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線維筋痛症の診断

 1990年の分類基準[4](表1、図1)が実質的にほぼ唯一の診断基準であったが、2010年に臨床用予備的診断基準[5](表2)、2011年に研究用予備的診断基準[6](表3)が報告された。1990年の基準は廃止ではなく使用可能である。2010年の基準を用いると、多数の症状の有無を口頭で患者に確認するための時間がかかりすぎることや症状を説明しうる他の疾患をすべて否定する必要があるため、著者は1990年の基準を用いている。それを用いれば、診断に時間がかからずその基準を満たせば他にいかなる疾患を合併していても自動的にFMと診断可能である[4]2011年の基準は簡便であり診断に時間がかからず、医師の診察が不要であるため疫学調査には有用である。ただし、症状を説明しうる他の疾患を否定する必要があるが、患者へのアンケートという少ない情報に基づいた基準であり、医師の診察なしでどのようにして症状を説明しうる他の疾患を否定するのかという矛盾に満ちた診断基準である点には留意すべきである。また、線維筋痛症診療ガイドライン2013には2011年の基準においては痛みの部位と症状の点数の合計が13以上の場合にFMと診断する由が記載されているが[2]2011年の基準は①痛みの部位が7以上かつ症状の点数が5以上あるいは②痛みの部位が3-6かつ症状の点数が9以上、のどちらかを満たす必要がある[6]。「痛みの部位と症状の点数の合計が13以上」は診断基準ではないことをその基準が掲載されている論文の筆頭著者であるWolfe医師自身が明言している[7]

 1990年の分類基準[4]において圧痛点を約4 kgで押さえることに関して、「いい加減な診察方法である。」という意見がある。この意見は妥当でない。圧痛は医学界では自覚症状ではなく、他覚所見であると広く認められている。例えば腹部の圧痛は重要な他覚所見である。腹部の圧痛を調べる際の力は明確には定義されていない。1990年の分類基準の一つである圧痛点は約4 kgで押さえることになっている。押さえる力が定義されている点では腹部の圧痛よりは正確である。FMにおける圧痛点の圧痛を他覚所見と認めずいい加減と判断するのであれば腹部の圧痛はそれ以上にいい加減な所見になる。余談になるが圧痛点を「約4 kgの力」で押さえるのである。「約4 kg/cm2の圧力」で押さえるのではない。1990年の分類基準が記載された原文[4]を確認していただきたい。「約4 kg/cm2の力」で押さえることは不可能である。「kg/cm2」は力の単位ではなく圧力の単位であるからである。

 通常は腰痛、肩こりから不全型FMを経由して10年以上かけてFMが発症すること[3]や不全型FMFMの治療を行えばFM以上の治療成績を得ることができること[8]を考慮すると、診断基準は学会発表や論文作成の際には価値があるが、臨床的にはほぼ無価値である。

 FMの診断において注意すべき点は合併する疾患の診断である。FMやその不全型患者の訴える痛みの中には侵害受容性疼痛やFMとは関係のない神経障害性疼痛が原因のこともある。全てを見つけることは不可能であるが、常に注意する必要がある。侵害受容性疼痛を誤ってFMの不全型と診断した経験もある。

 

線維筋痛症の治療が有効な疾患

 FMの治療は肩こりや腰痛症にも有効である[3]。さらに言えば、医学的に説明の付かない痛みやほとんどの神経障害性疼痛にも有効である[3]FMは中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)の代表疾患であり[9]CSSに含まれる疾患の中で痛みを引き起こす疾患(口腔顔面痛、緊張型頭痛、外陰部痛、機能性胃腸症、更年期障害、月経困難症など)にも有効である[9]。つまり、侵害受容性疼痛ではない痛みの大部分に有効なのである。侵害受容性疼痛か神経障害性疼痛か鑑別困難な場合にはアセトアミノフェン(カロナール®)やNSAIDを長くても12か月使用し、無効であれば神経障害性疼痛と見なしてFMの治療を行えばよい。FMの治療に精通すれば、痛みの治療成績が著しく向上する。

 

変形性関節症に線維筋痛症の治療が有効

 変形性関節症は侵害受容性疼痛と思われがちであるが、実はそうではない。変形性関節症の多くは3か月以上痛みが続く慢性痛である。原因が何であれ痛み刺激が3か月も持続すると脳に機能障害が生じる。CSの理論である[10]CSによって生じた疾患群がCSSである。別の言い方をすれば中枢性神経障害性疼痛である。つまり、変形性関節症のほとんどは侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の合併である。侵害受容性疼痛にはNSAIDやアセトアミノフェンが有効であり、神経障害性疼痛の治療にはFMの治療が有効である。FMの治療に精通することにより変形性関節症の治療成績が向上する。

