大きくなるぞ
大きくなりすぎるからダメよ。押し入れでコッソリ育てていたら見つかって仕方なく空へ放した。けれど僕らもう友達だ。毎日遊んでおやつを分ける。君はすく すく大きくなって今では一緒に遊ぶのは難しい。時々手を振ると目を細めてくれる。みんなが月だと思っているあの輝きこそ彼の瞳。#twnovel
29時
無駄な抵抗と知りながら珈琲をいれる。夜更かしして今日を引き留めたところで未来を削るだけなのだが、自分を騙すことくらいはできる。これは夢だ。本当 じゃない。目覚めてしまえば思い知らされてしまうから、徒に今日を延長する。間もなく29時。君だけがいないこの部屋に朝がくる。#twnovel
自由度
彼らは自由を教えてくれた。おかげで僕ら、笑うことを、歌うことを知る。それぞれ違う言葉や考え方を持ってもいいのだと。やがて彼らの言う自由が当たり前 になった頃、僕は気づく。彼らの背中に「自由度」と書かれたメモリがあること。スイッチは「弱」。自由を操作しているのは誰だ。#twnovel
羽模様
ようやく作り上げた羽を見せると君は祝福してくれた。折角だから絵を描かせて。特別な絵の具で描く美しい模様。羽を動かす。いつもと違う感覚。特別重い絵の具で描かれたことは落ちてから知った。毎日僕を見舞う君。愛と嫉妬。描かれた模様をどちらの名前で呼ぶべきか決めかねている。#twnovel
朝
暗闇を一人歩くのが私の勤め。心穏やかな日も悲しみに震える日も、同じ速度でたゆみなく歩く。たまに後ろを振り返れば温かで明るい世界。孤独な気分に苛ま れても立ち止まるわけにはいかない。顔を上げて前を向いて。昨日に導かれ今日を作る。私は朝。引いたドレスの裾からほら、未来。#twnovel