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嵐を呼ぶ姫君襲来 6

 で、そのまま四郎に抱きつかれたり。

「いいい、いつからそこに居たのかな?かな?」

「声、かけましたよ。

 しっかり返事を頂きましたが?」

 私のあほぉぉぉぉぉぉ!!!

 何も考えずに返事なんかするなよぉぉぉっ!!

「私は、珠の為にここに居ます。

 いつも言っているのに、不安ですか?」

 優しく耳元で囁かれるのが心地よい。

 ああ、すっかり私、四郎にはまっちゃったなぁ。

「違うの。

 私が、四郎のお荷物になっていないか不安なのよ」

 私も前世は男だった身だ。

 美女よりどりみどりのハーレム願望ぐらい持っている。

 だから、私という鎖で四郎を縛りたくは無いのだ。

「珠は間違っている。

 私は、自ら珠にはまっているんです」

 そして照れくさそうに微笑む四郎を見ると、何を悩んでいたのか馬鹿馬鹿しくなって、噴き出してしまう。

「あははははっ!

 何だ。私達、互いにはまっているんじゃない」 

「今頃気づいたのですか?」  

 そのまま四郎は私の唇を塞ぐ。

 もうこれ以上の言葉はいらないとばかりに。

 私も気づいたら舌を絡めて唾液の交換をしていたり。

 あれ、いつもならここで麟姉か、瑠璃姫が出てきて説教タイムのような気が。 

 私の心を読んだかのごとく、四郎が先回りしてその答えを口に出す。

「珠自身がこの間、『大丈夫』と一同を丸め込んだではありませんか」

 あ……

 神力だけで説明できないから、うちの遊女三千人ほどにアンケートを取ったんだった。

 で、確立と統計を駆使しての説得に一同ドン引き。

 『なんでこのお方はその力を他の所にもっと向けないのか』と麟姉を呆れさせながら、Hの許可を取り付けたばかりだった。


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嵐を呼ぶ姫君襲来 7

 なお、この確立と統計の概念はしっかり他の部署にも広めるので、大友家は「文書化・データ化・ロジスティック化」の官僚主義の道を驀進する事に。

 さておいて。

 何だか、今日の四郎は凄く積極的なのですが。

 あっという間に、何も纏わぬ姿に剥かれてしまいましたよ。

「あ、あのね。

 四郎。

 今日の四郎、凄く積極的……」

「知りませんでした?

 珠が私を求めるのと同じぐらい、私も珠が欲しいんです」

 うわぁ。

 さすが、七十超えて子供を作ったチートじじいの息子。

 うすうす感づいてはいたけど、やっぱり四郎むっつりすけべだわ。

「もぉ、だから恋とか抱きなさいって言っているのに……」

「それが姫様の命令なら。

 ですが、わたしの子種は全て珠のものです」

「さすがにこれ以上妊娠できないわよ」

 そんな睦み事を言いながら四郎に身を任せる。

 久しぶりに私とお腹の娘は、四郎のミルクをいっぱいもらって安らかに眠れたのでした。

 

 次の日。

「居るのは構わないし、四郎を寝取ってもいいわよ。

 私もこんな体だし、四郎にも性欲の捌け口が必要だと思うし」

 一同の前で言い放つ私に、鶴姫は最初唖然としつつ、次に怒りで顔が真っ赤に。

「先にできたものの余裕じゃな!

 その喧嘩買った!

