閉じる


<<最初から読む

4 / 43ページ

試し読みできます

はじめに

 はじめに

 今、幕末の志士「坂本龍馬」が人気だ。「失われた20年」とか「100年に一度の大不況」とか叫ばれて久しいが、こういう行く末の見えない混沌とした時だからこそ龍馬のような真のリーダーの登場を社会は待ちこがれるのだろう。しかし、政治の世界にもビジネスの世界にも、日本の社会全体で坂本龍馬のような偉人がいなくなってしまった。日本の国際的地位がだんだんと低下し、国力も民間活力もどんどん衰退して行く一方で、政治は混迷を深めるばかりだ。
 今の日本はまさに、江戸時代末期のような混乱の最中にある。だが残念なことに真のリーダーがいない。輩出して来る気配さえも全くない。日本のように他力本願的で集団性の強い国において、真のリーダー不在は非常に深刻な問題である。このままでは「失われた20年」がすぐに 「失われた30年」になってしまう。

 いやいや、それほど深刻に悲観することはないだろう。確かに今の40代以上の日本人を見渡すと日本の将来を真剣に憂い、行動している大人物は非常に少なく、大変心細く思う。しかし、あの龍馬だって志を高くもち新しい国家像を見据えて明治維新の引き金となった薩長同盟締結に奔走したり、日本最初の商社「亀山社中」を創ったりと、幕末の大混乱時に大活躍したのは30歳前後のまだ青年期といってもよい年頃であった。もちろん龍馬一人ですべてを成し遂げたわけではなく、勝海舟のような先見の明がある師匠との出会いや、西郷隆盛などの維新の立役者達と接して行く中で、龍馬はどでかいことを企て、実践して行ったのだ。

4
最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

試し読みできます

はじめに

 「求む、坂本龍馬!」の声は、特に今のような混沌とした時代にはよく聞かれる。時代こそ違えど、今の日本も当時と非常に近い共通点がある。世界が大きなパラダイムシフトに直面しダイナミックに変革しようとしている中、日本だけが旧態依然のままなす術を見失い、衰退化の流れを止めることができないでいる。まさに徳川幕府末期のように政治はリーダーシップを発揮できず、国民は醜い政権争いの茶番劇を見せられ、100年に一度の経済危機に対しても経済界のリーダー達はこれまで築いた蔵(資産)と家(ブランド)を守るためにひたすらリストラを強化し、新たなイノベーションへのチャレンジを怠っている。
 龍馬は日本の将来を憂えて、家柄や社会階級による不平等、日本人同士の無駄な争いや人命を不条理に殺める封建的制度に疑問を呈し、「自分は何ができるか」を常に問い詰め熱い志をもって疾風のごとく幕末の混乱期を駈け抜けた。33歳(満31歳)という若さで命を落とすまで、倒幕・明治維新という近代日本の礎に多大なる影響を与えた訳で、それだけでも後世の日本人にとって大いなる刺激と勇気を与えてくれる。
 40代以上の日本人は既にそのDNAを忘れかけているかもしれないので、20・30代の心をもつ君が、再び龍馬のDNAを取り戻し、志と知を結集して活動することで、日本は世界が羨む称賛と尊敬に値するNo.1の国家へ復帰するに違いない。

 龍馬の時代も今の時代も賢人は歴史と諸外国から知を学ぶ。若い君が龍馬として活躍するためには、知らず知らずのうちに衰退していった時代の真実を知る必要がある。
この本は、「失われた20年」である1990年から2010年にフォーカスして、特に日本ビジネス界で起こった真実と、利害関係国での事実を中心に、日本衰退の要因を紐説くことで、現代の龍馬を目指す君への羅針盤としたい。

5
最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

試し読みできます

「失われた20年」で失ったものとは?

失われた20年の真実

「失われた20年」で失ったものとは?

 この「失われた20年」の間、日本が失った最大のものは何だろうか?私は、「志(Will)」と「知(Wisdom)」と考える。(本来、「知」は英語のKnowledgeがフィットするが、知性や知恵を包含して捉えると、Wisdomの方がピッタリする。)
 幕末の龍馬が生きた時代、日本は黒船の来襲を受け、今にも先進国の植民地にされそうな状況に置かれていた。しかし、龍馬をはじめ当時の若きリーダー達は日本を守るために、高い志をもって日本の将来のために命をかけた。西欧諸国との国力の差をまざまざと知らされた若者達は、積極果敢に海外に赴き、多くの優れた技術や社会システムを学び、日本にその知を持ち帰った。当時の日本はそれらをいち早く受け入れ、吸収し、それを創意工夫でさらに良くする基礎知識と知恵と実行力を備えていた。まさにその時代を担った先人達が熱い「Will」とそれを具現化する「Wisdom」を兼ね備えていたからこそ、瞬く間に急成長を成し遂げ西洋の列強と肩を並べることができたのである。

