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    目  次

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   まえがき

 

第1章 持続不可能な資本主義社会

     成長の限界から /リーマンショック後の経済成長 /グローバル時代の欲呆け /

     エコロジカル・フットプリントとは

 

第2章 エネルギー問題の隘路

     資本主義社会のエネルギー /エネルギー収支比とは /化石燃料の隘路

 

第3章 再生可能エネルギーの実力

     化石燃料獲得競争 /発電方式別発電量比較 /再生可能エネルギーへの期待と現実

 

第4章 藻類が作るバイオ石油

     石油の素は微生物 /微生物によるバイオエネルギー /実用化に向けて

 

第5章 特殊振動攪拌機で水が燃料

     特許を取得した特殊振動攪拌機 /ガスゆえ実用が広範囲

 

第6章 自然との共生を目出して

     環境危機は突然に出現 /新たな再生可能エネルギーの秘めた実力 /

     脱グローバル資本主義を促すエネルギー

 

    あとがき

 

    参考文献

     


まえがき

 誇張して言えば、カラスの鳴かぬ日はあっても、マスコミがエネルギー問題を報道しない日はありません。それも、原発再稼働の報道と東京電力が発表する福島第一原子力発電所のその後の事故状況報道です。その姿勢は、危険な原発再稼働の電気が欲しくて、おざなりの報道に終始しています。その電気を始めとするエネルギーは、日本だけでも大量に消費しており、世界中ともなれば想像を絶する大量のエネルギーを消費しています。この影響が、もろに原子力発電所から出る核廃棄物、グローバルな気候変動、環境ホルモン汚染、植動物の種の絶滅等といった人類を脅かす環境問題を惹起させています。しかし、快適な生活を満喫している人類は、二酸化炭素を減らせば地球温暖化が解決すると曲解し、エネルギーの使い過ぎを問題にしません。気にするのは、枯渇性エネルギーの輸入価格です。

 例えば、2010年6月に閣議決定した現行エネルギー基本計画の冒頭に、 「地球温暖化問題への関心の高まりを踏まえて、原子力の更なる新増設(2020年+9基、2030年+14基以上)を含む政策総動員により、2030年までにエネルギー自給率の大幅な向上(約18%→約4割)とエネルギー起源CO2の30%削減を目出す」 と書かれています。要は、原発を新増設し消費できるエネルギーを増やしますと宣言しているのと同じです。かように、消費可能なエネルギーの絶対量を増やそうとしており、政府もエネルギーの使い過ぎを問題にしません。政府が心配しているのは、枯渇性エネルギーの減り具合であり、枯渇性エネルギーの輸入価格です。

 それと言うのも、誰しも現在社会を維持するだけでも想像を絶するエネルギーを必要としていることは、認めざるを得ないからです。そこで、 「枯渇性エネルギーは50年ほどで経済的に引き合わなくなる」 から枯渇性エネルギーの無駄遣いはやめようとか、再生可能エネルギーで補助しようとします。一歩進んで、再生可能エネルギーで脱原発に進もうとします。現在社会の問題は、多量のエネルギーを使う大量生産・大量消費の経済モデルにあり、思想的には新自由主義と市場原理主義を混ぜ合わせたグローバル資本主義思想です。

 人間は、農耕社会を作り食物連鎖の環から抜け出し、二度に亘る産業革命で枯渇性エネルギーを大量に使い機械化を図り食物連鎖の環から完全に脱却しました。しかしながら、人間も宇宙船地球号の乗組員でしかないと比喩されるように、自然環境の環からは抜け出すことはできません。ゆえに、環境問題で苦悩しています。であるにも関わらず、グローバル資本主義思想は自然環境の環との共生を否定するため、逆に自然環境の環に締め上げられるようになりました。それと言うのも、従来の再生可能エネルギーは、枯渇性エネルギーの補助の位置づけであり脱グローバル資本主義の手段にする考えがありません。確かに、従来の再生可能エネルギーには石油の代わりができない、安定した発電ができない、どこの国でも公平・安価に得られないなどの泣き所があり、脱グローバル資本主義の手段になりません。しかし、現在社会が消費するエネルギーを再生可能エネルギーで賄うこと以外に、自然環境の環の中で共生できません。