 二重盲験法により60-120 mg/日のデュロキセチン(サインバルタ®)は変形性関節症に有効であることが示されている[11-12]NSAID治療を受けても持続的な中等度の痛みがある変形性関節症患者において二重盲験法によりデュロキセチンの有効性が示された[13]。デュロキセチンはFDAにより変形性関節症や慢性腰痛症などの慢性筋骨格痛に使用することが認可されている[14]。変形性関節症に対してプレガバリン(リリカ®)のみ、NSAIDのみ、プレガバリンとNSAIDを併用するとプレガバリンとNSAIDの併用が最も鎮痛効果が強かったという盲験法ではない無作為振り分け前向き研究がある[15]。二重盲験法によりノイロトロピンは変形性関節症に有効であることが示されている[16]。著者は変形性関節症に対してノルトリプチリン(ノリトレン®)やデキストロメトルファン(メジコン®)に鎮痛効果があることを経験している。恐らく後述するFMに優先使用する薬(スタメン)はすべて変形性関節症に有効であろうと推測している。

 ただし、変形性関節症の痛みを軽減すると結果的に膝関節への負担を増加させることになり、関節の破壊を促進してしまう点には注意が必要である。

 

線維筋痛症の治療総論

 痛みにはNSAID、痛みにはステロイド、痛みには神経ブロック、痛みには選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)やベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)という自分の属している診療科の癖を捨てないと適切な治療はできない[2]

 FMにおける薬物治療や非薬物治療は対症療法であると同時に根治療法でもある。

 

線維筋痛症の非薬物治療

 FMを薬物のみで治療してはならない[3]。非薬物治療も重要である。その中心は、禁煙、有酸素運動、教育である。認知行動療法は論文上は有効なのであるが、具体的に何をすればよいのかよくわからないこと、それを適切に行うことのできる人がほとんどいないことが欠点である[3]

 有酸素運動を行う際には運動量を漸増することが重要である[3]。痛みが悪化するほどの運動は有害である。痛みが強く通常の運動ができない場合にはアスパルテームを含まないガムを噛んだり、深呼吸を行えばよい。

 患者教育は認知行動療法に代わる治療である。医学的に説明の付かない痛みは身体表現性障害や心因性疼痛ではなくFMやその不全型であること、FMの原因は不明であるが脳の何らかの異常が原因であることが世界の定説になっていること、FMCSSの代表疾患であること、CSSがどのような症候群であるのかなどをまずは説明することが重要である。その後、痛みが出る行動は有害であるため痛みが出るほど頑張りすぎないことなどを説明する。

 禁煙がFMに有効という報告はないが、喫煙者はFMになりやすいという報告[17]FM患者の中で喫煙者は非喫煙者より症状が強いという報告[18][19]、および著者の経験から、禁煙は有効な治療と推測している[2-3]。間接受動喫煙も有害であるため、配偶者やそれに準ずる者は禁煙、同居する家族は屋外喫煙が必要である。

 日本人のFM患者では肥満者は少ない。BMI30を超える場合には一般的な健康法としても減量することが望ましい。しかし、FMに有効な薬物にはしばしば肥満の副作用がある。最低でも1か月に1回体重測定をして、少なくとも太らないことが重要である。

 人工甘味料のアスパルテーム摂取によりFMが発症した症例が報告された[20]。アスパルテームには空腹感を増す副作用があるという報告があり[21]、そもそも減量できたデータがない。発癌性があるかもしれないという疑惑がどの程度正しいのかどうかは不明であるが、減量できたデータがない上に前述の報告があるため、摂取しない方が無難である。

 二重盲検法によりグルタミン酸ナトリウム(味の素)はFMの痛みを悪化させると報告されているので、摂取しない方が望ましい[22]

 少なくともトリガーポイントが長期的に有効という報告はない。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という報告もない。

 鍼はFMの治療としては勧められないという系統的総説がある[23]。死亡例も報告されている[24]。鎮痛効果の点で偽鍼と差がないという報告[25]や鎮痛効果を裏付ける有力な証拠が乏しいという報告[24]が多い。偽鍼が実は真の意味でプラセボではないという意見は正しい可能性はあるが、鍼に厳しい結果を示した系統的総説やメタ解析にはその意見は記載されていないことも事実である。その意見が正しければ、鍼は現時点では対照群のない研究で有効ということになり、プラセボ効果を否定できない。鍼が有効な場合、長期間実施する必要があり、費用が高い問題もある。他の治療を変更せず、12か月間鍼治療を追加し、鎮痛効果がなければ中止すべきである。それで鎮痛効果があれば、プラセボ効果かもしれないことを承知の上で高額の費用負担ができる人は継続すればよいと考えている。

 一般論として体を冷やすと痛みが悪化し、体を暖めると痛みが軽減する。

 

