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本文3

線維筋痛症の薬物治療各論

 プレガバリンまでが著者が優先投与している薬であり、優先順に記載している(表4)。著者はこれらの薬をスタメンと個人的に呼称している。7番目までは安価あるいは副作用の頻度が少ないかのどちらかの特徴を持つ薬であり、8番目以降は有効性の根拠が強い薬である。可能な限り同系統の薬は隣接しないようにしている。サインバルタやリリカが後ろにあることは心強い。

 

1:ノイロトロピン®

 対照群のない研究[60-61]や症例報告[62]で有効性が報告されている。評価項目全てでバランスのとれた薬である。副作用が軽微で頻度が少ないことが長所である。1日4錠より8錠の方が鎮痛効果が強いが[63]、通常は一つの医療機関からは1日4錠しか処方できない。現在、米国国立衛生研究所で二重盲検法による研究が進行中である。

2:アミトリプチリン(トリプタノール®)TCA

 系統的総説によると25mg/日を投与すると6-8週間は有効であるが12週間では有効性が認められず、50mg/日には有効性が認められない[64]。しかし、100mgを超えると鎮痛効果が出る患者もいるため150mgを使用せず無効と判定してはならない。著者は5mgから30mgまで1週間に5mgずつ増量している。副作用も鎮痛効果も生じなければ以後は1週間に10mgずつ増量している。30mgの時点で副作用あるいは鎮痛効果があれば1週間ごとに5mgずつ増量し、50mg以降は1週間に10mgずつ増量している。1週間150mgを投与しても無効であれば中止している。眠気の副作用が強いため、50mgまでは夕食後又は就寝前のみに投与している。それ以上投与する場合でも夕食後又は就寝前の処方を多めにしている。就寝時の眠気は副作用ではなく、有用な薬効である。

3:デキストロメトルファン(メジコン®)鎮咳薬

 N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬、つまりケタミンの類似薬である。二重盲検法で有効性が示されている[65]。1日3錠を1週間、6錠を1週間、8錠を2週間投与して無効であれば中止している。薬価が安く、副作用が少ない割に鎮痛効果が強いことが長所である。適用症が慢性気管支炎などであることや、眠気の副作用はそれほど強くはないが自動車の運転が禁止されていることが短所である。

4:ノルトリプチリン(ノリトレン®)TCA

 アミトリプチリンの多くは体内でノルトリプチリンに代謝される[66]。投与方法はアミトリプチリンと同じである。一般論としてアミトリプチリンより鎮痛効果は弱いが副作用も弱い。症例報告[67]で有効性が示されたのみであるが、国際疼痛学会は神経障害性疼痛における一般論としてアミトリプチリンより優先使用することを勧めている[35]。

5:メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用

 対照群のない研究によりメコバラミン1500μgと葉酸15mg併用の有効性が示されている[68-69] [70]。

6:イコサペント酸エチル(エパデール®

 対照群のない研究で2700mg/日の有効性が示されている[71] [72]。上限量の2700mgでは査定されることがあるため、1800mgまで使用している。恐らく小児に使用しても安全と推測しているが、適用病名の点で実質的には小児には処方不能である。

7:ラフチジン(プロテカジン®)H2ブロッカー

 対照群のない研究で20mg/日の有効性が示されている[73] [74]。H2ブロッカーの中で唯一胃粘膜保護作用がカプサイシン感受性知覚神経を介する。機能性胃腸症を合併する場合には優先順位が高くなる。胃薬であるため、機能性胃腸症を合併する場合には優先順位を上げている。

8:ミルナシプラン(トレドミン®)SNRI

 メタ解析[75] [76]や系統的総説[77] [78]で有効性が示されている。8以下の薬の中で最も薬価が安い。後発品が存在する。15mgから1週間ごとに15mgずつ増量し、最後は1週間25mgを4錠使用し無効であれば中止している。

9:ガバペンチン(ガバペン®)抗痙攣薬

 二重盲検法で有効性が示されている[79]。添付文書に記載された使用方法は鎮痛目的の使用方法ではない。100mgから400mgまでは1週間に100mgずつ増量し、以後は1週間に200mgずつ増量し2400mgを1週間投与して無効であれば中止している。他の抗痙攣薬を併用する必要がある。クレアチニンクリアランス(Ccr)が低下した患者では上限量を減らす必要がある。

10:デュロキセチン(サインバルタ®)SNRI

 メタ解析[75] [76]や系統的総説[78] [80]で有効性が示されている。20mgから1週間ごとに10mgずつ増量し60mgを1週間投与して無効であれば中止している。