 現在社会を英国の産業革命時期から振り返ると、石炭、石油という一次エネルギーの出現が、生活様式を根底から変えてしまっていることに改めて気づかされます。一次エネルギーを石炭・石油などの化石燃料から再生可能な一次エネルギーに代替えできれば、人類を脅かす環境問題を解決できるのではと考えるのはもっともです。再生可能エネルギーは、人類が持続的に使えるエネルギーを生み出す現在の唯一の手段ゆえに期待するわけです。本論で説明する藻類が作るバイオ石油及びオオマサガスは、従来の再生可能エネルギーを超えた特徴を有しています。今後の進展にもよりますが、藻類が作るバイオ石油及びオオマサガスは、従来の再生可能エネルギーの弱点を克服するだけでなく、石炭・石油という枯渇性エネルギーを超えた特徴があるゆえ、社会に与える影響は大きく脱グローバル資本主義の手段になりうる可能性があります。

 エネルギーが国産になったと言っても、従来のようにエネルギーを湯水のごとく使う大量生産・大量消費の経済モデルを止揚し、エネルギー循環社会に移行すべきです。グローバリズムが目指す国際分業による際限なき経済成長競争から脱却し、地域で藻類が作るバイオ石油及びオオマサガスの自前エネルギーが調達できれば少ない収入で生活できます。自然と共生可能な量のエネルギーしか使わない制約を課し、新たな再生可能エネルギーの利用により、われわれの生活様式の変革を実現します。

 

 


第1章 持続不可能な資本主義社会

 成長の限界から

 日本では公害が多発していた1972年、ローマ・クラブの報告書 『成長の限界』 が刊行されました。筆者は、グラフが多かった本であったと記憶しており、私達に 「物理的な成長には限界がある」 ことを指摘したとして知られています。 『成長の限界』 とは、ローマクラブが資源そして地球の有限性に着目してマサチューセッツ工科大学(MIT)のデニス・メドゥズを主査とする国際チームに委託して、システム・ダイナミックス理論をコンピュータで使えるようモデリング化してとりまとめた研究で、1972年に発表された人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば100年以内に地球上の成長は限界に達すると警鐘を鳴らしました。その後、1992年に改訂版 『限界を超えて』 を刊行し、 『成長の限界』 で提示されたシナリオの最初の20年間について、地球規模の展開を追跡しました。2005年に最新版 『人類の選択』 が刊行され、1990年代後半から2000年代前半の10年間に進んだ温暖化問題、化石燃料の価格上昇、生物多様性の劣化など、多くの指標が予測されたシナリオどおりか、ないしはさらに早く悪化が進んでいることが報告されています。

 三回に及ぶ 『成長の限界』 からの報告は、いずれも地球をシステム的に思考する立場であり、国家とか会社の立場を超えたまさしくグローバルな立場です。もちろん、システム思考の中核であるシステム・ダイナミックス理論は知る由もありませんが、最新版 『人類の選択』 には次の簡単な図がありました。

    

 この図は、人間が生活のために地球のいたるところで天然資源を採掘し、採掘した物質と燃料を使い快適な生活を営んでいるが、その過程で環境中に廃棄物を出していることを表しています。その廃棄物は、生態系が土と廃熱に分解し、土は地球に戻り、廃熱は宇宙空間に捨てられます。この図で重要なのは、 「スループット」 の限界という概念であり、 「スループット」 の限界が成長の限界になります。現在は、エネルギー資源を湯水のごとく使い大量生産・大量消費の経済モデルの中で生活しており、そのため地球自体に備わっている環境中の廃棄物処理が追いつかず、 「スループット」 の限界を超えているためさまざまな環境問題が勃発しています。

