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経済は一流と言われてきたが...

 経済は一流と言われてきたが...

 経済に目を転じると、これまで日本が世界第2位の経済規模に成長するまで果たしてきた財界の役割・貢献度は測り知れない。一時世界を席巻したMade in Japanの強さは日本人に自信と誇りを与え、先人が築いて来たJapanブランドの信頼や価値は今でも我々日本人の大きな財産となっている。
 大手企業も、かつて創設された時は間違いなくベンチャー企業であったはずだ。それがいつのまにか大手優先の論理がはびこり、創設時のベンチャー精神を喪失した財界企業ばかりになってしまった。リーマンショックの直後、充分なストックを有するはずの財界のリーディング企業が先陣を切って派遣切りをアナウンスするに及んで、それまでの日本が大事にして来た価値観の一つである「調和」が完全に消え失せ、大手優先の財界体制がますます支配的となってしまった。最大の利益を出していたはずの大手企業がリストラを優先し事業活動の新たな投資やイノベーションへのチャレンジを全て凍結宣言したのだから、日本経済全般に及ぼす負の影響は甚大だ。水道の元栓を閉めれば、取引先の途中や末端では乾いた雑巾をさらに絞るどころの騒ぎではなく、水滴が一滴も流れて来ない状況を作り上げてしまった。結局、垂直系列で成り立つ日本企業のフロー経済において末端ではただただ耐え忍ぶしかない。そうすると、末端消費が止まる訳だから、大手の製品の購買自体もストップする。すなわち、大手自らがデフレの根源をつくってしまった訳だ。

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最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

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経済は一流と言われてきたが...

 このデフレを乗り切るために、大手も中小も殆どの企業が更なるリストラを強化せざるを得なくなった。マスコミまでがリストラを正当化しそれをあおったものだから、負のスパイラルが益々大きくなって行った。まだ日本が成長に向かって一直線にひた走っていた60年代から80年代にかけて、米国は、Made in Japanの猛撃に耐えられなくなり安い賃金を求めてどんどん海外に工場を移転して行った。その頃の日本は長期目線でグローバルな視野を持っていたから成功したのだと、日本のサクセスストーリーが世界のモデルになったのに、今や日本も当時の米国と同じく短期目線で数字だけを追いかける軽薄な経済観念の財界人・企業人が増えてしまった。
 一時期は、世界中で元気な日本企業のブランド名がいやというほど目に入った。それらの企業も、年月を経てやがて体力の劣化に加え、コレステロールが増え、いわゆる「大企業病」的症状が随所に表れて来た。チームワークや家族経営といった日本企業の強さの秘密だった特長が、米国発の能力主義、コンプライアンスに押された結果、日本企業の国際競争力は急速に衰えていった。従来からの縦割り組織のマイナス部分や、自己防衛、保身といったムードが企業や社会全般に広がり、日本の国力・経済力を示す様々な指標がことごとく右下がりの坂を転げ落ちる状況となってしまった。

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最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

