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もくじ
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原色宇宙人大図鑑
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祝辞
先生からの祝辞イラスト その1
先生からの祝辞イラスト その2
先生からの祝辞イラスト その3
先生からの祝辞イラスト その4
先生からの祝辞イラスト その5
先生からの祝辞イラスト その6
「未来アイテム研究所」大友そーりん
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「未来は既に腐っている」 諸星ゆびわ
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「 宇宙についての6つの物語」 松田リアル
「宇宙についての6つの物語」
1<ふたご座流星群>
2<不穏色の空>
3<夕暮れの流れ星>
4<流線型アリス>
5<夏の椿>
6<宵待月>
「美女」画ギャラリー Mono-Chrome 氷魔
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スタッフ募集
めさき出版スタッフ募集のお知らせ
第四回新脈文芸賞
トビラ
「恋人」夢沢怪奇
「恋人」の選評
「黒い葬式」北橋勇輝
「黒い葬式」の選評
「魔女の森」松田リアル
「魔女の森」の選評
「知らぬが仏、知ったが仏」林ノ池
「知らぬが仏、知ったが仏 」の選評
「猫の檀家さん」小島パブロン
「猫の檀家さん」の選評
「時をかける脱衣」遠藤玄三
「時をかける脱衣」の選評
めさき文庫のおしらせ
めさき文庫、第一弾「二十五度サマー」遠藤玄三
編集後記
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奥付
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2<不穏色の空>

光のない、どんよりとした空が広がっていた。
まだ朝なのにこの空。。。今日はなんだかいつもと違う空気が流れている。
自分が住んでいるマンションの屋上から、僕は東京を眺めていた。
霧が出てるみたいに、街がボンヤリしている。
 
「おはよ。早いね。」
 
同じマンションに住む従兄弟がやってきて僕に声をかけた。
 
「ねぇ、今日なんか変じゃない?」
 
「変って何が?」
 
「街が。」
 
声だけでわかったので、そちらを見ずに会話を進めた。
 
「ん〜そう?いつもどおりだけど。。。東京タワーって、あんな外装工事してた?」
 
彼女は僕のとなりにきて、柵に肘をつく。
 
「。。。あれ、なに?」
 
左目の端に映った物体を、僕は首を少しだけ動かし目で追った。
 
音はほとんどしなかった。スターウォーズに出てきそうな黒くて長方形の、
箱のような宇宙船が僕たちの頭上に近づいてきた。
 
「えっ!?何あれ!」
 
空に列をなして、音もなく現れた黒い飛行物体。
 
突然、先頭の1機が打ち落とされる。
 
それは数百メートル先の民家に墜落した。 
小さな悲鳴が、聞こえたような気がした。 
爆発音と共にオレンジ色の炎が街を包んだ。
大きな破片が僕たちめがけて飛んできた。
 
咄嗟に身を伏せたが、どうやら5階あたりに命中したようだ。
 
「攻撃しちゃ、マズイでしょ。。」
 
僕は呟き、従兄弟の手をとって非常階段へ急いだ。
2013年8月15日。
それが、長い宇宙戦争の始まりの朝だった。
 

3<夕暮れの流れ星>

薄紅色に染まった空を見上げていると、キラッと光るものが動いた。 
星よりも速く、流れ星よりも遅く。
 
(あれ、何だろう。。)
 
その光るものを追って、少し早足で歩いた。
 
その先には広い公園がある。
野球のグランドとプールも。
 
光る何かは、ストンと公園の植え込みに落ちた。
 
(みんな気づかないのかな。)
 
回りにいた人達は、知らん顔だ。
見えていないんだろうかあれが。
 
私が植え込みを覗くと、その光の玉は野球のボールくらいの大きさでそこにあった。 
触れようか迷っていると、それは土の中にスーッと吸い込まれていった。 
その瞬間、私は思い出した。
(ここは。。。!)
 
砂場に落ちていたシャベルでそこを掘り返すと、私が幼稚園のときに埋めた宝箱が出てきた。
 
(やっぱり!)
 
