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SDさんにんむすめ
中洲門司港今昔物語
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嵐を呼ぶ姫君襲来
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豊西戦争 そのはじまり
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豊西戦争 北浜夜戦と杉乃井攻防戦
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豊西戦争 別府湾海戦
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豊西戦争 あとしまつ
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太刀洗合戦
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戸神尾合戦
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戸神尾合戦 11
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中洲門司港今昔物語 6

「この証文売るで!」

「買った!」

「売った!!」

 博多座一階は基本的に誰でも出入りができるようになっており、そこは座のメンバー達が合同で出資した両替商がおかれている。

 交通が整っていないこの時期、遠方から来る出入りの商人の存在は情報源として必須であり、出入り商人達も小商いの証文も価値に応じて換金してくれるこの両替商を重宝していたのである。

 そんな売り買いを見ながら、島井茂勝が奥に向かって歩く。

 上品な身なりの島井茂勝の前には利発そうな若武者がおり、彼が護衛として周りに目を光らせている先には二階に通じる階段があり、その前には珠姫直属の役立たずの代名詞……じゃなかった、御社衆から抜擢された屈強な男達が見張り出入りを制限していた。

「何か変わった事は?」

「客人が中に。

 姫様の使いだそうで」

 男達の代表が島井茂勝の質問に答える。

 がたいが良いのは間違いがないのだが、侍が見たら違和感を覚える体と身のこなしは彼らが元海賊だったからに他ならない。

 筑前を荒らした海賊、火山神九郎(かざん じんくろう)と下で働いている吉井荊娯(よしい けいご)というのが彼の名前である。

 彼らは金と酒と女でたぶらかされてこの仕事をしているという事になっている。

 表向きは。

「火山神九郎は糸島か?」

「ああ。

 船は作っても俺らは陸に上がると、どうしても船の動きを忘れちまう。

 お頭はそれを危惧して、はやく海に出たいそうだ」

 吉井荊娯の言葉に釘を刺すことも島井茂勝は忘れない。

「くれぐれも姫様の顔に泥は塗ってくれるなよ」

「わかっているさ。

 俺達を拾ってくれた恩だけでなく、殿様まで連れ出してくれた恩を忘れるほど俺達も畜生ではないさ」

 島井茂勝はその言葉に何も返さずに二階に上がる。

 廊下を歩きながら護衛の若武者が島井茂勝に声をかけた。

「大丈夫なのですか?


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中洲門司港今昔物語 7

 信用なさって?」

 信州から流れてきた彼だが、偉丈夫で力仕事もでき、計算も速く文字も書けるという事で護衛に抜擢したのである。

 彼に足りないのは経験のみだが、侍として大成したい若武者を豊後に送ろうと島井茂勝は心に決めつつ彼に信頼する表向きの理由を答える。

「何、悪さをしないだけで儲け物よ」

 若武者が障子を開けると、そこに上流階級の世界が広がっていた。

 座主である珠姫は意図してなかったが、サロンというものは己の権勢を見せつけてコネを作る場所である。

 座に入った大商人達は競って、二階を己の権勢に相応しい空間に変えていったのである。

 大陸に近い事もあり大陸風の美術品が溢れ、一級品の屏風や茶器が嫌味にならない程度に飾られていた。

 後足りないものと言うと、

「華を用意できればなぁ」

 いかにも残念そうに島井茂勝が嘆く。

 華、つまりこの部屋にふさわしい高級遊女が居ればと彼は嘆息したのである。

 この場での最高級娼婦である太夫は本来体を売る事が仕事ではあるが、この手のサロンで体を売っても二束三文でしかない。

 彼女が売るのは雅な空気であり、メンバー達が心地よく情報交換できる潤滑油であり、彼女の雇い主である珠姫がもたらす情報なのである。

 そして、そんな稀有な人材ほどあっという間に居なくなってしまう。

 元々中洲遊郭の看板として島井茂勝が目をつけていたのは、白貴と由良の二人だった。

 ところが、この二人がスポンサーである珠姫に掻っ攫われて別府杉乃井の看板となってしまったが為に、中洲の看板となる博多太夫の座が空いてしまっていたのだった。

 もちろん、女達もそれを黙って見ている訳でもなく、各地の遊郭からこれはと選ばれた遊女達が花魁として中洲で活躍するが、彼女達の多くはその才ゆえに大商人達に囲われてしまい、今だその座には誰も座っていないという現実があったのである。

