鬼バーボン
鬼は外。はいはい出てってやるよ。豆なんざ怖いはずもないが、この日くらいはアイツに安らぎをくれてやる。拾った豆をつまみに馴染みの店でバーボンを煽っ ていると、あちらのお客様からですっておいおい。力ではダメだ。君と話し合いたい。今夜はアイツと二人、長い夜になりそうだ。#twnovel
肉じゃが
三日ぶりの帰宅。お腹が空いて冷蔵庫を開ける。
豚肉に白滝、人参。冷蔵庫の外には玉葱、馬鈴薯。
ああこれは肉じゃがだ。
それに気づくと私は。
パタン。冷蔵庫を閉めたのは父だった。
開けっ放しにするなと諭し、泣いてる私を座らせる。
あの肉じゃがはもう二度と食べることはできない。
にこにこみ
恵方巻きのお陰でずいぶんと楽ができた。献立を考えることほど面倒な家事はない。毎日毎晩、感謝もされないその作業に責任をもってくれる人などいないと 思っていた矢先、この日はおでん、この日はグラタン。国民の声に対応すべく365日分制定される何かの日。2月5日は煮込みの日。#twnovel
墓
村外れの洞窟は墓と呼ばれている。死期を悟ると村人は墓へ向かい誰も戻らない。孤独に苛まれ絶望し終わりを求め洞窟に向かうと、奥には大きな化け物が。僕 は墓。死人を喰らう。君がおいしい死人になるまで仲良くしよう。味が落ちると自殺も咎められ、思いも寄らぬ二人暮らしが始まる。#twnovel
ぬい
君とは毎日旅をした。かき氷みたいな氷山、オーロラは隣のお姉さんのスカートみたい。毛布にくるまりいつでも二人、けれど君専用のツアコンはもうおしま い。僕の場所だと思っていた君の隣にはピカピカのランドセルが。新人その子を頼んだよ。オモチャ箱の闇の中、僕は夢すらみず眠る。#twnovel