お通し
お通しに食べ物以外を出す店が増えた。この店は変わっていて小さな妖怪を出してくれる。
「私、今日がはじめてで」
差し出されたのは少女妖怪。僕を笑わせら れず落ち込み料理と交替する彼女。
気になって幾度となく足を運んていたある日、お隣のお通しに彼女が。
「私、今日がはじめてで」
お通しに食べ物以外を出す店が増えた。出されたのは小さな仁王様。
スミマセンそれしかなくてとバイトが頭を下げる。
「謎を解かねばここは通さぬぞ」
仁王様 が差し出す難しすぎる謎に頭を悩ませる俺。
酒は一杯から進まないが、できれば次回も仁王様がいい。
一敗のままなんて悔しすぎる。
私の歌で酔わせてあげる。歌い出した小鳥娘を怒鳴る店主。酔わせるのは酒の仕事だ勘違いすんな。しゅんとする娘をポケットに隠し、僕の窓辺でリサイタル。 喝采の中、娘は消えた。事の次第を店主に詫びると、笑っていたか? と聞かれた。一曲歌えば寿命が尽きる種族なのだという。#twnovel
小さな執事にすすめられるまま魚を所望すれば、奥からとととっと小さなメイドが駆けてくる。「私が釣りました! きゃー」@saiki_verse_s #twremix 魚は跳ねて僕の皿へ。「お客さん、それ買い取ってくださいよ?」高そうなカサゴ。アイコンタクトする店主とメイド。やられた!
お通しの卵を食べようと、お塩ちょうだいと言ったら驚かれた。お客さんゆで卵じゃありませんよ。今流行の食べられないお通しか。言われるままに温めれば中から音がする。もうすぐ生まれますよと店主。ヒビが広がるごとに強まる産声。そして今、感動の。ピヨピヨ。#twnovel じゃ、焼きますね。
差し出されたお通しは空っぽ。さては忙しくて入れ忘れたか。オネーサン中身入れてきて。戻ってきた皿はまた空っぽ。話にならないと別の子に頼んだその皿も 空っぽ。さすがに腹が立ってきた。投げるようにお代を払い、のれんをくぐれば背後から聞こえる通りゃんせ。振り返ると店はない。#twnovel
お通しです。差し出された小鉢にはいつもの酢の物ではなく魔の者、魔王が寛いでいた。世界の半分をお前にやろう、突然の取引。折角なので頷いてみると魔王はニヤリと笑った。#twnovel 半分と言わずみな洗え。魔王の世界は皿の積み上がった居酒屋の小さな流し台。割るなよ、お通しにされるぞ。
お通しに缶詰が出てきた。酷い手抜きとがっかりしながら缶切りでキコキコ開けると中はからっぽ。影も形も香りもない。さすがに悪ふざけが過ぎるよと苦情を 言えば、お客様を大切に思うどなたかの想いが入っているはずなんですがと困惑する女将。隣の客など男泣きだ。今夜は酒がすすむ。#twnovel
周波数
ただいまと同時にTVをつける。ビール片手にサッカー観戦。CMが入るとチャンネルを切り替え天気予報をふうんと眺める。事件だらけのニュースに持論展開 しもう一度サッカーへ。試合終了。負けて落ち込みTVを切ってお風呂へと急ぐ貴方。私という周波数は今日も貴方に受信されない。#twnovel
輸入
輸入肉が増えた。米国、チリ、その後みなれぬ名前が続き、今じゃ値札は外国語で記されている。客層も変わった。治安は落ち誘拐未遂も多い。私は冷蔵庫から 肉であろう青い塊を取り出した。そちら側で冷やされる日もそう遠くないと感じながら、牙を剥くチェッカーからお釣りを受け取る。#twnovel
亀模様からの脱出
巨大な亀の背中には迷宮が残されていた。迷宮に挑みたい。少女が亀の背に乗り込んだのはもう何年も前のこと。のんびりした亀の頭でもそろそろ諦め時ではな いかと思いつき少女に呼びかける。嫌よ絶対に解き明かすわ。迷宮なんて口実ですとは言えぬまま硬い床、亀の背にピタリ寄り添う。#twnovel
ありのままの自分
なすがママだった。
このママじゃいけないと私はたちあがる。
なすがママのこの状況にバイバイ。これからはわがママになる。
わがママになった私の世界は広が り繋がり、いつしか出会った彼と結ばれ、
ありのママの自分になった。
なすがママのあの頃を少しは冷静に思い返せるくらい、幸せ。