何番目かの羊
ご主人にあえなくて寂しい。眠るの下手だなと嘲ったりしていたから嫌われたのかと思っていたら、2番目の羊も呼ばれないって。眠る暇もないのかとこっそり のぞきに行くと隣に羊が。あのもふもふは1番目?違う。人間の女の子だ。ご主人にあえなくて嬉しい。幸せならばそれで。それで。#twnovel
メイドワゴン
長い廊下をメイドはワゴンを押してゆく。温かなお茶を甘い菓子を。あらゆる部屋の扉を開けてお好みの物を準備する。こちらは5代前の、こちらは32代前 の。あらゆる時代のご主人様の御霊を屋敷に繋ぎ止めたい。代々悪人のお家柄。けれど愛しいご主人様が地獄へ落ちてしまわぬように。#twnovel
本の化石
絶滅した本の骨を発掘し当時の姿を復元する。血肉を皮膚を、骨格から推察し必要な言葉を必要なだけ纏わせるがうまくいかない。息抜きに研究室を出ると子供 らが本棚から化石をとりだしかつての姿を思うまま描いていた。骨格無視の無駄だらけ。けれどその面白さに学者は本の囀りを聞く。#twnovel
花火
朝顔を揺らし庭先に降りてきた彼らは花火の音に心底驚いたようでした。ひゅるるるどーん。咲くたびに鳴く花とは珍しいと驚かれますので花火ですわとお伝え すると是非とも欲しいと。こんなにも美しい蝶をこれほどまでに集める花など他にない。大きな目で眺める先には浴衣姿の少女たち。#twnovel
梅雨
泣き出しそうな君の隣、雨の音を聞いていた。このままじゃいけない。僕は先送りにしていた言葉を告げる。さよならきっとまた来年。手を振ると君は、梅雨は 静かに消えた。一緒にいたくて長いこと引き止めてごめん。ついてく覚悟を決めるから、意気地なしの僕をあともう少しだけ許して。#twnovel