線維筋痛症の薬物治療総論

 FMを各カテゴリーに細分化して各カテゴリーごとに優先使用する薬を変えるという治療方法には現時点では科学的根拠がなく[2]、世界標準の治療ではない。FMそのものに有効な治療とFMに合併した疾患に有効な治療を区別しないと混乱が起きる。筋付着部炎型FMにステロイドが有効という理論[2]は癌型FMに抗癌剤が有効あるいは糖尿型FMのインシュリンが有効という理論と同程度に不適切である。著者が知る限りFMにステロイドが有効というガイドラインは日本以外には出されていない。筋付着部炎を引き起こす強直性脊椎炎などが合併している場合には、強直性脊椎炎などにステロイドが有効なのであって、筋付着部炎型FMにステロイドが有効なのではない。うつ型FMに抗うつ薬が推奨されているが、そうでないFMには抗うつ薬が推奨されていない図もある[2]。抗うつ薬の鎮痛効果は抗うつ効果による間接的な鎮痛効果ではなく、直接の鎮痛効果であり、初心者は誤解しやすいため注意が必要である。線維筋痛症診療ガイドライン2013を全て読み込めばこれらの誤解は起こらないが、誤解を引き起こしやすい記載であるため注意が必要である。

 FMを症状によって分類しようという試みは行われている。しかし、最大の問題点は報告者により分類の方法が異なっている点である[26-28] [29]。現時点ではFMの細分化に関しては一定の見解はないと言わざるを得ない。FMを各カテゴリーに細分化して各カテゴリーごとに優先使用する薬を変えるという治療方法を具体的な薬物を明示してガイドラインはスペインのガイドライン[29]のみである。アメリカ[30]、カナダ[31]、ヨーロッパ[32]、ドイツ[33]、スペイン[29]がガイドラインを報告しているが、日本のガイドライン[2]はそれらとは隔絶している。アメリカ、ヨーロッパ、ドイツのガイドラインの比較[34]も報告されている。スペインのガイドラインはFMを各カテゴリーに細分化して各カテゴリーごとに治療方法を変えようとしているが[29]、FMの各カテゴリーごとに優先使用する薬を変えると治療成績が改善するというデータは明示されていない。カテゴリー分類は日本とは全く異なり、各カテゴリーに推奨される薬も日本とは当然異なる。また、スペインのガイドラインは執筆者間で話し合いがなされており[29]、実質的には分担執筆制である日本のガイドラインとは異なる。線維筋痛症診療ガイドライン2013にはFMを各カテゴリーに細分化して各カテゴリーごとに優先使用する薬を変える根拠が記載されていない[2]。線維筋痛症診療ガイドライン2013に対するamazonのカスタマーレビューには「この通り治療を受けてもよくならないことが多いので、あまり過剰に期待しないで読む「読み物」にすぎないものだと割り切って購入する分には良いと思う。つまらないから発売同時くらいに中古で売りに出ているという反応であることからもよくわかる。」という厳しい評価がなされている。もし、次回のガイドラインでも執筆者の一人に選ばれるようであれば、執筆者間で徹底的に議論を行い、このような評価がなされないガイドラインを執筆したい。なお、その書評を著者は書いていない。著者が酷評する場合には必ず実名で行う。

 

 国際疼痛学会が神経障害性疼痛の薬物治療において勧めているように[35]、当初は一つの薬のみを上限量まで漸増することが基本であるが[3]、ほとんどの医師はこれを守っていないため、同じ薬を使っても治療成績が悪くなる。図2の如く、以下のいずれかに該当させる必要がある。①満足できる鎮痛効果が得られる。②鎮痛効果はなく副作用を我慢できない。③上限量を使用しても鎮痛効果がない。④上限量を使用すると不十分な鎮痛効果が得られる。⑤不十分な鎮痛効果はあるが、副作用のため増量不能。①の場合にはそのまま経過観察をする。②と③の場合には、漸減して中止後、次の薬を同様の方法で追加する。④と⑤の場合には、鎮痛効果と副作用を患者自身が天秤に掛けて最適量を決定し、次の薬を同様の方法で追加する。図2に従い各薬が有効か、無効かを必ず判定し、有効な場合には最適量を決定する。上限量を使用しても効果が不明瞭な場合には、必ず中止して痛みの変化を観察する。最適量の決定は慎重に行うべきであり、不明瞭な場合には漸減、漸増を繰り返すこともある。痛みは軽減したが眠気などの副作用が強く社会生活が破壊される場合には薬を減量する必要がある。上限量を試さず無効と判断し中止したり、鎮痛効果があるかどうか不明のまま長期間投薬してはならない。多くの薬は漸増、漸減する必要がある。初回投与量が最高使用量であるメコバラミンと葉酸の併用、ラフチジン、漢方薬などでは4週間、ノイロトロピン®では4-8週間使用し無効であれば中止している。

 可能な範囲で鎮痛作用の機序あるいは薬の種類が異なる組み合わせが望ましい。薬を何種類まで併用可能かという問題の正解は誰もわからない。著者は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。

 FMの薬物治療を行う際には、適用外処方は不可避である。

 添付文書上BZD、抗痙攣薬、抗精神病薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中は自動車の運転が禁止されている[36]。たとえ超短時間型睡眠薬でも、それを飲むと日中に運転することは禁止である[36]。これが遵守されると多くの患者の生活と日本経済は破綻するが、患者さんに説明する必要がある[2, 36]。自動車運転の問題は大問題であるが、実名でこの問題を取り上げている医師は著者が知る限り著者のみである。この問題は最終的には国会で議論すべき問題である。著者の意見に賛同される医師は論文などでこの問題を提起していただきたい。

