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終戦のエンペラー

2013年8月9日鑑賞

**  美しい日本で逢いたかった、あなたに **

この作品は戦後日本を象徴づけた、マッカーサーと昭和天皇の,あの有名な写真が撮られる瞬間までを描く。
同時に、ひとりのアメリカ軍人と、日本女性のラブストーリーも並行して描かれている。
その恋は美しくも哀しい物語として、本作に豊かな彩りと陰影を形づくっている。
本作の主人公、フェラーズ准将。彼は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)のスタッフとして、マッカーサー元帥とともに日本の厚木飛行場に降り立った。
 実は彼はこの五年前、日本に滞在したことがあった。日本人と日本軍を研究するためだ。再び日本にやって来たフェラーズには、切実な、もう一つの目的があった。
 彼がかつて想いを寄せた日本人女性「アヤ」と、彼女の母国、日本で再会するためである。
 アヤのおじさんは、なんと陸軍大将という地位にあった。日本とアメリカが戦争に突入する寸前である。しかし、この西田敏行演じる陸軍大将は、アメリカ人、フェラーズの訪問を許し、客人としてもてなす。フェラーズは、直接、陸軍大将から、軍だけではなく、日本人の心をうかがい知ることになる。そして愛するアヤの心も確かめるのである。
 この辺りは、時間軸が前後するわけだが、映画は大変うまく編集されており、違和感はない。


 さて、厚木飛行場に降り立つマッカーサー元帥。
あのコーンパイプを咥えた、有名な写真と映像フィルム。それは、元帥自身が、実は巧みな演出家でもあったことが、本作で明らかにされる。
彼らGHQは、日本の戦争犯罪、そして真の戦争責任者を暴こうとする。
やがてA級戦犯達が次々に逮捕される。敵に捕まるぐらいならと、自決する者もいる。そしてGHQは、ついに避けては通れない問題に直面する。
天皇の戦争責任である。
GHQ本部が置かれた第一生命ビルのオフィスには、母国の首都ワシントンから、マッカーサーあてに盛んに電話が掛かる。政治家連中が
「天皇ヒロヒトを吊るせ!!」と圧力をかけてくるのだ。しかし、マッカーサーは冷静だ。
占領したニッポンをいかに平和的に統治するか? 最善策はなにか?
マッカーサー元帥は、その方法をフェラーズに調査させるのである。
その答えをどう導くのか、調査を任されたフェラーズは、悩んだ。日本を良く知るアメリカ人のひとりとして、悩み抜いた。
彼の恋人は日本人女性である。
当時、日本人に最も親近感を抱いていたアメリカ軍人のひとりであろう。
そう、彼の恋人は日本人女性。だが彼は、同時にアメリカ軍人でもあり、そしてなにより、戦後日本の舵取りをする、GHQの重要な責任を持つスタッフなのだ。
かれは悩み抜いた末に、ひとつのレポートを書く。
やがてその瞬間はやってくる。


マッカーサー元帥のはからいで、昭和天皇は元帥の公邸に招待される、という形になった。
「現人神」(あらひとがみ)天皇ヒロヒトは、ついにマッカーサー元帥の隣に立った。
待ち構えていたカメラマンがシャッターをきる。
「パシャッ! パッシャッ!」
紛れもない、生身の人間、ヒロヒトの姿がそこにはあった。
低い背たけ。威厳など微塵も感じさせない、ひ弱に見える体つき。
一つの国を滅ぼすだけの価値が、この一個の人間にあるのだろうか?
どう解釈していいかわからないほど、象徴的で、日本史を動かす一枚の写真は、こうして撮られた。
この作品をみて感じるのは、マッカーサーというひとりの人間と、天皇ヒロヒトという、ひとりの人間同士の懐の深さである。二人はお互いに敬意を払っている。
「もう、私はどうなってもいい」と昭和天皇は語ったと伝え聞く。マッカーサーという人物は、その天皇の覚悟を無駄にはしなかった。その懐の深さも人間として大きな魅力だ。
皇紀2600年と謳われた歴史ある東洋の小国と、たった200年の歴史しかない国との戦争。
それは2600年という歴史の重み、そして、おそらく急ごしらえで創り上げたであろう「大和魂」というあいまいな概念、及び「伝統と文化」が、合理的な「文明」をもつ「アメリカという巨大システム」の前に、木っ端微塵に敗れ去った、と言う事実だった。しかも、その合理的で強大な「文明」を作るには、たった200年あれば可能であることを証明して見せたのだ。
この作品をみて、印象的だったのは、ヒロイン「アヤ」を演じた初音映莉子だ。
彼女には、外国人が思い描く、神秘的な日本人女性としての美しさがある。その美しさは、深刻でシリアスになりがちな本作に彩りを添える、救いの女神とも言える。
そう言うヒロインを描く監督は「真珠の耳飾りの少女」を撮った
ピーター・ウェーバー監督なのだ。
「ああ、道理で……」と僕はおもわず納得してしまった。
あの作品も、フェルメールの絵から抜け出て来た様な女性の美しさ、そして、フェルメールが生きた時代の風景を、静物画のように美しく描き切った作品だった。
本作は、衝撃的な日本史の一ページの瞬間の真相を描くと共に、なにより、美しい日本人と、その心を理解しようと試みた、ひとりのアメリカ軍人がいた、という事実に感銘を覚えるのである。
***以下余談
なお、マッカーサーと昭和天皇の会見を描いた秀作として、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」がある。イッセー尾形氏が神懸かり的な演技で昭和天皇を演じている。そのあまりのリアルさに戦慄を覚えるほどの名演技である。ぜひ本作とあわせて鑑賞される事をお勧めする。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ

