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はじめに

 はじめに


 紙を基材とする絵や版画、写真等のための額装では、厚紙で出来たボードに窓を開け主題の周囲を取り囲む余白を施すことが多くあります。これらの厚紙部分はマット、あるいはパス・パルトゥー(ヨーロッパ名称)と呼ばれ、額装されるものを保護、保存すると同時に視線を導く効果や装飾という額装にとって欠かせない大切な機能があります。油彩画と違い紙を基材としたアートピースは表面がデリケートなので、ガラスを入れた額縁に納め、外部からの直接的なダメージを防ぎ保護する必要があります。その際、ガラスとアートピースとが密着しないように、それらの間に空間をとる役割もマットには求められます。
 16世紀のヨーロッパにおいて、既にこのマットの役割をもった余白が素描や版画の周囲に置かれ、装飾も施され始めていました。画家、建築家であり同時に美術批評家でもあったジョルジョ・ヴァザーリは素描や版画のコレクターでもありました。彼は自身の所有するそれらのコレクションの周囲に線による装飾を施した最初の額装家でもあったのではないかと考えられています。当時の余白装飾は額に納め飾ることを目的としたものではなく、アルバムや本に仕立てた作品の周囲を縁取るものでした。マットというよりは装丁に近いものです。


 板ガラスの製造技術の発達した18世紀のヨーロッパでは、薄くて広い面積のガラスを作ることが可能となり、版画や素描、パステル画の保護のためにそれらと共に額縁に装填され始めました。油彩画と同様に美術品としての価値を認められはじめた版画や素描は、マットで装飾されガラスで保護されることによって壁面に飾られることが可能になったのです。美術品として、また同時にインテリアのなかでの装飾品としても自らの居場所を見出していくことになります。
 今日、多くのマットは2〜3㎜の厚みのある白い厚紙に斜め45度の切り口の窓が開けられ、作品を額装していることが多いようです。このマットの切断技術はシングルカットなどと呼ばれ、マットと共にアートピースを額装する場合、シンプルで最も基本となる方法として広く行われています。
 この本では、マットの制作における基本的技術を2種類紹介します。シングルカット、そしてパス・パルトゥー・サンプルと呼ばれる、窓口を直角に切り納めるものに合わせて色紙を選び貼っていく、装飾性に富んだ技法です。フランスの額装技術の一つとして紹介されることが多いマットです。また、ブックマットの作り方や裏板の作り方、額縁への納め方の基本も紹介します。
 額装されるものやその目的に合わせて、これら二つの基本技術を覚えておけば様々な額装の可能性に結びついていくものと思います。


                              小笠原 尚司
                              小笠原よしえ



© OFFICE OGASAHARA



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手切り

窓枠の線に厚手の定規(重量定規)をあて、カッターの刃の角度を45度に保ちながら切ります。以前は熟練した職人が、この方法でいとも簡単そうに窓を切っているのを見かけましたが、最近ではコンピューターマット・カッターによって、正確に瞬時に切ってしまうようです。手切りのよさは切り口がどことなくやさしく、額装全体に温かみ、手のぬくもりのような素朴な印象を与えてくれることでしょうか。切り口の角度が少し鈍角だったり、曲がったりしているくらいでもいいのです。


注)一度で切らず2〜3回カットを繰り返して表まで刃が到達する感じ。

*鉛筆を持つようにカッターを持ち
角度を一定に保つ。




© OFFICE OGASAHARA




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販売価格200円(税込)

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