼女は透き通る様に美しい「金色」のきめ細やかな肌を持っていました。 ルノワールはアンドレの美しい肌が気に入りました。彼女をモデルに、黙々とキャンバスに筆を遊ばせるルノワール。

しかし、その身体はリュウマチに冒され、手足が不自由です。車椅子に乗り、曲がった手の指に絵筆をくくりつけてキャンバスに向かいます。そこへ、戦地から怪我の療養のため、次男のジャンが帰ってきます。

 息子の無事な帰還を喜ぶルノワール。しかしジャンは、怪我が治れば戦場に戻るつもりだ、と父親に告げます。彼は後に映画監督ジャン・ルノワールとして名声を得るのです。

 ルノワール本人は、すでに地位も名声も富も手に入れていました。郊外の館に住み、身の回りの世話をしてくれるメイド達が何人もいる様な生活です。 そんな彼は元々、磁器の絵付け職人だったのですね。その修行が身体に染み付いている。だからルノワールは職人技にこだわります。 何よりも対象物を美しく描くこと。 絵の注文主を、実物以上の魅力的な人物に描いて見せる、そういう技量と、こだわりを持っている。

ルノワールは言います。

 「私は職人だよ。芸術家は嫌いだ」

ルノワールがバリバリ活躍していたころ、芸術家を自認する画家仲間からは、彼の創作態度を批判する人達がいたそうです。

曰く、 「パトロンから金をもらって絵を描くなど、もってのほか」 「あんなもの、芸術とは言えない」

そう言う人達に限って、生活に困らない、裕福な家の出身者でした。 ルノワールは、そんな雑音に耳を傾けず、自分流を貫きます。 あくまで美しく、楽しげな、そして何より「幸せな絵」を描こうとしていた様です。

本作はとても静かなタッチで描かれた作品です。まさに印象派絵画を鑑賞しているかのようです。うっかりすると眠ってしまうぐらい。

 なお、日本版タイトルにもある「裸婦」については、もちろん、ヌードシーンもあるのですが、あくまで映画に彩りを添えるような味付けなんですね。 僕が本作で、最も心惹かれたのは、監督の音に対する実に繊細な感覚でした。 本作を観る限り、ルノワールは屋外で絵を描く事が好きだったようです。森や、川のほとりや、草原でイーゼルを立て、キャンバスに向かいます。そのときの森の木々のざわめき、風の音、虫の音、そして愛らしい小鳥のさえずり。もちろんこれらのシーン、音楽は一切ありません。ひたすら自然の奏でる、豊かな音のハーモニーを楽しめるように描かれております。 本作のエンドロールでは、なんとも愛らしい、小鳥のさえずりがずっと聞こえています。

本作をご鑑賞の皆様、どうかエンドロールの最後まで、耳を済ませて静かにご鑑賞ください。 ときには、こう言う作品もいいものですよ。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

 配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆
総合評価 ☆☆☆

**********

作品データ
監督   ジル・ブルドス

主演   ミシェル・ブーケ、クリスタ・テレ

製作   2012年 フランス

上映時間 111分
予告編映像はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=7h5fpyzNBl8


« 前の章