11:プレガバリン(リリカ®)抗痙攣薬

 メタ解析[76] [81] [82] [83] [84]で有効性が示されている。FMに対する適用症があり、上限量は450mgであるが、神経障害性疼痛に対する上限量は600mgである。450mg では鎮痛効果がないが500mgを超えると鎮痛効果が出る患者がいるため、600mgを使用せず無効と判断してはならない。Ccrが低下した患者では上限量を減らす必要がある。TCAの眠気は徐々に起こるが、プレガバリンによる眠気は時に突発的に生じるため、同じ眠気でもプレガバリンによる眠気の方が危険である。添付文書における自動車運転禁止の表現が他の向精神薬より厳しい。添付文書上は他の向精神薬においても自動車の運転は禁止されているはずであるが、禁止よりもさらに厳しい記載をする意図が著者には理解できない。他の向精神薬における自動車運転の禁止は黙認してもよいから、プレガバリンの添付文書における自動車運転禁止の表現が他の向精神薬より厳しいのであろうか。プレガバリンの添付文書と他の向精神薬の添付文書の差をどのように解釈するのか著者にはわからない。肥満の副作用が強いことも問題であり10 kg以上の体重増加が起こることもある。遅発性に起こるからこそ問題になる副作用である。アミトリプチリンにも肥満の副作用があるが、個人的な経験であり明確なデータはないがアミトリプチリンによる肥満よりもプレガバリンの肥満の方が程度が強い印象を持っている。プレガバリン発売以降、FMを含む神経障害性疼痛に対して第一選択として使用されることが多い。著者を受診時には、しばしば150mg以下の少量が鎮痛効果の有無を確認されないまま漫然と処方されている。

 

スタメン以外の薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)

 長期使用により転倒、骨折、交通事故、抑うつ症状、記憶力の低下、認知機能の低下、骨粗鬆症、譫妄、自殺、死亡などの副作用が起こると共に常用量依存が起こるため[36]、痛みやこわばり軽減目的や、睡眠目的で使用してはならない。常用量依存が起こると中止が困難になる。中止を試みなければ常用量依存は起こらないから問題はないという意見は妥当ではない。前述の忌まわしい副作用が起こるからである。不安障害を合併する場合には抗うつ薬が効果を発揮するまでの短期間の使用にとどめるべきであり、決して6か月以上使用してはならない[36]。依存が起こりにくい超長期作用型のロフラゼプ酸エチルなどを使用することが望ましい[36]。複数のBZD使用は有害無益である[36]。線維筋痛症診療ガイドライン2013[2]にはアルプラゾラム(ソラナックス®)に有効性の根拠があるかのような記載が一部にある。しかし、その根拠となる論文の抄録には有効性がある由が記載されているが、本文には対照群と差がないと記載されている[85]。つまり、今日の基準では有効性に科学的根拠はないと見なされる。

ステロイド、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®EN)

 FMそのものには有害無益である。

ピロカルピン(サラジェン®

 線維筋痛症診療ガイドライン2013には有効と記載されており、有効性のエビデンスもあると記載されているが[2]、著者が調べた範囲ではその根拠となる論文を現時点では見つけられない。

アセトアミノフェン(カロナール®)およびNSAID

 単独では無効である。実際に使用すると有効なことがあるが、FMそのものに有効であるのか、FM患者が何らかの侵害受容性疼痛を合併しているのかは不明である。月経困難症にFMの治療を行えば症状が軽減することが多いが月経時には痛みが悪化することが多い。その場合には、月経時にこれらの薬を追加すると有効なことが多い。

 アセトアミノフェンは胃腸合併症を引き起こさないと考えられているが、実は1日2000mgを超えると胃腸合併症が増えると報告されており[86]、注意が必要である。

ラロキシフェン(エビスタ®

 閉経後の女性FM患者に対して、プラセボを用いた16週の二重盲検法によりラロキシフェン60mgを使用すると疼痛・疲労・圧痛点の数・睡眠障害・Stanford Health Assessment Questionnaire (HAQ)が有意に改善したが、Anxiety and Depression questionnaire (IHAD)は改善しなかったと報告されている[87]

ミルタザピン(レメロン®、リフレックス®

 二重盲検法により15mg/日と30mg/日はFM患者の睡眠を有意に改善し、痛みを有意ではないが改善した[88]。眠気の作用が強烈なため、著者は睡眠薬として1/4錠から1週間ごとに1/4錠ずつ1錠まで増量し、睡眠薬として効果が不十分であれば、それ以降は鎮痛薬として漸増している。