 人間の経済活動を 「スループット」 として理解を深めるため、図1を使い中国の深刻な大気汚染問題を例に説明します。中国は石炭が豊富に取れ、海外から鉄鉱石や原油を輸入しています。石炭火力発電所で発電し、製鉄所及び自動車会社に電気を送り自動車を世界一生産しています。その過程で、環境中に石炭火力発電所からの廃ガス及び製造した自動車からの廃ガス等が放出され、拡散が追いつかず北京一帯に充満したままゆえに深刻な大気汚染が発生しています。せめてもと、部屋に空気清浄機を設置しますが、その空気清浄機を動かすための電気を石炭火力発電所が更なる廃ガスを放出しながら発電している深刻な状況です。

 人類は、 「石炭・石油という禁断の実」 を食べたゆえに科学技術の活用で快適な生活を送れているが、 「スループット」 の限界を超えたゆえに、原子力発電所から出る核廃棄物、グローバルな気候変動、環境ホルモン汚染、植動物の種の絶滅等といった人類を脅かす環境問題に苦悩しています。

 

 リーマンショック後の経済成長

 2008年9月のリーマンショックが、欲呆け資本主義に喝を入れたかに思われたがさにあらず、国家間の経済成長競争は続いています。国民総生産1位の米国、国民総生産2位の中国、国民総生産3位の日本のリーマンショック以降の経済成長率を表1で示します。経済成長率と天然資源の使用量には、正の相関関係があります

   

 米国は2008年9月のリーマンショックの震源地であり、金融機関への資本投入、中央銀行による資金供給や資産買い取り、会計基準の緩和等の対策で2010年から再び実質経済成長率2%前後に戻しました。中国は人民銀行がリーマンショック後5回にわたる利下げを断行し、大規模な金融緩和に転じました。また、2008年10月に商業銀行貸し出し総量規制を撤廃し、大胆な景気刺激策をしました。それでも、高度経済成長から中位経済成長に移行しつつあります。日本は、麻生内閣の与謝野馨財務大臣(兼金融担当大臣)がリーマンショックを 「蚊に刺された程度」 と豪語しましたが、その影響が大きくでました。2010年は、その反動か実質経済成長が回復しました。しかし、2011年3月の東日本大震災の影響で実質経済成長は、マイナスになるも翌年からプラスに転じています。

 

 グローバル時代の欲呆け

 資本主義には、バブルがつきものです。名を残す歴史的なバブルは、17世紀前半のオランダのチュー リップ暴落(投機対象がチューリップの球根)、18世紀前半の英国の南海バブル事件(投機対象が株)、1929年の米国のニューヨーク大暴落(投機対象が株)、1990年の日本の東京大暴落(投機対象が株と土地)です。

                                                                           

 これらの大暴落と2008年9月のリーマンショックは、似て非なるものです。リーマンショックの投機対象は金融派生商品であり、個人が熱狂できる投機対象(球根、株、土地)ではありません。金融派生商品は米国の投資会社が生み出し、格付け会社がリスクのない安全な金融商品のお墨付けを与え、国内外の金融機関、ヘッジファンド、機関投資家等に販売しました。

 資本主義はモノを作って、拡大再生産のために原価より多少の利をつけて売るのが大原則です。1990年までのバブルでは、個人が定職につきつつ投機対象に熱狂しました。しかるに、金融派生商品バブルは金融商品を扱うのを定職とする組織が業務として遂行しました。金融派生商品は、拡大再生産のため想定元本に多くの利をつけて売ります。リーマンショック前から、従来の実物経済を中心にした資本主義の上位に金融資本主義が覆いかぶさっているのが読み取れます。

 金融の自由化に伴って到来した金融資本主義(多国籍企業、富裕層)が、グローバルに跳梁跋扈しています。多国籍企業や富裕層は、税率の極端に低い租税回避地(例:アイルランド)に所得を移す 「課税逃れ」 をしています。課税逃れのスターバックス、グーグル、アマゾン、アップルは、低税率国の子会社を使った租税回避を行っています。富裕層に関しては、2013年4月3日に、イギリスのガーディアン紙がウィキリークスによってイギリス領ヴァージン諸島オフショアの顧客名や過去10年以上の取引記録を暴露されたことを報じました。現在、国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists:ICIJ)が、英領バージン諸島やケイマン諸島などの租税回避地におかれた企業やファンド等の10万件以上のデータを検索可能とするデータベース"ICIJ Offshore Leaks Database "を公開しています。一説によると、租税回避のために預けられた金額は3000兆円とも4000兆円とも言われています。 これは日本と米国の国民総生産を合算したものと等しいそうで、その巨額には驚かされます。

