偽物
偽物で居るべきだったのだ、私は。夢などみるべきではなかった、絶対に。貴方の後ろめたさ、感じながらも魅力的な誘惑にのまれた。その指の動きを止めたくない、願ったのは私。#書き出し 彼は罪に問われている。あの日誘惑に負け、芝エビと偽装する彼を止められなかったこと、バナメイエビは悔やむ。
涙の海
涙の海の深さを比べよう。ままごとみたいな恋が破れて落ち込む君が鬱陶しかった。さあ見せてよ。無理矢理こじ開け覗き込んだ君の悲しみは思いがけず深く、その深淵には人魚が潜む。赤い瞳。魅入られた。#書き出し それ以来人魚に会えない。笑って。涙が干からびれば見つかると信じ僕は君の側にいる。
ふるふる
私は、この雨に触れることはできない。機械の体にそれは許されていない。けれど貴方は命じる。さあここへ。勿論知っていてそう言うのだ。博士、貴方は実験という形でしか私を愛せない。#書き出し 雨に飛び出した私はもう一歩のところで貴方に届かない。錆付いたのは私の体かそれとも貴方の心の方か。
破る
約束は破るためにあると、君はいう。ならばと僕は君に小指を差しだした。指切りしよう。破るわよ。約束を破ると約束をしてよ。#書き出し バカねそんなのしないわよ。知ってるだって君はいつでも破りたい約束しかしないよね。驚いた君の顔。さてあと何度揺さぶれば生意気な君は僕の物になってくれる?
言の葉
言の葉の草原を言の葉の少女がかけていく。囁くように歌うように。やがて少女の胸の奥からコトリと恋が落っこちた。落ちたんじゃない捨てたのよ。コロコロ 転がる恋はいつしか言の葉の草原にソウゲンにとけた。いつし恋は花咲くだろう。残されたコトリは小鳥はスッと言の葉の空へ飛んでいく。#書き出し