チクタク
お前に足りないものをあげよう。神様は僕の胸にチクタクを埋めた。この音が止まればお前も止まるよ。心かと思えばそれは寿命で僕はプログラムの修正を余儀 なくされる。残り時間ですべきことは。花を植える。鳥を飼う。世界を整える。僕のいないこの世界で神様が少しは笑えますように。#twnovel
青空
少年は言いたいことがあった。クルクル回る自転車のタイヤを軋ませ走る。どこまでいくの? 後ろから聞こえる明るい声に、どこまでもと答える。笑い声そして、君とならいいかな。#twnovel 突然のブレーキ。転倒。笑う二人。言いたい言葉も落っことした。それよりも今は、二人占めの青い空。
#twnvday 『「勝」「負」「球」「杯」』
君に勝る女などいなかった。誰と付き合っても結婚しても。君と比べ勝手に心に傷を負うくらいなら最初からこうすれば良かった。ようこそ月へ。青い地球を眺 めながら僕ら杯をかわす。祖父の祖父のそのまた祖父の代から受け継がれた絵姿そのままの君が瞬く間でしたと笑う。やっと会えた。#twnvday
勝負あった。青空へ吸い込まれる白球にアイツは肩を落とす。私たちはライバル同士。そして今日は特に負けられない試合。賭けをしていた。私が勝ったら一つ だけお願い聞いてよねって。優勝杯を手に走る。立ち止まり隠れる。「次は勝てるわ」アイツを慰める白く綺麗な手をただ見ていた。#twnovel
世界を半分こしましょ。仲良しの印にと杯を勧める魔王は明らかに幼い。これならばこの勝負、ものにするのは容易いかも。いやしかしこのままの年とも限らな い。地球儀を持ち出す魔王。半分こってこんな感じ、えいっ。あら、えいっ。魔王様頑張れと応援される幼女。ものに、できるかも?#twnvday
球体関節人形の君はもう一人の君から魂を借りる。二揃えの勝ち気な瞳。生まれた時からずっと一緒の人形に魂を受け渡すと、もう一人の君は糸が切れたように座り込む。おはよう貴方。カクリ手を延べ笑う君。背負った運命など知らぬ素振りで、短い逢瀬に精一杯の愛を。#twnovel #twnvday
好き嫌い
好き、嫌い。あの子はいつでも花占い。花びらは6枚。占いはいつでも嫌いで終わる。哀れと思い神様は花びらを5枚に変えました。好き、嫌い、好き。泣き出 しそうなあの子。嫌い、好き、嫌い。順序を変えて言い直す。ねえ神様。占いのせいにして諦めたい。そんな乙女心もあるのです。 #twnovel
ナラの箪笥
またあの子だ。毎日のように家具屋へ訪れる幼い少女はいつも同じ箪笥を開ける。立派なナラの洋服箪笥。彼女が帰ったその後で僕も同じように開けてみた。そこにはドングリがいくつか。それからザワリ、風が吹く。#twnovel 昔すみかにしていたナラの木を見つけた。人間は怖い。けれど会いたい。
ナラの箪笥は気づいていた。あの子が昔、自分の洞にいたリスであると。フワフワ尻尾をフワフワ髪に。うまく化けてはいるが大きな門歯は隠せない。思い出し て。リスの囁きにも懐かしいどんぐりにも気づかぬ素振り。はやくお帰り。もうあの頃のようには守れないこと、箪笥は知っていた。#twnovel
ナラの木がいない。リスの姿で気配を辿れば人のすみかへ辿り着く。人の子がいた。自分がドングリを置いたように何かを並べている。花のようだと思った。 赤、白、黄色。美しく飾られたナラの木と人の子の穏やかな時間に背を向け、リスは森へと帰る。どんぐりひとつ、窓辺において。#三連ツイノベf