 この日本人の卓越したWillとWisdomは第二次大戦後における激動期にも日本人のDNAとしてまだしっかりと根付いていた。だからこそ、敗戦後の奇跡の復興を成し遂げることができたのだ。この時も、西欧、特に米国より民主主義をはじめ様々な仕組みや制度、技術を積極的に学びベンチャースピリットをもった企業家達は世界のトップを目指し、商社マン達は世界の各地へと率先して飛び回って行った。SONYやHONDAは国内よりむしろ先に海外で称賛を受け、その後日本に凱旋帰国した企業である。「SOGO-SHOSHA」という言葉はそのまま世界でも通じる日本株式会社のシンボル的な代名詞でもあった。
 戦争で全てを失った当時の日本に、WillとWisdomだけは日本人のDNAとして大事に受け継がれていたからこそ、日本はどん底からはい上がり、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国へと昇り詰めることができたのだ。

6
最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

試し読みできます

「失われた20年」で失ったものとは?

 翻って、2010年の現代はどうだろうか。政治は言うに及ばず、経済界でもかつて世界から称賛され尊敬された革新的な企業は、大切なDNAのWillとWisdomを失い、どこにでもあるような平凡で保守的な大企業になり果て、世界経済での相対的地位をますます低下させている。また、世界から称賛と尊敬を得る存在になりえるベンチャー企業も、日本の保守的な風土に埋没してしまっている。
 今の日本を代表するアニメや漫画を否定するつもりはさらさらないが、我々日本人のWillとしてこれらの強みだけで現状満足していてよいのだろうか。TVのスイッチを入れれば、相も変わらずお笑いキャラとおバカキャラのオンパレードで、Wisdomのかけらも感じられない低俗な番組に牛耳られている。
 学界や識者のレベル低下も著しく、名門の名高い米国ハーバード大学への2009年の日本人新入生数がついにたったの一人という状況にまでなり果ててしまった。全ての分野において、日本人のDNAの根幹を成していたWill とWisdomが忘れ去られようとしている非常に重大な危機に瀕している。しかしそれは、この忘れ去られようとしているWillとWisdomを取り戻せれば、日本はまた必ずや復活できることを、逆説的に示唆しているのだ。


7
最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27

試し読みできます

龍馬の時代は変化のレベルもスピードも現代の比ではなかった

 龍馬の時代は変化のレベルもスピードも現代の比ではなかった

 龍馬が生きた時代、あらゆるものがもの凄いスピードで大きく実質的にも変化していた。現代もまた、ITの進化により明治時代や第二次大戦直後とは比較にならないほど相当にスピードアップしたパラダイムシフトが劇的に起こっている。だが、この20年間における日本の政治や経済・社会・教育の実態を振り返ると、時計の針がピタッと止まったかのように大きな実質的なチェンジは全くなかった。
 車や家電製品は機能や品質が改良され、パソコンや携帯電話などが一般化してこの20年間で我々の生活に大きな革新をもたらした。しかし、これらはいずれも単なる道具の改良に過ぎない。政治や経済、社会、教育の仕組みは20年以上前に設立されたり制定されたりしたまま、全く進化していないものが数多いのが現実だ。
 激変する諸外国からすれば、この20年で微々たる変化しか日本は成し遂げていないことをまず龍馬をめざす皆には認識してほしい。幕末から明治初期に掛けての日本の社会変革は、この失われた20年とは比較にならないほど、「チェンジ」に溢れていたのだ。
 徳川時代は、幾多の天変地異、大火、疫病、飢饉、一揆等はあったものの、非常に平和であった。天下泰平の中で日本独特の文化が育まれ、寺小屋をはじめとした教育にも熱心であったため、江戸では俳諧、川柳、短歌を楽しむ庶民も多かったという。庶民も現代の新聞にあたる瓦版を通じて様々な情報を入手していた。これが明治になって西洋より新しい技術や制度が輸入されてきた時、理解力が早くそこに日本人の器用さが加味され、短期間にして日本風に応用して消化していく原動力となったのである。日本語化する際にもカタカナ、平仮名、漢字をうまく使い分けることで、西洋のものを効率的に取り入れることができた。
 おそらく明治初頭の文明開化のスピードは、諸外国では想像できないほどの猛スピードであっただろうし、それを当時の日本人はいとも簡単に実現してしまったのだ。それを可能ならしめたのは、根本に若きリーダー達の文明開化に向けた「志(Will)」と「知(Wisdom)」があったからである。


8
最終更新日 : 2010-10-14 17:29:27


読者登録

andnaさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について