躓いた夜
躓いたのは夜だった。空が千切れたのだろう。闇の欠片をポケットに入れる。キュウンと泣くからお腹でも空いたかとミルクをあげるときらめく天の河。僕と君 とはお似合いだ。久しぶりにぐっすり眠って目覚めれば夜明け。僕を置き去りに明けてゆく君が羨ましくて、疎ましくて、空へ返す。#twnovel
夢の中で
夢の中で羊と旅をしている。揺られていると眠くなり私は夢に落ちる。夢の中で私は涼しい木陰にいる。そよ風の心地よさに眠くなり私は夢に落ちる。夢の中で 目をさます。つまらない現実に眠くなり私は夢に落ちる。夢の中でさらに夢見て私は深みに落ちていく。ただひたすらに目を閉じて。#twnovel
魔女と蝶と
終末の準備をしましょう。魔女の指先、飛び立つ蝶は目当ての花を探し出す。流星だけを糧とし育つその花を見つけ出したなら蜜を吸い、魔女の瓶へと吐き出す のだ。蜜には幾ばくかの宇宙が含まれている。瓶の中、育まれる次なる宇宙。創世の準備をしましょう。蝶の鱗粉きらきら光る。#twnovel
広告
広告はみるものに合わせ提供される。彼が紹介されたのはサプリメント。「鬱になる前に」という煽り文句に疲れを見破られたかと苦笑する。一方、彼女は目を 丸くしていた。「君と世界征服」という映画の紹介。ドキドキしながら世界征服に思いを馳せる彼女に、「君と」の部分は見えない。#twnovel
花束を君に
あの子と出会ったのは幼い頃。父は言った。世の中には秘密が沢山あるのだと。屋根裏部屋。父の言葉に笑うあの子の瞳からキラリ、次々と星が生まれやがて満 天の星空を作る。そういうことだと優しくあの子を撫でる父は数年後に死んだ。暗い空のした、父の死を悼むあの子に美しい花束を。#twnovel