監督   ピーター・ウェーバー
主演   マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、    
     初音映莉子、西田敏行
製作   2012年
上映時間 107分 日本/アメリカ

予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。



http://www.youtube.com/watch?v=N3BAKr32p7k


タイピスト!

2013年8月26日鑑賞
         **美しい蝶ほどサナギの時間は大切です **
ちょっと、期待しすぎたかなぁ、というのがまず第一印象。
田舎から出て来たヒロインが、ひとつだけ持っていた特技「タイプライターの早打ち」で世界選手権を目指すストーリー。
ジャンル分けをすれば、これ、間違いなくシンデレラ・ストーリーの範疇に入るんですね。
ヒロイン役の女優デボラ・フランソワさん、僕は初めて見ます。文句無く”可愛い”です。


結局この作品、監督は、彼女の魅力、タレント性を最大限引き出そうと狙って作っているのがよく分かります。
でも、注文を言えば、演出の意図が、頭では理解しようとするのですが、いまいち僕の腹の中に、心地よくストンと収まらないんですね。
たとえば、ヒロインは最初、保険会社の秘書募集公告を見て、田舎町から都会に出てきます。当時の女性にとって社長秘書は憧れの職業のひとつ。
できれば、この面接のシーン、彼女はほんとに「田舎っぺ」丸出しにしてほしい訳です。
本作では、彼女のファッション、田舎から出て来た女性にしては、すでに何となく垢抜けているんです。むしろ、都会人よりお洒落なぐらい。
出来れば映画なんだから
「思いっきりウソついていい」訳です。
だから髪の毛も最初から金髪ではなく、思い切って「ヒロインは黒髪だった!!」という「大ウソ」をついてしまえばいい。
作品途中で、彼女は地方のタイピスト選手権に連戦連勝、マスコミの注目を浴びます。そこで金髪に染めるというのはどうでしょう。
「彼女を是非、我が社のイメージキャラクターに!」と、企業が群がってくる。その時に、黒髪をガラリと変えて、華やかな金髪を見せ付ける! サナギが蝶に羽ばたく瞬間です。
それはまさに「ローマの休日」で、アン王女がロングヘアーを切ってしまって(あの、汗を吹き拭き”Oh〜バッサリ”と叫びながら髪を切る、おネエ理髪師は楽しかったですね)ショートヘアに生まれ変わる、あの後世に残る名シーン。
「世界中がオードリーに恋してしまった」あの瞬間の再来になったかもしれません。実際、この作品のPRには、恐れ多くも「オードリーの再来!!」などと謳われている訳ですし。
さて、もう少し、田舎町の描写について。
ハッキリ言って、その閉塞感が物足りません。
「もう、こんな田舎町いやだ!!抜け出したい」とヒロインが思い詰める何かが足りない。
例えばフランス映画の名作「冒険者たち」
大金持ちに成り上がったマヌー(アラン・ドロン)は、金塊探し中に不慮の事故で、思いを寄せていたヒロインを亡くしてしまいます。後にマヌーは、彼女の故郷である田舎町を訪れるシーンがあります。
マヌーは田舎町の特産品を作っている工場を何気なく眺めてゆきます。窓から中をのぞくと、ティーン・エイジャーの女の子が、退屈そうに貝殻細工なんかを磨いている。職工ですから、もちろん地味〜な作業服。毎日毎日、ここで地味〜な作業服を着て、特産品を作って、みがいて、青春を費やしてゆく……
マヌーは思います。
亡くなった彼女は、こんな生活に嫌気がさして、芸術家を目指して、都会の美術学校にやって来たのか、と……
たった数カットにもかかわらず、その田舎町の閉塞感が、見事に表現された名場面だと僕は思います。
ここ、セリフは一切ありません。見事ですね。
本作は田舎から出て来た女の子が、どんどん夢を叶えてゆくサクセス・ストーリーですから、そのスタート地点は、どん底みたいな雰囲気の方がいいと思います。
僕が見る限り、ヒロインが住んでいた田舎は、決して嫌気がさす様な雰囲気ではなかった。むしろ、ここに留まってもいいかな、と思える様な牧歌的な雰囲気があります。なぜ彼女は都会に憧れたんだろうか?
そもそも、その辺りの動機の設定から不十分なのですね。
ついでに音楽の使い方について。
これも、僕の趣味に合わなかっただけの話しなんですが……
五十年代のアメリカ音楽を使うのはもちろん結構です。舞台となった時代に流行っていた音楽を使うのは全然かまわない。
ただ、その使い方なんですね。
一カ所、決定的に違和感を覚えた所があります。
ヒロインがタイプ早打ち選手権の、地方大会に出場したときのシーン。腕に自信のある女性タイピストたちがズラリと並ぶ。
大会の競技委員がストップウオッチを片手に壇上で「用意!!」と叫ぶ。選手たちは緊張の面持ちで、タイプライターの上に指を置く。
「スタート!!」ホイッスルが鳴る。
選手たちが一斉に文字を打ち込んでゆく。
「カチャカチャカチャ……カチャカチャカチャ」
とタイプを打つ音が、やかましいぐらい会場中に響くと思うでしょう、皆さん?
とろこが違うんです。
ここで50年代のダンス音楽が、いきなり掛かってしまうんです。
正直、僕はずっこけました。
この演出はありか?!

