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聖元のピオン・エピソード1静寂の塔~魔力の崩壊~

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聖元のピオン・エピソード1静寂の塔~魔力の崩壊~

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聖元のピオン・エピソード1静寂の塔~魔力の崩壊~

 零.

 

 魔法うずまく世。

戦いに明け暮れる国々がある中で、唯一、大国にあって平和な発展を続ける国、DOの国。

 

 それはラプルスⅢ世、現国王の力に他ならない。

 

 この物語は、この世からすべての魔力を消し去るべく、邪悪点へと旅立った若き青年、アール・バンを主人公にした書である、「静寂の塔」を再現した物語である。

 

『 聖元のピオン・エピソード1

     静寂の塔 ~魔力の崩壊~ 』

 

作.東雲ひむ


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聖元のピオン・エピソード1静寂の塔~魔力の崩壊~

 一.フリンコン・スティン

 

 ラプルスⅢ世の父である、リパレスⅥ世は勇ましい王であった。

 DOの国に他国が攻めて来た時は、自ら戦闘の矢面に立ち、その強大な魔力を持って、ことごとく勝利し、一代にしてそれまで小国にしかすぎなかったDOの国を、大陸一の大国と成したのである。

 その当時の戦いにおいての主役は、やはり魔法であった。

幾百幾千の普通兵よりも、一人の魔力使いが勝敗を決めたほど、魔法の存在が重要であったがため、どの国でも魔力を持つものが優遇されていた。

魔力を持つものが権力を握ると共に、他国との戦争だけでもなく、自国においてもその権力争いのために多くの血が流されていた。

 魔力を持たぬ大勢の非力な者たちは、常に恐怖に怯えながら生活をしていた。

 いわゆる力が全ての時代において、弱者への乱暴、狼藉ぶりは目を見張り、子供だけではなく大人ですら、昼間ですら、うかつに外出出来ないという非常に乱れた時代であり、強大なる力を持ち国を収めていたリパレスⅥ世のDOの国ですらその例外ではなかった。

 

 強大な魔力を持つリパレスⅥ世にも悩みが存在した。

それは重大な悩みである。

子供が出来ないことである。

困ったことに、リパレスⅥ世の体内から発する精液は、光り輝き、魔力に満ちあふれている。

 若き日、性に目覚めたリパレスⅥ世が朝、目を覚ますと、部屋の天井が吹き飛び、きれいな青空が見えたという。

まさに、そのリパレスⅥ世の愛を受け入れることの出来る女性はいなかったのだ。

 

 ある年、子供が出来ないまま年老いていくことに悩んでいるリパレスⅥ世のもとに手紙が届けられた。

”親愛なるリパレスⅥ世陛下へ。~F・S”

そう書かれた手紙と共に、不思議な物が送られてきたのだ。

見るからに不審物のため、リパレスⅥ世に届くまでかなりの時間がかかった。

”間接接触魔力浄化装置付き性交渉機”

と、書かれており、使用方法も絵付きで詳しく書かれていた。

”1男性部に接続。2女性部に挿入。3機械始動。4射精。5魔力浄化。6妊娠”

 当然、周りの者の中は、罠説や、いたずら説の意見が大半を占め反対したが、リパレスⅥ世自らワラをもつかむ思いで、その物をつかみ、寝室へと向かった。

 直系は15センチ位、長さ3メートル位の黒いゴム状のホース。その片方にスイッチがひとつ付いている小さなボックスがあり、男性部を入れる穴があり、もう片方は男性器の形の棒状であり、女性部に挿入することが容易に想像出来る。

「アララを呼べ!」

寝室からリパレスⅥ世の声が聞こえる。

 リパレスⅥ世には何人もの妻がいた。

しかし、性交渉もないのに妊娠する妻や、権力欲のみで妻になった者など、リパレスⅥ世を本当に愛している妻は少なかった。

 そんな中でアララは、別であった。

一番新しく、一番若い妻であったが、リパレスⅥ世を本当に愛していた。

 寝室に向かうアララ。

「アララ様…」

アララの世話係の女達が心配している。

機械が罠であっても、リパレスⅥ世の精液に接しても死が待っているというのにもかかわらず、アララはちゅうちょせずに寝室に入って行った。

むしろ、リパレスⅥ世と本当の形で愛し合えることに喜びさえ感じていた。

 

 10か月後。ラプルスⅢ世が生まれた。

 

