言葉の雨
このところずっと言葉が降っていて、天気予報じゃそんなことないのにやっぱり今日も降っている。ざくざく刺さる痛みに顔をしかめる僕にどうしたのって。首 を傾げる君にとっては空気みたいな存在みたい。君を羨ましいと思いながら、時々じわりと染みてくるから傘はさせないままでいる。#twnovel
ノート
彼は恥じていた。仲間の本はみなその身に何ごとかを秘めているのに自分ときたら。隠れるように暮らしていたある日ヤツがきた。最大の敵、そう猫だ。猫は最 も軽く扱いやすい彼に手を伸ばすと乱暴に押さえつけた。無数の足跡。汚された白い本、ノートの彼は少々誇らしげに足跡を愛でる。#twnovel
タイムマシン
タイムマシンから転がり落ちた僕に彼らはとても親切で、ここで待てばいいさと笑う。今はいつか未来になるって何言ってんだよバカ。バカバカ。本当はもっと過去へと逃げるはずだった。壊れたのはマシンじゃなくて未来だと言いたいのに言いだせず、なあに?と問われまたおかわりをする。#twnovel
お天気ドレス
毎日何度もお着替えばかり。疲れたのじゃ。ぽろりぽろりと泣きながら姫君は灰色毛布にくるまる。見かねた蝸牛はこの季節ならばと赤や青、姫君のドレスを奪 い住処の紫陽花に隠した。この日からずっと空は灰色。蝸牛は願う。着替えをなくした空色ドレスの姫君がゆるり安らげますように。#twnovel
#twnvday 『傘』
研究者たちは悩んでいた。忘れてきちゃったということは家ではない。届けてあげようということは車でもない。雨の日にさす。雨とは何だ。残された資料から読み解く古の物語。漢字には成り立ちがあるというから4人入れるものを探す。空を失くしたとある未来の物語。#twnvday #twnovel
傘ってのは雨を防ぐもんだが雨の字の中身。点々増やして表すもんがあってそれを防ぐもんもある。傘の中身の人を増やして表すやつだ。俺には発音できねえが雨のアレのほうはただ強い雨のことじゃねえ。つまりその今 #twnvday 人を増やした傘ってのはそれなんだろう。察したところで僕の意識は
傘作りの最終工程、防御部で働いている。ここでは傘に実践的な防御方法を教えると共に落ちこぼれを弾き出す。この落ちこぼれこそ通常皆さんに傘と呼ばれて いるという事実はあまり知られていない。本来の防御対象は企業秘密だが、濡れるだけなら苦でもないと落ちこぼれは後を絶たない。#twnvday
扉に鍵がかけられた。これで明日まで一人きり、この場所で待つこと決定。僕は思い出す。傘を広げて帰ろうとする彼に君は声をかけた。よかったらいれてくれ ない? 傘、忘れちゃって。ひとつ傘の下、肩を並べて消えていく二人。なかったことにされた僕は傘立ての中、うん、まあいいさ。#twnovel