人魚
泡になると思っていたならそんなことなくて消えたりもしなかった。ヒレなしでは上手に泳げないけれど足は痛みから解放され、どうせ声など届かない水の中で は話せないことはなんの呪いにもならない。私は沈む。水底深く。魔女が笑う。全ては計算通り。お帰りなさい。私の可愛いお姫様。#twnovel
編集さん
僕の心の片隅に編集さんがやってきた。いい切り口を探してくれるがあまりの薄さにどう切っても同じ切り口。いい仕事をさせたくて僕はあつく生きる。これで どうだと差しだしたなら、このままでいけます編集いらずですと。もうとっくに編集は始まっているというのにおかしなことを言う。#twnovel
いろいろ
白と金だと僕が言うと、青と黒だと彼が言う。写真に写る彼女のドレスで盛り上がる僕らに彼女はため息をついた。見る人によって違う色に見えるのだという。 先輩にはどう見えますか? 通りかかった先輩に説明し意見を求めると、どっちも似合うよ可愛いね。翌年、彼女は先輩と結婚する。#twnovel
扉
扉は拒むように閉じていた。向こう側とこちら側を隔てる扉の重さと鍵の複雑さに絶望している僕らをよそに隊長は頬を緩める。扉があるってことはいつか鍵を 解き明かし入ってきてねという意味だろう。だけど隊長がその調子で乙女心の扉に手をかけ何度も壁を作られたことを僕は知ってる。#twnovel
蝶のはね
綺麗な花の蜜をお吸い。そうすりゃあんたは花のように美しくなる。花の美しさを目の当たりにしてしまえば自分の羽など醜いだけだ。魔女の言葉に蝶々は舞 う。黄色から白。白から赤へ。そういや一つ忘れてた。花を変えてはいけないよという魔女の言葉はもはや遅し。黒く染まった蝶の羽。#twnovel