性
文字書きの悲しい性よ。君に気持ちを伝えたいのにラブレターの文面に満足できない。こんなんじゃダメだ。何回だって書き直す。今日は君の誕生日だけど締め 切りよりもクオリティー。告白するのが怖いとかフラれるのが怖いとかそんなんじゃない。そんなんじゃないぞ。君が好、ダメだ書き直し。#書き出し
日常幻想
日常こそが幻想なのです。だからさあさ手の鳴る方へ。パレードは続く。やっぱりここは現実じゃなかった。さあさ帰ろう素敵な世界へ。手を叩いて踊って本当の世界へ扉の中へ。#書き出し そんな馬鹿げた話などない。手の鳴る方は鬼の方。けれど今日も扉の向こう、地獄の底から人々の笑い声が聞こえる。
すえない空気
呼吸をしても、肺に空気は入ってこないから思い知る。人魚になれたのだ。魔女に願い足を捧げ手に入れたこの美しい歌声で、夜な夜な私は恋を歌う。気持ちを知りながらいつだって海に逃げた船乗りの貴方。拐かすには人魚くらいが調度いい。ねえ、溺れさせてあげる。#書き出し@rine_ushioda
140字
あの人から送られた140字のために、ため息の映らない電脳空間に沈み込んだ。かれこれもう三ヶ月。あの人とのリレー小説は続いている。最初はただのお遊 びだった。なのに気づけば本気になって今ではヒロインの言葉は私の言葉。だからどうかハッピーエンドを……ってやだ小説のお話ですよ?#書き出し
パキパキの
パキパキ割れた、恋心を君は一生懸命かき集めた。割れて尖った心の欠片で怪我をしたって気にもせず、大切でしょうとパズルのように組み立てると足りない部 分に硝子を、痛々しい繋ぎ目にリボンをかけてくれた。前よりずっと綺麗になってキラキラ光る恋心。私はそれを真っ直ぐ君へとさしだす。#書き出し