沈む街
街は水没した。避難した人々は今日も水がひくのを待っている。そもそも水没の原因はわからない。ここには潤沢に食料も水もあるとはいえ不安な日々。時々、 あちらから船が来る。選ばれた人だけをのせどこかへと消える。みなが羨望の眼差しで見つめるがその船の行方を誰も知らない。#twnovel
約束の選択肢
「ねえあなた明日お花見行かない?」ムリだと断ると妻は、「ねえあなた明日お花見いかない?」繰り返す。再び断ると、「ねえあなた」顔色一つ変えずに何度も。困った僕は家をでた。#twnovel 「仕様です」と店員。「お得な愛妻家用をお買い上げでしたよね。YESにしか反応できない設定です」
空の指輪
空は毎日消費される。お天気屋の女王陛下が「羊を放て」「夕に焼け」。次から次へと違うお空をご用命。我らその度空をはりかえ月の形に空を切る。満月の 日、まあるい空をくすねトンテン指輪の形に加工する。売ってしまえば今宵の酒代。酔えば陛下の我儘さえも少しは愛しく感じられる。#twnovel
手品師
それでは花を咲かせましょう。手品師はパラリと何かをまいた。固唾を呑んで見守る観客。沈黙、それからざわめき。何も起こらない。馬鹿にするなと怒った王様、その場で彼を撃ち殺す。#twnovel それから幾年。焼け野原となった王国に一つだけ花が咲く。彼が死んだこの場所から再び緑が広がる。