 リーマンショックは、米国が長年取り続けてきた新自由主義や市場原理主義の帰結であり、その悪影響が多国籍企業や富裕層に回り、課税逃れや課税回避に見て取れます。新自由主義や市場原理主義を元にするグローバリズムは、お金を地上の神と信望する考えであり経済成長を絶対視します。そのため、図1で示す供給源や吸収源への負担を増大させるため環境問題の解決をいっそう困難にし、現在文明の危機を招来するのです。

 

 

 エコロジカル・フットプリントとは

 経済成長競争にさらされていない国連、国、政治家、官僚等は、持続的経済発展を使う場合があります。持続的経済発展とは、経済成長を含みつつ、人間の福祉を目指すという点で経済成長を質的に超えた考えです。ゆえに、持続的経済発展では、経済成長、貧困の緩和、生態系の保護の3つの条件が不可欠です。まことにりっぱな理念ですが、経済成長と生態系の保護は両立できず、グローバル経済下の事実は格差社会の進展であり、理念の実現が危ぶまれています。しかも、持続的経済発展が実現しているのか寡聞にして知りません。言いっぱなしに終わり、持続的経済発展を判定する指標がないためです。

 逆に、図1で示す地球をシステム的に思考する立場からの 「スループット」 の限界を超えているか否かの指標が重要です。2005年の最新版 『人類の選択』 では、その指標にエコロジカル・フットプリントを挙げていますので引用します。

 

  「エコロジカル・フットプリント」 という用語は、1997年にアース・カウンシルのためにマーティス・ワクナゲルたちの行った研究をきっかけに、広く知られるようになった。ワクナゲルは、 「さまざまな国の国民が消費する自然の資源を提供し、汚染の排出及び吸収するためにどれほどの面積の土地が必要か?」 を計算した。これが、エコロジカル・フットプリントである。その後、世界自然基金(WWF)がエコロジカル・フットプリントを計算し、 「リビング・プラネット・レポート」 として発表している。このデータによると、人間は1980年代後半から、毎年、その年に地球が再生できる以上の資源を使うようになった。つまり、世界のエコロジカル・フットプリントは、地球が提供できる能力を超えてしまっている、ということなのだ。第3章で詳述するが、この結論を実証する情報はたくさんある。

 

  「エコロジカル・フットプリント」 は、わかりにくい概念ですが、たとえば、ひとりの人間が生きて行く上で1) 化石燃料の消費によって排出される二酸化炭素を吸収するために必要な森林面積、2) 道路、建築物等に使われる土地面積、3) 食糧の生産に必要な土地面積、4) 紙、木材等の生産に必要な土地面積を合計した値として計算されます。この場合、米国で人間ひとりが必要とする生産可能な土地面積は5.1ha、カナダでは4.3ha、日本2.3ha、インド0.4ha、世界平均1.8haとなります。この値は西欧風の豊かな生活様式になるほど増大し、人口を掛ければ何ヘクタールの土地が必要か求まります。

 最新の研究から、1970年代に人類のエコロジカル・フットプリント指標は、環境容量を超えました。2008年度には地球約1.5個の土地を必要とし、このままの傾向が継続すれば、今世紀半ば前には地球2個分の土地を必要とします。それだけ、環境容量を超えた資源消費を行い環境に負担を強いているわけで、 「スループット」 の限界を超えた持続可能でない状況が続いています。

 


第2章 エネルギー問題の隘路

 