「おや、今をときめく島井様ともあろうお方が、何をお悩みで?」

 ぱっと華やぐその声の方に彼が振り向くと、そこには部屋を背景に変える太夫が一人。

「由良じゃないか。

 府内の殿様の方はいいのかい?」

 島井茂勝が彼女をあきらめて嘆いた理由が、この二人を大大名大友家当主である大友義鎮が囲っていたからに他ならない。


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中洲門司港今昔物語 8

 しかも、彼にこの二人をあてがったのが、その娘である珠姫なのだがら文句も言えるわけも無く、代わりを見つけられずに嘆いていたばかりである。

「まぁね。

 豊後の殿様の思い人が帰ってきたから、こっちに出張れるようになったという訳」

 珠姫の実の母である歩き巫女の女が彼の元に戻ったという話は、島井茂勝も聞いているし、大友義鎮と珠姫の父娘があわや殺し合いまで発展しかかったというヤバイ話まで当の本人から聞いていた。

「姫様から伝言。

 『母上が戻ったから、かねてからの希望どおり博多に白貴と由良のどちらかを派遣するわ』だって。

 で、私がここにいるという訳」

 大友義鎮の女狂いというのは筋金入りで、相手をする白貴と由良だけでなく、正室である奈多夫人すら白貴と由良の二人がかりで調教して花魁並みに仕立て上げたのにまだ足りないぐらいで、最近は娘発案のお犬遊び(ワンコプレイ)にはまっているとか。

 杉乃井で三匹の牝犬を散歩させていたら、同じく牝犬として散歩していた(もちろん四郎が引っ張っている)珠姫と出くわして、その日の昼の家族の会話がそりゃ大波乱になったとか話題に事欠かないが、それを上回る色狂いがこの歩き巫女である。

 既に大友家中では側室扱いとして比売御前と呼ばれている彼女は、珠姫を産むまで大友義鎮と繋がっていたとか、繋がっているのに他の男を求めたとか色々駄目な逸話が豊富だったりする。

 で、彼女と大友義鎮がまぐわう場合、白貴と由良が浮くのだ。

 複数人女をはべらせるハーレム展開は三人を超えると手が空く女性が出てくる。

 その為、お犬遊びをさせるとしても、彼女と奈多婦人で二人埋まるので一人の長期派遣が可能になり、今回の博多派遣に繋がったという訳らしい。

 そして、大友毛利の休戦にともなって、大友家所有の南蛮船が博多に出入りできるようになったのも大きい。

 府内から博多まで片道急ぎで一週間はかかるのに、南蛮船の船旅だと片道二日で済んでしまうからだ。

 そして、途中に中立都市の門司がある。

 最高級遊女の顔見世にもってこいの航路になるのだ。

 もちろん、政治的な側面も忘れていない。

 大友の旗の南蛮船が関門海峡を自由に行き来するというのは、毛利側にとってこれ以上無い軍事的恫喝でもあり、玄界灘を根城にする松浦水軍や日本海航路で影響力を持っている隠岐水軍への政治的アピールにもなる。


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中洲門司港今昔物語 9

 更に、博多と門司に大容量の南蛮船を直付けさせる事で、大友の都合で銭と兵糧の売買や火薬などの商品を大量に買う事ができ、それが大量購入に伴う値引きを引き出すという経済的側面も忘れてはいない。

 行政面においてはもっと効果的だ。

 府内から博多に直で命令が届くからだ。 

 大友家の筑前統治は、いずれ来る毛利の襲来に備えてその布陣を再編成している。

 筑前方分兼博多奉行として大友家の外交全般をとりしきっていた臼杵鑑速は府内に常駐して外交に専念し、筑前柑子岳城をはじめとした糸島半島の臼杵領の管理は弟である臼杵鎮続(うすき しげつぐ)が行う事に。

 また、秋月に転封となった田原親宏を従わせるためと、筑前における重しとして加判衆となった田北鑑重が筑前方分として睨みをきかせ、その博多の隣に不夜城中州遊郭がある。

 表向きは高級遊女の派遣だが、その色香の下にこれだけの仕掛けを用意するのだからあの姫は毛利元就と戦っていられる訳だ。

「こちらの若武者はどなた?」

 九州一・二を争う太夫の声にも関わらず、若武者は顔色も変える事無く答えた。

「それがしは信州の生まれで名を野崎綱吉(のざき つなよし)と申すもの。

 以後、お見知りおきを」

 由良も御陣女郎で名を馳せた女。

 この若武者ができると即座に見抜いた。

 島井茂勝に視線を向けると、ただ一回頷くのみ。

 彼からも合格をもらっていると知る。

 何しろ、二人の上司である珠姫の人材狂いは色狂い並みに達が悪く、戸次鑑連相手の試し合戦で完敗してからは輪をかけて人材を捜し求めていたのだった。

 ついこの間も別府に療養に来ていた元六角家臣がいると聞いて、

「そんな上玉、逃す訳無いじゃないですかぁ!

 どうか大友家に仕官してください!

 おねがいします!!!」

と、宿泊先の宿に出向いて懇親の土下座をかまして大騒動になったばかり。

 恥も外聞も無いのかと周囲が説教しても、

「恥?外聞?

 そんなものは犬に食わせてしまうわ!

