トカゲ
追い詰められて尻尾を落とせばどよめきが起こる。思いがけず感じた快楽を忘れられず、トカゲは再生した尻尾を再び人前で切り落とした。モット、モットヨ。 もう再生を待ってなどいられない。トカゲは落とす、足を。トカゲは落とす、眼球を。どよめきが悲鳴に変わっても落とす。モット、#twnovel
あめふり
雨は音もなく降り続く。やわらかな束縛。この牢獄にずっと繋がれていたいけれど、買い物に行かなければ。現実に急かされ扉を開ける。キラキラ美しい絹糸の 雨に視線を奪われ空を仰げばそこには無数のくもが。息を潜めてこちらを睨む。震える。けれど触れたい。美しさに抗えず、一歩。#twnovel
ビター
彼女がチョコを渡す現場に出くわす。どうやら断られたようだ。駆け出す彼女を追いかけて、泣いてる背中を捕まえる。私も同じだから。そう言って鞄から渡せ なかったチョコを取り出し取り替えっこして二人でを食べた。こんな形とはいえ贈るべき相手に食べて貰えたのに何故だろう、苦い。#twnovel
春が参ります
春が参ります。春が参ります。その子供は嬉しそうに春の便りを見つけ出す。梅に筍、ふきのとう。裸足で駆ける土まだ固く、赤い指先、けれど歩みを止めはし ない。春が参ります。春が参ります。駆けるその子の足跡によく見れば小さな芽。どちらがどちらを連れてきたのか、春が参ります。#twnovel