 資本主義社会のエネルギー

 1756年に英国のワットが、従来に比して熱効率が飛躍的に向上した蒸気機関を発明しました。そして、英国では石炭を使った産業革命が成立し、資本主義が勃興しました。石炭は、石炭の持つエネルギーだけで自らを拡大再生産できました。蒸気機関を使い石炭を掘り、石炭を運び、その蒸気機関を動力源にして自動織機を稼動させました。更に、蒸気機関は船の発達を促進させ、海洋へと進出しました。

 19世紀末から20世紀初頭にかけて、電気・化学・内燃機関を中心とする第二次産業革命が発生しました。第二次産業革命は蒸気機関が発電機や内燃機関に、石炭が電気や石油に支配権を譲ることから成立しました。それも、石油は、石油の持つエネルギーだけで自らを拡大再生産することができたからです。内燃機関は自動車を生み、米国にて大量生産・大量消費の経済モデルが確立しました。勝義において現在文明(機械文明)と称せられるべきものは、第二次産業革命からと言えます。いまでは新興国が大量生産・大量消費の経済モデルに邁進しています。

 現在社会は一次エネルギーを天然資源に頼っており、大部分を石油、石炭、天然ガス、ウラン(原子力)などの枯渇性資源から二次エネルギーを得ています。二次エネルギーとは、電気や水素、都市ガスなど一次エネルギーを変換して得られるエネルギーです。とりわけ石油は誠に使い勝手がよく、利用範囲の広い一次エネルギーであり、火力発電の燃料以外に自動車、飛行機、船舶などの燃料、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム、塗料原料、合成洗剤などに利用され、現在文明を石油文明と形容できるぼど重宝しています。付け加えるならば、現在の兵器は石油がなければ製造もできず、石油がなければ動かすこともできません。一次エネルギーには再生可能な木材、地熱、太陽、水力、風力、波力、潮力などがあり、発電に供していますが、石油を代替えできる一次エネルギーではありません。

 ここで、エネルギーと資源消費の象徴である自動車について考察します。自動車は、鉱物資源に恵まれ豊富に石油が湧いた米国で発達した関係で、エネルギーと資源をふんだんに使います。2009年の中国の自動車販売台数は、米国を抜き1364万台に達しました。中国市場がどの程度のスピードで成長して行くかは、環境や資源・エネルギー制約などとの問題と関係あり予測は難しいです。2008年末の中国の自動車台数は、約5000万台で人口100人当たりの普及台数は4台ですが、日本並みの人口100人当たりの普及台数が60台になると仮定すれば、比例関係で計算すると2065年に7億5000万台になります。従って、世界の名だたる自動車会社は中国に工場を建設したのです。中国以外にインド・東南アジアが経済成長を続けており、自動車が普及すると思われます。

 このように、現在社会は石油に支えられています。しかし、このままでは石油エネルギーと資源の多消費を招き、グローバルな気候変動他の人類を脅かす環境問題がより深刻になると思われます。もちろん、ハイブリット車、電気自動車などの普及はありますが、化石燃料に依存する経済成長が続く限り大勢に変化ありません。更に、爆発する人口増加が環境問題を一層複雑にします。ちなみに、2011年に世界人口が70億人を突破しました。

 

 エネルギー収支比とは

 資本主義社会の成立・発展は、化石燃料のもつ大量のエネルギー消費にあります。その化石燃料はいずれ枯渇するだろうし、枯渇以前にそもそも現在社会が大量のエネルギーを消費するため人類を脅かす環境危機が迫っています。エネルギー問題を検討するにあたり、1章で述べたエコロジカル・フットプリントのような適切なエネルギー評価指標がないかインターネットで捜しました。その中で、産総研太陽光発電工学研究センターのエネルギー収支比が適切と判断しましたので引用します。

 エネルギー収支比(Energy Payback Ratio:EPR)は、発電所建設及び取り付け装置製造等から発電中の燃料はもとより発電所廃止までに投入されるエネルギーに対する、発電によって節約できるエネルギーの倍率を表します。簡単に言えば、得られるエネルギーを投入するエネルギーで除した倍率です。これが大きいほど優秀です。

 次に、産総研太陽光発電工学研究センターが計算した各種エネルギー源のエネルギー収支比を示します。

 

 