錆びた缶をあけると、オモチャの指輪やカードや似顔絵やピンどめや、
懐かしいものがごちゃごちゃと入っていた。
 
(?。。。)
 
ただひとつ、記憶にないものが入っていた。
 
CDだ。
開封されていない、まだ新しいCD。
発売日は2013年8月15日となっている。
 
私はなんとなくすべてを悟った。
 
きっとこのCDは、いまこれを聞かずに作られた物だ。
私はそっと宝箱にCDを戻し、もう1度土に埋めた。
  
さあ、明日からレコーディングだ。
 
空はすっかり、紺色に染まっていた。

4<流線型アリス>

「この星はきれいね。」
 
南新宿の歩道橋から道路を見下ろしながら、アリスは言った。
 
「ねぇ、帰んないでよ。」
 
僕は頼んでみた。
アリスの家は、遠いのだ。
なんせ違う星なのだから。
 
長い間当たり前のように一緒にいたから、もう忘れかけていた。
 
「んー。でももうそろそろ帰らないと。」
 
「じゃあ僕も行っていい?」
 
僕のその言葉に、アリスはこう答えた。
 
「わたしね、流れ星より流れ車の方が好きだよ。」
 
「なにそれ(笑)」
 
でも確かに、いま目の前に広がる景色は流れ星よりきれいだと思った。
「ついたらメールちょうだい。」
「無理です(笑)」
アリスとの最後の思い出は、夏の暑い空気に包まれていた。

5<夏の椿>

私が地球に送りこまれてから、10年が経つ。
 
人類に気付かれずミッションを達成させるために、私が考えた私自身の設定は
『椿の妖精』だ。
 
地球の日本という島国に降り立ったとき、まず目に入ったのが
椿の花だった。
ぽつんと赤いその花は、私の記憶に強く語りかけてきた。
凛として、それでいて可憐な花だった。
 
地方都市の中小企業に就職した私は、静かに「人」としての生活を送りながら
ゆっくりと計画を進めていた。
人類の時間軸で500年かけてのミッションだ。そうあせることはない。
 
私は人間の社会になじみ、疑われることなく生活を続けた。
『椿の妖精』という設定上考えたあらゆることは、10年の間1度も使うことはなかった。
 
夏のある日、私は人気のない路地を歩いていた。
しん、と静まり返った細道で、垣根に咲く1輪の白い椿を見つけた。
夏に咲く椿は白く、冬に咲く椿は赤い。
私は、赤い椿の方が好きだ。
(そういえば私は、この花を赤くすることもできるんだったな)
ふと自分の設定を思い出し、椿の花に触れた。
白い椿は、じんわりと赤く染まっていった。まわりのつぼみも全て、
赤い色で咲かせた。
 
「おじさん、お花のようせいさんなの?」
 
小さな少女がすぐそばに立っていた。
 
『椿の妖精』の設定
・椿の花を自由に咲かせることができる、また枯らすこともできる
・咲かせた椿からとろける甘い蜜を出すことができる
・私が咲かせた花を受けとった人間は、それ以上成長しない
etc….
 
私はそっと、赤い椿を一輪、少女に手渡した。
 

6<宵待月>

終電で帰れた安心感と月の綺麗さに、ついつい浮かれてコンビニでいろいろ買ってしまった。
プリン、ジュース、ランチパック、卵。

ここでの生活にようやく慣れてきた今日この頃。
大きく手を振りながら歩いていたら、袋がすっぽぬけて飛んで行ってしまった。
ベシャ。
3m先で不思議な音をたてたのは、たぶん卵たち。
商店街の真上に佇む月の光が、一直線に卵に降り注ぐ。
コンビニ袋の中から、小さな二足歩行の何かが出てきた。12人。
「お迎えに上がりました、姫。」
 
私は1歩、2歩とあとずさりし、そしてダッシュできた道を戻った。
終電はもう、終わってしまっていた。
 
月になんて、絶対に帰りたくない。
私と小さな宇宙人の、真夜中の追いかけっこが始まった。


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