 あっという間に10年の月日が過ぎ、ラプルスⅢ世も10才となった。

 リパレスⅥ世は年老い、魔力も弱り、寝室から出ることがなくなっていた。

 この10年の間に、他国との戦いはほとんどなくなっていた。

別に平和になったわけではない。

魔力が、この世界を包み込んでしまったのである。

まるで公害のように、魔力の想念がこの世界に蔓延してしまったのだ。

それは、人以外の動物、植物までもが魔力を持ったことを意味する。

魔獣と化し、凶暴になった動物達、イメージと呼ばれる物体のオバケのような魔物達の発生により、大陸全土が危険地帯となってしまった。

うかつに他国に攻め入ろうとすれば、他国にたどり着く前に魔獣や魔物のえじきとなり、全滅させられてしまう。

人々はあらためて魔力の恐ろしさを知った。

 繰り返すが人と人との間の争いがなくなったわけではない。

魔力の蔓延によって、人の魔力も増大した。

魔力を強めた者達が己の欲望のため、反乱を起こし、犯罪を犯し、どの国も国内の争いが激化していた。

このため、暗黙の停戦状態が続いている。

 

 リパレスⅥ世の魔力が弱まったのに乗じ、DOの国も乱れていた。

 リパレスⅥ世は寝室で涙を流していた。

この年になり、生まれて初めて流したの涙である。

「この国はどうなるのか…。見えぬ…、見えぬ…。おぉ、わが息子、ラプルスⅢ世よ…」

「はい…」

リパレスⅥ世が手を差し出す。

その手にはかつての勇ましさはもうなく、弱々しさが感じられる。

リパレスⅥ世の手をしっかり握るラプルスⅢ世。

 リパレスⅥ世の涙の原因は、息子ラプルスⅢ世にあった。

”間接接触魔力浄化装置付き性交渉器”により、妻アララに注がれたリパレスⅥ世の精液は、魔力を浄化された純粋な精液であった。

従って、普通の人間の、その時の性交渉が初めてであった処女のアララから生まれたのは当然、魔力などを持たぬ、普通の純粋な子供であったのだ。

 リパレスⅥ世は、魔力を持たぬラプルスⅢ世に国を収める力はないと苦悩し、幾度となく、預言者、占い師を城に呼んだという。

リパレスⅥ世の怒りを恐れ、はっきりと断言した者はいなかったが、どの預言者も、どの占い師も、DOの国の未来は暗いことを意味する発言を慎重に言葉を選び、リパレスⅥ世に語り、リパレスⅥ世を落ち込ませた。

「わが息子…。未来は辛いぞ…」

弱々しい手でしっかりとラプルスⅢ世の手を握りしめ、そう言うと、

「いいえ、父上、私はきっとDOの国、いや全ての世界を、明るい未来にして見せましょう」

確信を持った目でリパレスⅥ世を見るラプルスⅢ世。

「何と言う…」

「私には、確かに魔力はありません。しかしもはや、魔力ではこの世は支配することは出来ません。この世を支配するのは、魔力に打ち勝つには、強い意識、そして科学です」

「ラプルスⅢ世よ…」

「平和を望む強い意識が、一人一人の弱い人間の平和を愛する意識が、強大で邪悪なる全ての魔力をこの世から消滅させるでしょう。更に、科学の力がそれを手助けしてくれるはずです。私はそう信じています」

「そのような考えを…なぜだ…」

「それは…先生」

ラプルスⅢ世は寝室の入口を見る。

ドアの外に人の気配。

「誰じゃ?」

「私の先生です」

入口から若い男が入って来る。

「陛下。お久しぶりです。ラプルスⅢ世殿下の家庭教師をさせていただいているフリンコン・スティンです」

深々と頭を下げる男。

その名は、フリンコン・スティン。

金髪で、やややせた感じの身長の高い、20代の青年である。

「久々と言ったな」

「はい、陛下。お忘れになりましたか?」

と言うと、おもむろに胸のポケットから一枚の紙を取り出して、リパレスⅥ世に見せる。

「それは!」

リパレスⅥ世の顔色が変わる。

”親愛なるリパレスⅥ世陛下へ。~F・S”

紙にはそう書かれてあった。あの時と同じ字で。

「F・S。フリンコン・スティン…か…」

「はい。まだ10代の頃の作品でしたが、あの装置には絶対の自信がありましたので、無礼とは存じましたが…」

「そうか。あれはお前だったのか…はっ!」

再びリパレスⅥ世の顔色が変わる。

「まさか、わざとか…。確かに子供は出来たが、わざと魔力を完全に浄化させ、魔力を持たぬ子供を作らせたのか…」

小さくうなずくフリンコン・スティン。

「魔力による力の支配はもう終るべきだと思いましたので」

「何と…」

「現に、魔力が蔓延し、世界は完全に乱れてしまいました。人々の心はすさみ、恐怖に怯えています。すべては魔力のせい、まさに、魔力公害が今を作ってしまったのです。魔力は悪です。この乱れた世界を救うには、邪悪な魔力を持たぬ純粋な王が必要だと、心から人々に愛される王が必要だと…」

