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証言③

【証言③】

「そりゃよ、俺はお城の石垣の下で、ダンボール包まって暮らしているホームレスよ!」

「もう歳だし、将来に希望もねえし・・・寒風に吹き晒されるときゃ、震えながらお迎えが来るのをひたすら待っている・・・。」

「俺たちのような境遇で生きてゆくのは辛えもんよ、だからって自分で始末する勇気もねえし、他人に頼めることでもねえしなあ。」

「つまりは、死ぬために必死で生きているようなもんさ。」

「――だから、あの黒いのに包まれたときゃ、てっきりお迎えだって思ったよ。」

「なんせ、寒さが全く気になんねえ、腹もへらねえしどこかぶつけても痛くねえ・・・自分の感覚を自分でコントロールできるんだ。」

「いつも仲間が傍にいて話し相手に困らねえ、何処へでも潜り込めるし何処へでもついていける、いくら歩き回っても疲れることはなかったな。」

「仲間のなかにゃ女もいてよ、こんな男のわがままもちゃんときいてくれる・・・やっぱりありゃ天国さ。」

「――だがよ、何かこう死んでるって気もしなかった、ちゃんと呼吸してるし、足が宙に浮いてる感じも無かった。」

「それで仲間に訊いたんだ、俺は死んだのか?って。そしたら、死ぬのも生きるのも自分の意のままだって、こっちに来て自分たちと一緒に生きないかって・・・・・・きっぱりと断って帰ってきた。」

「――神様の決めなさることを、勝手に自分で決めるわけいかねえだろ。」

「正気に戻ったとき、この黒いベタベタが体中に付いていたもんだから、入れ物を探してかき集めたよ。」

「辛いときこれを見て思い出すんだ、今じゃこれが生甲斐みてえになってな。」

「つくづく思うよ、人は自分の体の中でただ一人、寂しいもんだなって・・・。」