ふこうよせ
妻が不幸を呼び寄せる妖怪と知ったのは彼女が死んでからのこと。あれだけの不幸が途切れず押し寄せたのも頷ける。ひとり残された僕の人生。ずいぶん穏やか になったというのにどうしてだろう。どんな不幸も二人で越えたあの日々が懐かしくて、今は一人ささやかな幸せすらも越え難くて。#twnovel
本棚
本を買うたび思い出す。彼女の家に残してきた僕の、ううん僕らの本棚を。本好きの僕ら、次々と本を詰め込んだね。君のセンスをこよなく愛していたというの に、少しずつ違和感。君の趣味がすっかり変わった理由、聞きもしないで別れた。本棚にはいま、どんな本が並んでいるのだろうか。#twnovel
本
物語を書くたびどんどん自分が減っていく。
作品もできてダイエットにもなると喜んでいたなら必要な部分も奪われた。
身を削る、まさにそんな感じで文豪ぽく てカッコイイなんて思っていたのも束の間、
やがて私は一冊の本になる。
私を本にしたならこうなるのか、何々……恥の多い生涯を?
うつわ
貴方らしい器、作ります。うたい文句に惹かれ陶器屋の扉を開けた。
作成のためにと質問を受ける。
私を知るためとはいえ失礼な内容にイライラし始めた頃、三ヶ月後にお届けします。
主人は小さく礼をした。
届いた器はまるで豆粒のよう。お客様にお似合いの小さな器でございます。
ゆる
ゆるキャラの中の人になったその日、外の方の存在を知る。
外の方はゆるキャラの魂。彼の指示通り中の人が動く。
これでうまくやってきたのさと彼。数ヶ月後。もう一人前だなとポツリ呟く。
後は任せた。そうしてそれっきり。
今では任された僕が外の方。新しい中の人を今日、迎える。