 


まあ、こんなわけで、僕が期待していた作品のイメージとはずいぶん違いましたが、それなりに楽しめる作品である事は確かです。ヒロインも充分魅力的です。
また、実際に出演者本人がタイプの早打ちをやっていますので、相当特訓したんだろうとおもいます。
かつての邦画の秀作「スウィングガールズ」や「フラガール」のような、出演者自身が技能を習得しなければ映画が作れない、という、きわめて贅沢な映画である事は間違いありません。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
映像 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆
総合評価 ☆☆☆
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作品データ
監督   レジス・ロワンサル
主演   ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ
製作   2012年 フランス
上映時間 111分 
 予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。


http://www.youtube.com/watch?v=Q0VrLUJ_Ue4


シャニダールの花

2013年8月6日鑑賞
*** スクリーンに咲く狂気の「華」***
なかなか、斬新な感覚の映画で、僕はおもしろかったですよ。
予告編を見た時から、ドキリとする、
ビビッドな色彩感覚の映像が魅力的でした。
いわゆるアート系の作品だろうと思って、さほどストーリーには期待しないで観に行ったら、以外に脚本もキチンとまとめてあるなぁ、というのが率直な印象です。
人間に寄生する花を、極秘に栽培している研究所でのお話。
その花は、生身の女性の身体でしか寄生しないのです。そこで、
これも極秘に契約した女性の身体に、花の種を植え付ける。花が咲き、収獲するまで「母体」と呼ばれる女性達は研究所内に隔離されるという契約内容です。

やがて、生身の身体を養分にして、美しい赤い花が咲きます。花の収穫は手術室で行われます。電気メスて女性の身体と花を分離するのです。
しかし、その直後、花を切り取られた女性達は、
なぜか謎の発作を起こし、次々と不可解な死を遂げるのです。
「花の命は短くて」という文句がありましたが、
この人体に寄生する花は、実は、したたかでたくましいのです。
「美しい花にはトゲがある」
まさにそのとおり。この花は言うなれば、
人間をむさぼり喰らいながら育つ、恐るべき花なのです。
まあ、こんなお話です。
主演は今、大ブレイク中の綾野剛。
なんなんでしょうね、この人。危ない香りがするなぁ。
役者として、とてもミステリアスな魅力を持った男優です。
まるでカミソリのように切れ味鋭いその残像が、観客の心に刺さります。
そして、突き刺さったあと、ワイングラスを床に落としたように、
その残像は粉々に砕け散ってしまう。儚く、もろい、それゆえに美しい、透明感のある俳優です。女性ファンの皆様は、この美しい男優をスクリーンで鑑賞して、ため息をつくのも良し、です。それも映画の楽しみ方のひとつですから。

相手役の黒木華という女優さんは、僕は初めて知りました。研究所で隔離されている女性達の心のケアをする、新人カウンセラーという役です。彼女はやがて自分がケアする人たちの心を、更に深く知りたいと思うようになってゆきます。
「シャニダール」の花の種を植え付けられ、自らの身体で、
ひとつの花を培養している女性達の心の揺れ動き。それを分析してみたい。彼女はそこで、ある悲劇的な行動に出てしまうのですが……
この作品、ちょっと実験的なアート作品を楽しみたい、
という方に向いています。儚くも美しい幾多の花々の映像は、こんなにも残酷で、実は驚くほど「したたか」で、人間をじわじわと侵してゆく。そんな恐ろしさを持ち合わせています。この夏、スクリーンに咲く、危険で美しい、一輪の「華」を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
P・S この作品は神戸芸術工科大学が制作に加わっています。僕の地元、
神戸市西区にある大学が映画作りに関わっているのは、神戸に住む映画ファンにとって、なんとも嬉しいものです。