オピオイド(モルヒネ®、デュロテップ®MTパッチ、ワンデュロ®パッチ、フェントステープ)

 強オピオイドでありFMには極力使用しない方がよいが、初診時から痛みが激烈で自殺の危険性がある場合や適切な治療を2年以上行っても十分な鎮痛効果が得られない場合には使用せざるを得ない場合もある。ペインクリニック専門医を持っていない場合には、モルヒネ200mgを超えると査定されやすいという非公式の制度が地域によっては存在する。モルヒネを200mgを超えて使用していた際、査定にあい30mgしか認められなかった。医療機関にとっては大損害であり、その後の治療が破綻する。そのため、ペインクリニック専門医を持っていない場合には、実質的にはモルヒネでは200mgが上限量である。

 モルヒネの1回量が20mgになれば薬価が2割以下の散剤に変更している。痛みのある患者に使用する限り依存は起こらないという理論はあるが、非癌性慢性痛であるFMやその不全型に実際に使用すると医師、患者共に白い目で見られるという状況である。痛みのある患者に使用する限り依存は起こらないという理論はあくまで理論であり証明されていないことには留意すべきである。

トラムセット®

 二重盲検法で有効性が報告されている[89]。トラマドールとアセトアミノフェン(カロナール®)の合剤である。

トラマドール(トラマール®

 二重盲検法で有効性が報告されている[90]。トラムセット®と比較して、トラマールの細かい用量設定が可能であり、上限量が400mg(トラムセット®では300mg)であることが長所である。アセトアミノフェンと併用する場合にはトラムセット®の方が便利である。

 トラマドールとトラムセット®は共に弱オピオイドである。しかし、制度的にはオピオイドではなく、使用が容易である。前述したように、ペインクリニック専門医を持っていない医師がモルヒネを200mg使用しても鎮痛効果が不十分な場合には補助的に弱オピオイドを使用している。

ブプレノルフィン(ノルスパン®テープ) 

 弱オピオイドである。モルヒネと併用するとモルヒネの鎮痛効果を阻害してしまうため、モルヒネと併用できない。そのためこれを使用するよりトラマドールやトラムセット®を使用する方が望ましい。

 

スタメンを使い切った後の薬物治療

 著者が優先使用している11種類のスタメンを使い切ったら、その後は薬物治療はないということはない。すべての抗うつ薬、すべての抗痙攣薬、タンドスピロン(セディール®)、漢方薬、チザニジン(テルネリン®)、ラロキシフェン(エビスタ®)、一部の抗精神病薬などが候補になる。詳細は線維筋痛症診療ガイドライン2013[2]を参照していただきたい。一般論としてSSRITCAより鎮痛目的で優先使用してはならないと記載したが、一部の患者ではSSRIがある程度の鎮痛効果を発揮することは事実である。

 組み合わせ治療も有用である。単なる偶然である可能性があるが、単独では無効であった薬を二つ組み合わせると鎮痛効果が生じることがある。明確な科学的な根拠はないが著者が優先的に使用している組み合わせはアミトリプチリン(トリプタノール®)またはノルトリプチリン(ノリトレン®)とクロナゼパム(ランドセン®、リボトリール®)の2通りの組み合わせと、二つのSNRIとプレガバリン(リリカ®)またはガバペンチン(ガバペン®)の4通りの組み合わせである。

 維筋痛症診療ガイドライン2013に記載されていないがFMに有用な鎮痛薬あるいは有用な組み合わせがあればお知らせいただきたい。

 

 漢方薬の使用方法

 対照群のない研究で十全大補湯の有効性が示されている[91]。それ以外は症例報告である。

 漢方薬のみでFMやその不完全型を治療することは望ましくない。漢方薬の鎮痛効果は一般論として強くないためである。スタメンのどこかに有効と思われる漢方薬を入れて使用することが望ましい。漢方薬の欠点は漢方薬の知識が乏しい医師とそれが豊富な医師の間で治療成績が異なることである。著者の漢方薬に関する知識は乏しいためあまり漢方薬を使わないが、知識のある医師は積極的に使用されればよいと考えている。もし可能であれば、漢方薬の知識が乏しい医師がどのように漢方薬をFMに使用するのかを簡便にご教授いただきたい。

 なお、漢方薬は食前投与あるいは食間投与がよいという理論には科学的根拠がないばかりか[92]、食前投与より食後投与の方が優れているという報告[93]さえある。非漢方薬ではほとんどの場合食後投与であるため、漢方薬を食前投与あるいは食間投与したのでは16回前後の内服が必要になる。16回前後の内服は理論的には可能であっても実際には不可能である。漢方薬を食後投与しても構わない。