 なんならば、この書状の山を片付けてくれるのならば、私も恥と外聞を学びますが?」

の一言に周囲も轟沈。


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中洲門司港今昔物語 10

 読み書き算盤ができて、権利問題についてちゃんと判断が下せる珠姫が加判衆兼右筆についてからは、大友家には権利問題がらみの書状が大量に発生していたのだった。

 なお、それまで増えなかったのは、自力解決(つまり、合戦を含んだ武力行使)にて当事者間にて決着がついていたからで。色々駄目だろ。戦国時代。

 そんな訳で、その元六角家家臣の大谷吉房(おおたに よしふさ)は完全な余所者である事を良い事に、五千貫の待遇にて府内で珠姫の仕事の補佐についているという。

 かわいそうに。

 話がそれた。

「じゃあ、帰りの船で別府に連れて行くわ」

「頼む。

 書状は作っておく」

 本人無視した二人の会話の流れに野崎綱吉も目をぱちくりとするばかり。

「恋。

 お願いね」

「はい。

 野崎様。こちらへ……」

 付き人の恋が野崎綱吉を連れて部屋を出て行き、部屋には由良と島井茂勝の二人だけになる。

「で、恋殿を連れてきた理由は?」

 島井茂勝の何気ない質問に由良は艶っぽい笑みを浮かべるのみ。

 姿形が似ているとはいえ、見る者が見たら一目で分かるのがこの恋という少女だった。

 何しろ、珠姫が昼の太陽のように金儲けを考え、銭の確保にそろばん片手に奔走し、大名家の姫として書類と格闘しつつ男達をあごでこきつかうのを知っているならば、この少女の笑顔は夜の月のように静かで儚い。

「博多のお大尽様方への顔見世。

 空いていた博多太夫に据えようと私と白貴は思っているわ」

 血が繋がっていないとはいえ、扱いは大友一門に準ずる恋である。

 急成長著しい博多の商人達への繋ぎとして置いておくと同時に、武家に恋をやるつもりはないという珠姫のメッセージでもあった。

 何しろ、珠姫自身が毛利元就の息子である四郎といちゃいちゃしている為に、彼女を使った反大友の動きは毛利家の間者によって広く豊前・筑前に浸透していたのである。

 恋を武家にやって珠姫と『入れ替えられた』場合、制御不能の大友への謀反が勃発しかねない。

 その為、珠姫は政治的に問題も少ない博多太夫に恋をという二人の意見を尊重したのである。

「それは助かる。


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中洲門司港今昔物語 11

 博多の華が欲しかった所だ。

 門司が栄えても博多が負けぬ華がな」 

 この島井茂勝の発言は本人の感嘆でしかないが、その後に冷徹な商人の顔に戻って本題に入る。

「これを姫様に届けてくれ。

 門司の街造り、毛利の邪魔がまったく入らなんだ。

 毛利は、九州の拠点を大友が作った事を喜んでいるのだろうよ」

 目の前に赤間関や彦島を抱える毛利の邪魔が入らなかったという事実だけでなく、門司の街の建物の幾許が、屋紹策(かみや しょうさく)をはじめとした毛利側商人の手によって購入されている事実を掴んでいた。

 もちろん、それはこの二人は知らないが珠とて想定済みである。

 というか、この門司を餌にして上陸してきた毛利軍を殲滅する手筈を整えて、大友義鎮をはじめ重臣連中からドン引きされていたなんて知られたくもない。

 毛利は九州側拠点の確保と珠姫内通を餌に、大友は博多―府内の南蛮船直通航路と門司を餌にした毛利殲滅戦の準備という、にこやかに手を握りながら足を踏みつけあう戦国時代ならではの光景がそこに存在していたのであった。

「で、だ。

 その華の味は味わっても構わんのだろう?」

 大商人となったからこそ、一流のものを味わいたいと思うのは人の性。

 そんな言葉を吐いた島井茂勝に由良も艶っぽく微笑む。

「あら、若芽は咲くまで摘んじゃだめよ」

「誰が摘むか。

 というか、恋殿と一夜を共にすると、いつ無理難題言われるかと安らげぬわ」

 島井茂勝の本音は予言となって的中する。

 あまりに異色で、あまりにどす黒く、ありあまるほどに輝き続けた珠の生き写しゆえに、本当に懐柔したかった大商人達は二の足を踏む事になるのだが、そんな未来を知る由はなく。

 なお、由良と島井茂勝の良い関係はそのままずるずると続き、最終的には彼女は島井茂勝の妾として落ち着く事になるのだが、それは別の話。

 

 門司という新しい街が建設されるに及んで、商人以外に利益を確保したとすれば近くの国人衆をあげる事ができるだろう。

 資材の確保、人足の供出、活性化する流通に伴い落ちる銭。

 それが門司周辺の国人衆の懐を潤していったのである。



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