 抗うつ薬の鎮痛効果は抗うつ効果とは独立している[2]SSRIの鎮痛効果は三環系抗うつ薬(TCA)やセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(SNRI)より鎮痛効果が弱い[3][2]SSRITCAより副作用が少ないという理論にはほとんど根拠がなく、著者が知る限りではパロキセチン(パキシル®20 mg/日はアミトリプチリン(トリプタノール®100 mg/日より副作用が少なかったという盲検法の記載のない研究があるのみである[37]。二重盲検法を用いた研究では20-40 mg/日のパロキセチン(パキシル®)と50-150 mg/日のアミトリプチリン(トリプタノール®)の副作用の頻度に差はないと報告されている[38]。盲検法の記載のない研究より二重盲検法を用いた研究の結果が優先されるべきである。骨粗鬆症[39-40]、性機能障害[41]、脳卒中[42]、出血[43-45]の副作用を考慮するとSSRIの方が副作用が多い可能性すらある[2]。そのため、鎮痛目的でSSRITCASNRIより優先使用してはならない[46]。ただし、抗不安効果や抗うつ効果を目的とした場合にはSSRITCASNRIより優先使用しても構わない。

 一般論として、抗うつ薬(乳癌、卵巣癌)[47]、アセトアミノフェン(カロナール®)(血液腫瘍)[48]NSAID(腎細胞癌)[49]、睡眠薬(癌全般)[50]、葉酸(前立腺癌)[51]、長鎖ω-3多価不飽和脂肪酸(エパデール®など)(前立腺癌)[52]を長期使用すると悪性腫瘍の発生率が高まる。トラマドールは自殺の危険性を高めることがFDAから警告されている[53]。睡眠薬の常用により死亡率が増加する[50][54][55]。異論はあるが[56][57]FDAは抗痙攣薬により自殺行動や自殺念慮が2倍になると警告している[58-59]。つまり、FMの治療を行うと薬の副作用によりわずかに死亡する危険性が増える。しかし、テレビのコマーシャルで有名な風邪薬の副作用により毎年死者が出ていることを考えるとやむを得ないと著者は考えている。

 世界標準の医学では主に論文上の有効性の順番に処方することが勧められているが、それは実用的ではないと考えている。著者は論文上の有効性と副作用、自分の経験した有効性と副作用、薬価、適用病名、自動車運転の可否を総合的に判断して、投薬の順位を決めている。この方法は、著者の個人的な方法なのであるが、線維筋痛症診療ガイドライン2013でも承認されている方法である[2]。実は、そのガイドラインは実質的には分担執筆制であるが、その後に書き換えが行われたために著者の個人的な方法がそのガイドラインで推薦される治療方法になるという珍事がおこった。副作用が少ない薬を優先使用する場合もある。痛みが強烈な場合には有効性の証拠が強い薬を優先使用している。この順番には明確な科学的根拠はないが、参考にしていただきたい。後述するようにスタメンと個人的に呼んでいる優先使用する薬を優先順位に従って順番に使用すれば、医師免許さえあれば専門的な知識はなくても誰でもほぼ同じ治療成績を得ることができる。ただし、副作用で増量不能になったり十分な鎮痛効果が得られない限り、必ず上限量まで増量する根性は必要である。日本ではFMを含む原因不明の痛みに対して少量のプレガバリン(リリカ®)が第一選択として使用されることが多い。上限量を使用しない問題点は既述した。プレガバリンは鎮痛効果の強い優れた薬であるが、高い薬価、強い眠気、肥満の副作用のために、早急に鎮痛が必要な場合を除いて第一選択薬としては望ましくない。

 同系統の薬は原則的に併用していない。優先使用している薬(スタメン)の中ではアミトリプチリン(トリプタノール®)とノルトリプチリン(ノリトレン®)、ミルナシプラン(トレドミン®)とデュロキセチン(サインバルタ®)、ガバペンチン(ガバペン®)とプレガバリン(リリカ®)がそれに該当する。

 FMに有効な薬といっても8割のFM患者に有効な薬は存在しない。偽薬効果や自然軽快を含めて4割のFM患者に有効であれば効果が高い薬である。他の領域の薬に比べるとFMの個々の治療薬の有効性は低いと言わざるを得ない。俊足の亀は鈍足の兎より足が遅いことはやむを得ない。それを承知して治療を行う必要がある。

 

 

 

薬価は20124月時点。*抄録、後発品

 

運転:自動車運転の可否(プレガバリンでの表記は他の薬よりも厳しい)