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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督     石井岳龍

主演   綾野剛、黒木華
製作   2012年
上映時間 105分

予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。



http://www.youtube.com/watch?v=7jtm9ybEVYU

少年H

2013年8月23日鑑賞
                     ** お父さんが紡ぐミシンの音、復興の音   **
お恥ずかしながら原作者の妹尾河童さんが神戸生まれだったとは知らなかった。
妹尾さんの体験した戦前の神戸が、細部に渡って再現されていて、街の雰囲気がなんともいい。
ハイカラな国際都市、港街KOBEがスクリーンに映し出される。
実際、僕も1960年の神戸生まれ、神戸育ちである。
実家近くの山陽電車の駅には、外国人の親子連れが普通に電車を待っていたし、近くの山へ友達と遊びに行けば、ブルドーザーを動かしているおっちゃんを、外国人の子供がちょっかいを出して、からかっていた。
「オッサン、ナニ、ヤットンネン!!」
見事な神戸弁であった。
僕の知る地元、神戸はそう言う神戸なのである。
本作の水谷豊演じる、妹尾さんのお父さん。
この人は何とも立派な人だなぁ。
妹尾少年の家はクリスチャンである。
たとえ肌の色が違っても、西洋人も日本人も、神の下では同じ人間、おなじ、迷える子羊なのだ。
しかし、世の中の空気は戦争へと向かう雰囲気にあった。何もかも天皇陛下の為に、国を挙げて「撃ちてし止まん、鬼畜米英」なのである。
戦時中のクリスチャンの人々は、かなり白い目で見られていたであろう事が、本作からうかがえる。本当に肩身が狭かったであろう。
妹尾さんのお父さんは洋服店を営んでいる。神戸という土地柄、外国人との付き合いもある。彼らから注文を受け、大きな外国人の身体を採寸するお父さん。ミシンを踏んで、洋服を仕立ててゆくお父さん。
物静かで、優しい人物として、水谷豊が、実に丹念に演じている。
何のケレン味もない、市井の人物なのだが、そういう人を演じると言うのはたいそう難しいだろうと思う。
「この人に仕立てを頼めば、いい洋服を作ってくれる」
そういう信頼と誠実さを感じさせる人物である。
そんなお父さんもやがて、ミシンを踏んでいる場合ではなくなってくる。外国人は次々と危険な国、日本を離れてゆく。
家族が食ってゆく為には、イヤイヤながら「国防服」などという、おしゃれな街、神戸には到底似合わない服も縫わねばならない。慣れない消防訓練もやらねばならない。
妹尾少年自身も、学校では軍事教練をやらされる。更には裸婦を模写したページがあるスケッチブックを教官に見つけられ、こっぴどく叱り付けられる。
なお、この作品には戦場の場面は一切出てこない。
しかし、これが紛れもない、戦争をやっている国の、一般人の暮らしなのである。
子供が自由に絵を描く事も、自由に祈る事も、「我らがテナー」と呼ばれたオペラ歌手、藤原義江のレコードを、自由に楽しむ事さえ出来ないのだ。

 


後半、描かれる神戸大空襲の様子はまさに、地獄絵図のようである。やがて敗戦。
あれ程までに大和魂を、愛国を、突貫精神を訴えていた大人たちは軽々と豹変する。
「これからは民主主義ですから」
ニコニコしながら言う大人たち。
なんという無節操。妹尾少年の胸に大人たちへの不信感が募る。
なんで、こんな境遇になってしまったのだろうか?
焼け跡を眺めながら、お父さんは不甲斐ない自分を悔やんでいるように見えた。
「戦争はいつか終わる。その時、恥ずかしい人間になっとったら、アカンよ」
戦時中であるにもかかわらず、妹尾少年に、やさしく、力強く諭してくれたお父さん本人が、自信をなくしてしまったようだった。
しかし、お父さんはやがて、焼け残ったミシンを修理する。それは妹尾少年が、家が焼ける直前に持ち出したものだ。
そして、お父さんは再びミシンを踏み始めるのである。
カタカタカタ……カタカタカタ。
妹尾家の戦後、妹尾家の神戸は、ミシンの音から復興するのである。それは、平和を自分たちの手で紡いでゆこうとする、神戸のごくありふれた、いち市民の、ひとつの覚悟の音のように、僕には聞こえた。



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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ

監督   降旗康男
主演   水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝
製作   2012年
上映時間 122分

予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。

http://www.youtube.com/watch?v=Du-p0UsLbiQ


奥付



映画に宛てたラブレター2013•9月号


http://p.booklog.jp/book/75229


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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