ぬい
君とは毎日旅をした。かき氷みたいな氷山、オーロラは隣のお姉さんのスカートみたい。毛布にくるまりいつでも二人、けれど君専用のツアコンはもうおしま い。僕の場所だと思っていた君の隣にはピカピカのランドセルが。新人その子を頼んだよ。オモチャ箱の闇の中、僕は夢すらみず眠る。#twnovel
羽切除術後
201号室の患者様は高所より転落。一命を取りとめたものの、今までどおりの軽やかさでは動けません。お辛い気持ちを受け止めようと扉を開けると、「足って本当に素晴らしいのね」と天使の笑顔。羽の速さで生きてきた。歩く速度でゆうるり流れる世界を、時間を、慈しまれる患者様。#twnovel
ゴミ処理
神様は世界のため、様々なものを作り出すが時に間違える。今日もまたまた大失敗。これらは環境に配慮しきちんと処理する必要がある。春は眠気、夏はトキメ キ、秋はセンチメンタル、冬は風邪。作り過ぎがちなそれらを手慣れた様子で人の檻へと閉じ込める。熱に浮かされ処理する人々。#twnovel
骨の海岸
海岸に打ち上げられた骨を拾う。この海の向こうには人の世界があるのだとか。柔らかな肉や表情、温かな皮膚や心を持つという人類を僕らはまだ見たことがな い。硬く冷たいネジやプレートしか持たない僕ら、この島で人の世界へと渡る船を造る。僕らを捨てたのが誰とも知らず、焦がれる。#twnovel
人魚
世にも奇妙な人魚の姫だ。人魚のふりをして働いている。どんどん派手になる尾びれ。まあいっか。本物なんて誰も知らない。ひれスーツを干して家路を急ぐ。ただいま。扉の向こう、お帰りなさいと王子様。彼に恋して足をもらった。本物の尾びれを知るただ一人の男と六畳の海をたゆたう。#twnovel