まだフリンコン・スティンが全てを言い終らないうちに、ベッドに横たわっていたリパレスⅥ世が黒い魔力に包まれ、空中に浮く。

驚くラプルスⅢ世とフリンコン・スティン。

怒りに拳を握りしめているリパレスⅥ世。

「魔力が悪と…魔力が邪悪と言うか!」

フリンコン・スティンはひるまず、一歩前に出、

「はい!邪悪です!魔力を持つ者は己の力に溺れ、醜い争いに明け暮れ、地位、名誉、金銭欲、情欲、怒り、憎しみ、人々の苦しみ、悲しみ、恐怖から己の魔力を増幅させる。それは、それが個人の問題だったらいいでしょう。人だけの問題だったらいいでしょう。しかし、今の世を御覧ください!人の愚かな想念が、この世を包み込み、優しかった動物達が、きれいだった植物達が魔獣となり、醜い魔力がオバケという実に非科学的な存在を実在化し、土や水は魔力の毒で汚染され、食糧不足も続いています。このままでは、この世界は滅んでしまいます!」

「貴様…」

リパレスⅥ世は、怒りの表情でフリンコン・スティンに消滅の魔法を浴びせようとする。

すると、10才のラプルスⅢ世は、フリンコン・スティンの前に立って両手を広げ、かばうように、それを阻止しようとする。

「どけ!」

「嫌です!」

きぜんとしたラプルスⅢ世の態度を見、その真剣な目を見、リパレスⅥ世は静かにベッドの上に落ちてくる。そして、再び横たわり、静かな声で、

「フリンコン・スティンよ…」

「はい…」

「魔力を持たぬともラプルスⅢ世は出来るのだな…」

大きくうなずくフリンコン・スティン。

「はい。必ずラプルスⅢ世殿下は、この世界を統一なさるでしょう。平和な世界に。未来永劫、ラプルスⅢ世の名は語り継がれるでしょう」

「力を貸してくれるのだな」

「はい。魔力なくとも、科学の力を借り、このフリンコン・スティンは、不可能なことも可能にしてみせましょう」

「信じてよいのだな…」

希望を込め、フリンコン・スティンに手を差し出すリパレスⅥ世。

 

 数か月後。

リパレスⅥ世の死に伴い、DOの国の国王にラプルスⅢ世が即位した。

 

 即位後、まもなくラプルスⅢ世は、DOの国の国民を驚かせる発表を行った。

”DOの国において、いかなる魔法、魔力の使用及び、魔法、魔力グッズの販売を禁ず”

 魔法、魔力グッズは、魔力を持たない人でも使える、魔法を封じ込めた使用回数制限付きのグッズのこと。

「ラプルスⅢ世は独裁者である!」

そう魔力を使う者達は叫んだ。

しかし、この発表は国民の圧倒的な支持を獲得した。

なぜなら、魔力を使う者よりも、非力な者達の数が多いから、強者よりも、恐怖に怯える弱者の数が多いからである。

 それに対し、魔力使い達も黙ってはいなかった。

普段は敵対している魔力使い達も、まさに生きるか死ぬかの死活問題であり、徒党を組み内乱を起こし、城に攻め入ったのである。

 だか、その抵抗は長くは続かなかった。

”魔力除去特殊繊維シャツとパンツ”

 フリンコンコットンと呼ばれる特種な繊維で出来たシャツとパンツは、それを身につけた者の意識、精神レベルの高さに応じて魔力を反射するフリンコン・スティンの発明品。

 フリンコンコットンを身につけた城の兵士の前に、魔力使い達はまったく成す術もなく撤退するしかなかった。

 若きラプルスⅢ世は、高らかに言った。

「よく聞け!抵抗せぬ者は殺さぬ。邪悪なる者達よ!ただちにDOの国より立ち去るが良い。魔力は負けたのだ!自由を求める意識が勝利したのだ。平和を求める科学が勝利したのだ!人の発展は魔力を排除することにより実現するのだ!」

 国民は歓喜した。

 

 DOの国の魔力排除政策が開始された時、

国王ラプルスⅢ世はまだ、10才であった。


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