病名:適用外処方の程度

Ⅰ:系統的総説、メタ解析、Ⅱa:無作為振り分け二重盲検法、Ⅳ:対照群のない研究、症例:症例報告


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最終更新日 : 2016-04-20 15:41:52

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線維筋痛症の薬物治療各論

 プレガバリンまでが著者が優先投与している薬であり、優先順に記載している(表4)。著者はこれらの薬をスタメンと個人的に呼称している。7番目までは安価あるいは副作用の頻度が少ないかのどちらかの特徴を持つ薬であり、8番目以降は有効性の根拠が強い薬である。可能な限り同系統の薬は隣接しないようにしている。サインバルタやリリカが後ろにあることは心強い。

 

1:ノイロトロピン®

 対照群のない研究[60-61]や症例報告[62]で有効性が報告されている。評価項目全てでバランスのとれた薬である。副作用が軽微で頻度が少ないことが長所である。1日4錠より8錠の方が鎮痛効果が強いが[63]、通常は一つの医療機関からは1日4錠しか処方できない。現在、米国国立衛生研究所で二重盲検法による研究が進行中である。

2:アミトリプチリン(トリプタノール®)TCA

 系統的総説によると25mg/日を投与すると6-8週間は有効であるが12週間では有効性が認められず、50mg/日には有効性が認められない[64]。しかし、100mgを超えると鎮痛効果が出る患者もいるため150mgを使用せず無効と判定してはならない。著者は5mgから30mgまで1週間に5mgずつ増量している。副作用も鎮痛効果も生じなければ以後は1週間に10mgずつ増量している。30mgの時点で副作用あるいは鎮痛効果があれば1週間ごとに5mgずつ増量し、50mg以降は1週間に10mgずつ増量している。1週間150mgを投与しても無効であれば中止している。眠気の副作用が強いため、50mgまでは夕食後又は就寝前のみに投与している。それ以上投与する場合でも夕食後又は就寝前の処方を多めにしている。就寝時の眠気は副作用ではなく、有用な薬効である。

3:デキストロメトルファン(メジコン®)鎮咳薬

 N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬、つまりケタミンの類似薬である。二重盲検法で有効性が示されている[65]。1日3錠を1週間、6錠を1週間、8錠を2週間投与して無効であれば中止している。薬価が安く、副作用が少ない割に鎮痛効果が強いことが長所である。適用症が慢性気管支炎などであることや、眠気の副作用はそれほど強くはないが自動車の運転が禁止されていることが短所である。

4:ノルトリプチリン(ノリトレン®)TCA

 アミトリプチリンの多くは体内でノルトリプチリンに代謝される[66]。投与方法はアミトリプチリンと同じである。一般論としてアミトリプチリンより鎮痛効果は弱いが副作用も弱い。症例報告[67]で有効性が示されたのみであるが、国際疼痛学会は神経障害性疼痛における一般論としてアミトリプチリンより優先使用することを勧めている[35]。

5:メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用

 対照群のない研究によりメコバラミン1500μgと葉酸15mg併用の有効性が示されている[68-69] [70]。

6:イコサペント酸エチル(エパデール®

 対照群のない研究で2700mg/日の有効性が示されている[71] [72]。上限量の2700mgでは査定されることがあるため、1800mgまで使用している。恐らく小児に使用しても安全と推測しているが、適用病名の点で実質的には小児には処方不能である。

7:ラフチジン(プロテカジン®)H2ブロッカー

 対照群のない研究で20mg/日の有効性が示されている[73] [74]。H2ブロッカーの中で唯一胃粘膜保護作用がカプサイシン感受性知覚神経を介する。機能性胃腸症を合併する場合には優先順位が高くなる。胃薬であるため、機能性胃腸症を合併する場合には優先順位を上げている。

8:ミルナシプラン(トレドミン®)SNRI

 メタ解析[75] [76]や系統的総説[77] [78]で有効性が示されている。8以下の薬の中で最も薬価が安い。後発品が存在する。15mgから1週間ごとに15mgずつ増量し、最後は1週間25mgを4錠使用し無効であれば中止している。

9:ガバペンチン(ガバペン®)抗痙攣薬

 二重盲検法で有効性が示されている[79]。添付文書に記載された使用方法は鎮痛目的の使用方法ではない。100mgから400mgまでは1週間に100mgずつ増量し、以後は1週間に200mgずつ増量し2400mgを1週間投与して無効であれば中止している。他の抗痙攣薬を併用する必要がある。クレアチニンクリアランス(Ccr)が低下した患者では上限量を減らす必要がある。

10:デュロキセチン(サインバルタ®)SNRI

 メタ解析[75] [76]や系統的総説[78] [80]で有効性が示されている。20mgから1週間ごとに10mgずつ増量し60mgを1週間投与して無効であれば中止している。