  エネルギー収支比から言えるとは、再生可能エネルギーはコストこそまだ高めなものが多いものの、多くはすでにエネルギー源として実用的な性能を持っています。逆に、枯渇性エネルギーの方が、エネルギー収支比が1未満であり問題が隠れていそうです。図2の下に原子力(運転用燃料除く)と化石燃料火力(運転用燃料除く)とあります。エネルギー収支比の定義から、運転用燃料を計算から除いてはいけません。産総研太陽光発電工学研究センター作成の簡明な図3を引用します。違いを理解してください。

  エネルギー収支比計算に、運転用燃料を除外する考えは、原子力発電を推進したい電力中央研究所が推しています。筆者は、エネルギー収支比計算に運転用燃料を含めるべきと考えます。

 そこで、発電までの道のりを考えます。火力発電は、火力発電所設備を石油を含むエネルギーを使い建設し、石油を使い石油を採掘し、石油を使い火力発電所まで輸送し、石油を燃やすことで発電ができます。太陽光発電は電力を使い発電素子を製造し、石油を使い太陽光発電装置を住宅に輸送し屋根に取り付けます。太陽光発電は、燃料がそもそも不要で太陽光を浴びれば発電をします。各々の発電の特性比較をしたいのに、発電の素になる燃料を抜きに考えるのは、誤りです。運転用燃料を含めたエネルギー収支比は、発電原理の違いが数値に現れています。エネルギー収支比が1を超えるのは、再生可能エネルギーを使った場合の発電であり、エネルギー収支比が1未満になるのは、枯渇性エネルギーを使って発電する場合です。

 

 化石燃料の隘路

 2013年7月は梅雨が例年より2週間ほど早く明け、日本各地は連日猛暑に見舞われました。東京も7月7日以降連日猛暑日が続き、7月10日も猛暑日となり連続4日は連続タイ記録です。これは、1876年に統計を開始して以来です。今年の夏も猛暑日が続きました。気象統計情報から、東京の1950年代の7月、8月、9月の最高気温を調べました。結果は、一夏に35度以上があるかないかです。都市化によるヒートアイランド現象と言えます。都市化とは化石燃料活用の極致とでも形容でき、化石燃料がなければ成り立たず申し訳程度に緑を残しています。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球が二酸化炭素で温暖化していると報告していますが、これだと二酸化炭素を減らせば地球温暖化がなくなると誤解をします。そこで、槌田敦氏の地球は大きな開放系熱機関と見做すエントロピー論から地球の熱の出入りを考えます。地球は太古から太陽光による動植物活動において日々エントローピーは増大していますが、物質循環(大気の循環)のお蔭で余分なエントロピーを廃熱として宇宙空間に捨て、エントロピーの増大を防いでいました。簡単に言えば、地球が太陽から受け取るエネルギーと人間が使う僅かなエネルギーの合計は、大気循環による宇宙空間への廃熱能力以内でした。しかし、第二次産業革命以降人類が使うエネルギーはうなぎのぼりであり、地球が有する大気循環による宇宙空間への廃熱能力を上回るようになりました。逆に、廃熱能力を下げているのが、森林の減少であり、二酸化炭素を始めとする温暖化ガスの増加と考えればどうでしょうか。つまり、地球の温暖化の主たる要因は自然現象に加えて資本主義社会が消費する巨大なエネルギーであり、森林の減少、温暖化ガスが地球温暖化に拍車をかけています。

 地球全体で考えれば、世界中の森林面積は2000年から2005年の間に、年間およそ730万ヘクタールの速さで減少したと推定されています。これは、北海道よりやや狭いくらいの面積に相当します。森林が農地に変わることがあり、このような場合は単純にCO2吸収量が減るとは言えません。それよりも、地下資源獲得のため森林を伐採し、土むき出しの道路になったり、コンクリート道路になったり、工場に置き換わる場合はCO2吸収量が確実に減ります。たとえば、住宅木材、紙をつくるため森林を切り倒します。この場合、土むき出しの道路を使い樹木を伐採し、搬出、運送しますが、チェンーソーや森林機械、トラックに化石燃料を使います。パルプの原料となりうる元の森には、植林から20年かかるとされています。と言うことで、人類は経済成長に化石燃料を使い二酸化炭素の吸収源の森林を減少させ、現在社会を維持するため化石燃料を消費し二酸化炭素を排出するという両方の行為を続けており、地球規模の環境問題を深刻化させています。