 

 不安障害合併時の治療

 不安障害とFM(あるいはその不完全型)を合併している場合には不安障害と痛みのどちらか一方を優先して治療した方がよい。患者が困っている症状を優先して治療することが望ましい。どちらか一方の治療を行い、それでも他方の症状が残ればその時に他方の治療を行うことが望ましい。

 不安障害とFM(あるいはその不完全型)の治療を同時期に開始することは治療難度が高いためお勧めしないが、同時期に開始せざるを得ない場合がある。その場合には可能な範囲で同一日に薬を開始、増量せず、数日の間隔をあけた方がよい。例えば痛みの治療薬は月曜日ごとに増量し、不安障害の治療薬は木曜ごとに増量するのである。

 TCASNRIは不安障害とFM(あるいはその不完全型)の両方に有効であるが、著者の経験ではそれらを不安障害とFM(あるいはその不完全型)の両方の治療薬として使用することはお勧めできない。それらの薬が一方のみに有効な場合にその後の対処に困るからである。TCASNRIを鎮痛目的で処方し、SSRIを抗不安目的で処方することをお勧めする。

 社会不安障害、パニック障害、強迫性障害を合併していると痛みとの間に悪循環が生じる。そもそもそれらが合併していると、通院そのものが困難になるため、治療が必要である。特に、パニック発作が起きている間は痛みの治療を適切に行うことはできない。前述のようにパニック発作のみを治療するか、痛みと同時に治療を行う必要がある。パニック発作が既に起きている場合にはBZDを使用せざるを得ない場合が多い。SSRIにはパニック発作を押さえる効果があるが即効性はなく1,2か月が必要なことが多いからである。ただし、前述のように不安障害あるいはパニック発作の本質的な治療薬はSSRIであってBZDではない。SSRIを1年以上長期使用すれば、不安障害あるいはパニック発作は消失しSSRIを中止可能なことがある。しかしBZDでは有効時間のみの効果であり、生涯投与が必要になる。前述のように6か月を超えてBZDを使用してはならない。

 

 小児患者の治療

 小児FM患者の治療法として母子分離が報告されている[2]。薬物を使用しない安全な治療方法であるが、現実的にはそれを行うことは困難である。その理由は三つである。①不全型FMを含めると膨大な患者数になるが、全員を入院させることは現実的ではない。②母子分離を行うためには多数の人員が必要であるが、ほとんどの医療機関ではその人員を確保できない。③母子分離のためには居住地から離れた医療機関に入院させる必要がある。その間の患者さんの教育の問題、移動費用を含めた費用の問題が生じる。しかし、母子分離が必要な患者さんは存在する。当初は外来で非薬物治療と薬物治療を行い、それに反応しない場合に母子分離を行うことが現実的であると考えている。著者が治療した小児(治療開始時が中学生以下とここでは定義)患者(不完全型FMを含む)は2人である。2人とも薬物治療を中心とした治療を行い、1人は痛みがほぼなくなり、もう1人は痛みが半分程度になっている。

 直接受動喫煙(喫煙者のたばこの煙を吸い込むこと)は論外であるが、間接受動喫煙(喫煙者の体、呼気に含まれる有害物質を吸い込むこと)を避けるために両親の禁煙は必須である。

 スタメンの中で、著者はノイトロピン®、アミトリプチリン(トリプタノール®)、デキストロメトルファン(メジコン®)、ノルトリプチリン(ノリトレン®)、メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用、ラフチジン(プロテカジン®)を使用している。現時点ではガバペンチン(ガバペン®)、プレガバリン(リリカ®)を使用した経験はないが、必要であれば使用する予定である。イコサペント酸エチル(エパデール®)は小児にも安全であると推測しているが、高脂血症が適用病名であり、査定される危険性が高いため使用していない。

 

 

 

 


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最終更新日 : 2014-07-13 17:18:57

本文4

妊婦患者の治療

 今後は妊娠を希望するFM患者や不全型FM患者あるいは妊婦患者での治療が問題になる。妊婦の場合には非薬物治療が通常以上に優先されるべきである[94]。妊婦に関する問題は別の書籍を参照していただきたい[94]。著者はノイトロピン®、デキストロメトルファン(メジコン®)、イコサペント酸エチル(エパデール®)を優先的に使用している。必要があれば、メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用も行う予定である。ただし、これらの薬には妊婦に対する明確な安全性が確立しているかどうかは不明であるため、十分な説明が必要である。なお、従来は妊婦に安全と考えられていたアセトアミノフェン(カロナール®)を妊婦に使用すると発達障害[95][96]や注意欠陥・多動性障害[97]を引き起こしやすいため注意が必要である。神経障害性疼痛の場合には代替薬が存在するが、侵害受容性疼痛の場合には代替薬が存在しないため、深刻な問題である。