11:プレガバリン(リリカ®)抗痙攣薬

 メタ解析[76] [81] [82] [83] [84]で有効性が示されている。FMに対する適用症があり、上限量は450mgであるが、神経障害性疼痛に対する上限量は600mgである。450mg では鎮痛効果がないが500mgを超えると鎮痛効果が出る患者がいるため、600mgを使用せず無効と判断してはならない。Ccrが低下した患者では上限量を減らす必要がある。TCAの眠気は徐々に起こるが、プレガバリンによる眠気は時に突発的に生じるため、同じ眠気でもプレガバリンによる眠気の方が危険である。添付文書における自動車運転禁止の表現が他の向精神薬より厳しい。添付文書上は他の向精神薬においても自動車の運転は禁止されているはずであるが、禁止よりもさらに厳しい記載をする意図が著者には理解できない。他の向精神薬における自動車運転の禁止は黙認してもよいから、プレガバリンの添付文書における自動車運転禁止の表現が他の向精神薬より厳しいのであろうか。プレガバリンの添付文書と他の向精神薬の添付文書の差をどのように解釈するのか著者にはわからない。肥満の副作用が強いことも問題であり10 kg以上の体重増加が起こることもある。遅発性に起こるからこそ問題になる副作用である。アミトリプチリンにも肥満の副作用があるが、個人的な経験であり明確なデータはないがアミトリプチリンによる肥満よりもプレガバリンの肥満の方が程度が強い印象を持っている。プレガバリン発売以降、FMを含む神経障害性疼痛に対して第一選択として使用されることが多い。著者を受診時には、しばしば150mg以下の少量が鎮痛効果の有無を確認されないまま漫然と処方されている。

 

スタメン以外の薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)

 長期使用により転倒、骨折、交通事故、抑うつ症状、記憶力の低下、認知機能の低下、骨粗鬆症、譫妄、自殺、死亡などの副作用が起こると共に常用量依存が起こるため[36]、痛みやこわばり軽減目的や、睡眠目的で使用してはならない。常用量依存が起こると中止が困難になる。中止を試みなければ常用量依存は起こらないから問題はないという意見は妥当ではない。前述の忌まわしい副作用が起こるからである。不安障害を合併する場合には抗うつ薬が効果を発揮するまでの短期間の使用にとどめるべきであり、決して6か月以上使用してはならない[36]。依存が起こりにくい超長期作用型のロフラゼプ酸エチルなどを使用することが望ましい[36]。複数のBZD使用は有害無益である[36]。線維筋痛症診療ガイドライン2013[2]にはアルプラゾラム(ソラナックス®)に有効性の根拠があるかのような記載が一部にある。しかし、その根拠となる論文の抄録には有効性がある由が記載されているが、本文には対照群と差がないと記載されている[85]。つまり、今日の基準では有効性に科学的根拠はないと見なされる。

ステロイド、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®EN)

 FMそのものには有害無益である。

ピロカルピン(サラジェン®

 線維筋痛症診療ガイドライン2013には有効と記載されており、有効性のエビデンスもあると記載されているが[2]、著者が調べた範囲ではその根拠となる論文を現時点では見つけられない。

アセトアミノフェン(カロナール®)およびNSAID

 単独では無効である。実際に使用すると有効なことがあるが、FMそのものに有効であるのか、FM患者が何らかの侵害受容性疼痛を合併しているのかは不明である。月経困難症にFMの治療を行えば症状が軽減することが多いが月経時には痛みが悪化することが多い。その場合には、月経時にこれらの薬を追加すると有効なことが多い。

 アセトアミノフェンは胃腸合併症を引き起こさないと考えられているが、実は1日2000mgを超えると胃腸合併症が増えると報告されており[86]、注意が必要である。

ラロキシフェン(エビスタ®

 閉経後の女性FM患者に対して、プラセボを用いた16週の二重盲検法によりラロキシフェン60mgを使用すると疼痛・疲労・圧痛点の数・睡眠障害・Stanford Health Assessment Questionnaire (HAQ)が有意に改善したが、Anxiety and Depression questionnaire (IHAD)は改善しなかったと報告されている[87]

ミルタザピン(レメロン®、リフレックス®

 二重盲検法により15mg/日と30mg/日はFM患者の睡眠を有意に改善し、痛みを有意ではないが改善した[88]。眠気の作用が強烈なため、著者は睡眠薬として1/4錠から1週間ごとに1/4錠ずつ1錠まで増量し、睡眠薬として効果が不十分であれば、それ以降は鎮痛薬として漸増している。

オピオイド(モルヒネ®、デュロテップ®MTパッチ、ワンデュロ®パッチ、フェントステープ)

 強オピオイドでありFMには極力使用しない方がよいが、初診時から痛みが激烈で自殺の危険性がある場合や適切な治療を2年以上行っても十分な鎮痛効果が得られない場合には使用せざるを得ない場合もある。ペインクリニック専門医を持っていない場合には、モルヒネ200mgを超えると査定されやすいという非公式の制度が地域によっては存在する。モルヒネを200mgを超えて使用していた際、査定にあい30mgしか認められなかった。医療機関にとっては大損害であり、その後の治療が破綻する。そのため、ペインクリニック専門医を持っていない場合には、実質的にはモルヒネでは200mgが上限量である。