 絶対に四郎を寝取ってやるから覚悟せい!!」

 うん。

 お姫様の言う台詞じゃないわな。

 私も鶴姫も。

「あ、ちゃんと父上には連絡を取って滞在の許可を貰うように。

 いいわね?」

「…………はぃ」

 こうして杉乃井に新たな住人がやってきたのだった。


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嵐を呼ぶ姫君襲来 8

「姫様と居ると飽きませぬな……」

 一部始終を聞いた吉岡長増老の一言である。

 最近隠居してここで若者相手に老後の楽しみ学校を開いてもらっているので、これ幸いと相談を持ちかけたのである。

 深い深い老人特有のため息をこれみよがしに見せ付けながら、更に追い討ちをかけるのも忘れない。

「姫様が二人に増えましたな」

 うわ。失敬な。

 私あんな無鉄砲じゃないとガン見してあげたら顔そらしやがった。

「で、どうなさるつもりで?」

 遊びは終わりだとばかりに、吉岡長増の言葉から遊びが消える。

「早馬を府内と門司に飛ばしているわ。

 門司をこんな形で使うとは思わなかったわよ」

 できたばかりの門司の町には、大友と毛利が奉行という形で町衆の自治に参加している。

 とはいえ、自治に発言するのが目的ではなく実質的大使扱いで、行われるだろう毛利との戦の交渉できるチャンネル確保が最大のお仕事なのだが、まさかこんな情けない理由でこのチャンネルを使う事になるとは思わなかった。

「村上水軍を突付いて毛利という大蛇を出したくはありませぬな。

 向こうの応対しだいですが、とりあえずは穏便に」

「わかっているわよ」

 何しろ、戦争前だから、どんな細事で開戦になるか分かったものではない。

 あ、元の好々爺の声に戻った。

「でしたら姫様に使っていただきたい若者がおりまして」

 ぴくん。

 あの吉岡長増が認めた男ですって!?

 この間渾身の土下座で大谷吉房をげっとした後で、由良姉と共にやってきた島井茂勝紹介の野崎綱吉という大当たり人材がやってきたばかり。

 野崎綱吉はまだ若武者という事もあり、四郎の下についてもらって杉乃井御社衆を率いる予定になっている。

 けど、このタイミングでの紹介って、ちょっと調子に乗りすぎたかな?

「監視?

 麟姉と吉岡長増自身が私を見張っているのに、これ以上いるの?」

 私は宇佐衆を旗本に、安宅冬康や田原親宏、佐伯惟教など外様や大友家から外された人間を確保して家臣団を作っていると見られても仕方ない。


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嵐を呼ぶ姫君襲来 9

 自らの手足の確保は謀反の疑いありと讒言されかねないからだ。

 そのあたりもあって、吉岡長増や田北鑑生老の隠居組に杉乃井に来てもらったのだ。

 もちろん、この二人の経験を次世代に教えて欲しいというのも本気なのだが。

「姫様を見張った所で変わりはせぬでしょうが、流れ者で家臣団を組まれるならば、こちらからも入れておかないと何かあったときに困りまする」

 何かあった時ね。

 その何かって私の毛利への内通なんだろうなぁ。きっと。

 そんな事を好々爺顔で言うのだからこのじじいもチートである。

「まぁとにかく紹介してちょうだいな。

 外様どころか毛利の御曹司すら使わないと訴訟が追いつかないって、どれだけ当事者まかせでやってきたのよ」

 私のいやみにも吉岡長増は顔を崩さない。

「耳が痛いですな。

 入れ」

 入ってきたのは体の細い若侍だった。

「豊後国志賀家に仕える朝倉一玄(あさくら いちげん)と申します。

 なにとぞよしなに」

 彼の挨拶に吉岡長増が言葉を続ける。

「朝倉家は志賀家の分家筋に当たりましてな。

 この老人の暇つぶしに自ら志願してここまで学びに来た数寄者ゆえ、あとは経験を積ませればと姫様にご紹介したまてで」

 採用決定。

 大友家中で謀将系である吉岡長増に教えを請う時点で、こいつの適正が軍師系であるのが分かる。

 こき使ってやろうじゃないの。

「わかったわ。

 今はとりかく人材が足りないの。

 遠慮なく働いてもらうからよろしく。

 とりあえず、鶴姫の件で毛利と話をするからその手駒として動いてもらうわよ」

「はっ」

 大友家の外交を取り仕切っているのは府内に居る臼杵鑑速だ。

 彼も豊後三老(臼杵鑑速・吉岡長増・吉弘鑑理または臼杵鑑速・戸次鑑連・吉弘鑑理)と謳われた出来人だから間違いがないとは思わないが、齟齬は起こしたくないので朝倉一玄を使者として私と臼杵鑑速の連絡を密にしようという訳。