 

月経困難症の治療

 月経困難症の治療にはFMの治療が有用である。FMの治療に含まれないが、月経困難症の治療に含まれる治療はホルモン剤くらいである。ホルモン剤には副作用はあるがその有用性を否定するつもりはない。月経困難症のみの患者を治療した経験はないが、FMやその不完全型の患者は月経困難症を合併することが多い。FMの治療により痛みが軽減すれば、月経困難症も同時に軽減することが多い。一部の患者ではFMの治療により月経困難症の症状は軽減するが月経時の数日はNSAIDやアセトアミノフェンを併用するとさらに症状が軽減する。

 

更年期障害の治療

 更年期障害の治療にはFMの治療が有用である。FMの治療に含まれないが、更年期障害の治療に含まれる治療はホルモン剤くらいである。ホルモン剤には副作用はあるがその有用性を否定するつもりはない。更年期障害のみの患者を治療した経験はないが、FMやその不完全型の更年期女性は更年期障害を合併することが多い。FMの治療により痛みが軽減すれば、更年期女性も同時に軽減することが多い。

 


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最終更新日 : 2014-07-13 17:22:03

図3


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最終更新日 : 2013-10-29 12:28:18

図4


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最終更新日 : 2013-10-29 12:28:55

本文5

治療成績

 治療方法と治療成績は表裏一体である。どのように優れた治療理論でも治療成績が悪ければ実用になりにくい。具体性に欠けるため追試が困難な治療方法も実用にはならない。「2007年4月から2013年6月までの線維筋痛症およびその不完全型(慢性広範痛症/慢性局所痛症)の治療成績の比較」[93]および「2011年9月29日から2013年6月までの線維筋痛症およびその不完全型(慢性広範痛症/慢性局所痛症)の治療成績の比較」[94]の二つの治療成績を報告している。その治療成績は3か月以上治療した全患者の治療成績であり、それには脱落例も含めている。2007年4月から2013年6月までの治療成績[93]には本書のスタメンの中の少なくとも4つを使用していない時期の治療成績も含んでいる。2011年9月29日から2013年6月までの治療成績[94]はほぼ本書に記載した治療による治療成績である。今後もスタメンに含まれる薬を増やす予定である。

 著者はそれらの治療成績に絶対の自身を持っている。治療成績が優れているという意味ではない。自分自身に厳しく評価したという意味である。本書で示した治療を行えば、著者と同じ治療成績を得ることができると著者は考えている。著者の治療を行うのであれば徹底的に行っていただきたい。例えば、上限量を使用せず無効と見なさないでいただきたい。著者の治療と同じ治療を行い、その治療を報告していただきたい。

 著者は薬物治療を中心とした治療を行っている。さらに言えば、誰でも追試可能な治療にするために具体的に記載した。そのため、医師免許さえあれば誰でも実施可能な治療である。特別な経験、設備は不要である。生まれて初めて使用する薬を本書に記載した通りに使用する根性のみが必要である。本書を読めば、著者が鎮痛目的で初めて抗うつ薬を使用した時の知識をしのぐ知識を得ることができる。FMやその周辺疾患に関する膨大な論文を読み、それを多数の患者さんで実際に試した。その過程で得た結果や、様々な失敗を繰り返しながら得た教訓により本書を書いた。

 

おわりに

 FMの診断基準を読んで、いい加減な疾患と思う医師は少なくない。しかし、三叉神経痛など自覚症状のみが診断基準である疾患は少なくない。医学とは、真理を追究する学問であるとともにより優れた治療成績を求める学問でもある。現時点の医学レベルでは医学的に説明できない痛みにはFMの治療が最も有効である。最も優れた治療方法を選択することが医師の責務である。

 繰り返し述べているように、FMの治療は変形性関節症など多くの慢性痛に有効である。FMを特別視せず、エビデンスに基づいた有効な治療方法が最も多い慢性痛とみなすことが重要である。

 

 本書は現在勤務中の医療機関とは何ら関係がない。FMの診断や治療に関して疑問があればツイッター(@KatsuhiroTodaMD)で質問していただければお答えいたします。

 


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最終更新日 : 2014-07-13 16:59:13


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