 モルヒネの1回量が20mgになれば薬価が2割以下の散剤に変更している。痛みのある患者に使用する限り依存は起こらないという理論はあるが、非癌性慢性痛であるFMやその不全型に実際に使用すると医師、患者共に白い目で見られるという状況である。痛みのある患者に使用する限り依存は起こらないという理論はあくまで理論であり証明されていないことには留意すべきである。

トラムセット®

 二重盲検法で有効性が報告されている[89]。トラマドールとアセトアミノフェン(カロナール®)の合剤である。

トラマドール(トラマール®

 二重盲検法で有効性が報告されている[90]。トラムセット®と比較して、トラマールの細かい用量設定が可能であり、上限量が400mg(トラムセット®では300mg)であることが長所である。アセトアミノフェンと併用する場合にはトラムセット®の方が便利である。

 トラマドールとトラムセット®は共に弱オピオイドである。しかし、制度的にはオピオイドではなく、使用が容易である。前述したように、ペインクリニック専門医を持っていない医師がモルヒネを200mg使用しても鎮痛効果が不十分な場合には補助的に弱オピオイドを使用している。

ブプレノルフィン(ノルスパン®テープ) 

 弱オピオイドである。モルヒネと併用するとモルヒネの鎮痛効果を阻害してしまうため、モルヒネと併用できない。そのためこれを使用するよりトラマドールやトラムセット®を使用する方が望ましい。

 

スタメンを使い切った後の薬物治療

 著者が優先使用している11種類のスタメンを使い切ったら、その後は薬物治療はないということはない。すべての抗うつ薬、すべての抗痙攣薬、タンドスピロン(セディール®)、漢方薬、チザニジン(テルネリン®)、ラロキシフェン(エビスタ®)、一部の抗精神病薬などが候補になる。詳細は線維筋痛症診療ガイドライン2013[2]を参照していただきたい。一般論としてSSRITCAより鎮痛目的で優先使用してはならないと記載したが、一部の患者ではSSRIがある程度の鎮痛効果を発揮することは事実である。

 組み合わせ治療も有用である。単なる偶然である可能性があるが、単独では無効であった薬を二つ組み合わせると鎮痛効果が生じることがある。明確な科学的な根拠はないが著者が優先的に使用している組み合わせはアミトリプチリン(トリプタノール®)またはノルトリプチリン(ノリトレン®)とクロナゼパム(ランドセン®、リボトリール®)の2通りの組み合わせと、二つのSNRIとプレガバリン(リリカ®)またはガバペンチン(ガバペン®)の4通りの組み合わせである。

 維筋痛症診療ガイドライン2013に記載されていないがFMに有用な鎮痛薬あるいは有用な組み合わせがあればお知らせいただきたい。

 

 漢方薬の使用方法

 対照群のない研究で十全大補湯の有効性が示されている[91]。それ以外は症例報告である。

 漢方薬のみでFMやその不完全型を治療することは望ましくない。漢方薬の鎮痛効果は一般論として強くないためである。スタメンのどこかに有効と思われる漢方薬を入れて使用することが望ましい。漢方薬の欠点は漢方薬の知識が乏しい医師とそれが豊富な医師の間で治療成績が異なることである。著者の漢方薬に関する知識は乏しいためあまり漢方薬を使わないが、知識のある医師は積極的に使用されればよいと考えている。もし可能であれば、漢方薬の知識が乏しい医師がどのように漢方薬をFMに使用するのかを簡便にご教授いただきたい。

 なお、漢方薬は食前投与あるいは食間投与がよいという理論には科学的根拠がないばかりか[92]、食前投与より食後投与の方が優れているという報告[93]さえある。非漢方薬ではほとんどの場合食後投与であるため、漢方薬を食前投与あるいは食間投与したのでは16回前後の内服が必要になる。16回前後の内服は理論的には可能であっても実際には不可能である。漢方薬を食後投与しても構わない。

 

 不安障害合併時の治療

 不安障害とFM(あるいはその不完全型)を合併している場合には不安障害と痛みのどちらか一方を優先して治療した方がよい。患者が困っている症状を優先して治療することが望ましい。どちらか一方の治療を行い、それでも他方の症状が残ればその時に他方の治療を行うことが望ましい。

 不安障害とFM(あるいはその不完全型)の治療を同時期に開始することは治療難度が高いためお勧めしないが、同時期に開始せざるを得ない場合がある。その場合には可能な範囲で同一日に薬を開始、増量せず、数日の間隔をあけた方がよい。例えば痛みの治療薬は月曜日ごとに増量し、不安障害の治療薬は木曜ごとに増量するのである。

 TCASNRIは不安障害とFM(あるいはその不完全型)の両方に有効であるが、著者の経験ではそれらを不安障害とFM(あるいはその不完全型)の両方の治療薬として使用することはお勧めできない。それらの薬が一方のみに有効な場合にその後の対処に困るからである。TCASNRIを鎮痛目的で処方し、SSRIを抗不安目的で処方することをお勧めする。