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嵐を呼ぶ姫君襲来 10

 このあたりは電話もないし、手紙も遅いし届くかどうか分からない戦国の世のたしなみである。

 なお、毛利側もこの顛末は想定外だったらしく、慌てて門司に安国寺恵瓊あんこくじ えけいが飛んできた。

 それに合わせて、臼杵鑑速と朝倉一玄を南蛮船で門司に送り出して顔合わせをしている。

 大友と毛利の間に書簡が行きかい、河野の了解を取り付けて滞在許可が出るまで一苦労があったのだがそれは別の話。

 

「ばーかばーか!」

「ばかじゃないもん!!」

「まぁまぁ。お二人とも落ち着いて」

 もはや杉乃井御殿でもなじみとなってしまった、女の子と長寿丸の喧嘩が部屋の外から聞こえる。

 で、この女の子白貴姉についているので基本的にフリーパスだったのを良い事に、御殿奥にも遠慮なく探検しに来て、私と遊びたくてやってきた長寿丸と仲良く喧嘩中。

 そんな微笑ましい杉乃井の一コマだけど、誰かが二人をなだめている様な。

 顔を出してみると、三人とも似たような背丈で、長寿丸と女の子をなだめている男の子が一人と、見事に返り討ちにあったのだろうぶったおれて泣いている男の子が数人。

 この辺りから、長寿丸にも近習を作る為に同じ年ぐらいの子供をつけるのだけど、その子供達が女の子に喧嘩を売って返り討ちという所か。

 女の子も傷だらけだし、ああ、立派にガキ大将してやがる。

「はいはい。二人とも何やっているのよ」

「あ!姫様だぁ!!」

「あ、あねうぇ……」

 私が出てゆくと、見る見るしょぼんとする長寿丸に、ガッツポーズの女の子。

 既にこの時点で大体の想像がつくのだけど、仲裁に入っていた男の子に話を聞いてみる。

「で、どうしたのかな?」

「はっ。

 実は、小姓の者が『下賎の者が長寿丸様と遊ぶのは良くない』と喧嘩を売り返り討ちに。

 で、事態を知った長寿丸様がこちらに来て、今度は彼女が食って掛かっている次第で……」

 えらく礼儀正しいお子様だね君と、心の中で突っ込みながらため息を一つ。

 女ガキ大将たる彼女は白貴姉つきで私もかわいがっているし、面倒見もいいので半ば傍若無人を許され、強気を挫き弱きを助けるチビ大久保彦左衛門と化した彼女だから年下からの支持も絶大で、今や別府のおてんば娘として子供社会を牛耳っているのだった。


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嵐を呼ぶ姫君襲来 11

 こんな素敵な問題児に叱る側の麟姉や瑠璃御前から、

「彼女が姫様みたいになったら困ります!」

と泣きつかれて目付として小姓を一人つける羽目に。

 そこ、本末転倒って言わない。

 で、その小姓が今えらく礼儀正しい彼なのだけど、確か名前はこの間雇った大谷吉房の息子で紀之介と言った様な。

 何だろう?

 えらく名前にひっかかるんだよなぁ……

「どうなさいました?姫様」

 その礼儀正しい小姓からかけられた声で我に返る。

「え?

 うん。ごめん。ちょっと考え事していた。

 もう、けんかはだめって言ったでしょ。

 長寿丸も小姓に弱いものいじめはだめって言わないと……」

 軽く二人を説教して三人を解放する。

 で、仕事戻ると書類が増えていた。

 ため息を深く深くついてその書類の処理を。

 鶴姫の事もあるし決戦である毛利の事も考えないといけないってのに……ん?

 決戦……違うな。

 天王山?……いや、天下分け目……これも違うな……関が原……あ!!!

 さっきの礼儀正しい小姓がやっと繋がる。

 ゲームでは頭巾かぶった姿ばっかりだったし。彼。

 そりゃ、彼なら女の子の相手もできるだろうなぁ。大谷吉継(おおたに よしつぐ)ならば。


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