遺言
出会った頃、彼女の余命は三ヶ月を切っていた。図書館で同じ本を選ぼうとして手が触れて、それがきっかけ。「生まれ変わったら貴方の本棚の本になりたい」 遺言を少しだけ叶えてあげる。君の本を僕の本棚にそっと入れた。死者の人生は本となる。神に届けるまでの四十九日はここにいて。#twnovel
偽装
「こいつラブレター持ってる!」「返せって」「差出人は…」みんなニヤニヤ私を見る。なんでとられんのよ。「こんなんアレだ。流行りの偽装だよ。な?」す がるような目。「違うわ」そう違うの。「誤表示です」おどけるとアイツはホッとした顔。そうよ、知識不足による誤表示。そうよ。#twnovel
蜘蛛
蜘蛛がいるのです。軒先に蜘蛛が。
大きな蜘蛛で退治したいのはやまやまですが怖いのです。
蜘蛛自体も怖いのですが、巣を壊したところでいなくなるとも限らないわけで、
見えない所に潜む蜘蛛など私にはとても。
その巣は家であり同時に牢獄なのです。蜘蛛がいるのです。見えませんか?#twnovel
芝海老
芝海老のチリソースを頼むお客さんから、「これバナメイエビじゃないの?」って。何度も尋問されるように聞かれて耐えられなくなったんです。「だけど本物 使ってるなら問題なかったでしょ。バナメイエビのチリソースに書きかえるなんて」怖かったんです。「じゃあ偽装決定で」ああっ。#twnovel
近所の中華料理屋の看板娘目当てに毎日のように通ってる。「お客さん中華好きなんですね」ニッコリ。違うよ好きなのは君なんだ。言いかけたその時、「実は私、夜は違うお店で働いてるの。あの、よかったら。」貰った名刺には、男の娘カフェ。男の娘?@nemu_tatibana #twremix
おつきのメイド
家具付きの部屋を借りたらメイドがついてきた。私のことは家具とお思いになってくださいとお辞儀する。家事は全てお任せくださいと言うけれど。#twnovel 朝起きて掃除と洗濯を静かに済ます。ご飯を作って君を起こせば、寝ぼけながらもぐもぐパンを齧る姿が可愛くて、僕の部屋は今日も綺麗。