 資本主義社会の中核をなす企業は、科学技術の知見を頼りに生産性の向上と新商品の創出をします。生産性が向上すると従来の商品を安く提供でき、従来の価格でより高性能の商品が提供できます。また、新製品の創出はいわずとしれた商品発明であり、新たなビジネスモデルの構築でもあります。その行為は活発な企業活動と豊かな生活を求める人間にあり、この結果は経済成長率に結びつき、実現のために世界中が資源とエネルギーを大量に使い機械化及びIT化します。本来なら社会の発展、経済の拡大は非常に明るい希望に満ちた将来を想像します。しかし、枯渇資源からエネルギーを得て経済成長を指向すれば、グローバルな気候変動他の環境問題を深刻化させてしまい、巨大なエネルギーを使う資本主義社会が二律背反に苦悩しています。

 

 


第3章 再生可能エネルギーの実力

 化石燃料獲得競争

 各国は米国のグローバル資本主義思想に染まり、枯渇性エネルギー資源(石炭、石油、ウラン)の減り具合と価格を気にしながら経済成長に邁進しています。日本は、世界で消費されるエネルギーの約5%を消費する消費大国でありながら、エネルギー資源の80%以上を海外からの輸入に頼っている資源小国です。そのような中で、日本の電力は水力、火力、原子力を中心に発電していました。内、原子力発電は、総発電量の約3割を占めていましたが、2011年3月の福島第一原子力発電所の致命的事故により火力発電が代役しています。発電のため、石油、天然ガスの輸入が急増しています。電力会社は原子力発電を前提としていたため、尻に火がついたように火力発電用燃料確保に東奔西走しています。

 一方、福島第一原子力発電所の致命的事故から各国は原子力発電の致命的欠陥を認識し、脱原発に舵を切り替えようとしています。その影響もあり、化石燃料の獲得は激化しています。このような状況下にあり、このところ 「シェール革命」 という言葉が景気よく喧伝されています。

 伝統的な“在来型"のガス田や油田だけでなく、頁岩(shale)層に“非在来型"のガスやオイルがあることは、昔から知られており、“採りにくい"から採られてこなかったのです。しかしながら、採掘の技術革新により、伝統的な“在来型"のガス田や油田ほどではないが、商売できる程度の価格で掘り出せるようになりました。今、アメリカの景気はシェール革命に湧いています。中東以外に米国からシェールガスを液化して輸入できれば幸いです。枯渇性エネルギー資源の終焉を先送りできたわけで、その間に再生可能エネルギーの実用化研究を進めることができます。

 

  発電方式別発電量比較

 再生可能エネルギーは発電に供されており、2012年度の年間総発電電力量(約8,230億kwh)に対する再生可能エネルギーの割合を表2で示します。原子力発電量は、関西電力の大飯原発3号機と4号機が2012年7月から順次再稼働した実績値です。表2から言えることは、火力発電所が大活躍して年間発電量の約9割を占めています。再生可能エネルギーの主力は、古くから実用化されている水力発電であり、地熱発電とバイオマスが続いています。太陽光発電と風力発電に至っては、微小です。ただし、表2の数値には、家庭での太陽光発電、温泉地の旅館の発電などは含んでおりません。

 その大飯原発3号機と4号機は、2013年9月に定期点検により順次運転を停止しました。日本は、再び原発を稼働せずに火力発電所を中心に電気を賄います。大飯原発は、夏場の電力不足を乗り切る理由から再稼働しました。しかし、2013年度の夏は西日本を中心に記録的な猛暑が続きました。原発依存度の高い関西電力と九州電力は、電気使用率が90%以上95%未満の日が四日あった程度で、日本全体で電力需給を見れば、原発は必要ないことがはっきりしました。