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メディアの責任は重い

 メディアの責任は重い

 これまで日本の政治、経済、ビジネスの衰退化の状況について述べて来たが、私はこれに拍車をかけた要因としてメディアの存在が大いにあると思う。政界・財界に真のリーダーが見出せない今、大衆の意識や考えをどのような方向に導くか、その意味でメディアの果たす本来の役割は極めて大きいのだが、日本のメディアに真のジャーナリズムを感じることができない。
 TV局は視聴率だけに気を配り、視聴者は繰り返される野次馬報道と低俗番組の洪水に辟易しながらも、他の選択肢がないので仕方なく視聴しているのが実態ではないだろうか。お笑い自体に罪がある訳ではない。閉塞感漂う日本にはストレス発散の場も必要である。しかし、そのお笑いの質自体も昔より劣化していないだろうか。かつては、もう少しウィットに富んでいて知的でどこか洒落たユーモアがあった。今は、いきなり突っ込み役がボケ役の頭を叩くなど芸どころか下品そのものだ。ある意味、日本のこれからを担う子供達に悪影響を与えているように感じられる。
 四年に一度のオリンピックやサッカーワールドカップであれほど国民が熱くなるのだから、100年に一度の危機であれば、1ヶ月くらいの特番を組んで日本の将来に向けて真剣な議論を仕掛けてみてはどうだろうか。
海外に長く住んでいる人が久々に日本に帰り、祖国のTVを見て、『ニュースでさえ、世界の状況を全く正確に報道していない。目に余るのはスキャンダラスな芸能人を執拗に追いかけ回したり、弱い者いじめ的な批判コメントばかりが横並びで行われており、人を称賛するとか尊敬するとか、昔の日本人がもっていた徳や情緒がなくなってしまっている』と、将来の日本を非常に心配していた。
 政治家に芸人タレントが増えたのは今に始まったことではないが、政治家自身も国会での真摯な質問や答弁より、テレビ番組での発言に重きを置くなどタレント化している。Will とWisdomがなくWord(言葉)とPerformance(芸)だけの政治家が増えたのは、メディアの変化と連動している。メディアの今の姿勢をこのまま放置していたら、日本人は本当にダメになってしまうかもしれない。

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最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

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おわりに

 おわりに

 この「失われた20年」は、私のコンサルタント生活とちょうど重なる。新進気鋭のコンサルタントとしてクライアントを駆け回っていた頃 (今もWillとWisdomは変わらないと思っているが)、クライアントや社会の事象を点としてしか見ていなかったと思う。
20年後の今、つぶさに振り返ってみるとその点として捉えていた事象や課題が線として、あるいは面として繋がって見え、課題間の関係性や複雑性がようやくシステム思考的に捉えられ、より具体的なソリューションが見えるようになって来た。まさに、これからがビジネスコンサルタントとして本領を発揮できると確信する。
 待てよ、コンサルタントという言葉は相応しくない。これまでのコンサルタントが口にして来たことは今や書店の棚、インターネットに満ち溢れていて、本当にクライアントに感動を与えるような価値は、ファシリテーション、コーチング、チェンジエージェントという類かもしれない。龍馬に剣術を教えた北辰一刀流の千葉定吉や勝海舟は今風のコンサルタントではない。龍馬が志(Will)と知(Wisdom)を高めていくプロセスでの「師匠」といえば、少々口はばったいだろうか。

 次回作では、日本復活への具体的な方策について、また一緒に考えてみたいと思う。是非楽しみにしてもらいたい。


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最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

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著者紹介

山本哲朗(やまもと・てつろう)

1948年鹿児島県鹿児島市生まれ
1971年上智大学外国語学部英語学科卒業。
在学中に、企業研修交換プログラムに参加し、ボストンコンサルティンググループの米国本社にて研修を受ける。卒業後、複数の大手企業で、マーケティング全般や、海外関連業務などを経験。39歳でプラウドフットジャパンに転職し、コンサルティング業界へ。その後、アーサーアンダーセンのビジネスコンサルティング部門の創設に携わり、アンダーセン・ワールドワイドパートナー、アンダーセンジャパンCKO(Chief Knowledge Officer)、朝日(現あずさ)監査法人業務開発企画部長を歴任。2003年株式会社アンダーナを設立。

著書
『バイタルサインズ 企業変革のための業績評価基準』(共著、産能大学出版部、1994)、『図解、ナレッジマネジメント』(共著、東洋経済新報社、1999)、『ナレッジマネジメント 実践のためのベストプラクティス』(共著、 東洋経済新報社、1999)、『ニュー人事シリーズ ナレッジマネジメント事例集』(共著、日経連出版部、2001)




Japan Revolution

―君こそが、現代の龍馬になれ!―

    ~現状把握編~

  

201091日第1刷発行

 

著者 山本哲朗

発行者 株式会社アンダーナ

http://www.andna.jp

東京都中央区日本橋本町4-14-2

TEL03-6661-6546

FAX03-6661-6547

Copyright (C) Tetsuro Yamamoto 2010


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