 社会不安障害、パニック障害、強迫性障害を合併していると痛みとの間に悪循環が生じる。そもそもそれらが合併していると、通院そのものが困難になるため、治療が必要である。特に、パニック発作が起きている間は痛みの治療を適切に行うことはできない。前述のようにパニック発作のみを治療するか、痛みと同時に治療を行う必要がある。パニック発作が既に起きている場合にはBZDを使用せざるを得ない場合が多い。SSRIにはパニック発作を押さえる効果があるが即効性はなく1,2か月が必要なことが多いからである。ただし、前述のように不安障害あるいはパニック発作の本質的な治療薬はSSRIであってBZDではない。SSRIを1年以上長期使用すれば、不安障害あるいはパニック発作は消失しSSRIを中止可能なことがある。しかしBZDでは有効時間のみの効果であり、生涯投与が必要になる。前述のように6か月を超えてBZDを使用してはならない。

 

 小児患者の治療

 小児FM患者の治療法として母子分離が報告されている[2]。薬物を使用しない安全な治療方法であるが、現実的にはそれを行うことは困難である。その理由は三つである。①不全型FMを含めると膨大な患者数になるが、全員を入院させることは現実的ではない。②母子分離を行うためには多数の人員が必要であるが、ほとんどの医療機関ではその人員を確保できない。③母子分離のためには居住地から離れた医療機関に入院させる必要がある。その間の患者さんの教育の問題、移動費用を含めた費用の問題が生じる。しかし、母子分離が必要な患者さんは存在する。当初は外来で非薬物治療と薬物治療を行い、それに反応しない場合に母子分離を行うことが現実的であると考えている。著者が治療した小児(治療開始時が中学生以下とここでは定義)患者(不完全型FMを含む)は2人である。2人とも薬物治療を中心とした治療を行い、1人は痛みがほぼなくなり、もう1人は痛みが半分程度になっている。

 直接受動喫煙(喫煙者のたばこの煙を吸い込むこと)は論外であるが、間接受動喫煙(喫煙者の体、呼気に含まれる有害物質を吸い込むこと)を避けるために両親の禁煙は必須である。

 スタメンの中で、著者はノイトロピン®、アミトリプチリン(トリプタノール®)、デキストロメトルファン(メジコン®)、ノルトリプチリン(ノリトレン®)、メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用、ラフチジン(プロテカジン®)を使用している。現時点ではガバペンチン(ガバペン®)、プレガバリン(リリカ®)を使用した経験はないが、必要であれば使用する予定である。イコサペント酸エチル(エパデール®)は小児にも安全であると推測しているが、高脂血症が適用病名であり、査定される危険性が高いため使用していない。

 

 

 

 


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最終更新日 : 2014-07-13 17:18:57

本文4

妊婦患者の治療

 今後は妊娠を希望するFM患者や不全型FM患者あるいは妊婦患者での治療が問題になる。妊婦の場合には非薬物治療が通常以上に優先されるべきである[94]。妊婦に関する問題は別の書籍を参照していただきたい[94]。著者はノイトロピン®、デキストロメトルファン(メジコン®)、イコサペント酸エチル(エパデール®)を優先的に使用している。必要があれば、メコバラミン(メチコバール®)と葉酸(フォリアミン®)の併用も行う予定である。ただし、これらの薬には妊婦に対する明確な安全性が確立しているかどうかは不明であるため、十分な説明が必要である。なお、従来は妊婦に安全と考えられていたアセトアミノフェン(カロナール®)を妊婦に使用すると発達障害[95][96]や注意欠陥・多動性障害[97]を引き起こしやすいため注意が必要である。神経障害性疼痛の場合には代替薬が存在するが、侵害受容性疼痛の場合には代替薬が存在しないため、深刻な問題である。

 

月経困難症の治療

 月経困難症の治療にはFMの治療が有用である。FMの治療に含まれないが、月経困難症の治療に含まれる治療はホルモン剤くらいである。ホルモン剤には副作用はあるがその有用性を否定するつもりはない。月経困難症のみの患者を治療した経験はないが、FMやその不完全型の患者は月経困難症を合併することが多い。FMの治療により痛みが軽減すれば、月経困難症も同時に軽減することが多い。一部の患者ではFMの治療により月経困難症の症状は軽減するが月経時の数日はNSAIDやアセトアミノフェンを併用するとさらに症状が軽減する。

 

更年期障害の治療

 更年期障害の治療にはFMの治療が有用である。FMの治療に含まれないが、更年期障害の治療に含まれる治療はホルモン剤くらいである。ホルモン剤には副作用はあるがその有用性を否定するつもりはない。更年期障害のみの患者を治療した経験はないが、FMやその不完全型の更年期女性は更年期障害を合併することが多い。FMの治療により痛みが軽減すれば、更年期女性も同時に軽減することが多い。

 


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最終更新日 : 2014-07-13 17:22:03

図3


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最終更新日 : 2013-10-29 12:28:18

図4


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