嘘つき少年のエイプリルフール
今日だけは嘘を許してやろうと村人達は笑います。そんな彼らを睨みつけると少年はペペッと唾を吐き出しました。エイプリルフール。少年は何よりこの日が大 嫌い。罪のない嘘、なんだそれは。許される嘘、糞食らえ。膝を抱える少年。嘘をついたところで今日は誰も叱ってくれないのです。#twnovel
嘘から出ない
少女の仕事は信じること。世に蔓延る拙い嘘たちを彼女は信じる。信じて驚き、なんだ嘘なのねと安心するまでが仕事だ。誰にも愛されず放置された嘘は時々勘 違いをする。自分はまことじゃないかしらと。嘘からまことが生まれぬように嘘には嘘と名前をつける。そうして還す。またいつか。#twnovel
げっ歯類の使い魔
魔法学校の入学通知が届いたところで姫君には返事のしようもありません。枕元に封書をそっと置く。完璧に丸い胡桃も今年最初に咲いた薔薇も王子様の恋文も 全て全て。やがて百年、目覚めた姫君は枕元に転がる宝物の残骸を、私の骨を歯を優しく撫でる。ありがとう私の可愛い使い魔さん。#twnovel
犬猿の毛糸
元々、一本の毛糸みたいなものなのだと思う。ぐるぐるよじれたそれぞれ違う糸を編み上げ形にする。歪な形綺麗な形。形に見合う命を与え、そうして命を使い 果たしたそのあとでするり。解けた毛糸をまた編み上げる。繰り返す。犬の毛糸だったあなたと猿の毛糸だった私が今世で手を繋ぐ。#twnovel
桜の木下
手伝おうか?千鳥足で桜の森を歩くなどと風流なことをしていたなら少女が首を傾げる。なぜこんな時間にこんな場所にと思うより先に何をと思う。手伝って欲しいことなど何も。#twnovel あの時はなかった。手伝って欲しいことなど何も。埋める必要もなかったし殺す気もなかった。あの時までは。