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「その再生情報を、クオリア(感覚質)と称しています。クオリアは真に個人の感覚で、他人に伝えようがないので、人はクオリアに於いて、ひとり々全く別の世界に生きている可能性があるわけです。」

「それで、クオリアに個人差を仮定して、外部とのコミュニケーションに支障が出る確率を計算したのが、先日の私の論文です。」

 

近代的な研究室には場違いに古風な掛け時計が、時報の鐘を叩いた。

ガラス屋根の上空には、既に星が瞬いている。

「3人の証言に共通するのは、この黒いのに体全体を包み込まれたにも拘らず、3人とも恐怖も危険も感じていないこと、それと、自分以外の誰か、或いは意識を持った何か、がこの中に共存していたということだ。」

「サラリーマンが言う安心感、自分が外に滲み出る感覚、主婦の言う自分と他との境界が曖昧になる感覚、自分の中に他人がいる感覚、ホームレスの仲間がいつも傍にいてわがままを聞いてくれる感覚。これらは、君の言うクオリアそのものじゃないか?」

「この黒いムースの中で、クオリアを共有していたとでも言うのですか!」

「少なくとも、行ったことの無い建物の内部や、見たことも無い機械の仕組みは、自分以外の誰かの記憶に基づいている。腸の中のポリープを自覚したのは、主婦の感覚に誰かが反応したからだと思う。」

「――根拠があるんですか?」

「黒いムースの成分を詳細に調べたら、とんでもないことが分かった。」

難しい顔をして立ち上がると、背後の引き出しから青いフォルダを取り出した。

「分子量比で水素60%、酸素25%、炭素10%、窒素2.5%、リンとイオウがそれぞれ

0.1%・・・。」

「意味が解るか?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次巻へ。


奥付



人・間・人 (Ⅰ)


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著者 : 南海部 覚悟
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