 また、近年の火力発電所は技術革新により熱効率が60%の複合サイクル方式を採用しています。ちなみに、原発の熱効率は約30%ですから、近年の火力発電所の熱効率は驚異的です。燃費の良い火力発電所により、原油の高騰を緩和できます。翻って、福島第一原発の致命的事故の後始末は無間地獄の様相を呈し、際限なき税金投入をしなければならなくなりました。

 

 

 再生可能エネルギーへの期待と現実

 21世紀にはいり、グローバル経済が人類を脅かす環境問題(原子力発電所から出る核廃棄物、グローバルな気候変動、環境ホルモン汚染、植動物の種の絶滅等)を全世界にたなびかせています。その原因は経済成長信仰であり、加速するエネルギー消費にあり、地球温暖化にストップをかけられなくなりました。この状況を俯瞰すれば、世界中に広まった資本主義社会が、時間と共に光明面を後退させ暗黒面が前面に出ようとしています。

 資本主義社会の見直しは多くの人に理解してもらえていますが、その資本主義社会のなかにいる人間が、自分を包んでいる世界を見直すことほど困難なものはありません。たとえば、地球温暖化の対応が実行できないのがその証拠です。便利な生活を手放さなければならないのなら、地球温暖化は先の話だと考えてしまえば危機は自分の頭からなくなります。それでも、子孫に環境問題を先送りするのを潔しとしない多くの人々が、日夜、それぞれの立場から努力をされています。

 現在社会を英国の産業革命時期から振り返ると、石炭、石油という一次エネルギーの出現が、生活様式を根底から変えてしまっていることに改めて気づかされます。一次エネルギーを石炭、石油などの化石燃料から再生可能な一次エネルギーに代替えできれば、人類を脅かす環境問題を解決できるのではと考えるのはもっともです。再生可能な一次エネルギーは、人類が持続的に使えるエネルギーを生み出す現在の唯一の手段ゆえに期待するわけです。

 政府の再生可能な一次エネルギーへの取り組みは、2010年6月に閣議決定した現行エネルギー基本計画から読み取れます。その基本計画の冒頭に、 「地球温暖化問題への関心の高まりを踏まえて、原子力の更なる新増設(2020年+9基、2030年+14基以上)を含む政策総動員により、2030年までにエネルギー自給率の大幅な向上(約18%→約4割)とエネルギー起源CO2の30%削減を目出す」 と書かれています。要は、原発を新増設しますと宣言しているのと同じで、再生可能な一次エネルギーの向上はわずかです。ところが、2011年3月に福島第一原子力発電所が致命的事故を引き起こしました。慌てたのが資源エネルギー庁であり、原発の新増設を実行できなくなり、火力発電と再生可能な一次エネルギーに頼らざるをえなくなりました。

 平成24年4月付、資源エネルギー庁が作成した 『エネルギーミックスにおける再生可能エネルギー及び火力発電所に係る課題』 から、政府が考えている再生可能な一次エネルギーの導入目標計画を引用します。表3の数値には、家庭での太陽光発電、温泉地の旅館の発電などを含みます。2010年度の年間総発電電力量は約1.1兆kwhであり、家庭での太陽光発電、温泉地の旅館の発電などの再生可能エネルギーの年間発電量は、年間総発電電力量の11%であり、まだまだ再生可能エネルギーの占める割合が低いです。

 

 

  一言でいって、市井の人と資源エネルギー庁官僚の再生可能な一次エネルギーに対する思いの乖離が甚だしいです。市井の人は、七夕の短冊に脱原発の願いを書いているのに、資源エネルギー庁官僚は七夕の短冊に何と書いているのやら気にはなります。さておき、2010年6月に閣議決定した資源エネルギー庁のエネルギー基本計画では、2030年時点にて再生可能エネルギーの発電電力量の占める割合を20%目標にしています。つまり、現状の再生可能エネルギーは発電の一部を占めるにすぎず、内半分は水力発電です。とても、太陽光発電や風力発電等が、枯渇性エネルギーに取って代わるほどではありません。



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