発芽する本
長いこと読まれずにいた本からは時々女の子が発芽する。綺麗に咲いた女の子は楽しそうに古ぼけたその本を繰り返し読む。そんな女の子に恋した男の子も女の 子を真似てその本を読む。そんな男の子に恋した別の女の子も男の子を真似て。読まれなければ死んでしまう。これは必要な進化。#twnovel
花束を君に
世界の平和とひきかえに寿命を半分いただこう。その言葉に頷き数十年。まだ生きてる。あとどれほどの命だ。大体四百年くらいかな。驚く私に、ごめんね ショックだよね。たったの四百年ぽっちだけれどその間は全力で守るから。そう言うと寿命千年の魔王は照れ臭そうに花束を差しだす。#twnovel
カレー使い魔
使い魔は自分の魔法で作るもんさ。ボケたとばかり思っていた婆ちゃんが突然そう言って大きな鍋をだしてきた。まずは好物を捧げる。適切な温度管理。時々 構ってゆっくり寝かせる。繰り返すこと数日。最後に魔法の粉をふって、ククッ完成じゃ! できあがったカレーは大層おいしかった。#twnovel
よーそろー
鯨に飲まれた話は面白かった。人魚の話はちょっとえっちで、オススメは海賊との友情の話。船長の話はどこかで読んだような、だけどちょっとちがくて面白 い。なのに出港するとか言うから今夜は嵐だと引き止めた。行かせちゃいけない気がしたんだ。明日の約束をして僕は病室を後にする。#twnovel
綿飴屋台
折角の祭りだというのに雨続きで客足もまばら。ぼんやりしてると、ください。男の子だ。綿飴を巻く様を真剣に見つめるからいつもより多く巻いてやる。そっ かそうするのか。男の子はそう言うと綿飴片手に勢いよく空へと駆け上った。やがて雨上がり青空に雲。それはまるで綿飴のような。#twnovel